第2回あやしもの市に行こう



<オープニング>


 世の中には、不思議なものが多種存在している。
 禁忌の場所、誰も見た事のない宝。
 そういった噂にはデマが多いのが実情である。
 そして。
 そんなデマにデマを重ねた怪しいにも程がある、ゴミ一歩手前のガラクタが集まる市があるという。
 ひょっとしたら本物があるかもしれない。
 そんな淡い期待を寄せては打ち砕かれる場所。
 諸事情により開催が例年より遅れたその市の名は、あやしもの市。
「まあ、色々と事情はあるらしいのですが。今年はいつもより開催が遅れた分、色々とパワーアップしてるらしいです」
 いつもの表情でそう語る夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)。
 どの方向にパワーアップしているのか知れたものではないが、まともでない事だけは確かだろう。
「で、どうします? 行きますか?」
 冒険者達にとっては第2回目となる、あやしもの市。
 ミッドナーの普段見れない楽しそうな様子を見て、冒険者達は一様に不安げな表情を浮かべるのだった。

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参加者
NPC:夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)



<リプレイ>

「今年もやって来たあやしもの市!」
 紅炎の紋商術士・クィンクラウド(a04748)が叫ぶ声が、会場に響き渡る。吐いた息は白く、しかし声は熱い熱気が篭っている。
「えへへ、なんだかとってもしょんぼりの予感なんだよ。面白そうなものいっぱいあると良いな♪」
「しょんぼりなんですか?」
 仔狐・エミリオ(a56971)に、思わず紅色の剣術士・アムール(a47706)が突っ込みを入れる。
 あやしもの市。その会場となった村は寒々しくも晴れ渡った空を見せ、一応のお祭り日和であった。
「パワーアップね。言わずもがな怪しいけど。まぁミッドナーが物好きなのは分かった」
「いきなり失礼ですね。否定はしませんが」
「私も物好きだから楽しみだけど」
 そんな会話を交わすのは、彩雲追月・ユーセシル(a38825)と夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)。
 そう、今年の「あやしもの市」は何かとパワーアップしているらしい。
 それが「まともなもの」が手に入る理由とはならないのが、この市の特性ではあるのだが。
 すでに市場では呼び込みの声が過熱化し、冒険者達もそれぞれの場所へと散っている。
 ここはもう、ある種の戦場となっているのだ。客と店という、化かしあいの戦場に。
「妖しいものは所詮ガラクタ、という貴方、そんな人は目利きの技能がない……なんていえたらよいなぁ」
「まあ、一部の隙もないガラクタもありますけどね」
 依頼依存症・ノリス(a42975)が渡した酒を味見していたミッドナーが、そんな事を言う。
「まあ、どう使いこなすかは本人次第、という点だけは同意しますが」
 酒瓶の口を閉めたミッドナーは満足そうな表情で歩き出し、やってきた伏龍・バーニア(a63668)に声をかけられる。
「一緒に回りませんか?」
「構いませんよ」
 あっさりと承諾を受け、バーニアはミッドナーの後ろを歩いていく。
「何かいいものがあるといいのですが……」
「それならうちだぜ兄ちゃん!」
「いいや、うちさ!」
「うちに決まってんだろ! ガラクタ屋はすっこんでろ!」
「なにい、てめえんとこもガラクタ屋だろうが!」
「兄さん、ガラクタ屋どもは放って置いて、うちを見てってよ!」
 一言言うだけで、この有様。熱気というものに満ちているのが分かる。
「依頼以外で街をぶらつくのは久しぶりで気分いいな〜」
 そんな熱い熱気の中を、姫椿の鐘楼守・ウィズ(a65326)は歩いていく。
「すんませーん。そんじょそこらでは入手困難で、リッチでゴージャスでとにかく目立ってオレに似合いそうな靴を見せてくださーい」
「兄ちゃん、うちは焼き肉屋だぜ」
「え、そうなの?」
「だがまあ、目が高いぜ。まさか此処に伝説のブーツがあるのを見抜くたあな」
 何やら足元でゴソゴソとやり始める焼き肉屋台の親父。
「ちょっと待ってな。今脱ぐから」
「いや、いらねーから」
 中年男の脱ぎたてブーツなど、誰が買うというのか。逃げ出すウィズの背中をクィンクラウドは見送り、手近な店に入っていく。
「こんな模様の羽根を持つ鳥は見たこと無いぞ。何の鳥?」
「お、目が高いねー。それは不死鳥と呼ばれた鳥の羽でねー。綺麗だろー?」
「え、不死鳥? またまたー、それもデマなんだろ?」
 早速店主と激論を交わすクィンクラウド。無論デマである。不死鳥などという鳥は、いるのかどうか検証不能である。
「いやあ、デマじゃないさ。何しろ矢が何十本刺さっても死ななかったって話だぜ」
「つーか、ニワトリの羽に似てない?」
「お、鋭いねえ! ニワトリは不死鳥の遠い子孫なんだよ。だからほら、ニワトリには立派なトサカがあるだろ? あれが名残なんだよ!」
 その理論でいくとチキンレッグも不死鳥なる鳥の子孫ということになるが、そこは所詮その場限りの論理なのだから仕方ない。
 激論を続けるクィンクラウドと店主の後ろで、医術士のくず・ナオ(a26636)は見知った顔を見つける。
「お、フォンじゃん……て、なんだ皆も来てたんか」
「……早速迷子になってたな?」
「え、何の話?」
 真顔で言う影狗・フォン(a49166)と、キョトンとした顔のナオ。
 フォンの後ろに居た睡郷・ユル(a46502)と青雷牙・アオト(a55093)をナオは見つけ、更に声をかける。
 市は広くとも、知り合いというものは偶然出会ってしまうものらしい。
「何か面白いもの、買えたか? ん?」
「冬物の服を買いに、と、思ったんだが……」
 段々と消えていくアオトの語尾と、ユルの何とも言えない微妙な笑顔が全てを物語る。
 結構ひどい目にあったらしい。
「そっか……災難だったなあ」
 しみじみと語るナオ。微妙な雰囲気を打破するように、ユルは慌てて話し出す。
「本当はアオトさんへ、何か面白いお衣装無いかなって思ってたんですけれど……アオトさんの弟さんがね? 今回お留守番ですので。彼へのお土産……に方向転換」
「おー、なるほどな。どんなのにすんの?」
「こう……猫の玩具っぽいものが。棒の先にふわもこの毛玉を付けたような?」
「……見つかるといいな」
「見つかると思いますよ?」
 フォンの言葉に、ミッドナーが顔を出す。指し示すのは、彼等がいる一帯の屋台。何やら黙々と作業をしている姿が伺える。
「もうちょっと待てば大攻勢が始まると思いますけど。逃げるなら今のうちをお勧めしときます」
 そう言って、さっさと歩き出すミッドナー。
 言われてみると、何やら多数の視線を感じる。それに、やけに静かだ。まるで嵐の前の静けさのような……。
 4人は顔を見合わせると、四方八方へと走り出すのだった。
「ね、肩車したげよっか♪」
「じゃ、お願いします」
 笑う三味線犬・ソノ(a52585)の提案にあっさり乗ったミッドナーはソノの肩に乗る。移動はソノ任せになるが、別に問題はないようだ。
「店主さ〜ん、音楽探してるんだけど〜♪」
「分かった。俺の歌を聴いていってくれ」
「いや、そういうのじゃなくて。楽譜とか」
「分かった。今から書くよ」
「逃げたほうがいいですよ?」
 肩の上のミッドナーの助言を受け、脱兎の如く走り出すソノ。「(舌戦で)戦う」か「逃げる」しかコマンドがないのが、この市である。
 時間は流れ、屋根の上でポーズを決めていた漢・アナボリック(a00210)が子供に石を投げられ始めた頃。
 皓天・ミツキ(a33553)と白華遊夜・アッシュ(a41845)は、雑多なものが所狭しと並ぶ露店の前に居た。
 互いに目を瞑り、気合を込めるかのように意識を集中させている。
 これは2人の勝負。目を瞑って掴んだ商品を競う勝負である。無論リリースは不可。
「えやっ!」
「えやっ!」
 同時に手を突っ込み、何かを引き出す。
「ふ、こういうときこそナチュラルな運がモノを言うのさー! ……何これ」
「……ぬぅ、これは……」
 互いに自分の引きずり出したものをじっくりと見る。
 どちらも似たり寄ったりのレベルに見えるが、気持ちで負けたら負けである。
「……あー、ええとこれはその、ああそうだうん、昔偉い医術士が」
「……えーと、これはですね、はるか遠く未開の秘境に住むといわれる「シロオオテナガクマ」!」
 互いに薀蓄を垂れ始めるが、無論どちらも口からでまかせである。
 薀蓄をぶつけ合う2人の近くでは、日輪氷・ハルノート(a45333)がハニワの頭を手に何かを探していた。
 何やら人形の体を合わせてみているらしいが……いまいち合うものが無いらしい。
「……頭だけじゃかわいそうなのじゃ。何か合うものはないかのう?」
「任せな、お嬢ちゃん! 魔改造のゲンと呼ばれた俺の手にかかりゃあよ!」
 そう言って取り出してきたのは、様々な人形の体。女性タイプが多いのは、店主の趣味だろうか。
 早速不安になるハルノートだが、店主は自信はありそうだ。
「う、うむ。お任せして大丈夫……じゃろうか?」
 疑問系になってしまったのも、無理は無い。
 エミリオが着ぐるみを見繕っていると、突如誰かの叫び声が聞こえる。
 何やら興奮しているような声は、どうやら地獄の鐘の・エッシ(a65329)のもののようだった。
「オイこれを付ければ猫ちゃんとお話できるようになるんだな!?」
「信じれば願いは叶うかもしれないぜ、兄ちゃん!」
「よし買った!」
 全く肯定してはいないのだが、ノリで買ってしまうらしい。
「待ちな兄ちゃん! こっちのぬいぐるみがあれば、猫と友達になれるような気がするぜ!?」
「猫ちゃんと友達にィ!?」
 エッシの好みを掴んだか、御しやすいと踏んだか。様々なガラクタを売りつけようとする店の主人たち。
 いつの間にか店の数よりも売り手が多い気がするが、きっと気のせいだろう。
「今回はさびしい部屋を飾る「すてきなすてきないんてりあ(棒読み)」をゲットしにきたぞ」
「見つかるかのう?」
 暁天の修羅・ユウヤ(a65340)の言葉に、光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)が疑問系な相槌を打つ。
 なんだかメイドっぽい服装のプラチナと、一緒に歩くユウヤ。端から見ているとメイドとご主人様っぽい事この上ない。
「デマを本当かと思って聞くから角が立つのですよね」
 そんな2人を何となく見送りつつ、迷宮組曲・ロンウェ(a66705)は頷く。
「デマを話半分所か3割位で聞けば、かなり楽しいのではないかと」
「ん、分かってらっしゃいますね」
 いつの間にか現れたミッドナーが、ロンウェの言葉に頷く。
「あの、ミッドナーさん。これはちょっと」
「似合ってるのに……」
 何やらチキンレッグの王様辺りが好んで着てそうな服を戻すと、ミッドナーは合金紳士・アロイ(a68853)に次の服を渡す。
 どうやら、アロイに頼まれて服を選んでいる最中だったようだ。
「で、何を探してたんですか?」
「ええ、竪琴を……」
「そうですか。なら通りの向こうに行くと、それっぽい店が並んでますよ」
 そう言うとミッドナーは再びアロイの服選びに戻り、ロンウェも軽く礼を言うと、通りの向こうへと歩き始める。
「歌う人形とかないですかね……」
「運がよければ歌うかもしれない人形っぽいものに近いナイフとかならあるぜ?」
 それは人形ですらない。そういう突っ込みを押し殺しつつ、エンジェルの邪竜導士・トール(a68949)は商品を眺める。
 雑多なインテリアが並んではいるが、目的のものはありそうにはない。
「音のなるものでしたら……あちらに楽器があるそうなので、ご一緒にいかがですか?」
「あ……是非」
 声をかけてきたロンウェにトールは頷き、一緒に通りの向こうへと歩き出す。旅は道連れ……というものである。
「わーっ! ちっこい嬢ちゃんが気絶したぞ!」
「兄ちゃん、商品で遊んだらダメだよ!」
「うわーっ、大丈夫ですかミッドナーさん!?」
 何やら彼等が歩いてきた方角から、狂乱の白鬼・スピーゲル(a69409)やらアロイやらの声が聞こえてくる。
 一体何があったのか。簡単に言うと陳列してあった武器の性能を見るべくスピーゲルがアロイを叩いただけなのだが。
 運悪く近くにいたミッドナーが、丁度それを戦闘行為と認識したブックハビタントに潜り込まれて気絶してしまったのである。
 良い子の皆は、霊査士のいる所で戦闘行為に及ばないように気をつけよう。ミッドナーとの約束である。
「……ひ、広いな。人も多いし……」
 ふらふらと歩いていた独翼・レヴァ(a69276)は、誰かにぶつかって足を止める。
「……おや。探し物は見つかりましたか?」
 それは氷剣探求者・ニール(a66528)であった。
「……いや、ここには地図を探しに来たんだ。俺がまだ見たことのない、行ったことのない場所を記した地図なんだが……」
 中々見つからない、と正直に告げる。
「で、そちらはどうだ?」
「いえ、氷の剣とかはないかなー、と思っていたのですが。当然、氷で出来てて永久に溶けない剣なのです!」
 お互い難しそうだな、と笑いあう。
「せめて透明な何かで出来た剣が見つかればいいのですけど……」
「それらしいものなら向こうで見かけましたわ」
 アムールの言葉に、ニールは詳しい場所も聞かずに走り出していく。
 そう、此処はあやしもの市。欲しい物は早い者勝ちにして一期一会。
 普通では手に入らぬ品々と、普通は手に入れようとすら思わない品々の並ぶ市。
「どうですか? 欲しい物は手に入りましたか?」
 ミッドナーの言葉に、冒険者達はそれぞれ独特の表情を浮かべる。
 去年も、今年も、来年も。人々の最も輝く姿が、此処にある。


マスター:じぇい 紹介ページ
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参加者:25人
作成日:2007/10/21
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冒険結果:成功!
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