第2次ドラゴン界侵攻作戦:神なき世界の祭司掃討



<オープニング>


「皆様に集まっていただいたのは、他でもありません」
 エルフの霊査士・ユリシア(a90011)は、酒場に集まった冒険者達に一礼すると、第2次ドラゴン界侵攻作戦の手順について、説明を始めた。

 第2次ドラゴン界侵攻作戦は、第1次の作戦と同様にドラゴン界のドラグナーを掃討し施設を破壊する作戦となる。
 既に一度行っている作戦であるので、段取りについては、多くの冒険者が理解している所だろう。

 まず、主力である本隊がドラゴン界に突入。
 その後、拠点を設定した上で、ドラグナーが集まっている場所や重要そうな施設を偵察。
 偵察によって得られた情報を元に、その施設を破壊するチームを派遣するという段取りである。

「皆様にお願いしたいのは、作戦目的である『ドラグナーの掃討と施設の破壊』を行う事です。
 拠点の維持防衛、迎撃のドラゴンへの対応などは本隊に所属する冒険者が行いますが、ドラゴンとの遭遇戦は避けられないでしょう。
 ドラゴンの目的は施設の破壊を阻止する事ですので、皆様は、ドラゴンとまともに戦わず当初の目的を果たした後は、急いで撤退するようにして下さい。
 本拠地の方面に撤退すれば、もしドラゴンが追ってきても本隊の冒険者達が迎撃を行ってくれるでしょう」
 ユリシアは、ここまで言うと一息つき、集まった冒険者の顔を一人一人確認しながら、こう続けた。

「今回の作戦は、短い期間に、どれだけの有効な効果を達成できるかが勝負となります。詳しい作戦内容については、他の霊査士から説明があると思いますが、皆様の活躍を期待しております」

 このユリシアの説明を聞いた冒険者達は、自分達の役割分担を確認する為、それぞれの霊査士の所へと移動したのだった。

●神なき世界の祭司掃討
 エルフの霊査士・マデリン(a90181)は冒険者達の前に進み出た。その表情は厳しい。
「初めにお断りしておりますわ。わたくしの言葉には『霊査』で得られた情報はありません。ドラゴン界の事を視る事は出来ないのですわ。ですから、最終的どのような行動をするべきなのかは最前線で戦う皆様の判断にお任せすることになると思います」
 その上でマデリンはドラゴン界へと偵察を行った別働隊の帰還を待ち、彼等が持ち帰った情報を得て行動する事になるだろうと伝える。
「先発の方々が戻るまで待つのは辛い事かも知れませんわ。けれど、皆が広いドラゴン界に散り散りとなってしまっては成果をあげることは難しくなるでしょう。ですから……逸るお気持ちはあると思いますけれど、必ずお待ちになってくださいませ」

 そしてマデリンは持ち帰ってきた情報の中を吟味し、儀式を行うドラグナーを選択的に掃討するよう行動して欲しいと言う。
「前回ドラゴン界に赴いた時に目にした方もいるかと思いますけれど、ドラグナー達の中には、何か儀式の様な事をしているドラグナー達がいると聞き及んでいます。彼等の行動にどのような意味があるのかはわかりませんけれど、わたくしたちにとって良い効果を期待出来るものではないと思いますの。ですからその儀式に携わっている全てのドラグナー達を掃討して欲しいのですわ」
 確かに儀式に集中しているドラグナーを叩くのは砦や建物に籠もったドラグナーを倒すよりも簡単な事だろう。その儀式が大事なものであれば側にドラゴンがいるかもしれないが、奇襲出来ればこちらの被害を抑え敵には大きなダメージを与えることが出来る筈だ。その場にいる全てのドラグナー達を倒すことも出来るかもしれない。

「けれど戦いはある意味『生き物』ですわ。こうと決めた通りには出来なくなることもあるかと思います。場合によっては攻撃目標を変更したほうが良いと判断出来る状況になるかもしれません。その時の事もその場で慌ててしまわないよう決めておいた方が良いと思います。それから……」
 一度マデリンは言葉を切る。霊査が出来るのであればここで何か冒険者達のはなむけとなる様な言葉を贈りたい。けれどそれが出来ないもどかしさに言葉がつまる。
「説明はわかった。この戦い俺も参加しようと思う。歴戦の強者とは到底言えない俺だが居ないよりはマシだろう」
 声を上げたのは碧水晶の吟遊詩人・アロン(a90180)であった。前回のドラゴン界での戦いも経験はしているようだ。

「アロンさんが……わかりましたわ。今回も戦う場所は敵地ですわ。ドラグナーだけを倒すつもりでも戦っていればドラゴンに察知されてしまうかもしれません。その危険も忘れずにいて下さいませ。そして……少しでも多くの戦果と1人でも欠けることなく無事に帰還して下さいませ。どうしてもそれが叶わない時は……より大勢が生還する道を選んで下さいませ。どうすれば良いかはわたくしが口にしなくても……」
「わかっている。心配ない」
「そうですわよね。皆様よくわかっていらっしゃると思いますわ。わたくしからの言葉はこれで全部ですわ。ご武運をお祈りしております」
 顔をあげたマデリンは無理に笑顔を作っているかのようであったが、その目の縁は少しだけ赤くなっていた。

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参加者
玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)
自由業・フォクサーヌ(a14767)
不完の盾・ウルカ(a20853)
征嵐の牙・ガリュード(a25874)
灼光の銀槍・ミズキ(a31070)
黥徒・ラオ(a45058)
花深月・ユディール(a49229)
ノソ・リン(a50852)
昏き宵闇・ヴァルス(a64205)
祈りも嘆きも歌に込め・アレイスタ(a66494)
NPC:碧水晶の吟遊詩人・アロン(a90180)



<リプレイ>

●その志を受け継いで
 ここはどこまでも続く果てなき空と大地は喪神の創りし檻であり獄であった。祝福も希望もないただ在るだけの場所……その不毛な世界を小さな光溢れる命達が進んでいた。

「みんな! 出ていったやつらが帰ってきたみたいだよ」
 花深月・ユディール(a49229)は立ち上がりざわめく方向へと走り出した。銀花小花・リン(a50852)が併走している。
「私はあちらに行く。何かわかったらすぐに戻るから」
「わかった」
 ざわめきが大きくなるのは、偵察から続々と戻って来ているからだろうか。
「うってつけの情報を聞いてきました。これを見て下さい」
 昏き宵闇・ヴァルス(a64205)は今聞いたばかりの話を羊皮紙に書き留めていた。そこで奇妙な動きをしているドラグナー達を見たらしい。
「わたくしめがご教示いただいた情報もヴァルス様とどうやら同じもののようでございますね」
 振り返れば、祈りも嘆きも歌に込め・アレイスタ(a66494)が背筋を伸ばして立っていた。アレイスタの髪と瞳もヴァルスの瞳の様に紫色に変化している。ドラゴン界ではおのずと冒険者達はドラゴンウォリアーの姿に変化していた。
「結構しっかりとなにやら造っているみたいだな。だが、この程度なら破壊出来ないこともないだろう」
 ヴァルスの羊皮紙を見ていた黥徒・ラオ(a45058)が独り言の様につぶやく。中央に祭壇があり、それを取り巻くように大地に紋様が色のついた砂で描かれ、更に巨石が枠か塀の様に円を描いている。
「じゃここに行ってみる?」
 姿も口調もすっかり変わってしまった医術士の仕事を忘れ気味の・フォクサーヌa14767)が仲間達の気持ちを確かめるように訊ねた。耳や尾は獣形になっているが、抜けるような白い肌に扇情的な血赤色の服が眩しい対比を見せる。
「ここが駄目で別の場所が良いと言う保証もない。この場所でよろしかろう」
 重々しい口調がどこか誠実さの混じる口調で玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)が言う。
「偵察の者達は……みんな全力を尽くしたんだな。私達も頑張ろう。胸を張ってここに戻って来るために」
「あぁ。その通りだ」
 灼光の銀槍・ミズキ(a31070)の姿は普段よりもずっと少女めいて華やかだが、口調もその瞳に宿る強い意志も少しも変わっていない。古木の様な姿に変わった碧水晶の吟遊詩人・アロン(a90180)も言葉少なにうなずく。
「なんだ、ミズキもアロンもすっかりいっぱしの冒険者になっていたんだな。頼もしいぜ……じゃあ行くか」
 一瞬、過去の甘く懐かしい記憶に心を引きずられそうになった征嵐の牙・ガリュード(a25874)だが、すぐに表情を引き締める。情報を得て続々と冒険者達が文字通り空を駆けあがり飛び出していく。
「どのみち安全な場所にいたんじゃ勝機も戦果も得られやしねぇからな……行こうぜ」
 表情の見えぬ兜の奥から赤い瞳だけをのぞかせる不完の盾・ウルカ(a20853)はダークネスクロークの爪似た留め金から背に流れるマントをひるがえし、橋頭堡を飛び出した。

●堕竜の祭祀
 偵察部隊からの情報を元に、11人の冒険者達はドラゴン界の虚無の空を疾走していた。武具防具は艶を消し、音の出る防具には布を噛ませた。地中に潜む敵と想定しながらも極力低空を飛び、ドラゴン側に気取られないように努める。
 無言のまま冒険者達は移動を中断した。この先はもう遮蔽物はなく、地上から10メートルほども高くそびえる石の壁が輪を描いている。情報が確かならば、その向こうに地面に紋様が描かれ……そして祭壇と祭事を執り行うドラグナー達が居るはずだ。便宜上3つに別れた冒険者達はそれぞれ『鎧聖降臨』を使う。1つ目のグループはウルカが、2つめはユディール、そして3つめのグループはアレイスタが防具を強化し変化させる。取り決め通り冒険者達の防具はドラゴン界の大地と似た様な色合いに変わっていく。そして3つのグループに別れ進む。
(「20! 19……18……17」)
 心の中にユディールの言葉が流れ込んでくる。バジヤベルの身体が黒い炎に包み込まれ、ミズキが『血の覚醒』を使う。全ての攻撃を同時に行う為だ。
(「12……11……10……9」)
 アロンを残し、皆は石の壁すれすれに飛び上がる。3つのグループの距離はそれぞれに100メートルより少しだけ近い。
(「3……2……1……いけぇえ!!」)
 石造りの輪になった壁を乗り越えた冒険者達は一斉に攻撃を仕掛けた。

 激しい音が辺りに轟いた。
「やっとか」
 声の主は巨体の割に軽々と飛び上がりすぐに見えなくなる。

 中央にしつらえた祭壇を粉砕し、その周囲に描かれた紋様をも消し飛ばした。ドラゴン界の空を滑空するウルカの幅広の刃を持つ無骨な斧が流れるように動き、すぐ近くにいたフォクサーヌは力を無数の針に変え、その漆黒の針は祭壇へと向かって降りそそぐ。傍にローブを着たドラグナー達がいても容赦しない。ウルカやフォクサーヌから離れた場所にいたガリュードも、一瞬だけ更に上空を見た後ユディールのタイミングを合わせて呪紋の浮かぶ戦槍を華麗に振るう。別の場所からも祭壇へとバジヤベルの喚びだした黒い針が豪雨の様に下界へと向かう。その横を真っ直ぐにミズキは急降下していた。目指すのは他とは違った『特別なドラグナー』だ。
「そこだ!」
 ミズキはキラキラと光を弾く特別大仰な服を着込んだドラグナーに狙いをつける。突撃槍がそのドラグナーを真上から貫き大地へと穿つ。断末魔の悲鳴と血しぶきが地面を打つ音が響くが、崩壊する祭壇の大音響にかき消されてしまう。
「生憎だがここは通さない!」
 ミズキと共に急降下したリンの闘気が創り出す竜巻が闇雲に逃れようと離散するドラグナー達の退路を断つ。目の前のドラグナー達がバラバラと倒れる。
 ガリュードのいた場所よりももっと地上に接近しラオは不吉な黒いカードを投げつけた。そのカードは狙った通りにドラグナーの1人に命中し、倒れたその背に黒い染みを広げていく。ユディールの描いた光の紋様から幾筋もの光があふれて降り注ぐ。どれもドラグナーだけを貫き攻撃するが、ほぼ同じ場所にいるラオを傷つけたりはしない。ウルカやフォクサーヌとほぼ同じ場所からヴァルスは黒い針を無数に地上へと向かわせる。ドラグナーと祭壇、どちらも壊してしまうつもりであった。悲鳴と怒号、巨大な祭壇が崩れていく轟音はまだ消えない。ミズキやリンの傍にもアレイスタの放った黒い幾万幾千の針が降りそそぐ。逃げようとして逃げ切れないドラグナー達がまたこの針に貫かれて倒れていく。

 素早く一瞥し、その視界にドラゴンの姿がないことを確認すると、ウルカは視線を下へと向ける。ドラグナー達は逃げるだけで儀式を続けようとする者も、冒険達に一矢報いようとする者もない。
「……なんかやぁな気分だぜ」
 力を恃み力に慢心し堕落したヒトの裔が――例えその力をドラゴンロードに奪われたとしても、ただ逃げるだけの存在に成り下がるのだろうか。
「けど、とにかくぶっつぶすしかねぇか!」
 高度を下げながらウルカの斧が閃く。流れるような華麗な所作から放つ攻撃が逃げるドラグナーの背といわず頭と言わず薙ぎ払っていく。悲鳴と血がほとばしる。
「ドラゴンが来る前にドラグナーは全部殲滅してしまえばいいのよね」
 とろけるような甘い声でフォクサーヌは殺伐とした言葉を紡ぐ。赤い唇から吐息が漏れ、先ほどと同じように無数の黒い針の雨がドラグナーを差し貫く。不運なドラグナー達は頭上からの針に身体を穴だらけにされ、海綿のようにされて倒れていく。
「アロン、そこでドラグナー達の退路を断て!」
 上空からガリュードは地上に立つアロンへと指示を出す。高低差はあるものの、アロンとガリュードとの距離は近い。祭壇から逃げ出したドラグナー達の何人かがアロンのいる方へと走っていた。アロンが道を塞げばドラグナー達は逃げ道を失う。上空のガリュードにはそれが手に取るようにわかる。
「わかった」
 案の定、移動してきたアロンを目にしドラグナー達は怯んだように立ち止まった。そこへガリュードの槍が優雅な動きを見せ、裏腹に圧倒的な力がドラグナー達を一掃する。
「ん?」
 バジヤベルは脱兎のごとく走るドラグナーに目をとめた。そのドラグナーは他の者達よりも軽装備で移動速度も早い。もう祭壇の外周となる石の壁に辿り着き、登らず何かを探す様に石の隙間を調べている。すると、するりと石の一部が動き抜け穴になる。ドラグナーは素早くその穴に飛び込んだ。
「逃げる気か……それはさせんよ」
 バジヤベルは一気に石の壁と同じ高さまで上昇し、外側へと移動し降下する。先ほど穴に飛び込んだドラグナーが壁を抜け外に出てきた。そこに黒い無数の針を降らせる。思わずドラグナーは腕で顔を覆うが腕にも顔にも肩にも針が突き刺さり、突き抜けていく。あっと言う間にドラグナーは大地に血だまりを残しその場に倒れた。
 ミズキはまだ動けるドラグナーを探す。祭壇に掲げられていた石を左手に抱えたドラグナーはミズキの視線を受け止めると……スラリと右手の武器をかざし、ジリジリと後退していく。ミズキの剣が石ごとドラグナーを2つに斬った。ゴトンと思い音がして石が落ち、血をまき散らしてドラグナーの身体も倒れる。
「だから言った……逃がさないって!」
 気合いのこもった叫びをリンが放つ。揃えた両手の先からギリギリまで高められた気が放出される。逃げるドラグナーの背に当たり、その身体が四散した。

「ユディール、どうだ?」
「まだドラゴンの姿はないな。かなり派手にやらかしたが、まだ気が付いてないのか?」
 ユディールとラオはドラグナー掃討はせず、周囲を警戒する。どこか不自然なモノを感じていた。

「ユディール! 上だ!」
 声が聞こえた。同じグループで比較的近くにいたガリュードの声にはっとしたユディールは上を見上げる。その時にはもう何がなんだかわからない。激しい衝撃に身体は吹き飛ばされていた。身体が一瞬でバラバラになってしまいそうだ。
「ユディール!」
 自分も身体が引きちぎられそうな衝撃に耐え、ラオはユディールを空中で捉えもつれるようにしてそのまま地面に叩きつけらる。息をすることさえ出来ない。
「来たか……いや、これが奴らの策か? ドラゴン!」
 逃げまどうドラグナー達を黒い針の雨で屠ったばかりのヴァルスに黒く大きな影が掛かる。見上げればそこに巨大で醜悪な……けれど圧倒的な力があった。かつてはヒトでありながら、再現なく力を望み求め続け、ついには身体を捨て異形へと堕ち……神に捨てられたモノ。ドラゴンが大きく羽を広げていた。
「ユディール様、ラオ様!」
 アレイスタとアロンの歌がドラゴン界に響く。アレイスタは別のグループであったが、歌の持つ癒しの効果は届く距離だった。歌いながらアロンが手を貸す。

「玩具破壊と引き換えに短き命を散らせるか……それも善し! 疾く死せよ」
 ドラゴンの言葉が殷々と響き渡る。声にははっきりと嘲りの色が混じる。

「そう簡単に死ねるか!」
 方向を転じウルカはドラゴンの巨体へと向かって飛ぶ。武器の重さをそのまま利用しウルカは斧をドラゴンに叩きつけた。防御の力に関係なく斧がその刃を振るう。
「笑止! 我らの世界で我らに刃向かうか!」
 ドラゴンがあざ笑う。
「ったく……出てくるのが早いわよ」
 文句を言いながらもフォクサーヌは力を使う。淡く暖かい光がフォクサーヌの身体から溢れ、無味乾燥なドラゴン界に広がっていく。先ほどの強襲で傷ついていた仲間達から痛みがすっと退いていく。
「いい気になるなよ!」
 ガリュードの槍から強烈な雷光がほとばしる。それは父神の怒りの様に空を走りドラゴンを撃ち、ドラゴンの身体に電撃が走る。
「もはや猶予はない。ドラグナーを一掃する……速やかに逝くがいい!」
 バジヤベルはドラゴンに背を向け、逃げるドラグナー一掃に走る。ドラグナー達を射程に捉え一気に力を放つ。力は黒い無数の針へと転じ、ドラグナーの防具も服も差し貫いていく。
「いけえええぇ!」
 戦いの闘気が炎となって燃えさかりミズキの槍に宿る。もう炎の威力はミズキの意志さえもはねつけ燃えさかる。髪をなびかせミズキはドラゴンへとその槍を突き立てた。思いがけないドラゴンがのたうつ。
「どこだ……残るドラグナーは?!」
 リンは目を凝らす。いない、振り返ってまた探す。仲間達がドラゴンを留めている間にドラグナーを仕留めなければ……と、心は逸る。
「いた!」
 リンの闘気は風を喚び風は風を呼び込み竜巻となる。渦巻く風が逃げるドラグナー達に追いすがり、逃げ切れずにまた多くのドラグナーが血と肉片に身体を変えて飛び散った。
「さっきの借り、返すからね」
「こっちもだ」
 仲間のフォローで立ち上がり、空に戻ったラオとユディールがドラゴンへと向かう。ラオの手からは不吉な黒いカードが飛び、ユディールが描いた紋様からは光が幾筋も出現しドラゴンへと注ぐ。けれどどちらもドラゴンに痛痒を与えてはいない。

 上空でドラゴンを留める間に地上のドラグナー殲滅はほぼ完了する。

「卑小なるモノよ。身の程を知らぬ所業……その身で贖うがいい」
 ドラゴンの翼が激しく打ち動かされる。大気はドラゴンの気をうけて切り裂く無数の刃と変わり、ドラゴンウォリアーとなった冒険者達を翻弄する。血が雨となってドラゴン界の大地を染める。しかしその攻撃は敵味方の区別なく襲いかかり、祭壇の残骸も石の壁も、瀕死のドラグナー達をも切り裂いていく。この時点までに深い手傷を負っていたユディールとアレイスタ、それにヴァルスとアロンがこの攻撃を耐えきれず石の壁に激突し崩れた下敷きになる。

「手当たり次第か」
 自力でなんとか脱出したヴァルスだが、既にこれ以上戦えるだけの余力はない。その横では石の建材を受け損ねたドラグナーが大石の下敷きとなって潰れ、大量の血が流れている。皮肉にもドラグナー達に引導を渡したのは同じドラゴン界に生きるドラゴンの攻撃であった。
「ドラグナーは全滅した。撤収するぞ!」
 3人を石の下から引っ張り出しながら、普段とは違う口調でヴァルスが叫ぶ。
「大丈夫か?」
「ありがとう」
 リンも駆け寄り石をどける。そこを脱出口としてユディールが転がり出てきた。
「アロン様……わたくしめが『高らかな凱歌』を歌いますが、それだけでは間に合わないかも知れません。先ほどの様にご唱和下さいますか?」
「承知した」
「私も合わせる」
 助け出されたアレイスタとアロンの声が再度響き、ヴァルスの光が戦場に広がる。
(「ドラグナー殲滅成功。ドラゴンと戦いながら退くぞ」)
 それはウルカの心の声であった。冒険者達はバラバラになることなく、ドラゴンと戦いを続けながら撤退を続けた。


マスター:蒼紅深 紹介ページ
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