ごろごろだんご



<オープニング>


「岩石団子怪獣を知っているか?」
「ふに? 知らないけど、まるまると岩石っぽくなるアルマジロなぁ〜ん?」
 ふふん、と得意げに切り出した、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)に、赤い実の・ペルシャナ(a90148)は名前から想像した怪獣をそのまま言ってみた。
「くっ」
 的確に読まれたアムネリアはなんだかとても悔しそうだったけれど、怪獣の容姿など大概は名前のまんまなのだから仕方が無い。
「それが暴れてるのなぁ〜ん?」
「うむ、このアルマジロ、普段は岩石がいっぱいある火山地帯に居る怪獣なんだが……それが火山地帯から結構離れた原住民の村に現れ、居座ってしまったようだ」
 村の雰囲気などが他の場所に比べて何となく火山地帯っぽかったので気に入ってしまったらしい。原住民たちは全員村の外に逃げたらしいが、生活の拠点を占領されたままでは些か不都合が多い。
「はわわ、それは大変なぁ〜ん」
「だから退治してきてくれ。この怪獣は見た目通りに装甲が硬い、そしてごろごろ転がって相手を轢いて攻撃してくる……特に、自分に背中を向けている相手を狙う習性があるようだ」
 そこらへんの習性を利用すると村に被害を出さずに倒すことも出来そうだ。
「ふに、わかったなぁ〜ん。頑張って倒してくるなぁ〜ん!」
「うん、宜しく頼んだぞ。あ、あとこのアルマジロの肉はとっても美味しいらしいから、倒した後に食べるのも良いだろう」
 土産宜しくとアムネリアは、冒険者たちを見送った。

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参加者
そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)
炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)
番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)
銀蟾・カルア(a28603)
窺天鳥・カシエル(a32061)
空白の大空・マイシャ(a46800)
星槎の航路・ウサギ(a47579)
消えぬ色・リューベル(a66706)
NPC:赤い実の・ペルシャナ(a90148)



<リプレイ>

 ワイルドファイアの空は高く晴れ渡り、もこもことした雲が柔らかい風にゆったりと流されていく。そして地には緑が映え、その中で息づく命たちの時間もまたゆったりとしたものだ。
「おとうさん、おとうさん! ボクね今日ね森で美味しい食べ物を見つけたんだよ!」
「シローは元気が良いなぁ……でも、あんまり遠くまで行っちゃ駄目だぞ?」
「そうだよ、シロー! お母さんみたいに……あ、ごめんなさいジローお父さん」
「ははは……気にする事はないよサブロー。うん、もう気にしないでいいんだ……」
 村の中央で固まってお互いの顔をすりあったりしてじゃれ合うアルマジロ怪獣たちの動きにあわせて、そよ風が草原をなでるように・カヅチ(a10536)が解説を入れてみた。実際にはキュモ! だとかキュンとかだったけれど、何となく雰囲気からそんな感じに見えなくも無い。
「あるまじろ〜ごろごろごろろ〜♪ せんとーはお父さん〜♪ 子どもが追いかけごろごろごろろ〜♪」
 お父さんの背中を追ってゴロゴロ転がる仲睦まじいアルマジロの親子の様子を、星槎の航路・ウサギ(a47579)が何となく歌い上げる。お母さんを失い、それでも家族でけなげに暮らすアルマジロ一家の強い団結と信頼をたった三小節で表現した素晴らしい歌と言えよう。
 ……全部架空設定だけど。
「アンタら鬼よ! 鬼畜だわ!」
 だが、寒月・カルア(a28603)は両の目からしょっぱいものを垂れ流しながらアルマジロ怪獣を倒して食べようと言う冒険者達に対して抗議の声を上げる。家族でけなげに暮らしているマジロたん達が可哀想ではないのかと! 丸くていたいけな瞳を無視して食えるのかと! 力強く拳を握りしめ、カヅチとウサギの鎧の形状を大きく変化させつつカヅチは仲間達に訴えかける。
「あう……そうですよね、やっぱり可哀想なのです!」
 カルアの訴えに心打たれたのか、ウサギも拳をグッと握り締めると羽のような身のこなしをするための構えをとる。そんなウサギの様子に解ってくれたのかとカルアは顔を輝かせて――
「それでは、殺りますか」
「了解なのです!」
「えぇ!?」
 舞大通連に新たな外装を付け加えて準備を整えたカヅチに力強く頷いたウサギにガーンという顔になったものである。
「あう? 可哀想だけど倒すのですよ」
 ウサギは可哀想だと言っただけで怪獣を倒さないとは言ってない。キョトンとした顔で当たり前ですよ? と言い放つウサギ。どんなに可愛くても所詮は怪獣、食われる運命なのだ。ワイルドファイアの厳しさにガックリと肩を落としながらカルアは先に進んだカヅチの後を追うのだった。

「ウサギ達参上なのですー!」
 きゅもきゅもとじゃれあってるアルマジロ怪獣達の前に唐突に現れたウサギが頭部から光を放つ! 眩い光を受けたアルマジロ怪獣達の動きが一瞬とまり、きょも!? と驚いたような鳴き声をあげたりもしたが、それも一瞬の事。すぐに敵が来たのだと理解したアルマジロ怪獣達は体を丸めて――ウサギへ突撃する前に、カルアも眩い光を放つ! 眩い光に何匹かのアルマジロが動きを止めるが、動けるアルマジロは体を岩のように丸めたままゴロゴロと転がってくる。
「アハハハ妖精さんだよ捕まえてごらん♪」
 それらを避けるべくカルアは羽のように軽い身のこなしでアハハウフフと少女のような煌き空間を周囲に撒き散らしながら待ち構えるが……。
「一匹も来ないのです」
「くっ!」
 ウサギが言うように一匹も来なかった。何故なら後ろを向いて逃げ出したカヅチの背中を全てのアルマジロが追っていたからである。注目されると言っても何か明確な目標がある場合は意味が無いようだ。一方、一人ではっちゃけちゃって悲しい感じのカルアを他所に、背中に自分の体よりも大きなアルマジロの気配を感じつつ、カヅチは二十年の人生で培ってきた華麗な逃げっぷりを見せ付ける。避難している村人に見せ付けられないのが残念なほどに華麗な逃げっぷりだが、転がるアルマジロの方が速度が速いらしく段々と距離を詰められてゆく。すぐ真後ろに迫るアルマジロ……しかし、カヅチは慌てる事なくアルマジロの回転方向に対して垂直にステップを踏む!
「カヅチス――」
 グギィ! ぐちゃ。
 アルマジロは縦に回転しているわけで、その垂直と言うと真横な訳で……流石に直角には曲がれなかった足がぐぎっと曲がり転んだカヅチの背中を容赦なくアルマジロが転がっていった。
「ほーら、今度こそ先生の胸に飛び込んでおいで!」
 放って置いても大丈夫だろうが一応攻撃を分散させるためにカルアが再び頭部から眩い光を放ちつつ、両手を広げて駄目な生徒達を受け止める姿勢をとるが……、
「お、おいでー……」
 アルマジロ怪獣達は駄目な先生の胸には飛び込めません! とばかりに全力で無視して背中を見せながら全力で逃げるウサギを追っていったのだった。
「ふっ」
 カヅチは両手を広げた格好で固まるカルアの肩を軽く叩く……ワイルドファイアの空は高く。照りつける日の光はなんだかとっても眩しかった。

「ワイルドファイアは弱肉強食……美味しいものは食べられちゃうなぁ〜ん」
 口の端をゆがめ、ふっとニヒルな感じで笑いながらワイルド・インパクト・ボーンを肩に担ぎ、炎に輝く優しき野性・リュリュ(a13969)はやたらと眩しい光を放つ太陽に手を翳す。勿論自分は強いほうの立場に立っているという確信の元に言い放った台詞であるが、不意にビクッ! と背中を振るわせたかと思ったらきょろきょろと後ろを振り返って何かを警戒している辺り嫌な予感がしているのかもしれない。
「今日の仕事は岩の如く硬くなった巨大団子を美味しく頂くことじゃな」
 そんなリュリュを生暖かい眼で見守りつつ、番紅花の葬送姫・ファムト(a16709)は食べる気満々に誘導班がアルマジロ怪獣を連れて来るのを待ち、
「かわゆさにトキメくはぁと☆ と胃袋は別物〜」
 窺天鳥・カシエル(a32061)もまたやる気満々な様子だが残念なのは村の中できゅぅと憩いの一時を満喫しているであろうアルマジロたちの姿を見れなかった事であろう。
「べ、別にアルマジロ達の事、可哀想だなんて思ってませんから!」
 何故か逆説的かつ感情的に「み、見たかったなんてこと無いんだからね〜!?」と聞いても居ない事を否定するカシエルに、ハンバーグ信仰者・マイシャ(a46800)もまた同じような感の反応を返す。
「外見がどうあれ怪獣は怪獣。倒すと決めた以上、手心は加えないわよ」
 そんな可愛い怪獣を倒す事に抵抗を感じて涙目になっている訳ではなく村人の苦労を想像して涙目になっているのだと主張するマイシャをジィっと見つめ、エルフの邪竜導士・リューベル(a66706)は言ったものである。
「ん、来たね〜……あ」
 正論過ぎる突っ込みにどうしたものかと悩んでいたマイシャの横でカシエルが近づいてくるアルマジロ怪獣を見つけ、後少しのところで転んだウサギの背中をアルマジロ怪獣達が次々と通過して行く。
「美味しいお肉、こっちへおいでなぁ〜ん!」
 大した怪我も負わないだろうが、それでも集中攻撃されるのは宜しくない。リュリュはウサギを的にしているアルマジロ怪獣の注意を自分に向けさせるべくさぁ! 来い! と背中を見せた。そして丁度良いタイミングを見計らって逃げ出そうと……、
「き、来過ぎなぁっ……」
 ゴロゴロゴロ。ぷち。ゴロゴロゴロ。ぷち。ぷち。
「誘導は成功じゃの」
「そうですね!」
 やっぱり轢かれたリュリュを軽く流しつつファムトが癒しの光を放つとぷちぷち潰されるリュリュの傷は癒されていきファムトの癒しと間髪いれずにリュリュの上をゴロゴロ転がるアルマジロ怪獣に向けてマイシャが粘着性の高い蜘蛛糸を放つ!
「その汚れない瞳を憎しみで滾らせるがいい〜」
 マイシャの蜘蛛糸で身動きを封じられたアルマジロたちに向けて、ふふふ〜と笑いながら穢れ無きエンジェルであるカシエルが真紅の矢を放てば真紅の矢はアルマジロたちの中心で爆発して……。
 その円らな瞳に怒りを満たしカシエルにその怒りをぶつけるかのように丸っこい手をブンブン振り回しながらきゅもきゅも鳴くのだった。

 リューベルがNigella Hidraと名付けた術手袋を付けた腕を差し出すとリューベルの前に無数の黒い針が出現する。そしてリューベルの体と結び付いていたミレナリードールが七色の光となって針に融合すると、
「元居た場所に帰っていたなら、その命も永らえたのにね?」
 七色へ昇華された針に貫かれて、きゅもきゅも鳴くアルマジロを冷静に見つめながらリューベルはそんな事を言い放つが、
「お前達、俺、丸かじり! って逆ですね! 別に動揺なんかしてませんけどねっ!」
 不吉な絵柄が描かれたカードを投げつけるマイシャはアルマジロ怪獣の少し涙目で円らな瞳を前に少なからず動揺を隠せないようだ。
「つぶらな瞳がプリティ〜☆」
 マイシャの蜘蛛糸で拘束されながらも必死になってカシエルに向かい丸っこい手をきゅもきゅも振り回すアルマジロ怪獣の瞳にほわわと和みつつ、カシエルは仲間達の鎧に強大な力を注ぎ込んで、その形状を変化させていく。怒りで滾らされている瞳でもやっぱり円らなものは可愛い。
「今日びだん……なぁぁぁぁん……」
「妾の御飯のために皆がんばるのじゃぞ〜」
 拘束の解けたアルマジロ怪獣のそんな可愛い瞳を真っ直ぐに見据えながら大棍棒を構えたリュリュが再びぷちっと潰され、その後ろで此処に居れば安全なのじゃとファムトが余裕をかましていた。が、ぷちっと踏まれたリュリュを飛び越えるように一匹のアルマジロが回転しながら飛んできたのだ。
「……なぜこらに転がってくるのじゃああ!?」
 右へ左へとおろおろするファムトにあれよあれよと言う間に彼女よりも大きな球体となったアルマジロ怪獣が近づいて――戦場にぷち☆ と何かちっこいものが潰れた音が響いたのだった。

 虚空より生み出された虚無の手がアルマジロ怪獣の体に爪を立てると、アルマジロ怪獣の頑強な装甲が割れたような幻影が見えた。虚無の手の手応えに満足そうに鼻を鳴らしてリューベルはきゅもきょも鳴くアルマジロ怪獣を一瞥する。
「きょもっ? きゅぅ〜ん? そんな声で鳴いても手加減しな……きょもっ!?」
「リューベルさん危な――」
 余裕を見せている間に横から接近したアルマジロ怪獣にぷちっと轢かれていたけれど良い女としてそこにバナナが転がっているのならば敢えて踏んづける事も時には必要だろう。そう、そこら辺で顔面を地面に埋めながらピクピクと痙攣するリュリュのように! ……何かが間違っている気もするけれど。
「くっ!」
 リューベルの犠牲を無駄にしないためにもさっさとアルマジロ怪獣を仕留めて美味しいお肉を食べなければならないのだ。マイシャは不吉な絵柄のカードを作り出すと、リューベルを踏んだアルマジロ怪獣に向かい投げつける。
『きゅ! きゅも!』
「ぱ! ぱぱー!」
 カードを受けてゆっくりと倒れたアルマジロ怪獣を見て他のアルマジロ怪獣が鳴き、それにカヅチが淡々と多分何となくそんな感じだろうと言う解説を入れる。
 そんな解説に心動かされた訳でもないだろうが、カルアはもうこれ以上アルマジロ怪獣を傷つけさせない! とばかりにアルマジロ怪獣の前に立ちふさがった! ああ、そうさ、俺はお前達を守ってやる……お前達の平和は守ってやる! と、良い笑顔で後ろに居るはずのアルマジロ怪獣を振り返って――
「チクショー! この鬼畜ども! マジロンたんは殺らせん! 殺らせはせんぞるゲっ」
 動けるようになったアルマジロ怪獣に潰されてたりした。カルアの愛は何時だって一方通行らしい。まぁ、そんなものである。
「今日はきっと調子がいいなぁ〜ん! かかってくるなぁ〜ん!」
 何度も轢かれた影響か、あっちこっちに泥をくっつけて既に泣き顔なリュリュが転がるアルマジロ怪獣の前に立つ。今日は調子が良い……と言うかそうとでも思わないとやってられない様子だ。片足を大きく上げてタイミングを計り、大棍棒を豪快に振り回すとアルマジロ怪獣に体を捕らえ――今まで地味にカルアやウサギや、赤い実の・ペルシャナ(a90148)が削っていたアルマジロ怪獣はきゅぅぅ……と力無く地面に倒れたのだった。

「美味しいお肉、ありがとうなぁ〜んね。皆の命はリュリュ達の糧になるなぁ〜ん」
 原住民が村に戻った後、リュリュは倒したアルマジロ怪獣の肉を大きな鍋に入れてグツグツと煮込んでいた。
「うむ、美味しく平らげるのじゃ〜♪」
 良い香りを放って煮え立つ鍋を前に、待ちきれない様子でファムトが滴る唾をじゅるりと飲み込むが、
(「ワイルドファイアの食べ物は油断禁物です……」)
 何せワイルドファイアの食べ物だ、下手に食べるとアハハウフフでとんでもない事になりかねない……大体味は良いのだけど。マイシャは、はやくっ♪ とリュリュを急かして肉を手に入れたファムトが「イタダキマスなのじゃ〜!!」とアルマジロの肉を口に入れて飲み込むまでじっくりと観察する。そして、うまいのじゃー♪ とほくほくした様子で特に変化の無いファムトと、その横で黙々と食すカヅチに、ほっと息を吐くとマイシャも砕けた肉を叩いて潰して丸めたものを焼き始めた。お腹の中できょも♪ と家族団らんしているアルマジロたちの姿を想像して、目からなんだかしょっぱいものが溢れてきたが、これは煙が目に入ったせいだ。
「あう……次郎さん達を食べるなんてやっぱり出来ませんです……! こんなに可愛いのに……」
 ぐしぐしと目元を擦って泣いてなんていませんよ! と主張するマイシャからカシエルが焼いてるアルマジロの頭に視線を移してウサギは呟く。ドデンと生首のように置かれたアルマジロさんの頭からジュージュー焼けて良い匂いがしてくるが、相変わらず瞳が円らでとても可愛らしく、ウサギは食べるのを躊躇しているようだが……ぐーとウサギのお腹は空腹を訴えかけて来ていたりもした。可愛くても美味そうなものは美味そうなのだ。
「うわーんマジロンたんー!」
 はらはらと食べようかどうしようか迷いつつ八割方食べる方向に傾いているウサギの横で、カシエルに焼かれていたアルマジロの頭を見てカルアが号泣していた。気持ちは伝わらなかったけど一方通行な愛だったけれど、それでも何か伝えたかったんだ! とかそんな感じだが、その手にはしっかりとお土産用のアルマジロの殻が握られている辺り、何処まで本気で泣いてるのか怪しいものだ。

(「何かの前兆でなければ良いのだけど〜」)
 肉を燻製にして持って帰る準備をしているリューベルの横で、カシエルはアルマジロの皮を手に持ち、ワイワイと肉を食らって騒いでいる仲間達からそっと視線を空へと向ければ……相も変わらずもこもことした雲が緩やかに流れていた。

【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/10/22
得票数:冒険活劇1  ミステリ2  ほのぼの4  コメディ13 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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