鋼の恋 セルレス・フロウ



<オープニング>


 よぉ、久し振りだな。
 あたしの名前はアリーゼン・ツヴァイク。鋼業の村・セルレスで親父と二人、鍛冶工房をやってるんだ。初めて会う人も、宜しくな。
 半年程前になるかな。村に化物が現れて鉱山に閉じ込められたあたしは、冒険者の人達に助け出して貰ったんだ。
 まぁ当のあたしは採掘に夢中で、自分のピンチに気付かなかった、なんて間抜けなおまけ話もあるんだけど……兎に角! 冒険者の人達には、村人もあたしも……そ、それから幼馴染みの薬草売り・レミディオも、皆感謝してるのさ。
 だから、さ。皆この村に来て、名産・セルレス鋼を使った武器飾り作りを体験してみないか? セルレス鋼は、精錬すると透き通る様な青を帯びた白鋼になって、凄く綺麗なんだ。皆にも是非、見て触れて貰いたいよ。
 それじゃあ、待ってるからな!

「そういう訳で、今回はセルレス鋼の武器飾りを作りに、件の村に行ってみようと思うの」
 ヨハナ・ユディト(a90346)は、目深な前髪が覆う眼鏡の縁を上げ、柔らかく語る。
 曰く製作に使用するセルレス鋼は、薄い板状の物や細い棒状の物、そしてビーズや勾玉といった球状の物等、色々な形状が取り揃えてあるらしい。これらを細工用の金切鋏や鎚で加工し、好みの形に仕上げるそうだ。
「庭ではレミディオが、お手製の香茶を用意してくれてるそうなの。作業を終えたらお茶会が出来るみたいね」
 茶会と聞いた、パレトラ・キリオ(a90362)は薄く赤い唇の端を上げる。
「それなら私も楽しませて貰えそうね」
 何かを言おうとする女重騎士を、吟遊小娘は制する。
「そんな顔なさらなくても、私だって準備位手伝うわ」
「……ところで、『球状のセルレス鋼』というのは、勿論丸いんですよね?」
 二人のやり取りを見ていた、祈らない霊査士・エリソン(a90312)のピンポイントな問いに、ユディトは『丸いから安心して』と答える。
「それなら私は、それらを独自の基準に基いて選り分けに行くとします」
「顔は書かないでね」

 因みに、少女アリーゼンと少年レミディオの関係はと言えば、半年の間に幾許か、もどかしい程の進展もあったそうだ。
 それは例えば、節の張った掌をした少女が、少年の掌の柔らかな感触に気後れを感じなくなった程の自信であり、けれど繋いだ手の温もりには頬を染める程の純情だと言う。
「逞しい人の逞しさ故の思惑、繊細な人の繊細さ故の思惑……そんな胸の裡を、作業の合間にアリーゼンやレミディオ達と語り合うのも良いかも知れないわね」
 手先に自信がない冒険者には、アリーゼンや工房の職人達が力添えをしてくれるだろう。
「だから大丈夫。安心して多くの人達に参加して貰いたいの」
 行きましょう? と微かに笑んで一言、ユディトは立ち上がって頤を傾けた。

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参加者
NPC:ヨハナ・ユディト(a90346)



<リプレイ>

●鋼の村に集いて
 白露輝く秋の初め。セルレスの乾いた山峰を高く吹き渡り、朝風が涼やかに薫る。

「なァ、オレ達ッてさァ『恋人』なんだよな?」
 二人手を取り小路を歩み、ディランはアスティアに訊ねた。自分達の関係が昔からの延長に思え、恋人の実感が湧かないと彼は零す。だからこの村で、その実感が湧く様な事をしてみたい。ディランは彼女と顔を合わせず、語りかける様に胸裡を並べた。そうですか? と彼女は訊ね返す。差し伸べられ、繋ぐ手の温もりは変わらず愛しい。その思いと温度は紛れもなく恋の証だ。けれど彼が望むなら、形ある証を二人の手で作り上げるのも良いだろう。
 数え歌と槌の音。鉱石の音と野太い掛声。石と鋼の工房から、粗野な活気が溢れ来る。
 ライアスはツヴァイク親子に辞儀をし、自らも生まれながらの鍛冶師だと述べた。なら姉さんはあたしの先輩だ、とアリーゼンが敬意を示す。セルレス鋼に非常に惹かれる事、精錬の様子等にも興味がある事を告げれば、炉の案内もしようかと、いかつい棟梁が顎を擦る。
 自分も鋼細工の経験はないが、セルレス鋼の美しさを聞いて訪れたと明かすレイン。きっと宝石に匹敵する程美しいのだろうとラオも賛辞すれば、荒くれ風情の職人達もまんざらではなさそうだ。
「元気そうで何よりだよ」
「おう、来てくれたんだ!」
 アリーゼンと握手を交わすリュナス。鍛冶屋娘の相変わらずの逞しさに仄かな嬉しさが湧いた。ウィーは召還獣を忘却の迷宮に潜め、職人達に深く礼する。偶にはゆっくり鋼細工も良いかと、一人静かに工房へ向かう。

「武器飾り……か」
 無骨な石卓に並ぶ青と白の煌き。セルレス鋼材の数々を見比べて独りごち、加工法の如何を職人に尋ねたガルスタは、短めに切った鋼棒を手にする。リッケも少々迷った末、紋を刻み易い滑らかな鋼板を選び取った。円形の鋼板を二枚に割った、対になる意匠が欲しいと職人に問うディラン。思い入れを込め細かな注文を重ねる彼に、アスティアは『折角ですし二人で一から作りましょう』と囁く。
 物作りには緊張が伴うが、独特の楽しさもある。空を表せる様な、より青の映える鋼板を探すファンバスの瞳は期待に満ちている。贈り物かいと問う職人に頷き、スズは頬を掻く。悩み悩んだが意匠は『月下美人』と決めた。図鑑も調べ、準備は万端だ。白花を帯びた薄い鋼板を手に取り気合十分、作業台に向かう。
「こんな色だけど、鋼なんだ……お空の色みたい」
 艶々して綺麗……と瞳を輝かせるリィリに、針金状の鋼に腕を通したチグユーノが瞳を伏せて頷く。
 サタナエルとヴィトーは、職人の助言に沿って月白の鋼板を定めた。
「折角の機会なのだから、時間をかけても良い物を作りたいしの」
「『帰る場所』を思い出せる物が作れたら素敵だな」
 セルレス鋼の冴えた色は、二人が所属する『氷狼騎士団』を思わせた。

 作業場の更に奥へ抜け、最奥の高殿に着く。扉を開けた瞬間、熱気が砂塵を巻き上げた。陽気な二拍子の数え歌に合わせ、滝の汗を流して炉を熱する職人達。ライアスは棟梁と真摯な鍛冶問答を繰り返し、炉を窺ったラオは息を呑む。熱された鋼は表層に夜闇の濃藍を満たし、深い波模様の下からは秘色の輝きが揺蕩う。更に底からは白磁に似た鮮やかな白が明滅し、宛ら星海の如く。
「綺麗……」
 吸い込まれる色に、ソフィアは吐息を零す。
 竜の力を得たあの日、胸が弾ける業火の衝動の中、自らが炎の化生となった気がした。破壊と再生、炎には二つの意味が宿ると言う。――わたしの魂は、そのどちらに近いのだろう?
 鋼の星海に見入れば、取り留めのない思索が浮かんだ。

●恋に焼け付き
「流石、手馴れてるね」
 ルオンに乞われて鋼板の縁処理を手解きする少女の手先を覘き、レインが口笛を吹く。特技を活かせるのは素敵だと讃える傍ら、鋼棒の凹みを器用に合わせ十字を象ると、今度は少女が彼の手先を覘いて口笛を吹いた。その肩口をシンシアが軽く突付く。
「このセルレス鋼は……アリーゼンさんが鍛えられたのですか……?」
 まァなと少女が頷けばシンシアは頬を染め、恋の勇気を分けて貰えそうです、と呟いた。恋、の一語に裏返った声を上げる鍛冶屋娘。
「好きな人の為に何かを作るのって、幸せな気持ちになりますよね」
 話題にセライアも加われば、少女の顔は一層茹で上がる。だが涼やかに笑んだライアスは、火傷と血豆だらけの手を伸べて少女の手を取り、その含羞を否定した。職人の腕と心は作品で見えて来るものだと、静かに諭す。
「素敵な手だと、貴女の大切な人も思っている筈だ……だから誇らしく、その人の手も掴んでやって欲しい」
 頼れる掌をした『先輩』の言葉は深く重い。少女は目を見開いた後に頬を和らげ、有難うございますと返礼した。
「愛する者に贈るモノに、最も重要なのって何だろうな」
 少女が解れた様子を見計らい、ラオが訊ねる。大事な義妹の誕生日に贈り物をしたいが、形を決めかねているそうだ。少女は暫し宙を仰ぎ、やっぱ心なんじゃないか? と向き直り、相手への真なる思いは、物の形や出来を越えて届くものだと信じたいと告げた。
「この気持ちを、ずっと大切にしていきたい。貴女もそう思いませんか?」
 セライアの二度目の問いに、少女ははにかんで頷いた。

「ぎゃー!」
 飴色の空気をシーグルの悲鳴が切り裂いた。熱した鋼の整形に挑んでみたが、慣れぬ作業に四苦八苦の末、案の定火傷をしたらしい。手の甲を振るい彼は悶える。
「熱!」
 釣られて轍を踏み、レヴァンも反射的に指を引いた。
「火傷は鍛冶師の勲章ッ!」
 呵呵と笑い彼らの肩を叩く工房のもののふ共。莫迦、と呆れ顔のアリーゼンが粗野な若弟子達の後ろ頭を引っ叩く。既知の少女の登場に気を引き締め、フェンネルは指先の鋼鈴に集中した。
「おぉいレミ!」
 庭先の窓に声を張り上げれば、薬草売りの少年が目を丸くして駆け寄る。
「どうしたのリーゼ?!」
 火傷薬を所望すると、すぐ行くから、と柔和な面を真剣な薬師の表情に変えたレミディオが走る。
 あちー! いてー!
 痛!
 ♪まりももりもり 貴方の元へ〜♪
「……?」
 さ、最後のは何だろう。騒動に混じる奇妙な鼻歌に思わず一瞬足が止まるが、少年は直に気を取り直し怪我人の元へ急ぐ。

「何作ってるかと思いきや……唯の丸じゃねーか」
 リンは鼻白むが、カルアは奇妙な鼻歌を口ずさんで『まりもるだー』なる物体を磨き続ける。鼻歌をBGMに、少年はアロエの葉肉を負傷者の患部に貼って包帯を巻き、念の為紫蘭の練薬も小瓶に分けて置く。助かった、と安堵する少女。二人は僅か見つめ合う。
 恋、かぁ。
 何だか擽ったい言葉だな、とスズは思う。自分には無縁と思っていたが、近頃は身近に感じる感情だ。リオン達に混じり談笑する女重騎士と、手元の鋼華を交互に見比べた。この気持ちも『そう』なんだろうかと、彼は思い悩む。
(「……っとと。今は作業に集中集中っと」)

「どんな品を作られているのですか?」
 ソフィアの問いに、柔らかな羅紗に頑なな鋼が透ける物が良いと答え、ユディトは同じ質問を返す。鋼板の空に紅玉の太陽を添えて『彼』に贈るつもりだと彼女が頬を染めれば、ご馳走様と笑顔で返す。そしてふと、幾度も顔を合わせながらまともな会話はこれが初だと気付き、二人は改めて挨拶を交わした。
「……そっか」
 懐かしい顔には会えたが作業は捗らず、セルレス鋼の剣を抱え座談に逃避していたリュナスが、久々に立ち上がる。実力も足らぬ小娘の己が武器を飾るのは、外見ばかり繕う様で気が引けていた。けれど知己の懊悩や笑顔に絆される内、無理に飾り気をなくそうとするのもやはり外見への固執なのだろうと、漸く得心がいった。
 私も少しだけ、素直に女の子らしい自分を許そう。
 自らの名に因み、彼女は鋼板で三日月を象り始める。

●あなたへの思いを
 壁の窪みにすっぽり嵌って落ち着いていたエリソンが目線を擡げると、青い紐を手にウィーが佇んでいた。
「両手杖にそっと花をそえる様な、控えめな物で良いんだ……」
 要望に応じて白く仄かに藍色を帯びた鋼珠を手渡せば、ファンバスも訪う。
「お薦めのってあるかな?」
 霊査士が余りに熱心に鋼珠を選定していた為、声をかけず待っていたらしい。鎚で薄く伸べた青鮮やかな鋼板で鋼珠を包み、『空の珠』の様にしたいと説明を受け、霊査士は青年が携えるまりもと同じ、四センチ程の鋼珠を手渡した。
「さて、最高の鋼珠を提供して貰いましょうか」
 壁の窪みを覗き込み、リッケは紋章を刻印した鋼板をひらつかせる。これに合う鋼珠に熊の顔を描いて欲しいと所望して彫針を手渡せば、霊査士は頑張って、熊と言われれば確かに熊に見える様なシンプルな顔を描き始める。

「ふう……」
 白狼を象る鋼板に彫針と鎚を宛がい、毛並を一筋描く。サタナエルとヴィトーはその作業を繰り返していた。細工用に緩冷した柔鋼とは言え、細部の彫刻は神経を要する。彼女が針を置き一息を吐くと、彼はファイトと声をかけ微笑む。
 剣の鍔と鞘に鋼棒の固定フックを合わせ、目測するガルスタ。この手の物は普段余り使用しないが、消耗品であれば気負いもない。シンプルな機構にすれば加工も容易だ。彼は熟考を重ねた意匠に頷き、後は鋼珠の丸亀でも添えようかと彫針を手に取る。
 涙型の鋼珠に薔薇のレリーフを刻めば、輝きは何処か神秘的だ。不思議、と呟いたリィリが隣の友を見れば、チグユーノの表情は真剣そのものだ。持つ方が大切な方を守れる様にと願いを込め、彼女は鋼で象った輪を整え続ける。
 三日月型に抜いた鋼板の縁に砥石を垂直に当てて削りながら、むむ……と唸るシンシア。想いを込めた物作りは難しいが、黒髪の青年を心に浮かべれば心に温もりも満ちた。
 自らの手で選った鋼珠の表面に浮かぶ、風紋に似た流線の美麗さにセライアは嘆息する。鋼と言うと剛健な印象があるが、セルレス鋼は先ず優雅さが際立つ。
「綺麗なものですね……」
 恋人に贈る『清風の鐘』に房飾りを添え、紐端を丹念に揃えた。

 愈々工程が完成に近付くと、仕上げの如何を方々から問われ職人達も再び慌しくなる。
「やっぱ本職には敵わねぇな」
 星型に抜いた鋼板は谷部分の磨きが存外困難だ。レヴァンが降参してアリーゼンを頼れば、やはり出来は美事。後は自分でな、と肩を叩く少女に礼を述べ、彼は剣の柄と星を合わせる。
「照れ臭いのはお互い様さ。けど、これならお互いを近くに感じるだろ?」
 互いの横顔を刻印した半月型の飾りを長剣に結わえ、二つをぴたりと重ねれば口付けを交わすディランとアスティアの姿に合わさる。
「こうして二人で時間を積み重ねれば、恋人ですよね」

 目の細かい鑢と布で、月の意匠を磨くルオン。丁寧に磨き上げれば、煌く星の両手杖にさぞ合う三日月になるだろう。
「見ろこの曲線美! ……ほれそこの犬!」
 鋼珠の勿忘草を束ねるリンの襟首をカルアが掴む。
「何だそりゃ? 糠床にでも入れるんか?」
「ヤバいよ俺……アクセサリー職人になれるかも……」
 聞いちゃいない。
「傑作じゃね!? 俺って天才じゃね!?」
「良いんじゃないかな……」
 リンも右から左に聞き流していた。

 濃紺の組み紐に月と稲妻を模した飾りが揺れている。シーグルはそれを天窓に翳し、青を帯びた鋼が光に煌く様に息を呑む。
「……うん、俺にしちゃ上出来だ!」
 この光がどんな苦境でも俺を希望へと導いてくれる様に――祈りを込め、彼は傷だらけの手指でその輝きを胸に抱いた。

●夕映えに抱く
 聊かの残暑を含む真昼を越え、涼風が吹き始める頃。
 もう準備も終わったかしら、とチグユーノが厨を覘けば、辞儀をしたキリオがソーサーの山を示し、暖めて欲しいと乞う。途中でレミディオが工房に抜けた分、多少準備が押しているらしい。チグユーノは渡りに船と、フリルエプロンをキリオとリィリに勧めるが。
「キリオ様、やっぱり可愛い……お人形さんみたい……」
 胸を高鳴らせる友は勧めにも反応薄く、白磁のカップと薔薇の茶葉を卓に置くや、不審者の如く小娘を舐め回す勢いで眺め始めた。
「……毎度個性的なご友人をお連れね」

 レインは一つ伸びをし、庭先の長卓に着く。
「ケーキ作って来たんだよ♪」
 手元の篭を開けて洋梨のタルトとメロンのケーキをお披露目すれば、歓声が上がる。
「いくぞエッちゃん!」
「ヴィー兄には負けぬぞえ!」
 林檎に似た甘い香のカモミールティーに人心地を付け、ヴィトーとサタナエルは作り上げた互いの白狼を卓に並べた。
 ラオのカップに、仄かな花色のラベンダーティーが注がれる。レモンを入れると桃色になって奇麗だと言う少年の薀蓄を聞き、義妹に話してやれば喜ぶかな、と彼は思い浮かべた。

 アリーゼンが庭に訪れると、既に席はレミディオの隣を残して全て埋まっていた。たじろぎつつ、少年の横に座る少女。
「その後如何お過ごし?」
 ケーキを切り終え、さり気に二人が目に入る場所を取っていたフェンネルがやんわりと『恋仲の進展』を訊ねた。純情な者達への意地悪にならない表現を選んだつもりだが、肩を並べる二人は横目で互いを伺ってへどもどするばかり。
「(焦っちゃ駄目、ですよ)」
 シンシアが少年の背後から囁く。既に桜桃の様な頬の少年は、何を想像してか激しくその言葉を否定した。少女は再び茹で上がり俯くばかり。
「……こちら迄幸せになるのだよ」
 二人の様子に擽ったい笑みを浮かべるルオン。こんな小さな幸せを守る為にこそ武器を手に取りたいのだと、彼女は瞳を伏せた。どうやら上手く行ってるみたいだな、とレヴァンは気取った笑みで少年の肘を小突く。そう言う貴方はどうなんですか、と、からかわれ放題で頬を膨らませた少年が訊ねた。思わぬ反撃に不意を突かれ、レヴァンはしどろもどろ苦しい言い訳を捏ねた末、真っ赤な顔で立ち上がる。
「……お、俺は、俺は唯武器飾り欲しかっただけで、お前らの行く末が気になってる訳じゃないんだからねッ!」
 ないんだからね――と夕日に遠ざかる残響を耳に、リュナスは両掌に包んだカップから漂うオレンジピールティーの爽香をまったりと味わった。
「ゆっくりで良いんじゃないかな」
「……お似合いだしね、誰から見ても」
 長卓の端で煎餅を齧り、カルアとリンが頷き合う。ゆくりない雪崩の如き恋よりも、地に絶えぬ恵み齎す春の雪解けの様な愛を育んで欲しい。歩む方向が一緒ならば、いつかその視線がふと交わる日も来るのだから。

「……綺麗だね」
 暮れの茜色に鋼珠の蒼を翳し、溜息を吐くリッケ。いつか歩み来た人生の道程が刻まれた掌を重ね合う少年と少女を見遣り、彼は眩い物を見るかの様に目を細めた。

 鋼の村に集いて 恋に焼け付き あなたへの思いを 夕映えに抱く――
 セルレスの夕べに恋の燈明は灯り、やがて訪れる夜闇を優しく包む。


マスター:神坂晶 紹介ページ
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わからない
参加者:25人
作成日:2007/09/11
得票数:恋愛2  ダーク1  ほのぼの18  コメディ2  えっち2 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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