第2次ドラゴン界侵攻作戦:夜闇を抜けて



<オープニング>


「皆様に集まっていただいたのは、他でもありません」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、酒場に集まった冒険者達に一礼すると、第2次ドラゴン界侵攻作戦の手順について、説明を始めた。

 第2次ドラゴン界侵攻作戦は、第1次の作戦と同様にドラゴン界のドラグナーを掃討し施設を破壊する作戦となる。
 既に一度行っている作戦であるので、段取りについては、多くの冒険者が理解している所だろう。

 まず、主力である本隊がドラゴン界に突入。
 その後、拠点を設定した上で、ドラグナーが集まっている場所や重要そうな施設を偵察。
 偵察によって得られた情報を元に、その施設を破壊するチームを派遣するという段取りである。

「皆様にお願いしたいのは、作戦目的である『ドラグナーの掃討と施設の破壊』を行う事です。
 拠点の維持防衛、迎撃のドラゴンへの対応などは本隊に所属する冒険者が行いますが、ドラゴンとの遭遇戦は避けられないでしょう。
 ドラゴンの目的は施設の破壊を阻止する事ですので、皆様は、ドラゴンとまともに戦わず当初の目的を果たした後は、急いで撤退するようにして下さい。
 本拠地の方面に撤退すれば、もしドラゴンが追ってきても本隊の冒険者達が迎撃を行ってくれるでしょう」
 ユリシアは、ここまで言うと一息つき、集まった冒険者の顔を一人一人確認しながら、こう続けた。

「今回の作戦は、短い期間に、どれだけの有効な効果を達成できるかが勝負となります。詳しい作戦内容については、他の霊査士から説明があると思いますが、皆様の活躍を期待しております」

 このユリシアの説明を聞いた冒険者達は、自分達の役割分担を確認する為、それぞれの霊査士の所へと移動したのだった。

「どうも、ミッドナーです。皆さんにお願いしたいのは、ドラゴン界にある施設……その1つの完全破壊です。偵察部隊が帰還後、その情報を元に襲撃を開始する事になっています。情報の精度などは本隊の作戦成果によりますが、仲間の仕事を信じて待つしかありません」
 夜闇の霊査士・ミッドナー(a90283)はそう言うと、ふう、といったため息をつく。
「……ですが、状況によっては攻撃目標が変わるかもしれません。施設自体の構造は前回の大作戦と然程変わらないと思われますが、偵察の結果見つからなかった……という場合もありえます。その場合は皆さんにはドラグナーの掃討や住処の襲撃へ向かっていただく場合もあり得ます。その際の行動についても相談しておいてもらいたいと思います」
 空のワイングラスに空けたばかりのワインを注ぐと、ミッドナーは再び溜息をつく。いつもの彼女にしてみれば、口調にキレがない。
「敵の情報に関してですが……第1次ドラゴン界侵攻作戦で得られた情報からの類推となりますが、ドラグナーは100体前後が予測されます。護衛のドラゴンがいるかどうかは不明ですが、数体のドラゴンと対峙する可能性もあるでしょう。充分すぎる程に策を練っても足りないという事はありません」
 不明、というような疑問符のつく言葉が並ぶ。
 あまりにも不確定な情報でしか冒険者たちを送り出せない事に対する溜息なのだろうか。
「ドラゴン界の施設が、どんな役割を持っているのかは分かりません。しかしドラゴン界そのものが、世界に害する物である以上、そこにある施設もまた邪悪なものなのは間違いありません。重ねて言いますが、目標は施設の完全破壊です。ですが、無理に施設を破壊に拘り撤退の道が閉ざされてしまえば、皆さんの帰還も難しくなってしまいます。遂行が無理だと判断すれば、撤退するのも勇気と言えるでしょう」
 注がれたワインには一切手をつけず、ミッドナーは冒険者達の目を覗き込むようにして顔をあげる。
「……このような不完全な情報でしか皆さんを送り出す事ができず、自身が危険に赴く事も出来ない。非常に口惜しいですが……信じています。最良の、結末を」
 だから、祈ったりはしてあげません。
 ミッドナーはそう言うと、精一杯の笑顔を冒険者達へと向けるのだった。

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参加者
業の刻印・ヴァイス(a06493)
久遠槐・レイ(a07605)
聖剣の王・アラストール(a26295)
真っ赤なお伽話・デスペラード(a27803)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
闇色の・モニカ(a46747)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
蒼の氷檻・コーネリアス(a65311)
暁天の修羅・ユウヤ(a65340)
絶望の帳を切り裂く銀焔・ディート(a66461)


<リプレイ>

「さて……竜が出るか蛇が出るか」
 無銘なる赤・デスペラード(a27803)の声が、ドラゴン界に響く。
 どちらが出るかといえば竜なのだが、物の例えというものである。
 彼女達の遥か前方にあるのは、巨大な円柱……のようなもの。
 前回の大作戦で見たものとあまり変わりがあるようには見えず、恐らくは役割も同じようなものなのだろう。
 ただ違う事は、これは「完成」している、ということだ。
 黒く輝く円柱の材質は不明だが、前回の結果から見る限り、何か理解できぬ不気味なものである事に間違いはない。
 そして、それがもたらすであろう影響も……ランドアースにとって良い影響をもたらすものではないだろう。
 ならば、するべき事はただ1つ。元より、その為にきたのだから。
「……破壊工作か」
 言いながら業の刻印・ヴァイス(a06493)は、霊査士と交わした言葉を思い出す。
 戻ってきたら美味しいお酒と食事をご馳走してくれるか、という言葉。
 それは間接的に「生きて戻ってくる」と宣言した証。
 円柱の周りには無数のドラグナー達が蠢いてはいるが、ドラゴンの姿はない。
 これならば、すぐに円柱を壊して撤退する事も不可能ではないかもしれない。
「むむっ、前回参加できなかった分しっかり破壊活動してがんばらなくちゃ。またミッドナーさんに頭をなでなでしてもらうんだ!」
「うむ、ドラゴン如きに負ける気はせぬのぅ……何せ愛する者と共にあるのじゃから。最良の結末を得る為に、必ず成功させるのじゃ」
 絶望の帳を切り裂く銀焔・ディート(a66461)と光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)の言葉に、絶望の色は微塵としてない。
 この任務を成功させ、同盟の。ランドアースの未来へと繋がる道を切り開く。
 恐らくは、その一点のみしか見えてはいないだろう。
「再びのドラゴン界……。頑張ろう。戦う覚悟、力を持つ覚悟。……そして、戦場を駆る覚悟を掲げて」
「全員で帰還する事。次いで倒れない事……それが、癒し手の責任。だから絶対に、最後まで護りきる」
 蒼月の氷華・コーネリアス(a65311)と闇色の・モニカ(a46747)の言葉に仲間達は頷き、準備を始める。
 襲撃は素早く、確実に。何故なら、此処は敵地。そして、敵にとっては本拠地。故にそれは冒険者達とは少し離れた場所を飛翔していた。
「……どうだ、ミザル」
「その足りない頭で考えるがいい、イワザル。人間どもの蠢く音など、そこら中で聞こえておるわ」
「いい加減にしろ、キカザル。この距離では判らんが、恐らくあの場所に来る可能性は高いだろう」
 それぞれの名は、静寂・イワザル。無音・キカザル。無明・ミザル。
 その威風堂々、かつ邪悪な姿はドラゴン以外の何者でもない。
 三体のドラゴン達は、ドラゴン界の空を高速で飛翔する。
「……ならば、この護衛任務も退屈なものにはなるまい」
「それには同意しよう。多少の力を得たと粋がる人間どもを、すり潰してやるも一興」
 ドラゴン達の接近を、まだ冒険者達は知る術もない。
「未知の中にあって、今もなお手探りの戦いが続く――未だ、終わりは見えない」
 突撃の直前、心を静めるように天壌の劫火・アラストール(a26295)は剣を握る。
「では諸君、さっさと目標物を壊してこの薄気味悪い場所から離脱しようじゃないか」
「そうだね……行こう」
「ああ、一気にいくぜ」
 ピースメーカー・ナサローク(a58851)に久遠槐・レイ(a07605)と暁天の修羅・ユウヤ(a65340)が頷き。
 冒険者達は、一斉に飛翔する。どよめくドラグナー達は、その数およそ100体。
「……らァッ!」
「華麗に舞うは翔剣士の極み……いざ、参る!」
 アラストールとデスぺラードの流水撃が、レイとコーネリアスのナパームアローが、ユウヤのデンジャラスタイフーンが、並みいるドラグナーを粉砕していく。
 ドラグナー自体は、然程弱い存在ではない。
 むしろ並みのモンスターなどよりも余程強力な存在であり、知識とてある。
 実際に単体では敵わぬとすでに理解し、纏まって攻撃を始めているが……それとて、ドラゴンウォリアーと化した冒険者達の前では、儚い抵抗に過ぎない。
「どんどん行くよ〜っ!」
 ディートのデストロイブレードが、ナサロークの大岩斬が円柱に撃ち込まれる。
 ドラゴンウォリアー2人の攻撃を受けて、大きく揺らぐ円柱。
 流石に完成した円柱は、一撃で破壊というわけにはいかない。
 しかし、大きく揺らぐ様子は充分に破壊が可能である事を明確に示していた。
「よし……もう一撃いくのじゃ!」
 続けてプラチナの大岩斬が撃ち込まれ、円柱にヒビが入るような音が聞こえ始める。
 もう少しで壊せる。冒険者達が勝利を確信した、その時。
「ドラゴン……!」
 圧倒的な速度でやってきたそれは、間違いなくドラゴン。
「そこまでだ、人間」
 言葉と同時に放たれたのは、音もなく死角より放たれた黒い刃。巨大な斧の刃をも連想させるソレはレイを深く薙ぐが、即座にモニカのヒーリングウェーブが広がっていく。
「この攻撃……元々は忍び……か!?」
 そう、ヴァイスの目に映ったそれはシャドウスラッシュ……のようにも見える。見慣れたそれよりも、もっと巨大で、もっと禍々しい刃である、という差はあるが。
 アラストールは剣を構え、眼前のドラゴンを見据える。
 警戒はしていた。だが、ドラグナーは予想していた数よりも遥かに多かった。援軍という形のドラゴンに対処が遅れたとて仕方の無い事ではあった。
「我が名は無音・キカザル。そのくだらん脳髄に刻んだならば、微塵と消えよ」
 襲い来るドラゴンの更に向こう。もう1体……いや、2体。
 それらがここまで来るには時間がまだ大分ある。恐らくは、眼前のキカザルなるドラゴンの移動速度がかなりのものであったのだろう。
 それは、こちらにとっては存分に有利な条件である。
「――この一刀は千の雷に通ず」
 眩く輝く電撃が、轟音と共に放たれる。ドラゴンウォリアーと化したアラストールの放つそれは、もはや電撃というよりは一筋の雷。
 合わせるように放たれたレイのナパームアローも大爆発を起こし、キカザルの巨体を大きく揺らす。
「どうした? 最強生物とやらは、我等如きも退けられんか?」
「あまりに貴様らの存在がちっぽけすぎてな、強大にして巨大なるこの身では、塵程にしか感じぬのだ。最強生物であるが故の苦悩、理解せよというだけ無駄であろうがな」
 アラストールの言葉にキカザルは、ドラゴンとしては極めて冷静に返す。
「傷付け奪うしか出来ないくせに何故威張れるか。俺ならばその不完全さに死にたくなる。あぁ……そう考えるだけのアタマも無いのか」
「ならば死ぬがいい、最たる不完全生物どもよ。我とて忙しい身だが手伝ってやろう」
 放たれた無数の巨大な気の刃達がモニカを襲い、思わず膝をつく。
 時間は、稼げている。あとは、仲間を信じるのみ。
「負けられぬ。生きて帰る……それだけだ」
 コーネリアスの薔薇の剣戟が円柱を更に大きく揺らがせると、円柱に入っていたヒビが大きく広がっていく。
「ぬうっ……猪口才な人間どもめが……っ!」
 キカザルは円柱の破壊を止めようとするが、レイとアラストール、モニカの3人がこれを通さない。
「よし……あと一撃だ!」
 ユウヤとデスペラード、ヴァイスの一撃が円柱に叩き込まれると、円柱から黒い液体が染み出すようにして、全体が溶けるように消えていく。
 そう、これで円柱の完全破壊は成されたのだ。
「こちらの目的は達成した。さあ、速やかに撤収といこうじゃないか」
「よし、皆撤退だよ!」
 ナサロークの言葉に答え、ディートが素早く撤退の合図を出す。
 それと同時か、少し遅いかのタイミングで残り2体のドラゴンも到着する。
「施設が……キカザル、貴様人間如きに何をやっていたのだ……!」
「煩いぞ、この愚図どもが! 貴様等がチンタラ飛んでいたせいだろうが……!」
「待て、2人とも。今は人間どもを追うべきだろう」
「他人面をするなイワザル! 人間どもなど、我等3人であれば数秒もたたず挽肉に出来るだろうが!」
 ドラゴン達にとっては、想像すらしていなかったであろう事態。彼等にとって人間とは、すぐに殺せて当然の存在であるが故の混乱だ。
 そしてこれもまた、冒険者達にとっては充分すぎる好機であったのだ。
 ヴァイスとレイがミストフィールドを展開し、同時に冒険者達は次々に撤退していく。
 このまま本陣まで逃げ切るのは容易だろう。完全勝利。そんな言葉が頭に浮かぶ。
「戦い抜いた果てに……か」
 コーネリアスの呟きに、アラストールは静かに目を閉じて考える。
 終わりの見えぬ戦いの事を。
 暗闇の中でも抱き続ける想いは闇を照らすのだと信じて。
 ドラゴン界の空を、冒険者達は飛んでいく。
 今掴んでいる最良の結果が、次なる大作戦で最良の結末をもたらす一矢となると信じて。


マスター:じぇい 紹介ページ
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