特大料理を喰らえ! 巨大植物アカマッツー!?



<オープニング>


 秋も深まり、空には鱗状の雲が広く広がる。
 肌を撫ぜる風は程よい冷気を含み、夏の焼け付くような日差しに耐えた体を癒してくれるかのようだ。

「ねえねえ! ワイルドファイヤの山奥に大きなマツタケが生えているって専らの噂なんだケドっ!?」
 そんな秋の情景など関係ないね! という感じで旅団のリビングへ勢い良く駆け込んできた、楓華の舞巫女・アオイ(a63871)の第一声はそれだった。
 マツタケ……マツタケとは所謂秋に採れるキノコだ。ただ、このキノコはなかなかに入手が困難であり食せる機会は滅多にない。それが生えている……しかもワイルドファイアらしくビッグなサイズで、である。
 なのでビッグサイズなマツタケを夢想し、もーヤダって思うくらいお腹いっぱい食べてみたいなー、と頬の横辺りに両手を合わせてキラキラした瞳で天井の彼方を見つめるのも致し方ないと言える。
「……其の近くにアカマツの怪獣も出る、と言うのも専らの噂だがな」
 うっとりと精神が何処かへ飛んでいったアオイを見守っていた、水舞の剣・グレース(a68945)がぽつりと呟いた。
 グレースの聞いた話ではアカマツ怪獣には無数の根が足のように生え、マツタケが生えている付近を闊歩しているらしい。しかも奴らの好物は……マツタケだと言うのだ!
 実際に見かけた者の話では、アカマツ怪獣はマツタケを見つけると幹の中央にある口のような穴に詰め込んでモシャモシャと食べてしまうらしい、しかも大量に。
「それではマツタケが無くなってしまいますね。早めに退治した方が宜しくありませんか?」
 なんと恐ろしいことか……贅沢三昧という意味で……事態を重くみた、黒き炎を喚びし木姫・アレシア(a66946)が口を挟む。
「んじゃあ、さ。皆で退治しちゃおっか? ついでにマツタケも美味しく頂いちゃいましょうか〜!」
 アレシアに頷き、決まりっ! と手を叩いたアオイは早速同行者を募るのだった。

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参加者
銀炎の黒獅子・アルセリアス(a61944)
瑠璃茉莉・フェリーチェ(a63102)
楓華の舞巫女・アオイ(a63871)
迷宮組曲・ロンウェ(a66705)
スケープゴート・アレシア(a66946)
桜花爛漫・アンジェリカ(a67754)
玄冬史家・セツナ(a68330)
水舞の剣・グレース(a68945)
NPC:ヒトノソリンの牙狩人・カナン(a90366)



<リプレイ>

 ランドアースはもう秋だというのにジリジリと照り付ける太陽の光が、此処ワイルドファイアのワイルドファイアたる所以を嫌と言うほど再認識させてくれる。
 風も暑いし、そこら辺には夏の植物が群生していたりもする……と言うか暑い。
「ふぅ……」
 迷宮組曲・ロンウェ(a66705)は大きく息を吐いて額の汗を拭うと、お茶の葉やら水やらを多めに持ってきたために結構重くなってしまった背中の荷物を確認する。
 ロンウェは仲間達に女性が多いので、率先して重いものを運んできたらしい……だが、やたらと暑い上に水が重いので足元が覚束無かったりする。
「さーて、きばって行くよーっ!」
 そんなロンウェを励ます訳では無いのだろうが、楓華の舞巫女・アオイ(a63871)は気合十分な感じで拳を高々と空へ突き上げる。
「巨大マツタケ巨大マツタケ♪」
 と宝の山を見るように瞳をキラキラと輝かせるアオイに、元気ですねと眩しいものを見るようにロンウェは笑うと自分も、その宝の山を見つめる。今までの人生でマツタケなどと言う高級食材を食した事が無い彼もまた、マツタケを楽しみにしているようだ。
「巨大なマツタケとは、さすがワイルドファイアです。しかし、怪獣にもマツタケの美味しさは分かるのですね……」
 まだ見ぬ巨大マツタケにクラクラしているアオイに、瑠璃茉莉・フェリーチェ(a63102)は大きく頷き、怪獣の味覚に感心する。ちょっと勿体無い食べ方だけど、怪獣も深まり行く秋の情景の中、自然の実りに感謝をしながら……と、フェリーチェは此処まで考えて怪獣がそんな事に感謝する訳ないかと気づく。ついでにワイルドファイアに秋は無い事も思い出した。
「アカマツ怪獣に荒される前に退治しないといけませんね」
 キラキラから戻ってこないアオイと、何かを考え込んでいるフェリーチェから山に視線を移すと、黒き炎を喚びし木姫・アレシア(a66946)は呟く。
 怪獣がキノコの味を分るか分らないかは置いて置いて、このままでは折角の秋の味覚を味わえなくなってしまうかも知れないのだし、さっさと倒したいところだろう。
「うむ、必ずや巨大植物アカマッツーを禿げ……倒して見せよう」
「それで、マツタケをたらふく食べるのです」
 アカマツ怪獣に何か思うところがあるらしい、銀炎の黒獅子・アルセリアス(a61944)がアレシアと同じ方を向いて気合を入れ、マツタケをたらふく食べたいと言う理由だけで来た、春秋を駆ける史家・セツナ(a68330)が後に続いた。
「きばって行くよーっ!!」
 青々と茂った緑に包まれる山はもうすぐそこだ。もう一度気合を入れるように拳を青空へと突き上げたアオイに頷き、一行はマツタケの待つ山へと歩みを進めるのだった。

 一行は山に入って暫くたったところで、何となく気の雰囲気がキノコが生えていそうなところへと到着した。
「初めての冒険はドキドキなのです」
 不安……そして色々な期待に高鳴る胸に手を当てて呟くと、多分ドジ属性・アンジェリカ(a67754)は大きく息を吸い込む。深緑の濃い空気は幾分の湿気を含んでアンジェリカの肺を満たし、柔らかな自然は彼女の緊張を幾分か解してくれるような気がした。
「居たよっ、……じゃ作戦通りね?」
 正面でモゾモゾ動く松の木を見つけたアオイの声に小さく背中の羽を振るわせると、木の陰に隠れる仲間達に続いてアンジェリカも慌てて木の陰に隠れる。
 今回彼らが取る作戦は、アカマッツーの針攻撃を全て打ち尽くさせてから一気にしとめようと言うものだ。そのために、フェリーチェ、セツナ、ロンウェ、アオイの四人が土の塊に生気を分け与えて仮初の命を与えて的を作り出し、それにアカマッツーの攻撃を受けさせようとするのだが……。
「噂通りの奇怪な姿をしているな」
 此方に気付いたアカマッツーが足のような根っこを器用に動かして近づいてくるのを見た、水舞の剣・グレース(a68945)が言うように、その植物怪獣は奇怪な姿をしていた。幾つもの根をウネウネと動かして移動し、幹の中央には大きな口のような穴が開いている……そして、その上には針のように尖った葉を持つ枝をこれまたウネウネと動かしている。松の木なのであるが、この怪獣を表現するのなら蛸とか烏賊と言った方が近くなるだろう。
 本当に奇怪だな……とグレースがアカマッツーを観察を観察していると、アカマッツーは木の枝を震わせて……、
「来ます」
 アレシアの警告とほぼ同時に、アカマッツーの葉が針のように土塊の下僕達へと降り注ぐ。そして下僕達はあっと言う間に砕かれ、元の土塊へと還って行く。それを見た、アオイたちは再び木の陰に隠れて下僕を作るが……、
「ま、回り込まれていますよ!」
 只管木の陰から木の陰へと移動したアンジェリカはビクビクと木の横からアカマッツーの様子を伺うと、土塊の下僕を呼び出したロンウェたちが逃げ切れて居ない事に気付く。アビリティを使いながら逃げるのは流石に難しいと言う事だろう。ちなみにコソコソと木の陰から顔を覗かせるアンジェリカの後ろから彼女を見守るタイラントピラーが物凄く目立っていたりしたが気にするほどではない。多分。
 再び放たれたアカマッツーの針の雨は、土塊の下僕を再び元の土塊へと還し、セツナたちの体にも突き刺さってゆく。
「あいたたたた……」
 だが、服を払って刺さった針を叩き落としたロンウェが、仲間達を励ます力強い歌を歌うとあっさりと仲間達の傷口が塞がってゆく。土塊の下僕を倒すには十分な威力を持っている針だが、冒険者には余り効かないようだった。

 その後、何度かアカマッツーに針を打たせると、段々とアカマッツーの枝が寂しくなってゆき……最後には緑色の部分が全く無くなってしまった。
 そこはかとなく哀れな姿となったアカマッツーとの距離を詰めるとアルセリアスは極限まで闘気を凝縮させた一撃を放つ! アルセリアスの武器が触れた場所からアカマッツーの巨大な幹を抉るような爆発が起こり、アカマッツーは苦痛に悶えるように体を揺らす。
 そしてロンウェはそんなアカマッツーの姿を何処か切ない目で見つめながらも、体に纏った炎の一部を投げ放つように七色に輝く蛇の炎を放ってアカマッツーを更に追い詰める。
「……せめて若ハゲにはならないように、なのです……」
 そんな男二人の後頭部を切ない視線で見つめつつ、アンジェリカは癒しの光を放つ。何故禿ると思ったのかは謎であるが、アンジェリカの呟きを耳聡く聞きつけたアルセリアスはアンジェリカの方へ向き直ると、
「俺は禿げない家系のはずだから大丈夫だ」
 とこめかみに青筋を立てながら主張する。そんなアルセリアスにアンジェリカは「大丈夫です……分ってますから……!」と哀れなものを見つめる切ない視線を返していたりもしたけれど、深く突っ込んだら負けだろう。
「……まだ、私はハゲてませんし。そもそも、ハゲたくないですけど!」
「まだって事は、その内禿るなぁ〜ん?」
 アルセリアスと同じくアンジェリカの視線を頭部に感じたロンウェも自分に言い聞かせるようにそんな事を言っていたけれど、アカマッツーの影を打ち抜いていた、ヒトノソリンの牙狩人・カナン(a90366)の素朴な疑問に遠くを見つめるばかりであった。
「一人でマツタケを大量に食べてしまった罰です」
 色々な自己犠牲っぷりに緩んだ口元を引き締めなおし、フェリーチェは青の叙事詩と名付けた魔道書を開く……周囲に溢れた紋章の力はやがてフェリーチェの頭上へと集約し、巨大な火球へと変化する。そしてミレナリィドールが火球へ触れると七色へ変化し――打ち放たれたそれはアカマッツーへ直撃すると巨大な爆発を巻き起こした!
「散った髪の毛……のようなものがかわいそうだからな、その命も散らして後を追わせてやろう」
 爆発に包まれるアカマッツーに水舞を向けてグレースが言い放つと、長剣から電撃が放たれる。電撃は紛う事無くアカマッツーの体を捕らえるとその体を駆け巡り、その度にアカマッツーの体がビクビクと痙攣する。
「意図してやった事とはいえ、申し訳ないことをしてしまった気分ですわね」
 アカマッツーの様子と男性陣の様子に笑いをかみ殺しながら、禍々しい印象を放つ漆黒の宝珠を手にアレシアが、グレースの電撃で最早息も絶え絶えなアカマッツーに手を伸ばすと虚無の手がアカマッツーの体を切り裂く。
 そして、セツナが『周易』集釈から七色に光る炎に包まれた木の葉を放つと、アカマッツーはメキメキメキと嫌な音を立てながらその動きを止めたのだった。

 アカマッツーを倒した後、ロンウェが周囲を見回すと一抱えほどもあるマツタケがすぐに見つかった。
「おお、これがマツタケですか」
 香りを嗅いで見れば、独特の木に近い香り……そこはかとなく気品すら感じるその香りは皆が食べたがるのも頷ける香りであった。
「これなら一通りのものを作っても御釣りが出るな」
 アルセリアスは、たかがキノコとは侮れませんねぇと感慨深げに頷いているロンウェが持つキノコを観察し、その大きさが十分であることを確認すると取り合えず普通にご飯を炊き始める。
「ふむ、私はマツタケご飯を作るとしよう」
 そして、アルセリアスの様子を見てグレースがマツタケご飯の準備を始めると、フェリーチェとアオイも炭火焼の準備を始めた。

 強い日差しが木々の葉に遮られ、地上にたどり着くまでには柔らかく変わる。穏やかな昼下がりにカナンは正座しながらボーっと空を見つめ、尻尾でビッタンビッタンと地面を叩いてリズムを刻みつつ、食事までの待ち遠しい時間を潰していた。
 グツグツ……ジュージュー……プシュープシュー……グゥー。
「いい香りです……お腹が空いて来たです〜……」
 魚を乾燥させて砕いたものと大豆を発行させたもので煮込んでいた鍋を前に、アンジェリカは自分のお腹を押さえる。自分の鍋もそうだが、良い音を立てて焼けてゆくアオイとフェリーチェの炭火焼や、セツナの様々な料理もまた食欲を誘う。
「よし、出来たよ」
 もうちょっとですよと笑いかけるアレシアと共にアンジェリカが再び鍋に向き合った所で、グレースが作っていた炊き込みご飯が出来たようだ。そして、グレースに続くように次々と色々なマツタケの料理が完成していった。

 グレースが炊き込みご飯の蓋を取れば、香ばしい香りが周囲に充満し、「「おおー」」と歓声が上がる。
 そしてアルセリアスたちは地面に敷物を引いてその上に広げられたマツタケ料理の数々をおかずに、その炊き込みご飯でマツタケを存分に味わう……口いっぱいに広がるマツタケの味に、アオイはやっぱり瞳をキラキラと輝かせロンウェは今までの人生で縁の無かったこのキノコとの縁を取り戻すかのようにしみじみと味わっていた。
「こんなに様々なマツタケ料理を堪能できるなんて、本当に贅沢で幸せな遠足ですね」
 どれをたべよーなぁ〜ん♪ とキョロキョロしていたカナンの横に座ってアンジェリカが自分が作ったお吸い物を差し出すのを微笑ましく見つめ、フェリーチェは目の前に広がる様々な料理に幸せそうな笑みを零す。
 そしてセツナが作った松の実をふんだんに使ったケーキを頬張り、空を見上げれば……やっぱり夏模様の空にほんの少しだけ秋を感じられたような気がした。

【おしまい】


マスター:八幡 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2007/10/28
得票数:ほのぼの7  コメディ3 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
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