陽なたぼっこ毛布市



<オープニング>


●陽だまりの草原
 秋の空を薄絹のように柔らかなものに感じたことはあるだろうか。
 透きとおるような白の絹糸を露草の花の雫で染め、淡い光沢を孕んだ青の絹糸を繰り織り上げた、柔らかですべらかな、薄い薄い絹の布。穏やかな青に澄む空は手を伸ばせばふわりと包み込んでくれそうな程に優しくて、天頂を行く太陽ですら薄紗を透かしたかのように柔らかに輝いている。
 ゆるゆると空を行くのは、刷毛で軽く綿毛を刷いたような淡く儚い白の雲。
 柔らかな絹の空と綿の雲の合間を行く雁達は、一体どのような心地でいるのだろう。
 ぼんやりそんなことを考えながら、藍深き霊査士・テフィン(a90155)は暖かな陽射しの降る草原の真ん中に寝そべった。夏の鮮やかさを失った草々は蕩ける寸前のバターのような淡い黄を帯びて、穏やかな枯草色へと変わっていく。秋晴れの空の下で乾いた枯草はふわりと軽やかでしなやかで、大地に寝そべる身体を優しくその身に受け止めた。深く息を吸い込めば、胸の中には陽なたの匂いをいっぱいに溜めこんだ、何処か芳ばしさすら帯びた枯れ草の香りが緩やかに満ちていく。
 陽射しと大地の匂いを存分に楽しんで、テフィンは柔らかな起毛が心地好い毛布に包まった。
 ふんわりと陽の光を蓄えた毛布からはやはり暖かな陽なたの匂いがする。至福の眠りにとろとろと意識が溶けていくのを感じながら、テフィンはこの毛布を買った日のことを思い出していた。
 こんな暖かな陽射しの降る秋の日には、確か。
 見上げる程大きな金木犀の大樹を目印に様々な毛布を商う商人が集い、草原に市が立つのだ。

●陽なたぼっこ毛布市
「見渡す限りに広がる草原の真ん中に、大きな大きな金木犀の樹がありますの」
 温かなカモミールティーを皆に勧めながら、酒場の一角でテフィンがそう切り出した。
「よく晴れたある秋の日に、その金木犀の周りで毛布市が開かれるのですけれど……もし良ければ、その毛布市に……御一緒しません?」
 昼下がりの陽射しを集めたような蜂蜜をお茶に落としつつ、潤んだ瞳を細めて微笑むテフィン。
 暖かな陽射しの下で陽なたの匂いのする毛布を買い求め、柔らかな草の上でその毛布に包まって昼寝をするのがとても幸せなのだと彼女は語った。
「商人の方々は、草原に広く散らばって毛布を広げていますの。品物の見せ方も……様々」
 淡い空色に染めた毛布を明るく黄葉した水楢の枝に掛ける商人もいれば、薄桃色で桜花を描いた春らしい毛布を深い薔薇色に紅葉した花水木の枝に掛ける商人もいる。荷運び用のノソリンの背中に掛けられた生成色の毛布などはより温かそうに見えるのか、手に取る客も多いという。
 また、天幕を広げた大きな敷布の上に何枚もの毛布を広げ、訪れた客が実際にその上に寝そべることができるようにしている商人もいるのだとか。草原の真ん中で暖かな毛布に転がり空を仰げば、たとえようもなく幸せな心地になることが出来るだろう。
「様々な柄の毛布を見比べて、好みの柄の品をを選ぶのも……また、楽しみのひとつかと」
 穏やかな眠りと夢を願ってか、この市で見られる毛布には美しい花や景色が描かれたものが多い。暖かな色合いに咲く花々や、美しい羽を持つ小鳥達、そして光に満ちた草原や森。
 次いで多いのは、祈りを篭めて流麗な曲線で綴った紋様を描いた毛布。生成りの地にひとつの色で幾何学模様を描いた物も飽きの来ない味わいがある。若しくは、いっそ無地の毛布を選んでしまっても良いだろう。絹などの光沢は無地の毛布の方が映えるに違いない。
「綿に絹に、羊毛や、繊維の宝石と呼ばれる高地の山羊毛まで……素材も選り取り見取りですの」
 頬に手を遣ったテフィンは陶然とした吐息を洩らす。
 柔らかで暖かな美しい毛布を見て回ることも、買い求めた毛布に包まって草原で昼寝をすることも、彼女には幸せでたまらないことらしい。
「じっくりと時間をかけて毛布を選ぶのも楽しいでしょうし、早々に毛布を決めてゆっくりと昼寝をするのも楽しいと思いますの。ピクニック気分でお弁当を用意していくのも……何だかとても楽しそう」
 皆様と一緒ならより楽しむことができるでしょうから、とテフィンは嬉しげに声を弾ませた。

 暖かな陽射しの降る草原で、陽なたぼっこの毛布市。

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参加者
NPC:藍深き霊査士・テフィン(a90155)



<リプレイ>

●陽なたぼっこ毛布市
 澄んだ露草に染まる空は遥か彼方まで広がって、彼方へ向かう程その色を淡くしていく。
 柔らかでしなやかな薄絹でふわりと世界を包み込んでくれるような空には優しく輝く陽がかかり、見渡す限りに広がる草原に暖かで穏やかな秋陽を投げかけていた。
 草原の真ん中には艶やかな濃緑の葉を茂らせた大きな金木犀が聳え、深い緑の濃淡の中に光の粒を散らしたように明るい橙の花を裂かせている。金木犀の周り、淡い緑と穏やかな枯草色が濃淡を生み出す秋の草原には、暖かな陽射しに優しく照らし出された色とりどりの毛布が広げられていた。
 鮮やかな青空と真白な雲を映した毛布を手に取れば、細く柔らかな毛がふんわり掌を包み込む。
 そっと頬に当ててみれば厚手の毛布のふかっとした弾力が心まで受け止めてくれたような気がして、ファオはよく晴れた日の空を抱きしめる様な心地で空色の毛布を胸に抱いた。
 ふんわり広がってくる陽なたの匂いに眠気を誘われて、気持ち良いのおとスルクがのんびり欠伸を洩らす。頬を緩めたハーゼは辺りに広がる暖かそうな毛布を眺め、毛布の山が色とりどりの羊に見えてくるなぁと笑みを交えて呟いた。夏の草原を映した緑の毛布に触れれば陽だまりの暖かさが掌に伝わって、あまりの心地好さに思わず笑み崩れてしまう。買い終わったら草原で過ごそうかと言うスルクの腕には日向色の射した毛布が抱えられていて、何だか見ているだけでも幸せな心地になれた。
 花に包まれた美しい城を描いた毛布で眠れば、童話のお姫様になった夢でも見られるだろうか。
 そんな想像をするだけでも楽しくて、イングリドは浮き立つ心のままに様々な毛布を見て回る。触れてしまえばきっと離れがたくなるからとは思っても、煙るような毛織独特の風合いを眺めている内に知らず知らず手が伸びて、ふんわりとした柔らかさの中に蕩けそうな心地になった。
「知ってる? ウールって優秀なのよ。赤ちゃんの体温調節に適してるんですって」
 羊雲のように軽く柔らかな毛布に包まりながら、人差し指を立てたマリアが学んだばかりの知識を披露する。産まれてくる義理の孫のためにと張り切るマリアの様子に微笑みながら、マッシロは彼女が買い求めた毛布を抱えてやった。進んで持つなんて変わり者ねと言いつつ「でもありがと」と付け足してくれる彼女のために、やっぱり雲みたいな白の毛布を買おうかと思う。
 丁寧に起毛させた毛布は優しい陽の温もりをたっぷり蓄えている。
 細かな毛のひとつひとつに陽の粒子が宿っているような気がして、ガルスタは穏やかに瞳を細めた。陽だまりの匂いの毛布に包まれるの安らぎは母親の腕に抱かれる心地にも似ていると思いながら、厚手の毛布を求めてひとつひとつ手触りを確かめていく。
 様々な毛布に夢見心地で触れながら、インドアはじっくりその手触りを吟味する。ふと目を惹かれた水辺の鳥を思わせる翡翠色の毛布に手を乗せれば、その柔らかさと滑らかさに思わず笑みが零れた。選び取ったそれを「この毛布、ふわぬく、ですよ」とアドアに渡せば、嬉しげに毛布を抱きしめた彼女が「じゃあインドアにはこれ!」と薄萌黄と柑子を市松模様にした毛布を差し出してくれる。彼女の優しさが詰まった暖かな毛布に頬を埋めれば、この上なく幸せな心地になれた。
「まず第一に暖かいのは当然だよな。で、肌触りがいいやつじゃないと嫌だ。重くても被っていて辛いよな……。でも大きさがないと困る。最後に……できればシンプルに白いやつがいい」
「長っ!」
 毛布選びを任されたフィードは、つらつらとこだわりを語る相棒に反射的に突っ込んだ。ラジシャンは悪びれることなく笑みを浮かべ、よろしく頼むぜと彼の肩を軽く叩く。このお礼はまた今度にするからさと自然に紡がれた言葉に「期待してる」と返しつつ、フィードは陽が傾くまで市をめぐる覚悟を決めた。
 綺麗に畳んだ毛布を抱きしめれば澄んだ青の色の上を柔らかな光が渡り、まるで水の波紋みたいとティーは幸せそうに口元を綻ばせる。明るく輝く翡翠色の絹毛布に見入っていたノリスは、これに目をつけるとはお目が高いと声を掛けてきた商人を相手に早速交渉を開始した。天蚕のみを使った毛布は非常に稀少な品なのだ。
 春霞を思わせる桜色の毛布を手に取って、特大の毛布を探していたナツルォは目元を和ませ安堵の息をつく。冒険者である以上いつ何があるか判らないから、大切な身内には全てを惜しみなく与えたい。柔らかな毛布が想いを暖かに包み込んでくれれば、と小さく笑みを零した。
「あ、あのね、アデイラさん、良ければ選んで欲しいな、なんて……」
 消え入りそうな語尾に躊躇いを滲ませるアリシアに微笑んで、アデイラはたっぷりと時間をかけて一枚の毛布を選び出す。暖かな桜色に真珠色の花を咲かせたシルクのそれですっぽりアリシアを包み、もっと思いっきり甘えてくれたら嬉しいなぁと毛布ごと抱きしめた。
 夢に泣く夜は今でもやっぱり訪れるから、暖かな優しさで目覚めを包んでくれる、毛布を。
「……赤ん坊の肌は敏感だから、優しいモノを、か」
 面倒だなと呟きつつも嬉しそうな夫の様子が嬉しくて、ハルキは繋いだ手を確り握り締めた。手を携え絆を結び、これからずっと家族として生きていく。真白なふんわり毛布を陽射しに翳し、視界の隅に映った人影に会釈をすれば、藍深き霊査士・テフィン(a90155)が嬉しげに顔を綻ばせた。
 産まれたら知らせると何気なく言えば殊の外喜ばれ、ヤトは擽ったいような心地で軽く肩を竦める。かつては己の血を絶やすことを望んでいたというのに、いざ妻が身篭ってみれば、魂が震える程の喜びと幸せがやってきた。暖かで柔らかな至福を感じながら、優しい手触りの毛布を選び取る。
 鼻先を擽る陽の匂いと微かな金木犀の香りに眠気を誘われつつも、まだ寝てらンねぇとシイノは意欲的に毛布を見て回った。寝具への拘りは捨てられないらしい彼について歩きながら、ヤクシは色も素材も異なる様々な毛布に興味深げに瞳を細める。
 多分毛食動物なンだと思うとこっそり連れに妙なレッテルを貼りながら、シイノは見出した不思議な手触りの毛布を包んで貰う。後は惰眠を貪ると言えば、「起きなかったら無理矢理連れて帰りますよ」と面白がるようにヤクシが瞳を瞬かせた。
 陽だまりにほんのりと甘い花の香りを溶かした草原の風は、心を柔らかに暖かに絡め取っていく。

●陽だまりの海
 暖かな陽射しをたっぷり浴びた草の上に倒れ込めば、陽だまりの匂いと何処か優しい草の香りがふわりと立ち上った。細かな枯れ草のかけらも舞い上がり、淡い金を帯びた陽射しの中できらきら踊る。
「ね、ケルはやっぱどこでも寝れる?」
「あは。もちろん、だよ〜。冒険者やってると、自然とそうなるよね〜?」
 薄桃色の毛布に包まり幸せそうに頬を緩めるリッカに訊かれ、ケルは暖かな陽気に瞼を落としそうになりつつ答えを紡いだ。そのまま蕩けるように口元を綻ばせ、至福の微睡みへと沈んでいく。寝ちゃったのと彼の顔を覗き込んだリッカも小さな欠伸をして、穏やかな眠りへと引き込まれていった。
 蜂蜜を落としたホットミルクがあれば、もっと幸せ。
 優しく柔らかにけぶる春草色が陽だまりに溶けていく意匠の毛布を膝に掛ければ、心までもが陽だまりに包まれる想いがする。口元を綻ばせたオリエが「いっぱい作ってあるよ」とサンドイッチを広げて見せれば、ふわあと瞳を瞬かせたボギーは素敵なのですと三回言って、ぱたぱた嬉しげに尾を振った。
 風に舞った枯草のかけらが治まるのを待ち紅茶を淹れれば、心温める香りが陽の中に立ち上る。
「アデイラもお昼寝しないなぁ〜ん?」
「ん〜、これ描き終わってからかなぁ?」
 桃色の羊のようにもこもことした毛布に包まったニノンに訊かれ、アデイラは淡い藁色のパステルを置いて少女の髪をそっと撫でた。柔らかな花葉色の毛布に包まったメリーナがごろごろと転がってくる様に瞳を瞬かせ、皆もこもこに包まってまうのが好きなん、と楽しげに笑みを零す。
 ほっこりした暖かさの中でゆったり過ごせるのが幸せ、とメリーナは緩やかに瞼を落とした。
 大きな金木犀の下から梢を見上げれば、艶やかな緑の天蓋に太陽のかけらが散っているかのよう。
 心を暖かな光で包む陽の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、エルスは蜂蜜色の毛布の中で丸まった。
 甘い花の香漂う中で暖かな毛布に包まって、アクラシエルは傍らの気配に安堵と至福を感じつつ眠りに落ちる。良い眠りをと小さく声を掛け、ローは確り握られた手に落とした瞳を草原へと向けた。穏やかに吹く風が運んできた陽の匂いと枯草の香に瞳を細め、何時の間にか傍らに腰を下ろしていたウィーの姿に小さく笑みを零す。
「此処の風、気持ちいいね……」
 他愛無い言葉を紡ぎつつ胸に抱いた包みからは優しい柔らかさが伝わって来て、ウィーは微かに口元を綻ばせた。
 柔らかな枯草の上に寝そべり稲穂を描いた毛布に包まれば、穏やかな温もりが胸に満ちていく。
 こんな幸福なひとときを伝えていくのもひとが生きる意味のひとつだろうかと思いつつ、シンクロウは実りの色の毛布の中で小さく伸びをした。穏やかな時間がすごく嬉しいと幸せそうに微笑むエミスに笑みを返し、陽だまりと幸福の温もりの中へゆるりと意識を溶かしていく。
「……少し甘えて欲しいのじゃよ?」
 微かに頬を染めつつ膝を叩いて見せるプラチナが何だかとても可愛らしくて、ユウヤは破顔しながら冴える様な優しい色の花を咲かせた毛布で彼女を包み込んだ。こんな日は「誰か」の体温を感じたいんだよと囁いて、大きな毛布に共に包まりながら柔らかな膝に頭を乗せる。
 幸せな温もりは、心を蕩かすに足る優しい甘さに満ちていた。
 淡い刈安色の細葉を幾重にも重ねた枯草の褥は想像以上に柔らかで、暖かな陽の匂いをいっぱいに吸い込みながら、リアは幸せな心地で草の上に横たわる。傍らに寝そべる夫が包まった生成色の羊毛布に触れ、自身は柔らかな綿毛布に包まったまま、もそもそと彼の毛布に潜りこんでみた。
 妻の気配を感じ取ったヴァンアーブルは瞳を緩め、ふと擡げた悪戯心のままに柔らかな彼女の身体を抱きしめる。この方が落ち着くなと笑ったリアはそのまま寝息を立て始め、微かに洩れてきた寝言に至福を覚えつつ、ヴァンアーブルもまた穏やかな微睡みの海へと揺蕩っていった。
 優しいひとときと愛しい温もりがあるならば、他には何も望まない。

●陽だまりの夢
 淡く金色がかった陽光は彼方まで広がる草原に射し込めて、穏やかな温もりを積み重ねていく。
 枯草の上に、毛布の上に。光は細かな金色の粒子となってきらきらと眩く踊っていた。
「あったかくてふわふわの物を触っていると、幸せな気持ちになれるのじゃ……♪」
「折角の気に入りの毛布に弁当落として汚すなよ?」
 しなやかな山羊毛の中にうっとりと頬を埋め、蕩けるような笑顔でだし巻き卵を頬張るコトナに苦笑しつつ、クレスもたっぷり出汁を吸い込んだ椎茸を己の口に運ぼうとする。が、そっちも美味しそうじゃのぅと呟かれ、呆れたように息をつきながらも、十字の切れ目を入れた椎茸を彼女の口へ運んでやった。
 陽の匂いに淡く溶け込む金木犀の香に機嫌よく尾を揺らし、ミナトは柔らかな枯草の上に横たわる。だが途端にばさりと白茶の毛布を被せられ、昼寝で永眠させる気かと跳ね起き毛布を抱え込んだ。
「詫びに茶をもて」
「な、何て卑怯なっ!」
 買ったばかりの毛布を人質に取られ、己の所業を棚に上げたファリアスは被害者面して渋々と茶を淹れる。華やかに香る朱色の茶を手渡せば「あんがとさん」と悪戯っぽく笑われたから、どういたしましてとふんぞり返って答えてみた。
 濃緑に優しい橙の星が散る金木犀の下は、陽と花の溶け合う幸せの香りに満ちている。
 陽も花も枯草の香りも胸いっぱいに吸い込んで、レーダは生成に雪結晶が踊る毛布と何処か懐かしい安心感に包まり木漏れ日の下で丸くなった。その様子に何か思ったところがあるらしいアデイラは、身を屈めて「代わりにはならんけど」と柔らかなキスを額に落とす。軽く草を踏む足音に顔を上げ、今度は瞳に涙を溜めて木陰に逃げ込んできたルレイアを抱きしめた。
「……ひとりで泣いたらあかんのよ?」
 暖かな場所はちゃんとあるからと眦に口づけられて、ルレイアは小さく口元を綻ばせる。涙を払うように瞬いて「暖かな幸せの中から優しい毛布を探してくるのですわ」と再び陽だまりへと足を踏み出した。
 秋の陽だまりの中に、春の花の色が翻る。
 淡い蒲公英色に染められた軽やかな毛布は、ベルベルの呼ぶ風のいたずらの力に応え、柔らかな陽射しの中にふわふわ踊る。風が止めば陽の温もりを孕んだ毛布はベルベルの頭にふんわりかかり、陽だまりの匂いと花の香りで彼女を包み込んだ。
 澄んだ海の青が細波の如く波打つ艶やかな絹の毛布に包まって、アルーンは木漏れ日の中に身体を横たえた。すべらかな絹は凪いだ水面を思わせたから、眠りの波間に故郷の夢を見る。
 甘い焼き菓子も瑞々しい胡瓜のサンドウィッチも、慈しみに溢れた幸せの味。
 暖かな陽射しの下でペテネーラの用意したお茶を満喫し、アデレイドは至福に満ちた吐息を洩らす。自分の毛布を持つのもピクニックも初めて、と椿の咲く毛布に包まる彼の傍らでは、こちらも幸せそうに口元を綻ばせたセラフィンが淡い菫色の毛布の中で丸くなっていた。
 時折流れて来る金木犀の香りに瞬きをする少女の額を「もう少し寝てなさいな」と撫で、ペテネーラは二人の無邪気な寝顔に笑みを零す。
 どうか、この子達の幸せな寝顔がいつまでも続きますように。
 春の空を漂う雲のように柔らかな毛布を被り、セッカは草原の中に仰向けに寝転がってみた。
 柔らかに波打つ草は彼方まで広がって、澄み渡る空は涯てなく広がっている。世界の真ん中にいるような心地になりながら、こんな優しい日が続けばいいのにと暖かな眠りの中へ落ちていった。
「俺の寝つきの良さに驚け〜」
「そちらこそ、吠え面かいても知りませんの……!」
 何だかよく解らない対抗意識を燃やしているらしい夫とテフィンを交互に見遣り、サナは夫の毛布の中へ潜り込む。陽の光を胸いっぱいに吸い込めば、陽だまりと枯草の匂いが体に満ちて、たとえようもなく幸せな心地になった。見上げる空には、ゆったり流れる羊雲。
 俺が数えるからなと言えば「私も最後まで頑張るー」と答えたはずなのに、アモウが羊雲を三十まで数えたところで、サナはすっかり心地好さげな寝息を立てていた。妻の向こうで春色毛布に包まっていたテフィンもとうに眠りに落ちていて、アモウは二人の頭を撫で欠伸をしてから瞳を閉じる。

 優しい陽だまりの中で、幸せな夢が見れますように。


マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:48人
作成日:2007/11/19
得票数:恋愛2  ほのぼの27 
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