しつこい奴ら



<オープニング>


 雑草というものを知ってるだろうか。
 あるときは邪魔だといわれ、あるときは消えろと罵られ、そしてあるときは引っこ抜かれ……。
 とにもかくにもすごい嫌われ者なのである。
 今回はそんな嫌われ者がささやかな復讐をするというお話。

 今日も今日とて賑やかな酒場、その雰囲気にそぐわない声が一つ。
「僕ってしつこいやつ大嫌いなんだよねー」
 唐突になんだ! というツッコミを無視して声の主、百難去らずの霊査士・ミズシィ(a90344)は野菜サラダ(ノンドレッシング)を食べながらさらに進める。
「特に雑草とか雑草とか雑草とかさ……やつらってしつこくない?」
 お前も十分しつこいが……まあそれは確かにいえることだ。特に家庭菜園とかを楽しんでいる方々は今、深く深く頷いていることだろう。
「で、そんなしつこいやつらを掃除する依頼が来てるんだけどさ。みんなどうかな?」
 農業が盛んなある村で雑草がすごい勢いで成長しているらしい。
 それは村全体を覆い、農業をするスペースはおろか外も十分に歩けないくらい成長しているらしいのだ。
「雑草の背丈は結構高いよ。人が入ったらとりあえず頭は見えなくなるんじゃないかな。でも雑草自体が攻撃してくる事はないからそこは安全だね。あ、でも問題があってね……」
 その異常な雑草は通称、ド根性雑草といわれるもので切っても切っても数秒でそこから再生してくるらしい。
「だから雑草を攻撃しても無駄なんだ……村のどこかに埋まっている核となるキュウコンを壊せば一気に雑草は枯れちゃうらしいんだけどね」
 雑草なのにキュウコンがあるとかまことに滑稽な話だが、そこはまあご愛嬌。
「あ、ちなみに雑草は攻撃しないって言ったけど根っこはバシバシっと攻撃してくるみたいだから気をつけてね」
 一息でそう言うと、ミズシィは残っていた野菜サラダ(ノンドレッシング)を一口で全部食べた。

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参加者
翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)
大魔導士の雛・パステル(a26628)
翔ぶが如く・レイドリック(a64329)
ノスタルジアの蒼月・ファイリシオン(a65751)
金翼の紋章術士・リュカリナ(a66079)
鈍色の影・ジェス(a68898)
着せ替え武人・タリム(a68968)
七竈・エッシェ(a69115)


<リプレイ>

●嫌われ者はびこる
 目の前に聳え立つ緑色の壁、壁、壁。それを見て「はぁ〜」っとため息をつきながら翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)は徐に口を開いた。
「どう、エッシュさん。何か分かりそう?」
「うーん、特に変わったところはないな。強いて言うなら……」
「強いて言うなら?」
 植物をじっくりと観察していた七竈・エッシェ(a69115)は突然ニヤリと笑って、
「ミズシィ霊査士の言った通りみずみずしぃ葉」
 一瞬、その場がカチンと凍りついたことはいうまでもない。きっと酒場では今頃、霊査士のミズシィがくしゃみをしておどおどしていることだろう。
「……や、なんでもない」
 エッシェは慌てて訂正。きっと酒場では今頃、霊査士のミズシィが……いやもう面倒なので省略。
「なんつーか、雑草もここまで生えると壮観だな?」
 エッシェのすぐ横では飛ぶが如く・レイドリック(a64329)が敬礼のようなポーズをして上機嫌に逞しい奴らを眺めている。
 彼が上機嫌なのは初依頼だとか可愛い女の子達と一緒に仕事ができるからだとかいろいろ理由があったりするのは秘密……あっ、言っちゃった。
「本当よね。しかもこの中から一つのキュウコンを探すなんて骨が折れるわよ、全く。あ、ところで村の人たちに怪しいところ聞いた?」
「さっき聞きましたところ、村長の家付近と村で一番大きい畑付近が怪しいらしいわ。なんだか雑草の長さがそこだけ妙に長い気がするらしいんです」
 長い気がするらしいとはこれまた曖昧の二段重ねのようだが冒険者達はいたって真面目。
 愛の戦士・タリム(a68968)の質問に金翼の紋章術士・リュカリナ(a66079)が答えると冒険者達はササッと二つのチームは分かれた。
「じゃ、そろそろ本格的に草むしりを始めるか!」
 レイドリックの一声で二つのチームは左右へと散っていった。もちろん雑草を掻き分けながらなので亀のようなスピードで。

●抜いて抜いて抜きまくれ
 ザザザザザッ! ピタン。
「見たか! ボクの通った後にもちゃんと雑草生えてるんだゾ!」
 村長の家が見えてきた頃、ナタクは突然雑草に入るなりそう叫ぶなりピースをした。
 彼女は日頃から友人達に「ナタクの通った後はペンペン草も生えない」とか失礼な事を言われているから、その否定を証明したのであって決しておかしくなったわけではありませんのでご了承下さい。
 近くでエッシェさんが目を真ん丸くして彼女を見ていますがご了承下さい。
「村人さん達も変なものを植えた覚えはないらしいですし、そろそろ作業を始めますか」
 軍手をつけた手をぐりんぐりん回しながら鈍色の影・ジェス(a68898)は周りの仲間達をその高い目線から見渡した。そして何かに気づいたようだ……
「おや、そういえばリュカリナさんが見当たりませんね」
 本当にいない。今ここにいるのはナタク、ジェス、エッシュの三人だけ。
「まさか、はぐれた?」
 エッシュがそう言った瞬間、後ろの雑草がガサガサゴソゴソ!
「………………」
 緊張した空気が流れ冒険者達は武器を構えた!
 しかし出てきたのは敵ではなく、見慣れた顔のリュカリナその人と、後ろには土塊の下僕達。
「申し訳ありません、土塊の下僕達を作っていたものですから」
「な〜んだ、よかったー」
「ほっとしました」
「敵かと思って焦ったよ」
 三人ともほっとしたご様子。そして4人が集まったところでA班の作業は開始された!
「うりゃりゃりゃー!」
 案の定、一番最初に突っ込んで動いたのはナタク。手に持っていたスコップをぶんぶん振り回し、根元を片っ端から掘っていく。
「救助団の訓練で培った技術&腕力を思い知れー」
 ……なんだか根っこがブチブチいって悲鳴を上げてますよ、ナタクさん。
 しかしやっぱりド根性雑草。どんどんどんどん再生していく。それに加えて根っこが襲い掛かってくるからたまったもんじゃない。
「根っこが千切れないように、根こそぎ掘り起こすのよっ!」
 リュカリナの悲鳴のような声を聞くと、近くに立っていた土塊の下僕達がもぞもぞ引っ張った。すると出るわ出るわ、繋がった根っこの山々。やっぱり土塊なだけに畑作業は得意なのね、下僕さん方。
「チャンスですわね」
 下僕さん達の活躍で出てきた根っこをすかさずシャドウロックでロックしようとするリュカリナ。……が、扉や宝箱とは勝手が違うのかいまいちうまく決まらない。
「あとは任せて」
 締めはエッシェがロープで根っこをがんじがらめに完璧に纏めた。これで根っこは動けないし再生も不可能だ。しかも燃やしやすくなるというおまけつき。ナイス!
 そしてそれが何度も何度も繰り返され……
 エッシェのロープも底が尽きてきた頃、雑草達は頃合を見計らったかのように活発に動き出した。
 しゅるしゅるると蛇のように地面を這い、リュカリナとエッシェの体に絡みついてきた。しかし二人とも体力が限界のようで自力では払いきれないようだ。
「女性を襲うなんて男の風上にも置けない奴らですね」
 ここで根っこに男も女もあるかという突っ込みをしてはいけない! なぜなら彼、ジェスその人は怒りで闘志が燃え上がっているからだ。
 ジェスは二人に癒しの水滴を発動させ、軍手を纏った両手で根っこを根こそぎ剥いでいった。
 その剥がれた根っこ達は自動的にナタクに手渡され、そのまま剛鬼投げ……一本!ああ可哀相な根っこ達。私、根っこに生まれなくてよかったわ。
 二人を救出し終えたジェスが気づいた頃には、ナタクの後ろはペンペン草も生えてない状態だったことはいうまでもない。

●切って切って切りまくれ
「ほんとに遠慮なく育った雑草よね〜」
 村一番の畑についたもう一つのチームは既に作業を始めていた。村で一番の畑なだけに心配して見に来る村人達もちらほら。
 そこへタリムがぶつくさ文句を言いながら作業をしているので彼らはちょっと困った様子。
「もう本当に手入れがなってないんだから〜」
 あ、今の一言で村人の一人がタリムをじーっと見ているぞ。お、タリムもその視線に気がついたようだ。互いに目が合う二人、そして長い長い沈黙……。
「わ、私はただ素直な感想を言っただけよ!」
 堪えきれずにタリムはそう叫んだ。その慌てっぷりを見て村人は噴き出した。その噴き出した村人を見てタリムも噴き出した。よし、めでたしめでたし。
「俺、こんな活きのいい雑草見たの初めてだぜ。こら暴れるな!」
 その隣ではレイドリックが一人、雑草達に悪戦苦闘していた。しかし男、レイドリック……一瞬の隙を見て雑草立ちを一網打尽にして一気に抜いた!
 ズバッ! ズバババッ!
 ここで一気に纏めてしまえればカッコいいのだが、現実はなかなかそうもいかないらしい。彼が纏めようとロープを取り出したその時、
「いて! やめて! 尻尾は引っ張らないで!」
 情けない悲鳴を上げながら雑草に虐められている彼の姿がみんなの視界に入るのだった。
「ぎゃー! 本当に待った、タイム!」
 油断大敵、なんかもう大変な事になっちゃったレイドリックさん。引っ張られているだけでなく、もうビシバシ叩かれちゃってます。
「だ、大丈夫?」
 そんな彼を見て半分慌てて半分笑いを堪えているのは大魔導士の雛・パステル(a26628) 。レイドリックを助けようと必死にヒーリングウェーブを発動させるが……
「ええい! 動かないでってば」
 雑草が無駄にガサガサ動いてなかなか狙った位置に当たらない。やっと、標的に当たってレイドリックが元気になった頃には逆にパステルはもうへとへとだった。
「人手が少ないと疲れちゃいますよね」
 酒場のような盛り上がりで賑やかに? 草むしりをしている仲間達を尻目にしゃがみこんでなにやらごそごそやっている蒼月の御使い・ファイリシオン(a65751)。決して遊んでいるわけではないですよ。
「土塊の人形達、出番ですよ」
 彼が立ち上がると、召喚された下僕たちがエイサホイサと雑草を抜き始める。隣でファイリシオンはうんうん、と頷いて大変満足なご様子。
 ズボッ! ガサガサガサ……ちゅどーん!
「やっぱりなかなか出てこないものですね、キュウコン」
 地面から抜かれ、襲い掛かってきた根っこ達にエンブレムブロウを一発ぶっ放して、何事もなかったように呟くファイリシオン。私、本当の本当に根っこに生まれなくてよかったわ……。
 と、その時。脇でぶつくさ文句を言いながらも一生懸命地道に作業を続けていたタリムが何かを見つけた。
「これがキュウコン……? とりあえず他のみんなに知らせなきゃ」
 彼女の目線の先には、どこからどう見ても普通の大きさの普通の玉ねぎがあった。

●嫌われ者滅せられる
「こ、これが例のキュウコンか? どこからどうみてもたまねぎじゃないか」
 でっかいカブを大勢で抜くような童話を想像していたレイドリックは拍子抜けしたような様子で呟いた。それはそうだ、必死に探したのが玉ねぎだったんだもん。
「ま、とりあえずナタク達のチームにも合図は送っておくけどさ」
 そのまま、がっかりした様子でとぼとぼ歩くレイドリック。
「じゃあ、さっさとこいつを破壊して帰りますか」
 そう言ってファイリシオンが武器を振り上げると……突然異変が起こった。
 しゅるしゅるしゅる……
 周りの雑草達がすごい勢いで小さく細くなっていく。そして、
 ぎゅっ……ぼーん! ボーん! ボカーン!
 それとは裏腹に玉ねぎキュウコンは風船が膨らむように大きくなっていく。そしてレイドリックが合図を送って帰ってきた頃には雑草達の背丈よりも大きくなっていた。
「やっと本性を現したわね、さぁ勝負よ」
 その恐るべき成長を見て冒険者達のボルテージはどんどん上がっていく。そして一番最初に攻撃を仕掛けたのはパステルの土塊の下僕達。先ほど、もう一回召喚しなおしたのだ。そして土の塊とは思えないような動きで波のようにキュウコンめがけて突っ込んだ。
 ……バシ、バシバシッ!
 しかし虚しく一瞬でキュウコンの根の部分に払い飛ばされた。合掌。
「さすがに簡単にはいかないわね」
「私に任せて」
 そう言って前に出たタリムは、息をすーっと吸い込むと
「あんたのせいで土まみれになったんだからね!」
 思いっきり叫んでそのまま声と一緒に突っ込み、キュウコンに向かって電刃衝を食らわせた。それがなんとまさかのクリティカルヒット! 恐るべし、あんたのせいで土まみれになったんだからねアタック。
 タリムの後に続いたのはレイドリック。慣れた手さばきでビュンビュンと鋼糸を振り回しキュウコンの根を切り裂いていく。そしてパステルのヒーリングウェーブでみんなファイト一発!
「もうこれで終わりにしましょう」
 弱った球根にファイリシオンが止めのエンブレムノヴァを浴びせると、キュウコンはその場でこと切れたように転がった。そして周りの雑草は見る見るうちに枯れていく。

●皆さんお疲れ様
「どうやら私達が出る幕もなかったようですね」
 ジェス達が合図をもらって駆けつけてきた時には既に辺りは静寂に包まれていた……というのは嘘で、村人が興奮した様子でキュウコンを見ながらぎゃーぎゃー騒いでいた。
 何故かその騒いでる塊の中にはエッシェもいて村人と一緒になにやら話している。どうやら植物が好きな者同士意気投合したようだ。
「何を話してたんですの?」
 戻ってきたエッシェにリュカリナが質問をすると、
「あの枯れた雑草達を燃やせばいい肥やしになるよ、とかいろいろ話してたんだ」
 エッシェは満面の笑みでそう答えた。
「私も農業には縁がある気がしましたの……何故かしら?」
 リュカリナも満面の笑みで上品にふふふっと笑った。
「でももうこれでやっと終わりだねー」
 さっきの雑草駆除作業ですごい勢いで暴れた……いや働いた代償がきたのかナタクは肩のストレッチをしながらそう言った。
「終わりって何を言ってるんだ? これからが始まりだよ」
 レイドリックはナタクを見てニヤリと笑って、動かなくなったデカイ球根を指差した。そしてレイドリックの代わりにファイリシオンが代弁。
「実はですね。あのキュウコン、燃えないんですよ」
 少しばかりの沈黙。
「それって、まさか……」
 また少しばかりの沈黙。
「そのまさかです。僕たちがあの有名な童話のようにみんなでエイサホイサと引っ張り出して、村の外れまで持っていかなきゃいけないんです」
『えーっ!」
 今度は即答。
 ナタクを初め、リュカリナ、ジェス、エッシェはみんなで一斉に声を上げた。
 その後、村では何かを引き摺るような音と八人ほどのため息が一日中聞こえたとかそうでないとか。


マスター:杜宇滋枕 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/10/19
得票数:ほのぼの6  コメディ7 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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