宝地図屋グレッグ〜ある日、ヤギと君と俺と〜



<オープニング>


 とある場所に、土に埋もれてしまった図書館がある。
 今は入り口のみを残した図書館には、特に歴史的価値のある本は残されては居ない。
 だが、そこにあるものにはそれ自体に歴史がある。
 例えば、昔の冒険者の残した歌集。
 例えば、とある誰かの日記。
 例えば、誇張に誇張を重ねた冒険譚。
「まあ、趣味なんだがな……」
 暁天の修羅・ユウヤ(a65340)はそう言って、手にした地図を見る。
 目の前には、確かにそれらしき入り口。
 まずは瓦礫を除けなければ入れそうにはないが……中は意外に頑丈そうだ。ちょっとの衝撃くらいでは崩れないだろう。
「女と喧嘩と友を大事にしていた冒険者の歌集、か……」
 それが本当にここにあるのかどうかは分からない。
 けれど、探す価値はある。
 ユウヤは意を決すると、仲間達と共に図書館へ入るべく一歩を踏み出すのだった。

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参加者
黄昏の翼・リディア(a18105)
護る盾・ロディウム(a35987)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
紫燕奏魅・レイ(a61133)
生命の謳い手・ラテル(a61596)
鋼鉄の闘士・シン(a63104)
暁天の修羅・ユウヤ(a65340)
ヒトノソリンの翔剣士・セリア(a68243)


<リプレイ>

 その図書館は、いつのものだったのだろうか。
 如何なる理由で土に埋まったのか。
「……何故こんなになる前に整理しようとか中の本だけ移しておこうとか思わなかったんでしょう……」
 闇の中の一筋の光を求め彷徨う・レイ(a61133)の疑問の答えは、恐らく単純だ。
 恐らくはこの場を管理できる人材が、何らかの理由で管理が不可能になった。
 そして、何らかの理由でこの場所を知る者も久しく居なかった。
 結果として、こうなった……といってしまえば簡単ではあるが、仮説と仮定、推測を積み重ねただけの推論に過ぎない。
 だが、1つだけ確かな事はある。ここは図書館ではなく、遺跡だ。モンスターなどが住み着いているのがその証と言えよう。
「女と喧嘩と友を愛し、風流を知り、なおかつ天下無双の戦人……嫉妬と羨望と憧れを同時に感じるな。この戦人の縁の品、是非とも手に入れたい」
 入り口を封鎖している瓦礫の前に立つと、暁天の修羅・ユウヤ(a65340)は、拳に気合を込める。ついでに黄昏の翼・リディア(a18105)を軽く睨む。
 歌集は似合わないとか、レシピとかえっちな本とかの方が似合うとか考えていたのを見抜かれたらしい。
「お前やプラチナを連れてそんなもん探しに来ない。探すときは男だけで行く」
 それを聞いて生命の謳い手・ラテル(a61596)が確かに、と頷く。
 女性を連れてえっちな本を探しに来る男は、普通ならば居ない。
 まあ、えっちな本の談義をしにきたわけではないのだが。
 気合を入れなおしたユウヤが爆砕拳で瓦礫を思い切り粉砕すると、塞がれていた入り口に空気が流れ込んでいくのを感じ取る。
「こんなもんか」
「だね。いい歌と物語があるといいな〜♪」
 入り口付近に何も居ないのを確かめると、ラテルはそう頷き返す。
 図書館の中は当然ながら、暗く湿った気配に満ちている。明かりの類が無ければ、探索も進まないだろう。
「どれ……俺に任せろ」
 熱しやすく冷めやすい鋼の魂・シン(a63104)が火を灯したカンテラを持って図書館の中に入ると、少し崩れかけた図書館の入り口付近の光景が浮かび上がる。
 どうやら中々頑丈に作られているらしく、探索には問題なさそうだ。
 同様にカンテラの明かりを灯して入ってきたユウヤと一緒に入り口付近のあちこちを照らすが、モンスターの形跡は見当たらない。
「……此処は大丈夫だ」
 その言葉を受けて燭台に火を灯した光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)を先頭に、仲間達は図書館に足を踏み入れる。
 石造りの床は歩く度に音を反響させ、小さく響いていく。
「土に埋もれた図書館……どの様な本があるか楽しみじゃな」
「そうだなぁ〜ん。なんだか冒険してるって気がするなぁ〜ん」
 プラチナの横で辺りを警戒していたヒトノソリンの翔剣士・セリア(a68243)が、そんな答えを返す。
 確かに、冒険の基本の1つはダンジョンアタック。この土に埋もれた図書館は、ある種のダンジョンとも言えるだろう。
 今回が初冒険のセリアにとってこれは、まさに「冒険らしい冒険」であるに違いあるまい。
 緊張感を隠して警戒に当たりつつも、「この先に何があるのか」という好奇心がもたらす高揚は緊張感にも似て、様々なものが混ざった不思議な感覚をセリアは味わっていた。
「ふむ、昔の図書館ですか。色々な本が置いてありますが……ちょっと迷惑な方も居ますね。さっさと退散してもらいましょうか」
 近くにあった本棚を軽く見渡しつつ、護る盾・ロディウム(a35987)は呟く。
 ランタンの光に映し出される背表紙の数々は魅力的に見え、モンスターとの戦闘でこれを台無しにしてしまうのは凄く勿体の無い事のように思えてくる。
 そう考えると、さっさと退散して貰うのが理想というものだ。
「……司書さんだったのかそれともただの本の虫だったのか……、それとも本泥棒だったのか。最後のと思いたいですけどね」
「どうなんでしょうね……」
 ロディウムの言葉にそう返しつつ、レイは本棚を眺める。
「もっと本が散らばっているかと思いましたけどね……」
 目に見える範囲では散らばっている本はあまり無く。このような状況下でさえ無ければ、普通の図書館とあまり変わりは無いように見えた。
「あれ、何してるの?」
 ラテルの問いかけに振り向くリディア。どうやら何かを探しているようだ。
「いえ、案内板のようなものはないかなー、と。探索が楽になるかと思いまして」
 これだけ探して見つからないということは無いのかもしれないが、見つかれば探索が楽になる。
 ラテル達も手伝って入り口付近を捜すが、それらしきものは見当たらなかった。
 ひょっとしたら、分類分け出来るほど整理されてはいないのかもしれない。
「仕方ない。先に進むか」
 そう言ってユウヤが本棚のほうに向き直ると、何かが本棚の上のほうで光るのが見える。
「なんだありゃ……プレートか?」
 シンがカンテラの明かりを掲げてプレートを見る。何かが書いてあるが、読む事が出来ない。
「おい、誰かこれ読めねえか?」
 言われてリディアとラテルが進み出て、ぼそぼそと話し合いながらプレートの解読を始める。
「たぶん……だけど」
「冒険譚って書いてあると思います」
 2人がやがて出した結論に、ユウヤは満足そうに頷いた。
 こういったものがあるなら、探索も大分楽になるだろう。まあ、多少のマッピングは必要になるだろうが。
「冒険譚、かー……誇張が過ぎた冒険譚も、演出によっては感動的な物語にもなりうるよね」
 ラテルは本を1冊抜き取ってペラペラと捲っていくが、気に入ったらしくその本を袋にしまう。
「此処には俺の本はないみたいだな……」
 ユウヤは本棚を一通り見ると、次の本棚へと移動する。此処にもプレートがついてはいるが、何と書いてあるかユウヤには読めない。
「なんだこりゃ……趣味の本ってところか?」
 シンが適当な本を1冊抜いてペラペラ捲っていると、セリアも本棚の前にやってきて本を捲り始める。
「釣りの本はないのかなぁ〜ん」
 セリア適当に本を抜き取ると、それはキャンプの本だったらしくセリアは残念そうに本を棚にしまう。
 そして、その本をセリアが棚に戻すのと同時。何処かでカタ、という音が聞こえた。
「……今、何か音が聞こえませんでしたか……?」
 レイがナギナタを構え、周囲を注意深く見回す。陣形は崩してはいない。警戒心も最大に。
「モンスター……でしょうか?」
「まだ分からんのじゃ」
 ロディウムはダイダルブレイカーを引き抜き、アセリアを構えたプラチナの鎧聖降臨の力を身に感じる。
 カタ、と音が鳴る。今度は、先程よりもしっかりと。
「スーパースポットライト、使うなぁ〜ん……?」
「いえ……まだ、姿が見えてません。今は……まだ」
 図書館に潜むモンスターは、何処からか此方を伺っているのか、それとも気づいていないのか。
 ランタンの光の外の暗闇は、透かして見る事も出来ない。
 ガタ、と音が鳴る。もはやモンスターが居る事は確実だ。
 シンは撃槌をしっかりと構える。何処からモンスターが来てもいいように、慎重に気を張って。
 ゴトン、と音が鳴る。暗闇の向こうから、山羊の頭にも似た異形の頭部が現れた。
「今なぁ〜ん!」
 セリアのスーパースポットライトが放たれ、その光を放ったセリアに山羊の視線がギョロリと向く。
「まずはこれでもどうぞ!」
 山羊の注意がそれた隙を逃さず怒涛の瞬発力でロディウムが間合いを詰め、達人の一撃を放つ。
 深く鋭く斬り込んだ一撃はモンスターを抉り、その動きを止めると同時に、レイのソニックウェーブが放たれる。
「よし、チャンス到来!」
 ラテルが素早くフールダンスを踊ると、山羊も……とはいっても、身体的に無理な動きもあるようだが。ともかく、一緒に踊りだす。
「掻っ切れ! スクラッチ!」
「その身に刻め!」
 リディアのヴォイドスクラッチのタイミングに合わせ、ユウヤの疾風斬鉄脚が放たれる。
 眩い光の弧を描く一撃はモンスターに明らかな致命傷を負わせ、モンスターは苦悶の声をあげる。
「てめえ! この! いい加減止まりやがれ!」
 シンの撃槌が振り下ろされ、モンスターは膝から崩れ落ちるようにして倒れこみ……そのまま動かなくなる。
「本棚には被害はなかったみたいだな」
「ええ、そうみたいですね」
 ユウヤにレイはそう答え、ナギナタを床につける。これで探索も再開できるというものだ。
 適当な本を引き抜いて眺め始めると、仲間達も思い思いの場所へと散っていく。
「ホウェイムの鳥……? 詩集か。どれどれ……」
 シンが本を捲り始めると、詩集の棚を探して歩いていたユウヤもやってきて本棚を調べ始める。
「風流記……これか?」
 パラパラと捲っていくユウヤの顔に太い笑みが浮かび、セリアやレイが集まってくる。
「それが件の詩集ですか?」
「ちょっと中身を見せてもらいたいなあ」
 そうして始まった3人の読書会を他所に、シンは先程の詩集を閉じる。
「なかなか気に入った。俺の記憶とこの鎧に刻み込ませて貰おう」
 そう言ってシールドアーマーの肩部分を撫ぜる。
「……ふむ、これは違うかのぅ?」
 料理関連の棚を探していたプラチナが何冊めかの本を棚に仕舞い、もう1冊の本を取り出す。
 どうにも、料理に関する苦悩を記した本ばかりにあたっているらしい。
「どうですか?」
「うーん……これなんか良いと思ってるんですけど……」
 1冊の本を抱えたロディウムはリディアの探索を手伝い始め、日の光の差し込まない図書館での探索は、次の日まで続いたという。
 この図書館は、これからも訪れる人間は居ないか……あるいは、極端に少ないのだろう。
 管理する者もなく、歴史に沈んでいくだけの場所。それでも、図書館は此処に在り続けるのだろう。
 深く暗いこの場所で、自らを求める者を待ちながら……ただ、静かに。


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暁天の修羅・ユウヤ(a65340)  2009年08月31日 20時  通報
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