マンモスファイヤー 〜はらいそ花郷〜



<オープニング>


 ランドアースの遥か南。常夏の大陸を照らす太陽は、暦に衰える事を知らない。

 ワイルドファイアを闊歩し七大怪獣達と戦った日々の中、銀花小花・リン(a50852)は、とある絶景の名所に纏わる噂を耳に入れていた。
 曰く、その花園は名を『神秘の花園』と言い、舞い散る花弁が金と銀との光を発し、降り注ぐ陽光を受けて凛と輝く夢の様な情景だと――。

『いつも世話になっている仲間達にも、その情景を見せたい』

 矢も盾も堪らずランドアースに戻ったリンだが、そこはちょっと詰めの甘いアホの子さんの事。原地の民でも知る者が少ない地の為、詳しい情報迄は聞き出せず終いだったのだ。
 解った事はと言えば、以下の三点。
 一つ。『神秘の花園』はとある高原地帯の奥地に秘められ、道中には急流湛える雄大な滝川が存在する。
 二つ。滝川の足場は二メートル程の覚束ない岩場が点在するばかりで、急流に落ちる可能性もある。だが、ずぶ濡れになってでもその難所を攻略しない限り、『神秘の花園』には辿り着けないらしい。
 三つ。近頃その滝川には巨大な蛙怪獣が現れ、道行く者達の行く手を阻んでいるそうだ。目的地を探す為には、これと戦う必用がある。
「……と言う事らしいね」
 原地の民から聞いたそれらの情報を元に、リンと彼女の仲間達は歩を進める。

 滝川自体も難所だが、そこに陣取る蛙怪獣も難敵だ。聞くに敵は、体長十メートルにも達そうかという黄の巨体で、水中から突如現れると言う。攻撃は、通常攻撃に加えて特殊攻撃が二種類。
 一つは、長い舌を駆使して冒険者に締め上げダメージを与えた末、岩場に叩き付ける様にポイ捨てして追撃を与えるという、慈悲のない攻撃だ。
 そしてもう一つは、口から勢い良く水を放出し、覚束ない足場で戦う者達を水圧で吹き飛ばして急流に落とすという、容赦のない攻撃だ。
 後者の攻撃『水突』を防ぐ事も躱す事も出来なかった者は、ダメージと共に足場から急流の中まで盛大に吹き飛ばされ、流されるまま滝壷に落ちてしまう。戦闘の場に復帰するには幾らか時間もかかるだろう。
 但し『水突』は、指名した仲間を盾にする事で回避出来る可能性もある。回避出来るか否かは運次第だが、仲間を見渡してみて丈夫そうな人がいたら、ものの試しに盾となって貰うのも良いかも知れない。

 ――急流で きっと芽生える 愛と友情(字余り)

 喧嘩する程仲が良い、なんて言葉もあるそうだ。
 多分無理、なんて言わないで、色々試してみると良いんじゃないかな?

マスターからのコメントを見る

参加者
常時自動誤字スキルは集う・ラキア(a12872)
野良ドリアッド・カロア(a27766)
銀蟾・カルア(a28603)
蒼き天威・ハーゼ(a30543)
しっぽふわふわ・イツキ(a33018)
薬草遣いの・リーナ(a38286)
小さな海・ユユ(a39253)
ノソ・リン(a50852)


<リプレイ>

●ワイルド鼻眼鏡ファイア
 朝夕の涼風際立つランドアースを発ち、草熱れと水の薫る風の中南の大地を――
 八人の鼻眼鏡達が闊歩する。

「ワイルドファイアIN鼻眼鏡戦隊!」
 大地に生きる者の守護者・リーナ(a38286)が拳を掲げる。逆だ。それでは『脳内ワイルドファイア』になってしまう。だが旅路の高揚を前に、そんな瑣事に異議を唱える由はない。
「ワイルドファイアでピクニックだなんて超ウレシー!」
 天藍石の牙狩人・ユユ(a39253)が笑顔でくるくると回ると、皆で出掛けるのは久々だと、野良ドリアッド・カロア(a27766)が頷く。しっぽごわごわ・イツキ(a33018)はすかさず真似し、重傷の苦悶入り混じる笑顔でぐろぐろと回った。
「ピクニックだなんて超嬉ごぶぇ」
 棘付きの靴で蹴られた。ユユの反抗期を懸念しつつ、故郷の大地に倒れるイツキ。
「おにぎりにサンドイッチに肉に……」
 蒼き天威・ハーゼ(a30543)は傍らでのんびり手弁当を確認する。……『肉』?

 山間の獣道を抜け蔦を掻き分ければ、世界が広がる。目測も付かぬ程広い大河は滔々、水音は仄燻る水煙を伴う。銀花小花・リン(a50852)は仲間達に足元の注意を促した。カロアは銀布を成す激流を前に、友はこんな地で働いていたのかと嘆息する。寒月・カルア(a28603)は無言で頤を巡らせた。常時自動誤字スキルは集う・ラキア(a12872)は叢に忍び、荷物を据えて水着に着替える。
 水突を警戒し、散開接近。擬態・奇襲に備え、水中に注意を。
 リンの指示に従い大河に点在する岩場を進む一同。鼻眼鏡は仕舞った。

「!」
 刹那ゆらり揺らめいた水面に、リン・イツキ・ラキアの三人が逸早く反応する。ごぼごぼと水面が隆起する中、三人は激流に点在する岩の三方に散る。イツキは中央に着地し、異論を挟む隙も与えず自らの鎧を強化して水流を捌き易い流線型に変えた。その背後にカロアとハーゼが跳び乗る。カルアは左岩に着地する。眼前のラキアは落下対策にと、己の手に粘り蜘蛛糸を巻いていた。リーナとユユは揃いの浮輪を着け、左右に跳ぶ。同時に巨大な……ユユ約8人分程の蛙怪獣が、ぬもりと顕現した。
 カルアはひらり舞う羽の身熟しで村正を抜き、カロアは白銀の杖を構える。
「来ないで下さいよッ」
 リーナは笑顔で『蛙の丸焼き宣言』をし、青煙伴う業火を繰る。
「掛かって来やがれ蛙野郎!」
 イツキは威風堂々叫び、小声で『但し半分の力で』と付け足してリンの革鎧を強化した。黄の巨躯は魔炎に怯まず、顎を開いて水を吸い込み始める。
「猫ストガード!」
「イツキ宜しくっ!」
 水飛沫と轟音の中、カロアとハーゼは迷わずイツキを盾にした。
「己ら何で拙者の後ろに隠れとるんじゃーい!」
 中央で始まる掴み合いを余所に、ユユは白銀の弓に番えた雷光の矢、ラキアは手に張り付いた狐模様のヨーヨーから飛燕連撃を放ち、敵を三度穿ち切り裂く。
「キャー!」
 遂に極悪な水槍が中央岩へと放たれ、褌を引き裂く如き悲鳴と共に早速イツキが墜ちた。併し水中で彼は勝ち誇る笑みを浮かべている。
「ふはばは! こぼんな事も有ろうかごぼ、鎧を流線型に」
 故に水の抵抗を受ける事なく、彼は高速で瀑布へと落下する。
「達者でな〜」
「強く生きれ」
 しまったぁ〜! と水音の彼方に遠ざかる悲鳴に向け、淡々と手を振るカルア、手も振らないカロア。
「あ、綺麗な蝶ちょ!」
 ユユは見てもいなかった。

 現在の戦況!
 右:リン・ユユ
 中央:ハーゼ・カロア
 左:ラキア・カルア・リーナ
 落下:イツキ

●You are 鮭
 ハーゼは鋼糸を握る指先に、どす黒い鼻眼鏡が描かれた不吉なカードを生じさせて投じる。紫煙を纏い黄の表皮に突き立つカード。傷口にじわりと黒い凶兆が広がった。とんだカオスだと激流を一瞥、リンは野獣を象る気を両掌の蓮斧から放つ。表情を変えぬカルアは薔薇の剣戟を三閃。気砲と痛烈な切先に、巨体の肩口が大きく爆ぜ裂ける。併し早くも凶兆から逃れ、敵は再び中央へと喉奥の洞を見せた。
「祖父よ、可愛い孫を守ってくれ!」
「俺のターン! 弟を生贄に鉄壁召喚!!」
 背後に隠れようとするハーゼに抗い、カロアは隣岩から義弟の襟首を掴んで手繰り寄せた。カルアが鼻で笑う。
 『100%俺を狙って来ると思っていた。コイツはそう言う女だ。肉と俺が落ちていたら、まず俺の息の根を止めて横取りを防ぐ様な女だ』
 神速で思考を成し、瞬時後ろを取り返す。テメェが落ちろ。足を踏ん付けてやった。難しい事よく解んねぇ、とその足を踏み返すカロア。
「やれー! 今だゲロ助!」
 その日初めてカルアが発した言葉は『ゲロ助』だった。超高速で互いの足を踏み合う義姉弟。
 俺がこいつを抑えてる間に、この女を倒すんだ! なんて叫びは聞こえぬ振り、リーナとラキアは業火と気刃を連ねる。
「どうした!? 俺に構わずやれー!!」
 どどどど どどど ど
「ドーリー!?」
「ゴギャー!」
 やられました。罵り合う間に水突は放たれ、泡立つ激流に呑まれる二人。すかさずユユは救いの蜘蛛糸をカロアに放つ。
 ドボーン
「きゃっほーい!」
 その侭激流に牽かれ、カロア漁に失敗したユユも水没する。
 呪うぞゴラー!
 お前に絡むといつもこんなんだよ!
 きゅわー!
 凶撃と気砲が飛び交う中、三つの悲鳴が流れ去った。

 左腕を失って尚巨蛙は水突の挙動を見せる。右岩と中央が標的だ。リンにとって躊躇なく盾に出来るのはカルアだが、彼は未だ滝壷だ。仕方がないと眉を顰め、背後の岩に身を翻す。ハーゼとラキアの瞳が交わった。その瞬間左岩へ飛び移るハーゼ。
「あぶなーい!」
 ハーゼしゃんを守る為なの。と言う建前の元、ラキアは彼を蛙に向かって突き飛ばす。急な事だから手元が狂ったの。と言う名目の元に。併しハーゼは挫けずラキアを掴み寄せる。揉み合う二人。水の巨槍が突き抜ける直前、『ラキア盾』は完成した。手に張り付けた蜘蛛糸で岩にしがみ付くが、奔流は容赦なく彼の掌を引き剥がす。
「呪ぼごぼ」
 波間に狐帽が見え隠れし、やがて下流へ消失した。
「皆の事は忘れない☆」
 瞳を潤ませるハーゼ。併し残るは三人ばかり。流石にこれ以上は拙いと、リーナは銀狼を嗾ける。
「押さえて下さいっ」
 体制を整えたハーゼの蜘蛛糸も連なり、黄の巨体が動きを止めた。振り上げた侭の水掻きをリンの気砲が撃ち抜く。斧を杖代わりに帰還したイツキが、ぜぇぜぇと岩場に戻り来る。
「サクサクっと治っちゃって下さいねっ」
 勝利の杖先に癒光を灯すリーナ。巨敵は凶兆と拘束から脱し、青紫の長舌でぞろりとリンを捉え、岩に叩き付け続ける。
「離せっ!」
 鼻眼鏡カードが敵の鼻面に刺さる。……鼻眼鏡が鼻に! 意味はないけれど。怯んだ敵はリンを解放し、不快そうに頬を膨らます。イツキの傷は既にほぼ癒えたが、重傷なれば慎重に。彼は己の歌で掠り傷とリンの打傷を癒した。リンは漸くイツキの肩に指先を触れ、守りの誓いを立てる。カルアとカロアが罵り合いながら戻り、ユユも岩場に帰還する。

 現在の戦況!
 右:リン・ユユ
 中央:イツキ・ハーゼ・カロア
 左:カルア・リーナ
 鮭:ラキア

●動悸! 身代りだらけの水泳大会
「ふはははは! 命を救うぞお前ら!」
 磊落な笑い声を上げ、虹の癒しを灯すカロア。合わせてリーナも白光を満たせば全ての傷が癒える。カルアが再び羽の軽やかさを得ると、巨敵は中央と左岩へ向けて顎を開き、豪々と水を吸い込み始めた。
「そっち狙ってるよ!」
「私は誰かを盾になんてしないので〜す」
 雷矢を放つユユの声に応じ、無垢な笑顔で『か弱く優しい女の子』を自称するリーナ。一寸ご免よと、カルアは姉の背後へ忍ぶ為中央へ跳び移る。
「孫ガード!」
 カロアはハーゼを引っ張り出し、くるりと二人の位置が入れ替わる。カルアの眼前に突き出されるハーゼの顔面。その唇と唇が
「うぎゃぁぁーーっ!!」
「い、いやお前が……」
 触れ合わない。お前が急に飛び出すから……と渋面で弁明するカルア。断末魔の如き悲鳴を上げ、ハーゼは手近にあったごわごわとした物体を振り回し抗う。
「拙者の為に有難う!」
 ハーゼに尾を掴まれ回転しながら、イツキは自らが庇われたと誤解して笑顔を見せるが、
 すぽーぬ。手がすっぽ抜け、宙に放り出された。
 どぼぼぼぼぼ
 左岩に孤立し、自らを庇い四人の仲間達が揉み合う(様に見える)光景に頬を染めるリーナ、すっぽ抜けに硬まるハーゼ、中空のイツキ。三人が荒波に呑まれ戦場からご退場した。
「護衛士の底力、とくとごぼあぼらぼ」
 ふわりと着水しようと試み、リーナが開いた大傘が激流の中で裏返る。
「覚えてろぉぉ!!」
「アタイの愛を受け取ってー!」
 遠ざかる絶叫は瀑布の向こうに掻き消えた。
「……逃げる方が早いのに、どうして皆仲間の方に走るんだろう……」
「骨は拾ってやるからな」
 ユユがぼそりと呟き、カルアは再度手を振る。リンが放つ気砲が巨蛙の右脚を吹き飛ばした。俄か激流は青い体液に染まるが、水勢が直に漱ぐ。雷に似た咆哮の中、狐尾を振るいラキアが帰還した。

 薔薇の剣戟を四閃、頭上から注ぐ脂混じりの体液を避け、カルアは岩から岩へ跳び移る。
 しまった! カロアと同じ岩に乗ってしまった。凶事は重なるもので、敵の顎はやはり右岩と中央を狙い澄ます。愛しい義妹を守る為一筋の迷いもなく、カロアが傍らに着地したカルアを右岩に放り投げた。直後、獰々と水嵐の槍が二つの岩場を貫く。
「ギャース!」
 再びの遠出となる弟。危ない所でしたねと姉はユユに微笑むが、躱し損ねたリンが落河する様を見ると血相を変える。本能の命ずる侭反射的に命綱を放った。当然――
「グリモガボゲボボ」
「カロアちゃーん!」
 流され往く三者を追う間もなく、ラキアとユユは二人きり、迫る敵を迎え撃つ。

 ユユが光矢を放った刹那、ぬろりと紫舌に囚われた。癒し手と隔絶された状況では攻撃こそ最善。傷は痛むが、ラキアは蜘蛛糸の失せた腕で四つの気刃を放ち、満身創痍の巨躯を追い込み続ける。ばいん、ばいんと三度岩に叩き付けられるユユ。漸く開放されて咳込むと、リーナ・イツキ・ハーゼの三者が息を切らし戻り来た。リーナは即座に癒しの光を照らす。ユユは尚全治に至らぬが、イツキは無視を決め込もうとする。
 殴られた。
 彼は頬を押さえ、『反抗期に負けぬ拙者』なる熱い歌で傷を癒す。巨敵は力を振り絞り、喘鳴と共に激流を腹に満たし始める。息を合わせ、盾(イツキ)を構えるハーゼとラキア。
「重傷? そんなの関係ねぇ!」
「ギャーース!!」
 最後の濁流が襲い掛かる。がぼごべと何事かを叫ぶ姿が三度水没した。失った腕を岩場に衝こうとし、眼前で体制を崩した巨蛙をハーゼの蜘蛛糸が捕える。ラキアは満ち溢れる生命力を鋭利な刃に変えた。
「今なのねーっ」
 極限迄研ぎ澄まされた一撃が疾風となり、拘束から逃れようともがく巨大な黄の頸が――
 ざばり跳ね上がる狐灯に切断され、青い鮮血を上げて岸に落ちた。

 一方滝壺に落下したイツキは、水底で朦朧と意識を取り戻す。
「ぼごべげおぼ」
 当然息は出来ない。空気を求め前衛舞踊の如き動作で地上を目指す。
(「――?」)
 遥か頭上の水面から差す陽光の中、その瞳が何かを見出して見開かれた。

●はらいそ花郷
 巨骸を岸に上げ負傷者の治療を終えてもイツキは戻らず、七人は詮無く崖下へ降り向かった。
「生きてますか〜」
 滝壺を漂うイツキに、リーナが手を振る。
「花園でござる……」
 カロアは縄を投げ、譫言を言うイツキを岸辺に引き上げた。地上に戻り尚彼は『花園を見た』と繰り返すが、リーナは野原で摘んだカモミールを手渡して彼の身を案じる。
「これ、お茶にして飲んで落ち着いて下さい……」
 ハーゼも適当に頷いて大きな弁当箱を開く。
「色々あった、うん。でもまぁ……弁当でも食って落ち着け」
 中身は大量の白米だけだった。マジか?! と七人は白目で青褪める。
 戦争が起きる前にもう一つの弁当箱を開いた。ローストビーフサンドに唐揚げ・竜田揚げ・照焼き・叉焼――肉だらけだが取り合えず七人は胸を撫で下ろす。ラキアは一人折畳み椅子で紅茶を嗜んでいたが、弁当箱を包囲する仲間達を見、慌てて円座に加わる。この面子で優雅に構えていては、最悪食い逸れると気付いたらしい。
「肉ーー!!」
 誰かの叫びがゴングとなり、バーゲンセールに群がる奥方宜しく、肉・争奪戦が始まった。

「ドリーッ!」
 食事を終えて尚『神秘の花園を滝壺の底で見た』と言い張るイツキに肖り、カロアが渾身の力で弟を滝壺深く投げ込んだ。一寸確かめて来て、と言うボディランゲージだ。
「……本当でござるよ」
 イツキは穏やかに告げ、自らも再び水中に身を投じる。二人で担ぐ気かと疑念もあるが、首を傾げたリーナが続き、ハーゼとラキアも頷き合って飛び込むと、
「ま、待つドリー!」
 一人残されるのは寂しいからと、彼女も仲間達を追う。大きなプリンを漸く食べ終えたユユが、リンの手を引いて立ち上がる。

 水底より空を仰ぐ。
 差し渡る陽光はなべて水面に広がり、揺蕩うて輝き瞬いて弾け、幾千煌く鏡の欠片の如く。たっぷりと肺に満たした空気を少しづつ零せばこぽりこぽりと沫を成す。空へ向かい消え行く様は、譬えて金銀綾成す星屑細工。リーナは瞳を細めた。
(「綺麗過ぎて眩しいです……」)

 水の浮揚感に身を委ね光の粒子と戯れれば、何処から流れ落ちて来たか――
 広く深く散り集いては離れ、滝壺を鮮烈に彩って舞う、無数の花弁が双眸に映った。

 吐息の光粒と陽射しを纏い、花々は宛ら翡翠、蒼玉、柘榴石――
 これが『花畑』かと、得心がいったハーゼは嘆息に空気を溢しかけ、慌てて口を塞ぐ。
(「……頑張って来た甲斐があったな、うん)」
 綺麗なお花が一杯、とラキアは漂う鳳仙花の一束に手を伸べる。少しでも長くこの場にと、イツキは息を潜めた。『外に出なさい』と言う祖父の言葉を反芻し、ユユはカロアの手を取る。仲間達と共にいられる幸せを二つ心に繋ぎ、小菜葱の花々が合い寄り結ぶ、瑠璃紺の宝珠を目指して泳いだ。
 世界の美しさも尊さも、自分なりに解していたが、それでも。
 ――時として出会う奇跡の御業に、畏敬と感謝を。
 指先に絡んだ花盗人萩を解き放ち、カルアは唇の端で静かな笑みを象った。

 ざばりと水上に顔を上げ深く息を吸えば、見上げた高天の青がちかちかと眩い。
 有難う、と礼を連ねる仲間達の笑顔。岸辺に腰掛けたリンは、笑みを浮かべ首を横に振る。礼を言うのは自分の方だと、その表情で告げた。
「皆が待っていてくれたから私は戦えた。だからこの空の色を……一度で良いから皆と一緒に見たかったんだ」

 薄靄もいつか晴れ、棚引く雲も疎ら。青藍に広く冴え渡るワイルドファイアの高い空。
 彼方、彼方故郷までも繋ぐ、愛しい常夏の紺碧を十六の瞳は焼き付けた。


マスター:神坂晶 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:8人
作成日:2007/09/15
得票数:ほのぼの9  コメディ10 
冒険結果:成功!
重傷者:しっぽふわふわ・イツキ(a33018) 
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。