旧ソルレオン王国復興 大剣の石像



<オープニング>


●大剣の石像
 旧ソルレオン王国の辺境地域でモンスターの姿が目撃されたらしい。仲間と共にその地を訪れていたハーシュミストレス・エリス(a00091)はそんな噂を聞いて現地へと向かっていた。
 どうも元々人が住んでいたりした場所では無いらしく、今すぐ誰かに危険が及ぶという訳ではないのだろうが……本当の平和を掴む為、そして人々の生活から脅威を払うべく冒険者たちは進み続ける。
「……あれか」
 誰もが胸中で小さく呟いた。その視線の先には一体の石像が立っている。
 飾り気の無い石のような質感の全身鎧に身を包み、巨大な剣を大地に突き刺した姿。遠目に見た限りでは微動だにしないそれは、本当に石像のようだった。
 慎重に近づいてゆく冒険者たち。弓矢がやっと届くかどうかといったあたりの距離で、石像の目に赤い輝きが生まれる。
「これは……」
 誰かが乾いた声で呟いた。近づいたことで始めて石像に気配が……いや、殺気が生まれたのだ。
 ごとり、と重々しい音を立てて巨大剣が地面から抜かれる。そして冒険者たちと石の戦士との戦いが、いま始まろうとしていた。

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参加者
陽射の中で眠る猫・エリス(a00091)
動物愛好魔術師・ミサリヤ(a00253)
縁・イツキ(a00311)
在散漂夢・レイク(a00873)
君の幸せの為に愛を謳うよ・ニオス(a04450)
風薫る桜の精・ケラソス(a21325)
黒騎士・アルファルド(a31480)
蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)


<リプレイ>

●戦いの領域
 じり……。
 佇む魔物を前に慎重に間合いを計る縁・イツキ(a00311)。今は牙狩人であるイツキの矢が届くかどうかといった距離……いや、正確には届かないだろう。巨大剣を地面から抜いて構える魔物もそれ以上動こうとはしていない。
「こういうのが居るからまだまだ復興が遅れるし、きっちり退治して近隣を安心させましょうね」
 相手が動かないかどうか注視しつつ、イツキは仲間達に鎧聖降臨を施していった。黒騎士・アルファルド(a31480)も鎧聖降臨を発動させ、冒険者たちの守りを固めている。
「どんな敵が相手でも、冒険者の役割は『守るべき民を守る』こと相手がモンスターでもドラゴンでも、戦う理由は同じなのですよね」
 ハーシュミストレス・エリス(a00091)は黒炎覚醒を発動させ、邪流の力を黒き炎としてその身に立ち昇らせる。
「巨大剣を持つ鎧石像……なんだか妙にカッコイイというか怖そうだなぁ」
 動物愛好魔術師・ミサリヤ(a00253)も同様に黒炎覚醒を発動させる。蒼穹に閃く刃・ジギィ(a34507)もイリュージョンステップの構えを取った。
 そこまで戦いの準備を整えた冒険者たちは視線を交わし、タイミングを合わせて地を蹴った。
 ――そして、一斉にその領域へと足を踏み入れる。

●剛の大剣
 そして戦いの火蓋を切って落とすは剣振夢現・レイク(a00873)の呪痕撃! だが槍状に形を変えた紋章塊を魔物は歩き出して避ける。
 がん。
 イツキの放つ矢が魔物に当たり硬い音を響かせた。揺るがぬ魔物はそのままぐっと踏み込み、掲げた巨大剣に光を宿し振り下ろす!
 ごっ! 空気を引き裂くような音を立てて衝撃が冒険者たちに襲い掛かる。撃ち付けられた闘気の奔流は鋭い痛みを冒険者たちに刻み付けた。
「くっ……!?」
 そしてその衝撃は距離を取っていたイツキにも十分に届いている。ミサリヤに『君を守ると誓う』を発動させていたイツキはその分のダメージと自分で受けたダメージとを一身に浴びていた。
「きっと元ソルレオンの冒険者だったのでしょうね。ならば私達の手で倒し、その魂を鎮めたいですね」
 風薫る桜の精・ケラソス(a21325)の放つ気高き銀狼を巨大剣で振り払い防御し、その場にどっしりと構える魔物。だがその間にエリスがヒーリングウェーブを発動させ、癒しの光で仲間達の傷を回復させてゆく。
 がきぃん!
 更にアルファルドが接近し、大岩斬を振り下ろす! アルファルドの蛮刀と巨大剣とがぶつかって甲高い金属音が鳴り響く。ジギィがそこにソニックウェーブを放つものの、魔物は一瞬だけ身を引いてそれをかわした。
「まぁ油断せず、倒して復興の手助けになれば良いが」
 君の腕に抱かれて眠りたいよ・ニオス(a04450)はバッドラックシュートを放ち、魔物の胸に不吉なカードが突き刺した。そこから広がる不幸の影が鎧に広がってゆく。
「すっごく強そう……だけど頑張るぞ〜!」
 意気込み、続いてヴォイドスクラッチを発動させるミサリヤだったが魔物は咄嗟に腕で受け弾くようにしてこれを防いだ。
「開放してやらねばな」
 レイクの放つ呪痕撃を魔物は剣で叩き落とす。そのままぐっと力を込めて刃を振り抜き、アルファルドへと襲い掛かった!
「むぅっ!?」
 ガァンと叩き付けられた一撃に思わず声を漏らすアルファルド。吹き飛びそうになる意識を辛うじて保ち、歯を食いしばって耐えている。
 だがその間にイツキから貫き通す矢が放たれて魔物の身を射抜き、ケラソスは高らかな凱歌を奏でてゆく。
 エリスもヒーリングウェーブで傷を癒していった。それを受けてアルファルドは大岩斬を繰り出す。鎧強度無視の効果を持った斬撃が魔物の肩口から袈裟懸けに抜ける。
 巨大剣を持つ腕を狙ってジギィも太刀を鋭く振り抜き、ソニックウェーブの衝撃波を放つ。だが繰り出された衝撃波は外れ、その目前を通過していった。
 がっ!
 横手から斬りつけるニオスの斬撃を腕で止め防御する魔物。だがそうして動きの止まった一瞬をミサリヤのヴォイドスクラッチが引き裂く!
「石って硬そうだけど……これならどーだ!」
 突然に出現した虚無の腕が魔物を正面から薙ぎ、ビシッとアーマーブレイクの効果を与えたようだ。
 勢いに乗るようにレイクが呪痕撃を撃ち込む。命中して一瞬呪痕が広がるが、魔物はすぐにそれを振り払って立ち直り、闘気を巨大剣にみなぎらせる!
『あれは……』
 イツキからタスクリーダーの心の声が飛ぶ。それを掻き消すように魔物から闘気の烈風が吹き荒れる!
 がががががっ!
 押され始めた魔物が放ったその一撃は、まさに起死回生の一手となった。巨大剣から勢い良く噴き出し暴れ回った衝撃は冒険者たちにクリティカルヒットしたのである。
「………!」
 自分が受けたダメージと『君を守ると誓う』のダメージでイツキは堪らずその場に倒れる。
「この……ままでは……」
 急ぎケラソスが高らかな凱歌を奏でるものの、それだけで完全回復とはいかない様子だ。一刻も早く回復し立て直すべくエリスも両手杖を掲げ、振り抜いた。
「あなたを止めるために、ここで倒れる訳にはいかない」
 降り注ぐように冒険者たちを包む柔らかな癒しの光がダメージを癒してゆく。アルファルドが蛮刀を振り下ろすが魔物は身を引いてこれを避ける。ジギィはその間にイリュージョンステップの構えを取り直した。
 再びその手に不吉なカードを生み出し、バッドラックシュートを投げ放つニオス。だが魔物はそれに気付いて反応し、立てた巨大剣の刀身でカードを防ぐ。
「集中して……動かなきゃ」
 痛みはある。しかし今は一刻も早く相手を倒すことが使命だ。ミサリヤは意識を集中して研ぎ澄まし、ヴォイドスクラッチを解き放つ。
 ざくりと虚無の腕が魔物の体を引き裂いた。
「グリモアを失いモンスターと化した後に行う戦い、それ自体が実質的な葬儀となるのも冒険者たる者の因果だろうか」
 レイクの放つ呪痕撃が魔物の胸に突き刺さり、呪痕の紋章となってその身に広がってゆく。続けて動きを止めようとケラソスは気高き銀狼を放つが、こちらは身をかわされてしまう。
『………』
 石の体にはアーマーブレイクで亀裂が走り、不幸の影が広がっている。更には呪痕の紋章も広がり……冒険者の攻撃の効果が徐々に刻まれているようだった。だがまだその力が失われた訳では無い、魔物はぐっと力を込め、巨大剣に闘気を凝縮させた。
 ずばん!
 振り下ろされた一撃がアルファルドの体に直撃する! 狂戦士のデストロイブレードのように、ダメージを受けた状態では威力を増すのだろうか、先ほどより一層強い衝撃を感じ、がくりと膝を付いてしまう。
「だが……重騎士のすることは一つ。守りは任せよ」
 ガッツソングを唄い、自らを奮い立たせるようにアルファルドは魔物の前に立ち塞がる。自分達を守る誇り高き重騎士の背に向けて、エリスもヒーリングウェーブを浴びせかけていった。
「はっ!」
 気合と共にジギィがソニックウェーブを放ち、魔物の体を貫いて駆け抜けてゆく。びりびりと響くその衝撃が伝わって魔物も僅かではあるが身を震わせた。
「みんなの力が集まれば……」
 攻め切る。その意志を示すようにヴォイドスクラッチを放つミサリヤ。巨大剣で何とか防御する魔物だが、その脇にニオスが迫る。双頭剣にキルドレッドブルーの力を込めて振り抜くが、魔物は寸前で身を引いて直撃を避けていた。ガードされたような形で魔炎と魔氷は伝わっていないが、アーマーブレイクの効果で鎧強度が無い為ダメージは幾らか入っているようだ。びしっと魔物の体に傷が刻み付けられた。
 そして魔物の体に残るレイクの呪痕が少しずつではあるがダメージを与えていた。一度の威力は決して大きく無いかもしれないが……効果が続けば続くだけそれは着実に積み重なってゆく。
「全力を以ってその志に応えねばな」
 レイクが素早く描く紋章が炎を生み出す。ミレナリィドールが融合し、紋章の力を集約した巨大な火球が解き放たれる。
 轟っ!
 激しい音を立てて着弾するエンブレムノヴァが魔物の体を焼く。その威力に耐えるように魔物は地面を踏み締め……ざざっと押されながらも踏み止まる。
 そして握り締める巨大剣に、力が凝縮されてゆく。察知して目前へと飛び出すアルファルド。
「構わず打ち倒せ!」
 ずがん! 振り下ろされた一撃がアルファルドの体を地面に叩き付ける。だがその言葉に答えるように、巨大剣を振り切った魔物に巨大な火球が迫る!
「ここで絶対に落とします」
 更にケラソスから撃ち出されたのは再びのエンブレムノヴァ。そしてレイクのものと同様にミレナリィドールの力も宿っている。この威力は半端ではない。
『……!』
 魔物の頼りの強固な鎧も今はアーマーブレイクによって意味を成さない。呪痕撃のダメージは着実にその身に響いてゆく……魔物は遂にがくりと片膝を地面に着いた。
「誰に頼まれた訳じゃないけど」
 真っ直ぐ掲げて構えるエリスの両手杖『黒猫の杖』が虚空に巨大な紋章を描き出す。その背に寄り添うミレナリィドールが七色の光に変じ、その紋章の中へ吸い込まれるように融合していった。
「あなたを倒させてもらいます」
 体を包む黒炎と共に杖を握り締め、描いた紋章の中央を貫く。生み出された火球はレイク、ケラソスに続いて三度目のエンブレムノヴァ!
 轟っ!
 まさに轟音。全てを呑み込んで焼き尽くすかの如き一撃を回避する力は魔物には残されていなかった。そのままの体勢で直撃を受け、炎に包まれて崩れゆく。
 ……がしゃん
 最後は小さな金属音となって、鎧が砕けて落ちる。主を失った巨大剣がガラガラと地面の上を跳ね……力なく横たわった。

●戦いの終わり
「最早誰からも顧みられることは無いのだろうが、せめてここを守っていた戦士が存在していた証として」
 レイクは残った鎧の残骸を埋葬し、巨大剣を墓標として大地に突き立てる。
「強い敵だったよね、きっとすごい戦士だったんだ」
 その前で別れを告げながら戦いを振り返るミサリヤ。そして仲間達にお疲れ様と労いの言葉をかける。
「もう二度と迷わぬよう……鎮魂の歌を」
 そしてケラソスが静かに鎮魂歌を奏で始める。その静かで、安らぐような調べにしばし一同は耳を傾けながら祈りを捧げるのであった。

「……疲れた」
 小さく息を吐いて歩き出すニオス。こうして冒険者たちは大剣の石像――モンスターを打ち倒し、彷徨っていた冒険者の魂に安らぎを与え――その地を後にするのであった。
 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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