レッドデビル、ファイアボール



<オープニング>


●赤い悪魔
「とある小さな森が火事になり、焼け落ちたといいます」
 冒険者の酒場で話す真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に、話を聞いていた冒険者たちは驚きの表情を浮かべていた。
「原因は一体のモンスター……赤い衣を身に纏い、炎の玉を撃ち出してくるようです」
 そして森を焼き尽くしたモンスターは新たな目標を探し、付近の村に近づいてるという。
「このままでは人の住む村まで焼き尽くされてしまいますので、何とか急いで退治をお願いします」
 ゼロの言葉に冒険者たちも静かに頷くのだった。
「魔物は生み出した火の玉を蹴り、凄まじい勢いで放つ攻撃を得意とするようです。更に動きも素早く、フェイントなども駆使してこちらの攻撃を回避してしまうかもしれません」
 中々に厄介な相手だとゼロは言う。
「ですが皆さんで力を合わせれば、倒せない相手ではないでしょう。よろしくお願いします」
 ゼロはそう言って、冒険者たちに一礼を送るのだった。

マスター:零風堂 紹介ページ
どーも零風堂でございます。

火の玉キックな赤いモンスター退治です。

舞台は村の近くの街道、迫り来るモンスターを迎撃し、村へ侵入される前に倒す感じになります。

特殊能力ヒントは以下の通り。
・ファイアシュート
火の玉を生み出し、凄い勢いで蹴ってよこす技です。魔炎とか付いてます。
・ジグザグダッシュ
フェイントなどを織り交ぜた素早い足捌きで、防御の成功率がアップします。

何だかシュートが村にゴールしちゃうと大変そうなので、気をつけてもらいたいと思います。

それでは、ご健闘を。

参加者
玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)
聖剣の王・アラストール(a26295)
慈愛の聖母騎士・ニーナ(a48946)
惑わされた灰と骨・チノ(a55644)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)
青き騎士人形へのセレナーデ・ティエネリア(a61726)
謡うは聖なる伝承・エンヤ(a64562)
世界の果てを探しに・フェイディ(a67339)
月下黎明の・アオイ(a68811)



<リプレイ>

●赤のプレイヤー
「民に災いを成す者である事に変わりない。冒険者の矜持にかけて、討ち果たしてみせよう」
 村の前の道に陣取り、天壌の劫火・アラストール(a26295)は世界の果てを探しに・フェイディ(a67339)へと鎧聖降臨を発動させる。この村に近づいているというモンスターを迎え撃つべく、冒険者たちは防衛に当たっていた。
「……球遊びはともかく、火遊びは少々感心せんな」
 モンスターは火の球を用いた攻撃をしてくるのだという。玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)は小さく呟きながら灰と骨と遣らずの雨・チノ(a55644)へ君を守ると誓うを発動させる。
「来ました!」
 そこに時空を彷徨う・ルシファ(a59028)から声が飛ぶ。冒険者たちが視線を向ければ、赤い衣を纏ったモンスターが凄まじい勢いで駆け込んでくる!
「冒険者の意地にかけて、村へのシュートは阻止するなぁん!」
 陣形の最後方、村の前に立ち塞がるように配置についている謡うは聖なる伝承・エンヤ(a64562)が急ぎ黒炎覚醒で邪竜の力をその身に纏ってゆく。
「勝手に人々の住む村をゴールにされてはたまりませんね」
 蒼き言霊の流れし旋律・ティエネリア(a61726)は駆け込んでくる魔物の目前を狙ってヴォイドスクラッチを発動させるが、魔物は素早く方向を変えてそれを回避し、そのままジグザグと不定に方向転換しながら近づいてくる。
「何がしてぇんだか」
 チノはライクアフェザーの構えを取り、仲間達の陣形からは離れるように横手へと移動してゆく。
「何とも……派手な敵ですね」
 赤い魔物を前にして月下黎明の・アオイ(a68811)は思わず呟きながら、守りの天使達を召喚して身を守らせる。
「さて……キックオフといきますか」
 旅の女重騎士・ニーナ(a48946)は鎧聖降臨で自身の鎧を強化していった。
「平和な村を焼き尽くすなんて……絶対にさせません」
 ジグザグに駆け込んでくる赤い魔物に向かって踏み込み、達人の一撃を繰り出すフェイディだが、魔物は目前で走る方向を変え、ひらりとかわす。そしてフェイディの横手から思い切り、炎の球を蹴った浴びせかけた。
「うぁぁっ!?」
 炎の球が脇腹にめり込み、魔炎が身を包んで燃え上がる。
 ごっ!
 何とかそこから敵を引き離そうと緑の突風を放つバジヤベルだが、魔物は更に方向転換して風の流れから逃れた。
「聖鞘よ万民護る盾となれ」
 アラストールは鎧聖降臨を自身に発動させ、ルシファはチャクラムを投げ放つ。
「残念でした。僕もファイアアローを撃てるんです」
 ルシファのチャクラムにはキルドレッドブルーの力が宿っている。だが魔物は飛来するチャクラムから身をそらして回避した。
 ティエネリアは高らかな凱歌を奏でてフェイディの傷を癒し、魔炎を解除してゆく。
「おら、鬼さんこちら、な。自慢のシュートでも撃ってみろや!」
 そこでチノがスーパースポットライトを輝かせた! 一人で陣形から外れて横手に移動していたのは、この光に注目させて村とは別方向に向かわせる為だったのである。
「全力で支援します。頑張っていきましょう」
 アオイがディバインヒールをフェイディに発動させ、その武器に力を宿す。そしてチノの光に向いた魔物目掛けてフェイディからサンダークラッシュが迸る!
 ばぢっ!
 雷撃が魔物の体を駆け巡り、その間にニーナはバジヤベルへ、アラストールはアオイへと鎧聖降臨を施すのだった。
 その間にバジヤベルは黒炎覚醒を発動させ、その身に邪竜の黒炎を立ち昇らせる。
「天使の矢からは逃れられません!」
 ぐっと弓を引いてルシファはホーミングアローを解き放つ。軌跡を曲げて走る一矢は赤い魔物の肩口へと突き刺さった。
「そっちが火球ならこっちは炎弾なぁん!」
 エンヤはブラックフレイムを放つが、魔物はステップを刻みながらこれを回避し、思い切り炎の球を蹴り出した。目標はチノだ。
「くっ……」
 君を守ると誓うの効果でバジヤベルにもダメージが入るが、その分だけチノへの負担は軽減される。チノは反撃にサーベルを鋭く振り抜いてソニックウェーブを撃ち出した。
 ごっ!
 衝撃波を魔物は辛うじてかわす。チノの身に回った魔炎がじわり、とその体を蝕むように燃え上がった。
「しっかりとディフェンスして阻止しなければいけませんね」
 ティエネリアが高らかな凱歌を奏で、戦意を鼓舞するように仲間達の傷を癒してゆく。アオイも魔炎への警戒を呼びかけながらヒーリングウェーブを発動させていた。
 間合いへと踏み込み、達人の一撃を繰り出すフェイディだが……赤の魔物はその大棍棒から身をかわし、地を蹴ってチノとフェイディの間を抜けてダッシュを掛ける。
 抜けられる? ニーナはチノへと鎧聖降臨を発動させつつ警戒を呼びかけた。

「行かせぬ!」
 エンヤへと鎧聖降臨を発動させ、前陣を突破する魔物の背を追うアラストール。
「我等のぞーんでぃふぇんす……破れるものなら破ってみせい」
 迫り来る赤の魔物を押し返すべくバジヤベルは緑の突風を放つ。迫り来る風を魔物は左右に振れるステップで回避し、そのままぐんぐん間合いを詰めてゆく。
 ごっ……。
 そして足元に生まれる炎の球、それを蹴り飛ばす!
「受けてみせるなぁん!」
 盾を構えて防御の体勢を取っていたエンヤに炎の球が直撃し、衝撃と魔炎が襲い掛かる。だがエンヤは自分で高らかな凱歌を奏で、ダメージを回復させていった。
「抜かせない!」
 押し戻すべくルシファが砂礫衝を発動させた! 砂礫が巻き上がり、衝撃が魔物の体を再び冒険者たちの前衛あたりまで吹き飛ばして押し戻す。
 ざっ!
 そこに現れた虚無の腕が魔物の体を引き裂くように振り下ろされた。ヴォイドスクラッチを放ったのはティエネリアだ。アーマーブレイクの効果か、赤い衣も破れたように見える。
 チノはライクアフェザーの構えを取り直し、アオイは護りの天使達を召喚する。仲間達が体勢を立て直す時間を稼ぐように、フェイディはサンダークラッシュを解き放った。
『……!?』
 魔物の動きに一瞬迷いが生まれるが……それでもサンダークラッシュを受ける訳にはいかないと悟ったか、斜め前に跳ぶようにダッシュを掛けて雷撃を回避した。その間にニーナはルシファへと鎧聖降臨を発動させて……。
「……参る!」
 じゃき、と長剣『Lord Wish』を下段に構えアラストールが魔物の前に向かっている。先ほど魔物が見せた迷いはこの動きが見えていたからだった。すなわち、サンダークラッシュを受けるか迫るアラストールの前に出るかの二択だったのだ。そして選んだ答えはこれだ!
 電刃衝を叩き込み、薙ぎ払いながらアラストールはそのまま駆け抜ける。そして稲妻の闘気で麻痺した魔物にバジヤベルが杖を向けていた。
 ごっ!
 木の葉吹き散らす突風が赤の魔物を更に吹き飛ばす。そこでチノが再びスーパースポットライトを輝かせ、魔物の注目を向けさせた。
「まだ動きますか……」
 ルシファの射出するホーミングアローがヒットするも、赤の魔物はまだ倒れない。麻痺を振り払うように歩き出し、炎の球をチノ目掛けて蹴り出した。
「足捌き自慢は何もてめーだけじゃねぇんだ、ぜ?」
 展開するダークネスクロークが炎の球の軌跡を僅かにずらし、チノは辛うじてそれを回避することに成功していた。
「焦らず粘り強く……頑張って戦うなぁん」
 エンヤの奏でるガッツソングにティエネリアも高らかな凱歌を重ねてゆく。応援するような旋律に冒険者たちは力を取り戻し、戦いを終わらせるべく地を蹴っていた。
「天使達よ!」
 アオイが護りの天使達を召喚し、ニーナはティエネリアに鎧聖降臨を施してゆく。
「この力が尽きるまで……いきます!」
 フェイディの放つサンダークラッシュの雷撃を魔物はジグザグの動きでかわそうとする。だが迫り来る雷撃は一つではなかった。
「この一刀は、千の雷に通ず」
 二条目の雷撃はアラストールから、これは避け切れずに赤の魔物はサンダークラッシュをその身に刻み込まれる。
「こちらからも火の玉をお返しじゃ」
 バジヤベルが牽制にブラックフレイムを放つが、これはステップで回避される。続けて迫るルシファからのホーミングアローもダッシュと身のこなしで辛うじて避けられてしまった。
「捕まえましたよ……!」
 踏み込み、達人の一撃を放つフェイディ。赤の魔物は腕を交差させて大棍棒の一撃を防御する。……初めて手を使わせたような気がする。それだけ魔物は追い詰められているということなのだろう。
「さっきのお返しだ、即退場願うぜぇ?」
 交差させたサーベルを振り下ろし、鋭くソニックウェーブを放つチノ! フェイディの一撃を防御するために足を止めていた赤の魔物の体を音速の衝撃波が貫いて駆け抜ける! びくりと身を震わせ、赤の魔物はふらついてよろめく。それでも何とか炎の球を蹴り出すが……最早その威力は失われていた。
「あと一息なぁん」
 護りの天使が受けて威力を減じた炎球を盾で防御し、高らかな凱歌で回復を施すエンヤ。
「これで試合終了ですよ?」
 ティエネリアの生み出したヴォイドスクラッチが、正面から魔物の体を引き裂いた! ふらふらと後退るようにたたらを踏む。あの素早い動きはもう失われてしまったようだ。
「私に出来ることを……お願いします!」
 アオイのディバインヒールがフェイディの武器に力を与える。そこから繰り出されたサンダークラッシュが魔物に迫る!
「……っ!」
 フェイディのサンダークラッシュはこれが最後。ぎりっと歯を食いしばり、力を振り絞って放った雷撃は魔物の体をばちばちと駆け巡った。
「貴様の命、ここで奪い取って終わりとする……!」
 バジヤベルの緑の突風が魔物の体を吹き飛ばした。剣の間合いからは離れたが、アラストールは構わず長剣を、純白に輝く刃を突き出すように構えていた。
「その迷いし魂を置いて逝け!」
 ばぢばぢばぢぃ!
 裁きの雷が赤を落とす。がくりと地面に膝を着き、そのまま魔物は倒れ……それきり二度と動き出すことはなかった。

 それからモンスターの亡骸は土に葬られ、冒険者たちも戦いの終わりに小さく息を吐く。
「どこか飛び火したりしていませんよね」
 戦いの被害が村の方に出ていないか、ルシファやフェイディの提案で確認が行われていた。魔物の本体も攻撃も村に入る前に止めることが出来ており、街道の周囲にも火事になるような被害は出ていないようだった。
「こんな危険なスポーツもどきはもう結構です……」
 何とか終わったかと呟くティエネリアに、ともあれ何とか倒せたとアオイが頷く。
「みなさん、お疲れ様でした」
 こうして赤い衣の魔物を打ち倒した冒険者たちは、村に安全を伝えてから帰路につくのだった。

 (おわり)


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