<リプレイ>
●一本道で…… 「しょうがねぇなアイツら……道あんのに敢えて林ん中入ってくのなんてイクセルくらいだぜ……。ま、何とかすんだろ、先に集落行……」 エンジェルの少年、アスコットを含む仲間たちを見回したエターナルブルー・ジィル(a39272)は、言いかけた言葉まで止まるほど、一瞬、固まってしまった。 「あー! キラがいねぇ! 大変だ! 探すぞやろーども!!」 その仲間たちに、恋人が居ないことに気付き、ジィルは慌てて、林の中へと入っていこうとする。 「そんなに急ぐな。こちらもはぐれない程度に捜索、にしないと」 ジィルを呼び止めながら、家出してきたウェイター・ネス(a28091)が声をかける。 「大変なことだろ! 早く探さねぇと!」 「もうっ、仕方ないなぁんね! 探しに行っくなぁ〜ん♪」 このお出かけを楽しみにしていた、真白の歌い手・クィリム(a62068)はそれは楽しそうに、ジィルの後に続く。 「でも皆さんのことですからきっと楽しくやってるですよ。迷子さん、拾いに行くのですー」 鈴花雪・ソア(a32648)はそう言って、アスコットと手を繋いで、後に続いた。 林に入るなり、ネスは牙狩人ならではのその鋭い洞察力を力に変えて、身に纏った。そして、林の何処かにいる仲間たちにその声が届かないものかと心の声を伝え始める。 『迷子組へ連絡。双方会えない場合は集落にて合流を。捜索組、途中の林にて妹とはぐれたエンジェルと遭遇。そちらで妹を見つけたら一緒に連れて来るべし』 声を伝えてから、周りを見渡してみるけれど、何かが近付いてくる気配はない。近くには居ないのだろうと残念に思いながら、早速、捜索を開始した。 「イクセルさーん、カノルさーん」 「キラさーん、ラセンさーん」 ソアとクィリムは大きな声で名前を呼ぶ。 「エナ……」 それに続くようにアスコットも名前を呼ぶけれど、はぐれてしまった心配と不安な思いの方がまだ強いようで、その声は小さい。 「アスコットくん。エナちゃんの髪型とか、服の色とか聞いていいなぁん?」 「うん。えっと……髪は、高いところで二つに分けて括ってて、服は……白だったかな……」 こくりと頷いてから、アスコットはクィリムの質問に答えた。 「ありがとなぁん♪ これで、あとは動物さんが居たらいいんだけどなぁん」 そう言いながら、クィリムは一本道がある方向を見失わないよう気をつけながら、辺りをきょろきょろと見回して、ウサギやリスなど小動物が居ないかどうか探す。 「これも何かの縁だ。妹もきっと見付かる、大丈夫だ」 「う、うん……」 まだ心配そうな顔をしているアスコットに、ネスが声をかける。 「あ。ネスさんからはおやつとお茶が出てくるのですよ? ほら一緒に見てみましょう」 傍に居たソアがそう言って、ネスのことを見上げた。つられるようにアスコットも彼を見上げる。 「なぁん? ソアさん何でネスさん見てるなぁん? おやつなぁん? ネスさんおやつ出すなぁん?」 さらにクィリムも加わってきて、目を輝かせながら見上げてきた。 「少しでも気を紛らわす意味での菓子だっんだが……」 口の端に苦笑を浮かべながらもネスは集まる年少組を見て、小さな包み菓子を取り出した。 その後、ソアやクィリムが出逢った小動物に、アスコットの妹や迷子になった仲間たちの特徴を伝えて、見かけなかったか訊ねたものの有力な情報は得られなかった。 「ぜーってぇキラあっちに居る」 不意に、ジィルがそんなことを言って林の奥を指差して進み始めた。 「……ジィル、お前は適当に進んでいる訳じゃないよな……?」 理由はあるのかと訊ねるネスに、ジィルは「何となく」だと答えるけれど、一行は彼を信じて、林の奥へと足を踏み入れた。
●林の中は…… 「泣かないで……もう大丈夫ですよ」 林の中で出会ったエンジェルの少女と目線を合わせるようにしゃがみこんで、月夜の即興曲・カノル(a47936)が優しく声をかける。 (「……ぃ、言えません。うさぎさんを追いかけていたイクセルさんに続き、私も小鳥さんを追いかけてただなんて……。……内緒の内緒、です」) 傍では雪の罪咎・キラ(a35166)が思い切り冷や汗をかきながら、そんなことを思っていた。 「えと……どっから来たっけ?」 蒼鷹・イクセル(a45091)はというと、辺りを見回して、一体自分がどういった方向から来たのか探していた。 「あ、わかった! これってアタシたち迷子だ、ね? カノル?」 キョロキョロと辺りを見回すイクセルを見て、霧霞む朝方の竜胆・ラセン(a44292)がカノルへと話しかける。 「あ、はい……そうですね」 迷子だとはっきり分かったことを聞いて、ますます心配になったのかエンジェルの少女はなかなか泣き止まない。 「方位磁石は持ってるんだが……見方がわからねぇんだよな」 銀の鎖で首から下げている方位磁石を手の中で弄びながら、イクセルが呟く。 「イクセル……見て分からないなら、それって『宝の持ち腐れ』ってやつなんじゃ……」 すかさずラセンが、彼の肩に手を置きながら、ツッコミを入れた。 「方位磁石はお任せ下さいです!」 そう言ったのはキラ。自身も手にしていた方位磁石を早速見ている。 「あちらが北のようです」 確認をしたキラが北だという方角を指差した。 「それじゃあ、とりあえずそっちに向かって歩いてみるか」 イクセルがそう言って、エンジェルの少女へと手を差し出す。 「はぐれないよう手を繋いで行こうか? オレよりお姉さんたちの方がいいか?」 「……おにいちゃんが、いい」 そう言って少女は、イクセルの手を握り返した。 歩き出すとともにキラは頭上に光り輝くリングを作り出した。赤い色を中心として、七色の光をこまめに切り替えて、目印代わりにする。 「ねえ、カノルは楽器演奏できるの?」 幾分か歩いた頃、ラセンが彼女へと訊ねた。 「ええ……何か楽しい音楽でも弾きましょうか」 カノルは頷いてから、アコーディオンを取り出すと、早速演奏を始めた。それに合わせて、ラセンが歌い出す。続いてキラも歌い出した。 時折休憩を交えて、その合間にイクセル以外と顔を合わせるのが初めてのカノルが皆に積極的に質問をする。その際、エンジェルの少女にも名前を聞き出して、集落や彼女の兄のことを訊ねた。 途中、ウサギを見つけたイクセルが集落の場所を訊ねると今まで歩いていた方向とは違う方向にあると答えられた。 「エナ、歩き疲れたなら、フワリンに乗るか?」 イクセルが召喚したフワリンに、エンジェルの少女、エナを乗せる。 「フワリンいーなー」 「せっかくだしラセンも一緒に乗ってみるか?」 その様子をじっと見ていたラセンにもイクセルが声をかけて、2人はフワリンに乗って、残りの3人は集落を目指して歩き始める。 途中で見つけた切り株の年輪を見て、ラセンが再度、方角を確認した。その様子を見たエナが興味を持ったようで彼女が説明する年輪の話を聞いていた。 幾分か歩いた頃、目指す方向の右手側から、人の気配が近付いてくるのが分かった。思わず身構えた一行であったが、先頭に蒼い髪と瞳を持つ長身の男性を見つけて、構えた力を抜く。 「ジィルーっ」 その先頭の男性、ジィルに向かって、キラが飼い主を見つけた犬のごとく駆け出した。 「キラ!」 体当たりにも近い感じで抱きついたキラをジィルが抱きとめる。 「キラさんとジィルさん……らぶってすごいのです……」 「……ジィルさんとキラさんのらぶパワーは侮れないなぁん……」 ソアとクィリムがぽつりと呟いた。 「それにしても、皆さんとエナちゃんご一緒だったのですね。よかったのですー」 フワリンから降りてきた少女、エナを見て、ソアがほっと一息つく。 「エナちゃんの手、今度はしっかり繋いでいてあげなきゃですね」 そう言って、繋いでいたアスコットの手をエナの手に添えた。 「うん。お兄ちゃんたち、ありがとね」 アスコットは頷いて、一行に礼を言う。そして、彼の案内の元、一行は集落を目指した。
●高台でお茶を 「ほぁ……あの虹とか雲とかホント不思議……」 高台に着くなり、ソアはその景色を目の当たりにして、思わず感嘆の声を漏らした。 「わ、空広いー! 空でかいー!」 ラセンもその横で、景色を眺めている。 「綺麗なぁ〜ん、空気おいしいっ、なぁ〜ん♪」 クィリムはその景色に、思わずくるくると回転するように踊っていた。 「ネス! 茶ー!! ラセンっ! オマエも一緒にネスにせがもうぜー!!」 そう言いながら、広げたシートを叩いているのはジィルだ。 「……もだけど、ネスのおやつおやつ……!」 呼ばれて、ラセンはシートの方に戻ってくる。 「口に合えば良いがな。そしてお前らは……騒いでないでカノルを手伝うとかしたらどうなんだ」 果実を混ぜたロールケーキとクッキーの包みを広げながら、ネスが呆れたように言う。 「お? カノル茶淹れてくれんの?」 「はい……僭越ながらお茶を淹れさせていただきます」 訊ねるジィルに、カノルが頷きながら答え、お茶を淹れていく。 「お茶とおやついーっぱい! ……し、幸せなぁん……♪」 「ネスのおやつが楽しみだ! ったのはオレだけじゃない様子?」 お菓子とお茶を目の前にして、嬉しそうに瞳を輝かせているクィリムに、イクセルは口の端に笑みを浮かべた。 「わーい、ネスさんのお菓子とカノルさんのお茶で素敵ティータイムです」 キラも嬉しそうに声をあげ、一行は景色を楽しみながらティータイムを楽しむ。 「あ。そうですお菓子とお茶! オレのも残しててくださいよー」 ずっと景色を眺めていたソアが慌てて、戻ってきてお茶とお菓子を囲む輪に加わった。
「空に溶けそうだ……」 青空を見上げ、ジィルが呟く。 「はぐれてもまた会えた。青空は繋がってる。仲間ってのもそういうモンだと、俺は思う」 そう呟くジィルに、仲間たちは笑顔で頷いた。 「ココでしか見られない景色……格別綺麗に思えるのは皆の笑顔と一緒だからだろうな」 頷きながら、イクセルもそう告げる。 「本当に……ありがとうございました……」 今回のことに誘ってくれた仲間たちに、カノルは礼を言いながら、アコーディオンで一曲演奏する。 「またこんな風にワイワイしようね!」 ラセンの言葉に、再度、皆頷いて、夕暮れまでホワイトガーデンで過ごして、一行は帰途へと着くのであった。
終。

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参加者:8人
作成日:2007/09/26
得票数:ほのぼの11
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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