<リプレイ>
●争いの現場 村が全壊する前に、冒険者たちは辿り着くことは出来たのだが。
べき、ばきばきばきっ! どすん。 ぐしゃ。
「巨大化ヘビとカエルが村のど真ん中で、大喧嘩って……迷惑な話だな……」 茫然と見上げ、大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)が呟く。その横を弾け飛んだ木の板が吹っ飛んでいった。 家屋並の大きさだ。無論大きさは半端ではない。 「どちらか片方倒せば問題が解決するような気もするのだが?」 「どちらかが勝ったとしても、これだけ巨大だと冬眠しても村の被害は大きくなってしまいますよっ」 漆黒の黄金忍者・ケンハ(a29915)がふと首を傾げた言葉に月下黎明の・アオイ(a68811) が慌ててツッコミを入れる。アオイとて根性のあるカエルを応援したい気持ちはあったが、村の被害を考えるとそんな事も言っていられない。 「出来るだけ村の被害は抑えたいですね」 ふわりと仲間の頭上に護りの天使が現れる。 「ヘビとカエルという組み合わせは知っているわ。けど、確かもう一匹揃って三竦みじゃなかったかしら?」 え、今回は三竦みとかそういうの関係無いの、と氷輪神姫・シンシア(a66165)はヘビっぽいものに向かって黒い炎を唸らせ放つ。手加減は無論、無い。 げー、と巨大なカエルっぽいものに対して嫌悪感も隠さない煌めく仔猫な爆裂少女剣士・ザッハトルテー(a62373)がふわりと身を翻した。 「フェイディさん、リュウさん前衛は任せましたの!!」 瞳を潤ませて、さっさと後衛に位置すれば、沈勇なる龍神の魂宿りし者・リュウ(a31467)は黙殺して白い粘着質の糸をカエルへと投げかけた。手応えは、薄いというよりは殆ど無いといった方が近いだろう。巨体の所為で、状態異常に陥ることがないとでもいうかのような感覚と近い。 「どの世界でも……争いというのは醜くて迷惑なものですね」 世界の果てを探しに・フェイディ(a67339)も周囲の惨状に憤懣やるかたない。冒険者としての経験も少なくヘビとカエルの喧嘩という言葉に少なからず微笑ましく思っていたのだが、現状はそんな甘いものでもなかったのだから。 ヘビの存在にたじろぎながらも、青・ケロ(a45847)はカエルの方へと視線を据えた。 「この正しき道を踏み外したカエル……っぽいものに引導を渡してくれましょ〜♪」 見上げなければならない大きさのカエルに言い放つ。
●避難誘導 他の仲間がヘビっぽいものとカエルっぽいものを相手にしている間に、気ままな風船・ルキフージュ(a68818)と真昼の幻影・トール(a68949)の二人は逃げ遅れた村人の救出や退避誘導に走った。 「眠りを求めるのは仕方の無いことなのかもしれません。ですが、まあ、雉も鳴かずば撃たれまいといいますか……己の運命を恨んで頂くしかないでしょう」 トールの言葉に、ルキフージュも然りと頷く。 「……仲良く眠ってくれてたらなぁ……」 そうすれば攻撃することも無かったし、村が壊れることも無かったのだ。もしかしたら、それでも場所が村の中であっただけに、村への損害は免れなかったかもしれないが、どちらにしてもそれは仮定での話でしかない。 瓦礫の陰から出るに出られない村人を見つけてトールが駆け寄る。その姿を認めて、村人の方も幾らか安心したような表情を浮かべた。 「今からあのヘビとカエルの退治を我々で行います。ここは戦場になるかもしれません。どうぞ速やかに避難をしてください」 家族が一人下敷きになっているのだと言えば、トールとルキフージュが瓦礫を避け引っ張り出す。癒しの光を生み出せば、流れ出す血も止まり、ルキフージュは命に別状がないことを確認できると、安堵の息を吐いた。 村の中を駆け回れば、逃げ遅れた村人というのは存外多くは無かった。やはりヘビとカエルが通ってきた家の者に怪我人は多いようだったが、村へと接近してくる様子を見てその進路上にあった村の者達は危険をある程度予測することは出来たのだろう。そうでもなければ、既に死者が出ていてもおかしくない家の壊れ方をしている。 一言で言えばぺしゃんこだった。
●ヘビっぽいものの応戦 そんな家すらぺしゃんこにした原因の一匹である、ヘビっぽいものを相手取るのは、ケンハ、シンシア、カナメ、アオイの4人である。 「……にしても、でけぇ……」 斑模様の鱗は肌理細やかで、触ればやわらかな手触りだろう事は遠目にも分かる。分かったところで凶暴にカエルっぽいものと争うヘビっぽいものに手を出すことが出来るわけでもない。 振り抜いた青い鋼糸が光を放ち薔薇を咲き乱れさせれば、ヘビっぽいものが牙を剥いた。 ヘビ皮にしたら高く売れるだろうか、と思わず考えてしまうカナメである。抜け殻などは財布に入れるとお金が貯まるという話も聞いたことがあるが、そのままでは財布に入りそうも無い。 切り取って入れることは――可能かもしれないが、そうする為にはまずヘビっぽいものを完全に沈黙させなければなるまい。 シャアアアアア!!! 剥いた牙の先でぬらりと光る毒液は、臭気と共にやわらかな肌に突き刺さる。鮮やかな緑の髪がヘビっぽいものの呼気に煽られてふわりと浮かんだ。 「っ……毒はノーサンキューよ。高温で消毒してヘビの蒲焼にしてあげるわ」 流れ込む毒にも、吹き出す赤い雫にも構わず、シンシアが黒い炎をヘビの顔面に叩きつける。突き刺さった牙は太く傷も浅くは無いが、その分外さずに確実に叩き込める。僅かに動きを止めたヘビっぽいものに、飛び掛ったケンハの槍が、勢いよく貫く。 「貫けドリルランス!!」 手応えは野生のヘビを刺した時と恐らく似通っているだろう。次第にダメージが溜まっているのか、尾の方がのたうつように蠢いている。シンシアの毒を打ち消すように、アオイが森の香りのする癒しの力を紡げば、じくじくと蟠り内から蝕む力がふっと消え失せた。 斑模様のヘビが巨大な鎌首を擡げる。 遭遇したその時よりも、その所作は歯切れも悪い。緩慢とは言えないが、動きは明らかに鈍くなっていた。 「とっとと眠れ、永遠の眠りにな」 空間を切り裂いて閃いた青い糸が、死を紡ぐように光と薔薇が咲き乱れる。緑の雫の中に鮮やかに舞う薔薇が目にも鮮やかだった。 ぶん、と振り被るヘビっぽいものの頭が、視界を過ぎる。低い位置で水平に振り払うように空間を泳いだそれは、伏せて避けるには地面に近過ぎ、跳んで避けるにはヘビの体格は大き過ぎる。 「やってくれるわね……けど、変異生物に負けていたら冒険者は務まらないのよ」 「今、回復しますっ」 シンシアとアオイの生み出した癒しの光が広がり、ヘビっぽいものに対峙する冒険者たちを包み込む。 体勢を立て直したケンハが口の端にふと笑みを浮かべた。 ヘビはやはり、目にも明らかに本来の力を失ってきている。 「だいぶ弱ってきたな、一気にトドメといくぜ!」 ケンハの漆黒の瞳がヘビの喉元で視線を止める。鋭く繰り出した槍が、易々とその巨躯に突き刺さった。
●カエルっぽいものとの激闘 一方、カエルっぽいものとの戦闘もヘビと同様激化していた。 カエルを相手にしていた、フェイディ、リュウ、ザッハトルテー、ケロの4人は咄嗟に地面を蹴ってその場を飛び退いた。 途端、べきべきべきばきっと派手な破壊音を撒き散らして、冒険者たちの後ろに立っていた家屋が潰された。 「潰された大怪我で済めば良いのだが……」 飛び退いたリュウが沈痛な面持ちで潰れた家屋の上に圧し掛かったままのカエルっぽいものに視線を注ぐ。 多分、大怪我では済まなさそうなのは気のせいではない。一般人なら今の一撃で即死だろう。冒険者とて、二撃も耐えられまい。日本刀を手に身を捻りながら飛び掛ったリュウの一撃がカエルっぽいものを体表の粘質の液と共に切り裂く。 何だか、攻撃するのが嫌になる滑り具合だ。 「その水っぽい身体に雷は良く効きそうですね……!」 フェイディが銀の剣を振り被り、一撃と共にカエルの体内を電撃が駆け抜ける。 カエルだから雷が効くとか、特にそういった利点が手応えからしてもあるわけではないようだったが、それでもその攻撃の通りはそう悪くは無い。 「横に回って攻撃してれば何とかなるかもっていう考えは、甘かったかな〜」 苦笑混じりに、ケロが癒しの光を広げ浅く負った傷を癒しきれなくなる前に急ぎ塞いでいく。 カエルが前にしか飛べないのは道理だと思っていたが、自分がカエルっぽいものの横に回って攻撃するとなれば回復の力は仲間には届かなくなる。カエルっぽいもののサイズがただでさえ巨大なので、回り込むのも崩れた家屋が点在しているこの場では非常に困難なことだった。 「カエルの体液なんてキモイですわ!!」 近寄りたくありませんの、と朗らかに言い放って絶対に前に出ようとしないザッハトルテーは手にした剣を素早く振り抜いて、衝撃波を放つ。 びちびちと飛び散る体液も、後方にいれば少し身を躱すだけでその殆どを避けられる。身体を離れた体液は、身体を痺れさせる効力を失うのかただの気持ちの悪い液体として残るだけだ。 だが、冒険者としてはそれだけで済むとしても許せない者も居る。 「これ以上思い出を……壊させない」 悲しみの滲んだ瞳でフェイディが、ちらりと壊れた家屋に視線を走らせた。 家を建て直せば済むという問題では無い筈なのだ。此処で生きてきたその人たちの思い出が粉々になるのは――やはり、悲しいと思うから。 どん、と体当たりしてきたカエルの動きは鈍くなってきてはいるが、その一撃は重く、思わず膝をついた。それでも此処で崩れるわけにはいかない。 振り抜いた刃が電撃と共に、その粘質の体液を潜りカエルっぽいものの体躯を袈裟懸けに切り裂いた。 「この手で引導を渡してあげられないのが残念です〜」 ごく残念そうにケロが癒しの聖女を生み出し、フェイディへと力を注ぐ。この光景が何かのスクープにでもならないだろうかと思案しながらザッハトルテーも衝撃波を生み出し、カエルっぽいものの体躯を切り裂いた。 ゆらりとふらつくカエルっぽいものにリュウが再び身を捻って飛び掛る。体が軋むようだが、その一撃はけっして小さなものではなかった。
●争いの後に 結局、村の4分の1くらいは壊れていたが、村人に死者が出ない内にヘビっぽいものとカエルっぽいものの退治は終えられた。 ふう、とルキフージュが切なげに溜息を吐く。なんとか無事に終わった――とも言えるだろう。駆けつけたときからして既に村の往々は壊されていたのだし、怪我人は多少なりともいても死者が出なかったのは僥倖だ。 「ヘビもカエルもお互い仲良く出来なかったのかなぁ……」 仲良く出来ていれば倒さずに済んだかもしれないし、村を破壊したりしなければ追い払うだけでも済んだかもしれない。癒しの光を紡ぎながらルキフージュはふと、そんなことを思う。 村人たちは冒険者たちが戦っている間、村の近くの森に身を寄せ合うようにして避難していた。他に隠れるような場所がなかったというのもあるし、ヘビっぽいものとカエルっぽいものも、攻撃を仕掛けた冒険者たちに対してはともかく、村は破壊していたものの直接人を襲ってはいなかったのだから、それほど遠くまで逃げる必要も無かったのだ。 「微力ですが、癒しの力を……」 トールは癒しの力で怪我をした村人を包み込んでから、立ち上がる。 見渡せば、周囲は破壊された後がかなり目に付く。ヘビっぽいものとカエルっぽいものの撃破を無事に終えた仲間たちも其々復興作業に手を貸し始めているから、完全に修復するまでは手伝えずとも少しは力になれるだろう。 欲を言えば、温泉にも多少興味は湧くのだが。 そんなトールに、村人から仲間と共に戦闘の疲れでも癒していってはどうかと温泉に案内されるのは、もう少ししてからのことだった。

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参加者:10人
作成日:2007/11/29
得票数:冒険活劇10
戦闘1
ほのぼの3
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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