【注意報発令!】ころころドカン★注意報



<オープニング>


「街道を塞ぐ巨大ヤマアラシの退治をお願いできますか?」
 冒険者の酒場で、いつもの席に座った霊査士・ヴェインが言った。
「魔物退治だべか?!」
 わく、とか、きらーん、とか。そんな擬音を背負ったリザードマンの武人・ゴタックがその話に即座に飛び付く。
 そいつが現れたのは、ある村と近くの町を繋ぐ唯一の街道。村の人々にとっては生命線とも言えるその道に、文字通り『居座って』いるのである。
「巨大ヤマアラシは体長4メートル程もある凶暴な魔物でして。今は厄介な事に……ま〜るくなっているんですよ」
「……まる?」
 意味が分からず、ゴタックが首を傾げて問い掛けた。
「ええとつまり、村は急な坂道を下った正面にありまして。魔物は攻撃を受ければ、そのまま転がって行ってしまうでしょうね」
 下手な方向から攻撃すれば、そいつは転がる勢いのまま一直線に村に突っ込む。その被害は計り知れないとヴェインは言う。
「魔物の攻撃は体にある鋭い針を飛ばしてのもので、丸くなった状態から戻れば、それ以外に爪や牙での攻撃をして来ます。余程ダメージを受けない限り、自ら動こうとはしないでしょうが……」
「魔物が村に転がって行かねぇように戦えばいいんだな? ……ううう、難題だぁ」
「そうですねぇ。今はものすごーく微妙な感じで止まっていますけど、少しでも衝撃を与えればころころ、どかーん☆ですね」
 にっこり笑ってサラリと怖い事を言う霊査士。
「おら、頑張って何とかするべ!」
「……ええと、皆さん。ゴタックさんのおもりも含めて大変でしょうが、宜しくお願いしますね」
 ゴタックがぼうぼうと燃えるのを何とも言えない表情で眺めたヴェインは、冒険者達に向かって深々と頭を下げた。

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参加者
白鎧の騎士・ライノゥシルバ(a00037)
明告の風・ヒース(a00692)
蒼天の幻想・トゥバン(a01283)
星刻の牙狩人・セイナ(a01373)
深森の弓猟犬・ドラート(a01440)
ニュー・ダグラス(a02103)
剣舞姫・カチェア(a02558)
放浪傭兵稼業・ダウザー(a05769)
NPC:深緑蒼海の武人・ゴタック(a90107)



<リプレイ>

●前途多難な下準備
 森に左右を挟まれた街道は村から始まり、長く急激な上り坂を経て町へと続いている。それを塞ぐ物体、巨大ヤマアラシ(球状)に向かって、明告の風・ヒース(a00692)が毅然と声を掛けた。
「街道をふさいだらいかんドウ! ……気の利いたジョーク一つ口に出来ない飛べない鳥、ヒースです。ごきげんよう」
 カメラ目線(何)で端正な顔立ちに憂いを含んだ微笑を浮かべるヒース。その後頭部に放浪傭兵稼業・ダウザー(a05769)のチョップがズビシと決まった。
「いたっ! 痛いです、ダウザーさん」
「ハイハイ、ちゃんと働こうぜ〜」
 戦闘に備えて手際よく力仕事をこなす彼は、手を休めずに苦笑を返す。ヒースは素直に頷くと、何故か大量の墨を道に撒き始めた。その横ではニュー・ダグラス(a02103)がやはりカメラ目線で。
「巨大生物退治が日課になりつつあるダグラスだ。宜しく頼むぜ!」
 と、ニッカリ漢笑でご挨拶中。
「分かったから働け!」
 本日ツッコミ担当で大忙しなダウザーの裏拳が、遠慮なく炸裂した。
「げふ! いや、俺はコレが動かねぇか見張ってるんだぜ?」
 ぶちぶちと不平を訴えたダグラスだったが、何かを思い付いたのか土塊の下僕を召還すると、今度は楽しそうに働きだした。
「うわ、本当に大きいよな〜!」
 一方、いつでも影縫いの矢を放てるよう警戒しながら、深森の弓猟犬・ドラート(a01440)がヤマアラシの巨体を見上げて驚嘆する。
 相棒のロッシュは本日お留守番だが、置いてきて正解だろう。こんなものが転がり出して、巻き込まれたら大変だ。
「なに、此方にも大きいトカゲ殿が居るから大丈夫で御座るよな?」
 その言葉に、朱の重鬼士・ライノゥシルバ(a00037)が黙々と溝を掘っていたリザードマンの武人・ゴタック(a90107)の肩を叩いた。
「ああ、おら負けねぇぞ!」
「うにッ! 頑張って下さいね、ゴタックさん♪ ねぇねぇ、また尻尾をフリフリして欲しいのです♪」
 意味も解らず胸を張るゴタックは、星刻の牙狩人・セイナ(a01373)にせがまれて、今度は尻尾をフリフリしながら働きだした。
 セイナとその愛猫の首が、それに合わせて楽しそうにユラユラ揺れる。
「村人の避難は終わったぞ〜…… って、何やってんだ、お前ら」
「あっ……!」
「ん? ……」
 村から戻った臥龍の武人・トゥバン(a01283)がその光景に思わず声を掛けた。だが、セイナにプイっと横を向かれると、しょうがないなと苦笑して溜息を漏らす。
 さらに横から剣舞姫・カチェア(a02558)までにも睨まれて、再び溜息。何だか色々と複雑な事情があるらしい。
 カチェアの心中も複雑だった。ゴタックと言葉を交わすトゥバンに、何か言いたそうで言えない素振りを何度も繰り返す。
(「何故、私の父を殺したような種族の者と共に親しげに……いや、私も分かっている。頭では分かっていても……クッ」)
 乙女の胸中は尻尾の如くユラユラ揺れるのだ。
 そんな素敵な四角関係(違います)の空気が流れる中、周囲の不穏な動きも意に介さずヤマアラシは停止したまま。やがて一通りの準備が終わった。

●ころころドカン☆大作戦
 森を抜けて坂の上に出たセイナは、巨大ヤマアラシに狙いを定めて弓矢を引き絞った。これが、始まりの矢になる。
「穿ち貫け!!」
 放たれた貫き通す矢奥義は、狙い違わず球体の中心に突き刺さった。
 微妙なバランスを保っていた巨体が、その衝撃により恐ろしい程の量感で坂道を一気に下り始める。攻撃に反応して鋭利な針を発射しながら。
「よっし!! ゴタック手伝え!! あれ、刈るぞ」
「わ、解ったべ!」
 待機していた木陰から飛び出したトゥバンはゴタックと共に左右から流水撃で棘針を刈り取りに掛かった。
 溝で軽く弾んだ所で狙いをつけ、剣を横薙ぎに振り払う。
「ちっ!!」
 剣風に数本が折れたが予想以上に硬い。攻撃の為に近接した二人に向かって飛来した針を、セイナの矢とカチェアのリングスラッシャーが寸前の所で撃ち落とした。
「すまん!」
「助かったべ!」
「うう、トゥバンさんの手助けしたんじゃないのです! ゴタックさんのお手伝いしたのです!」
「勘違いするな、お前を助けたのではない! トゥバンの支援をしただけ…… ついで、だ!」
 礼を述べた二人に、女性陣が苦しい言い訳を返す。年頃の娘さんはそうそう素直になれないのです。

 さて、道に撒かれた墨汁で真っ黒に染まりながらも勢いを弱めないヤマアラシは依然球体のまま。
「この勢いじゃ台がもたないな」
「ええ。行きますよ?」
 待機位置で矢を番えたドラートの言葉に、ヒースも頷く。二人は同時に弓を構えた。
「まるくなるのが許されるのはお猫さまだけだ!」
「ヤマ拓希望!」
 (一部謎発言でしたが)気合と共に赤く透き通った矢が正射された。牙狩人のナパームアローは着弾点で爆発を起こす。これで勢いを弱めようという訳だ。
「やったか?!」
 爆風で土煙が舞う。確かに、勢いは弱まった。強烈な攻撃に飛んでくる針も倍増しましたが。
「あだだだだ」
「ゴタック、こっちだ!」
 針に襲われて逃げるゴタックをダグラスが手招きする。慌ててそちらに向かった彼は、設置されたジャンプ台の前に整然と並ぶ土塊の下僕に首を傾げた。
「なんだべ?」
「いいから早くここに並べ! よし、ばっちりだぜっ」
 ぐっと親指を立てて爽やかに笑うダグラス。ゴタックを下僕達の前に立たせると綺麗なV字型の列になった。
「おら、ライノに言われて受け止めに来たんだけど?」
「だから、ここで受け止めろ。お前の犠牲は忘れないからな〜」
「犠牲?!」
 ハンカチを振りながら駆け去るダグラスを見送ったゴタックの耳に、轟音が近付く。そう、転がるヤマアラシの地響きが。彼の鱗が更に青くなったように見えた。
「嘘だべ〜〜!!」
 どっか〜〜〜ん!!
「ナイスプレー!」
 巨大な球体は見事、列の中心に突っ込んだ。跳ね飛ばされた土塊がキラリとお空に消える。中からはぷち、という音も聞こえた気がした。
 設置されたジャンプ台がバキバキと音を立てて裂け、四方に弾け飛んだ。
「ああ! 僕のヤマ拓がっ!」
 それを見たヒースが絶望的な声を上げる。
「そっちかよ!」
 こちら、村の直前で待機しているダウザーさん。ツッコミ、ご苦労様です。
「おーっと! ジャンプ台は破壊されたが、ボールはまだ生きているぞ!」
 ダグラスさん、中継している場合ではありません。
「まだだ!」
 ふわりと浮いたま〜るい巨体は悪夢のような光景だった。台が破壊された為、目測とは違う位置に着地しそうなそれを目掛けて、ドラートのナパームアローが再び放たれる。
 激しい爆音と獣の悲鳴。ドラートの狙いは、その攻撃によって目標地点である大きく掘られた穴に向かい、角度を調節する事だった。
 更に追いついたトゥバンが敵に迫る。脇腹を掠めた針にも構わず、稲妻を閃かせた想剣を渾身の力で振り切った。
「落ちろ!!」
 叩き落とされたヤマアラシは、それは見事にすっぽりと大穴にはまった。
「やったな!」
「うに〜! やりました〜!」
 カチェアと抱き合ったセイナが歓声を上げる。だが。
「シャー!!」
 巨大ヤマアラシ、激怒!
 球体から戻った巨体が怒声を轟かせると、鋭い爪で土を掻き、穴から瞬く間に這い上がった。怒りに我を忘れたのか、そのまま一直線に村へと突っ込む。
「やれやれ、しょうがねぇな」
「止めるで御座るよ!」
 最後の砦として待機していた重騎士二人はそれぞれ気合を高め、その鎧を変化させた。ダウザーの大分使い込まれた鎧は犬狼のシルエットを形成し、ライノゥシルバの自慢の猫鎧は両肩が盛り上がり、可愛らしい猫の顔が出現する。
「そうコレこそが、『ニャ―ンの王様』=『キングネコラ』なので御座るー!」
 ドド――ン!!
 ライノゥシルバの背景に王冠をかぶった黄金の招き猫が見えた! 気がした。
 最後の気力を振り絞ったヤマアラシは針を四方に発射しながら迫る。それは二人の鎧に弾かれると、金属質な音を立てた。
「行かせないで御座る、ニャーーン!!」
 ガキ――ン!!
 キングネコラと巨大ヤマアラシの激突は周囲に旋風を渦巻かせ、火花を散らした。
 だがやはり、力では押されるキングネコラ。その横合いから、犬狼が全身で突っ込む。
「そろそろ寝とけ!!」
 意外な方向からの攻撃に巨体が傾く。振り下ろされる大剣レンブランサーの、兜割り奥義!
 豪快な大上段からの斬撃は、疲弊していたヤマアラシの巨体を一刀両断に斬り伏せた。

●戦い終わって
 あふたー・けあも冒険者の大事な仕事、とはトゥバンさんのお言葉ですが。
 壮絶な戦闘の爪痕も生々しい街道は見るも無残な有様だったので、冒険者達は率先してその修復に当たった。その際、埋没していたゴタックも掘り起こされた。勿論、無事では無かったが。
「いや〜、紅蓮の咆哮で回避するかと思ったんだがな」
 重傷で気絶したゴタックを見て、まいった、まいったと頭をかくダグラス。
「それは狂戦士のアビリティだろうが!」
「うぐっ。おお! 言われてみれば」
 その顔面に、ダウザー最後の裏拳がガスッっとめり込み、顔を変形させたダグラスは手を打って納得のご様子。
「変な事ばかりしてると、ダグ拓を取りますよ?」
 ヤマアラシの針を拾い集めていたヒースが目を光らせてポツリと呟く。ヤマ拓が取れなかった彼は、ちょっぴりロンリーハートなのだ。
「ゴタック、おい、しっかりしろよ〜?」
 汗を流して応急処置の布を巻き、ゴタックを介抱するのは優しいドラート。その隣ではセイナが残念そうに肩を落としていた。
「うに〜、もっと尻尾をフリフリして貰いたかったのです……」
「よくよく、不運なので御座るなぁ」
 意識の無いゴタックの頭を、ライノゥシルバがよしよしと撫でた。

 こうして2度目の冒険にて名誉の負傷(?)を負ってしまった新人冒険者ゴタック。
 頑張れ! いつか花咲く日もあるさ!


マスター:有馬悠 紹介ページ
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重傷者:深緑蒼海の武人・ゴタック(a90107)(NPC) 
死亡者:なし
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