<リプレイ>
「さて……竜が出るか蛇が出るか」 無銘なる赤・デスペラード(a27803)の声が、ドラゴン界に響く。 どちらが出るかといえば竜なのだが、物の例えというものである。 彼女達の遥か前方にあるのは、巨大な円柱……のようなもの。 前回の大作戦で見たものとあまり変わりがあるようには見えず、恐らくは役割も同じようなものなのだろう。 ただ違う事は、これは「完成」している、ということだ。 黒く輝く円柱の材質は不明だが、前回の結果から見る限り、何か理解できぬ不気味なものである事に間違いはない。 そして、それがもたらすであろう影響も……ランドアースにとって良い影響をもたらすものではないだろう。 ならば、するべき事はただ1つ。元より、その為にきたのだから。 「……破壊工作か」 言いながら業の刻印・ヴァイス(a06493)は、霊査士と交わした言葉を思い出す。 戻ってきたら美味しいお酒と食事をご馳走してくれるか、という言葉。 それは間接的に「生きて戻ってくる」と宣言した証。 円柱の周りには無数のドラグナー達が蠢いてはいるが、ドラゴンの姿はない。 これならば、すぐに円柱を壊して撤退する事も不可能ではないかもしれない。 「むむっ、前回参加できなかった分しっかり破壊活動してがんばらなくちゃ。またミッドナーさんに頭をなでなでしてもらうんだ!」 「うむ、ドラゴン如きに負ける気はせぬのぅ……何せ愛する者と共にあるのじゃから。最良の結末を得る為に、必ず成功させるのじゃ」 絶望の帳を切り裂く銀焔・ディート(a66461)と光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)の言葉に、絶望の色は微塵としてない。 この任務を成功させ、同盟の。ランドアースの未来へと繋がる道を切り開く。 恐らくは、その一点のみしか見えてはいないだろう。 「再びのドラゴン界……。頑張ろう。戦う覚悟、力を持つ覚悟。……そして、戦場を駆る覚悟を掲げて」 「全員で帰還する事。次いで倒れない事……それが、癒し手の責任。だから絶対に、最後まで護りきる」 蒼月の氷華・コーネリアス(a65311)と闇色の・モニカ(a46747)の言葉に仲間達は頷き、準備を始める。 襲撃は素早く、確実に。何故なら、此処は敵地。そして、敵にとっては本拠地。故にそれは冒険者達とは少し離れた場所を飛翔していた。 「……どうだ、ミザル」 「その足りない頭で考えるがいい、イワザル。人間どもの蠢く音など、そこら中で聞こえておるわ」 「いい加減にしろ、キカザル。この距離では判らんが、恐らくあの場所に来る可能性は高いだろう」 それぞれの名は、静寂・イワザル。無音・キカザル。無明・ミザル。 その威風堂々、かつ邪悪な姿はドラゴン以外の何者でもない。 三体のドラゴン達は、ドラゴン界の空を高速で飛翔する。 「……ならば、この護衛任務も退屈なものにはなるまい」 「それには同意しよう。多少の力を得たと粋がる人間どもを、すり潰してやるも一興」 ドラゴン達の接近を、まだ冒険者達は知る術もない。 「未知の中にあって、今もなお手探りの戦いが続く――未だ、終わりは見えない」 突撃の直前、心を静めるように天壌の劫火・アラストール(a26295)は剣を握る。 「では諸君、さっさと目標物を壊してこの薄気味悪い場所から離脱しようじゃないか」 「そうだね……行こう」 「ああ、一気にいくぜ」 ピースメーカー・ナサローク(a58851)に久遠槐・レイ(a07605)と暁天の修羅・ユウヤ(a65340)が頷き。 冒険者達は、一斉に飛翔する。どよめくドラグナー達は、その数およそ100体。 「……らァッ!」 「華麗に舞うは翔剣士の極み……いざ、参る!」 アラストールとデスぺラードの流水撃が、レイとコーネリアスのナパームアローが、ユウヤのデンジャラスタイフーンが、並みいるドラグナーを粉砕していく。 ドラグナー自体は、然程弱い存在ではない。 むしろ並みのモンスターなどよりも余程強力な存在であり、知識とてある。 実際に単体では敵わぬとすでに理解し、纏まって攻撃を始めているが……それとて、ドラゴンウォリアーと化した冒険者達の前では、儚い抵抗に過ぎない。 「どんどん行くよ〜っ!」 ディートのデストロイブレードが、ナサロークの大岩斬が円柱に撃ち込まれる。 ドラゴンウォリアー2人の攻撃を受けて、大きく揺らぐ円柱。 流石に完成した円柱は、一撃で破壊というわけにはいかない。 しかし、大きく揺らぐ様子は充分に破壊が可能である事を明確に示していた。 「よし……もう一撃いくのじゃ!」 続けてプラチナの大岩斬が撃ち込まれ、円柱にヒビが入るような音が聞こえ始める。 もう少しで壊せる。冒険者達が勝利を確信した、その時。 「ドラゴン……!」 圧倒的な速度でやってきたそれは、間違いなくドラゴン。 「そこまでだ、人間」 言葉と同時に放たれたのは、音もなく死角より放たれた黒い刃。巨大な斧の刃をも連想させるソレはレイを深く薙ぐが、即座にモニカのヒーリングウェーブが広がっていく。 「この攻撃……元々は忍び……か!?」 そう、ヴァイスの目に映ったそれはシャドウスラッシュ……のようにも見える。見慣れたそれよりも、もっと巨大で、もっと禍々しい刃である、という差はあるが。 アラストールは剣を構え、眼前のドラゴンを見据える。 警戒はしていた。だが、ドラグナーは予想していた数よりも遥かに多かった。援軍という形のドラゴンに対処が遅れたとて仕方の無い事ではあった。 「我が名は無音・キカザル。そのくだらん脳髄に刻んだならば、微塵と消えよ」 襲い来るドラゴンの更に向こう。もう1体……いや、2体。 それらがここまで来るには時間がまだ大分ある。恐らくは、眼前のキカザルなるドラゴンの移動速度がかなりのものであったのだろう。 それは、こちらにとっては存分に有利な条件である。 「――この一刀は千の雷に通ず」 眩く輝く電撃が、轟音と共に放たれる。ドラゴンウォリアーと化したアラストールの放つそれは、もはや電撃というよりは一筋の雷。 合わせるように放たれたレイのナパームアローも大爆発を起こし、キカザルの巨体を大きく揺らす。 「どうした? 最強生物とやらは、我等如きも退けられんか?」 「あまりに貴様らの存在がちっぽけすぎてな、強大にして巨大なるこの身では、塵程にしか感じぬのだ。最強生物であるが故の苦悩、理解せよというだけ無駄であろうがな」 アラストールの言葉にキカザルは、ドラゴンとしては極めて冷静に返す。 「傷付け奪うしか出来ないくせに何故威張れるか。俺ならばその不完全さに死にたくなる。あぁ……そう考えるだけのアタマも無いのか」 「ならば死ぬがいい、最たる不完全生物どもよ。我とて忙しい身だが手伝ってやろう」 放たれた無数の巨大な気の刃達がモニカを襲い、思わず膝をつく。 時間は、稼げている。あとは、仲間を信じるのみ。 「負けられぬ。生きて帰る……それだけだ」 コーネリアスの薔薇の剣戟が円柱を更に大きく揺らがせると、円柱に入っていたヒビが大きく広がっていく。 「ぬうっ……猪口才な人間どもめが……っ!」 キカザルは円柱の破壊を止めようとするが、レイとアラストール、モニカの3人がこれを通さない。 「よし……あと一撃だ!」 ユウヤとデスペラード、ヴァイスの一撃が円柱に叩き込まれると、円柱から黒い液体が染み出すようにして、全体が溶けるように消えていく。 そう、これで円柱の完全破壊は成されたのだ。 「こちらの目的は達成した。さあ、速やかに撤収といこうじゃないか」 「よし、皆撤退だよ!」 ナサロークの言葉に答え、ディートが素早く撤退の合図を出す。 それと同時か、少し遅いかのタイミングで残り2体のドラゴンも到着する。 「施設が……キカザル、貴様人間如きに何をやっていたのだ……!」 「煩いぞ、この愚図どもが! 貴様等がチンタラ飛んでいたせいだろうが……!」 「待て、2人とも。今は人間どもを追うべきだろう」 「他人面をするなイワザル! 人間どもなど、我等3人であれば数秒もたたず挽肉に出来るだろうが!」 ドラゴン達にとっては、想像すらしていなかったであろう事態。彼等にとって人間とは、すぐに殺せて当然の存在であるが故の混乱だ。 そしてこれもまた、冒険者達にとっては充分すぎる好機であったのだ。 ヴァイスとレイがミストフィールドを展開し、同時に冒険者達は次々に撤退していく。 このまま本陣まで逃げ切るのは容易だろう。完全勝利。そんな言葉が頭に浮かぶ。 「戦い抜いた果てに……か」 コーネリアスの呟きに、アラストールは静かに目を閉じて考える。 終わりの見えぬ戦いの事を。 暗闇の中でも抱き続ける想いは闇を照らすのだと信じて。 ドラゴン界の空を、冒険者達は飛んでいく。 今掴んでいる最良の結果が、次なる大作戦で最良の結末をもたらす一矢となると信じて。

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参加者:10人
作成日:2007/11/16
得票数:冒険活劇27
ダーク1
ほのぼの1
コメディ5
えっち6
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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