≪萬楽≫夏の思ひ出



<オープニング>


●夏の思ひ出
「暑いですね」
「せやな」
 空気読まない・ゼソラ(a27083)のお誘いに、既に色々過ぎ去ってる鉄拳調理師・アンジー(a90073)は久々にフリーで休みを満喫しているばかり。
 ほぇ〜っと気の抜けたアンジーを見ながら、じっくり堪能していたゼソラの脳裏に、ある企みが浮んだのはその時だった。
「まーあれやね。こういう暑い日は、海でうっすいソースで焼き上げた具の無い焼きソバとか、肉の欠片しか入ってないカレーとか、バター味の癖にしょうゆにしか思えへんラーメンが懐かしい季節やね」
「そう言うものですか?」
 何かが違う気がしたのだが、それもまた夏の海の風物詩といえばそうかも知れない。
 そもそも、この夏は夏の思い出(ドラゴンとか)だとかひと夏の経験(ドラゴン)だとか、色々ある様でない気がする。
「では、ひと夏の思い出作りに、いざ海に、では如何でしょうか?」
「ん〜。せやな。甲羅干しでもしとかんと、冬に風邪引きやすいちゅうしなぁ」
「……ですわね」
 お肌の曲がり角〜とか、25日を過ぎたケーキの売れ残り〜とかとか。
 色々飲み込んでゼソラもお出かけの準備をする。
「そうですね〜。ノルマとか?」
「は?」
「いえ。何でもありませんわ」
 クスクスクスと、笑うゼソラ。しかも意味深に。
 団長ゼソラの鶴の一声で、旅団萬楽ご一行様の遠征が決定した。
「オヤツにバナナは含まれますよ〜」
 だ、そうである。
 団長からのお願いだった。

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参加者
笑顔中毒者・エルゲス(a12525)
蒼い槍の人・ジン(a19307)
獣神サンダー・ライガ(a24742)
在天願作比翼鳥・キオウ(a25378)
家族と歩む虎の人・ゼソラ(a27083)
銀河に響く希望の歌声・ジーナス(a28981)
隠れ家ヘよーこその看板盗んだ・フォッグ(a33901)
黒百合と歩む意志・ティア(a34311)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
銀之刀匠・クオン(a65674)
NPC:鉄拳調理師・アンジー(a90073)



<リプレイ>

 無限に広がる大海洋。
 死んで行く生命もあれば、また生まれてくる欲望もある。
 そうだ、海は生きているのだ。
 諸々、様々な欲望と名のつくものによって……。
「海なんて久しぶりだなぁ〜。海っていえば、水着美女……」

 ギロリン!

「ゲフンゲフン。海といえば、やっぱ泳ぐことだよな。いや……」
 ことさら、小声になって視線を回避しながら続ける、エロゲスと呼ばれる男、笑う世間は鬼ばかり・エルゲス(a12525)。
「やっぱ水着美女だな」
 ぐっとこしらえる握り拳には、男の子の浪漫とか情熱とか、その他諸々妄想が込められている。だが、そんな彼の横では難攻不落の渇き・キオウ(a25378)が暑さに乾燥しそうな勢いでだれている。
「暑っちぃ……やっぱり、夏の日差しにこの黒い鱗はきつい」
「暑いなら、海に入れば良いじゃないですか〜丁度ホラ、フライパンに油も引かないといけない頃合ですし〜」
「ちょと、まて!! 俺の鱗じゃ、ぎゃあぁぁぁぁ!!」
 無事、油を引くため(?)に海中に没していくキオウを見送って、海の家の営業にと準備を始めたアンジーの前に立ちふさがる魔霧・フォッグ(a33901)。
「ちょっと待った」
「ん?」
「……ち」
「あははは……」
 振り返ったのはアンジーと、その背後で手がワキワキとなっている空気読まない・ゼソラ(a27083)。更に彼女のサポートにと、仕事の内容は兎も角ゼソラと一緒に歩いていた黒百合と歩む意志・ティア(a34311)が苦笑した表情で固まっている。
「さ、これを」
 クールに差し出す紙袋。その中身は、黄色と黒のトラ皮ビキニだ。
「その手が在ったですね……いや、しかしここは私のと御揃いで赤いビキニを! 始めっからクライマックスにくんずほぐれつしながら!」
「ほほう? ウチにこれなぁ……」
「うん!」
 グッと親指を立てて、フォッグは己のチョイスに自信を持っている様子だったが、彼の横の方で荷物を載せている召喚獣グランスティードがもしも語ることが出来たなら、きっとこう言っていただろう。
『さいってー』
 と。
 なぜなら、フェイクデスまで準備した挙句に、グランスティードを活性化して行ったのは、目の前のアンジーの私物(主に水着と目される白い何か)の破棄だったのだ。
「ところで、ご飯はまだかのぉ? 妾は団長達が腕を振るうと聞いておるので、楽しみにしておるのじゃが」
 期待を込めた瞳を輝かせながら、光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)が何処か落ち着きの無い様子で居る。こういう、薄着の季節にお腹が鳴ったら一大事なのだ。
「……」
「ん? おおう、これはこれは」
 狭間を征く銀刀・クオン(a65674)がそっと手渡した日焼け止めの化粧品を見つめ、ゼソラの瞳が怪しく光る。
「……百戦虎将ゼソラ……」
 つい、呟いて後ずさる程。クオンが感じたゼソラの気配は一騎当千、古今無双の兵の貫禄と覇者の気を纏っていた。
 勿論、別の意味で、だが。
「海だ海〜♪ 遊んでもいい? 答えは聞かないけどね〜」
 全ての人の魂の詩・ジーナス(a28981)が明るい声でスキップしながら浜辺を駆けるのを、フフリと笑ったゼソラがこっちゃ来いと言いたげに手招きする。
「ん〜? 私のこと呼んだ〜?」
 紫の露出少な目のビキニに身を包み、腰で風になびくパレオも紫。陽光に透けるような薄手の紫のロングコートに袖を通して、裾をひらひらさせながら走っていたジーナスが、ポニーテールの髪を揺らしながら近駆け寄ってくる。
 日差し避けに被った帽子も紫で、ビーチサンダルも勿論紫の徹底振りだ。
 白い肌の上に真白いビキニを纏ったクオンとは好対照な配色だ。
「……」
「え〜? これ、私に〜?」
 大げさなまでに首を振るジーナスだが、クオンは至って真面目に頷いている。
「もう自分には……塗ってある」
「ん〜私より、オネェちゃんのほうが必要じゃないかなぁ〜」
「……ウチかいな!?」
「……」
 しばし、自分の事だと気が付かなかった三十路が叫ぶのを、ジーナスの時の五割り増しの速さで頷きながら早速薦めるクオン。
「……是非に……さ」
「クオン様」
「……様?」
 何故、ゼソラが様付けで自分を呼ぶのか判らないクオンが一歩後ずさる。
「その役目、是が非でも私めに」

 ジュルリ。

「あ、ゼソラが涎たら……No〜〜〜〜〜!!」

 ガッツ!!

 と、疾風斬鉄脚っぽい鋭さでゼソラの踵がエルゲスの足の甲に叩き落とされるのは、団員皆が見なかった事にするのは当然で。
(「好みの差はあれど、素材は良いのだから勿体無い。むしろ、一番大人の色気が出る頃……だと思う……はず」)
「うき?」
 クオンが目の前で猿同様にウキウキ言っているアンジーを見て躊躇している間にも、彼女の足元で痛みから復帰したエルゲスの視線が熱く彼女を見上げていた。
「あ〜やっぱ水着の美女はいいなぁ〜。人妻も燃えるよね〜新妻? 幼な妻?」
 色々想像の翼が生えて飛んでいるエルゲスは他所に、クオンがやや俯き加減でアンジーとゼソラに向き直り……。
「……あの……焼き蛤と御飯、頂けますか……?」
「ん?」
「……」
 お腹が空いていたらしく、もじもじとするクオンを見て、次に互いの顔を見たアンジーとゼソラが親指突き立てて……。
「任しときー!!」
「任してくださいませ!」
「……はい」
 何か、クオンの恥じらいは親父な二人にはツボだったらしい。
 そんな親父な連中が萌えている最中にも、静かに打ち寄せる波の音に耳を傾けている男が一人誤字戦隊誤字ブルー・ジン(a19307)その人である。
「海………青い海………蒼いジンちゃん……そして海には……我が麗しきマスター、ゼソラちゃんの姿……」
 じーっと、見つめるのは碧の髪の女性。
「先ずは、だ……」
 ふわっと、前髪をかき上げたかと思うと、立っていた波打ち際から一気に親父な連中の元に移動する。
「俺の哀を受け取ってくれー!」
 ほんの直前までは小波の様な波しか無かった海が、何故か高く波打って、怒涛の勢いのジンを後押しするように直立する。
 高波を背に、一気に飛び込むジンの視界の中で、静かに振り返るゼソラの瞳は愛に輝いて……いなかったりする。
「必殺技……私の必殺技、パートファイブ!」
 目には鉢巻。
 真っ赤な水着のゼソラの手に、握られた少し赤い棒が何故か実体の長さより伸びて襲い掛かるような錯覚に襲われるジン。

 ザシュっとな♪

「……誤字ったよ……」

 爆発四散しないだけましだと言いたげに、まるで砂の如くに倒れて朽ちていきそうな勢いのジンだった。
「右に少し、そのまま真っ直ぐ……そこです!」
 見事にゼソラの誘導を成功(?)させたのはプラチナの可愛らしい声。
「……(ふごー!!)」
 ジンが吹っ飛ばされたおかげで、ようやく沖から戻って来て力尽きていたキオウは生き延びることに成功していた。
 ウレタン製の浮き輪とかボード、竹筒で作った水鉄砲とかが彼の周囲には散乱しており、加えて言えば沖で戦って蹴り上げたマグロの頭と一緒にキオウは砂浜に直立に埋め込まれていた。
「え、だってほら、お約束だし?」
 キオウの魂の叫びに笑顔で答えるのは、彼とマグロを生めた張本人、セクシャルスナイパー・ライガ(a24742)である。
「いや、本気で怒られる前にちゃーんと掘り出してあげますよ? うん」
「……」
「……」
 本当か? という目で睨みあげるキオウ。
 マグロ〜と、死んだ目でライガ見上げているマグロ。
 人生色々な白浜では、水鉄砲で攻撃したり、スイカを奪取したりと忙しいジーナスに、宝探しゲームの景品に謎な命令権を仕込むプラチナと、何度かゼソラを海上散歩に誘いたくても中々成功しないでいるティアが、スイカ割の為に突如消えるフワリンの背から海に落ちたばかりだった。
「コホ! コホ! びっくりしました……」
 しばらくフワリンの背に揺られていたので、帽子越しにも夏の日差しに照らされて風に身を任せていた為か、うたた寝をし始めていたところだったらしい。
「――。」
 何やら呟くようにしていたクオンが、ティアが咳き込むのを止めて海から上がってきてほっと胸をなでおろす。
あとは浜辺の木陰で本を見ていたりしている。
「いつ見てもあれだなぁ……」
 ぼそりと、呟いたのは雪の様に白い肌のエンジェルをそれとはなしに見つめていたフォッグ。
 手にはお昼の素麺とサラダ、デザートのフルーツを取り分けたトレイがある。一緒に皿の上に取ってきた白米の御握りがあるのだが、麺と野菜でもう良いかなといった胃の具合だった。
「ま、俺の好みの問題だしな……」
 と、今度は上から下まで紫のヒトが結い上げたポニーテールの揺れるのを目で追ってみるフォッグだった。

●夕焼け
 夕焼け空も既に傾いた太陽が水平線の向こうに沈みそうなころ。
 寝釣りを楽しんでいたキオウがムクリと起き上がった。
「とりあえず、三人も料理人いるんだし 色々作ろうか?」
「そうですね〜バーベキューはライガさんが用意してくれてますし、焼き饂飩とかも作りますかねー? いや、魚介類苦手な人も居ますからね?」
「ん。刺身とか包み焼き、カレーも準備できそうだが、美味しく食べてご馳走様、かな?」
 大勢いるだけに、どんな作っても食べきってしまうだろう。
「お魚嫌いです〜」
「始まったな、我侭お姫様」
 お昼のフルーツや甘いもの、お握り以外要らないと駄々をこねるジーナスに、ジンが苦笑する。
「……魚介類全般好きくないです」
「……やな」
「……ですわね」
「……だね」
 ジーナスの頬を膨らませた抗議を聴いて、料理人三人の目が光る。
「ん……」
 お早うと、言うのを何とか止めてクオンがパラソルの下から起き上がってくる。
「おを! お目覚めですか〜」
「駄目です〜!」
 ここぞとばかりに、ダイビングするゼソラに小さく叫ぶティア。
「……」
 だが、疲れて眠くなったクオンの寝起きは非常に悪いらしく、絶妙なタイミングと力加減でダイビングしてきたゼソラを抱き返す。
「ん〜至福の時〜ゴキ。ゴキ?」
 殺人抱っきゅるを敢行した筈のゼソラだったが、カウンターで達人抱っきゅるを発動させたクオンの技が決まっていた。
「駄目です〜!」
 今度は別の意味で心配して叫ぶティアだが、中々その声は届かない。
「女性の手料理ってひさしぶりに食べるかも……」
 視界の端の事変は横において、ゼソラとアンジーの作った料理に手を伸ばすキオウだった。

●浜辺の夜
 浜辺の夜には何かが起きる。
 そんな言葉を思い出して、夜回りしていたライガはある女性部屋に何故か女性が忍び込んでいくのを見た。
「シャドウロック!」
「……」
 ついでに、その部屋の扉が閉じた瞬間にストライダーの忍びっぽいナニかがシャドウロックを掛けている姿も。
「さ、これで安心して寝られる……ん?」
 フォッグが何かの気配に振り向いたときには、既にライガは立ち去った後だった。
「気のせいか……」
 そう自分に言い聞かせながら部屋に戻ったフォッグと同じ部屋では、早々と就寝したエルゲスが必死な表情で寝ている。
「ナニも見ない。何も見えない。何も見ないぞ〜」
「……いや、俺も見たくないけどな?」
 努力しようよと、呟きながらフォッグは布団に転がった。シャドウロックが彼なりの努力だったらしい。
 暫くして、フォッグも寝息を立てた頃に、宿から外に出てくる影が一つ。
「ちぃ!」
 フォッグが閉じた部屋の中で。舌打ちを一つして窓の外に翻る影。
 その影が向かう先では、皆が寝静まった頃を見計らってこっそりと抜け出したプラチナの姿がある。
「あの」
「ん?」
 何か声が聞こえた気がして、振り向いたプラチナだったが、寄せては返す波の音以外には何も聞こえなかった。
「他に起きてる人が居たら誘っても……って思っていたからかな? ……居ないですよね、深夜ですし」
 クルリと、手にしていた飲み物を回すように口に持っていくプラチナは海で波以外の水音を耳にした。
「ん〜?」
 目を凝らすと、海の黒にまぎれて見え辛かったのだが、キオウが昼間の暑さを避けて泳いでいる姿だった。
「こんな夜に?」
「ああ。乙だね。どうだい、少し涼まないか?」
「ん〜?」
 どうしようかなと言いながら、腰を下ろしたプラチナとキオウは夜空を見上げて暫く静かに波音に耳を傾けていた。
「いや、居たりするんですがね。キオウだけでなく、あそこにも」
 木陰で夜の星を見上げていたジンがひそかに呟く横を、カンテラの明かりだけを頼りに歩く二人が居る。
 星空の天幕の下を、浜辺を歩く二人の肩が触れて、また離れてという距離で、夜の海の波音が暗闇の中から響いてくるのや、雲が流れる空で輝く星々の明かりが照らし出す地上の光景は、闇の帳の中でも輝く地上の世界を、歩く二人だけの世界の様に見せている。
「あの、ゼソラさん……」
「はい?」
 繋がれた手と手を感じながら、歩く二人。
 静かに夜は過ぎていく。

 その頃、一方……。
「ゼソラさん〜っ♪ 泳ぎのプロとお友達になっちゃいました〜っ♪ 教えてもらうと良いですよ?」
 ウフフフフと、自分もかなづちな事は内緒で夢の世界でゼソラにイルカを紹介するジーナスが転がる横で、クオンが静かに、アンジーが豪快に寝息を立てているのであった。

【終劇】


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参加者:10人
作成日:2007/08/31
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