ガンチャリオット



<オープニング>


 その日、冒険者の酒場へと姿を見せた霊査士・エリアードは、自分の幾らかの冒険者が注意を向けるのを確認し、口を開いた。
「ホワイトガーデンにおいてエンジェルが二人、ギアにより攫われてしまいました……」
 現場を目撃したと言うエンジェルによれば相手は四体。
 逃げ惑う二人のエンジェルを連携して追い詰め、あっというまに取り込んでしまったそうだ。
 四体のうち三体は銀の装甲に包まれ、車輪の足、槍の両腕、二メートル程の大きさ。
 残る一体は同じく銀の装甲。ただ足は無く僅かに空中に浮いており、両腕は大きな筒状、大きさは4メートルを超えていたと言う。
「霊査の結果、ギアの移動経路が判明しました。背の高い草の生い茂る草原、その只中を彼らは疾走して行きます。移動速度は速く、ここで逃すと次にいつ機会が来るかは分かりません……。今から急げば待ち伏せも可能でしょう。どうぞギアを破壊し、捕らわれのエンジェルをお助け下さい」
 そう言葉を締めくくると、エリアードは深く頭を下げるのだった。

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参加者
天狼の黒魔女・サクヤ(a02328)
旋律調和・クール(a09477)
黒猫の花嫁・ユリーシャ(a26814)
木漏れ日に舞う舞闘拳士・シャロン(a32664)
隠れ家ヘよーこその看板盗んだ・フォッグ(a33901)
戦天使・ジーク(a51197)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)
ギアクラッシャー・ライヴス(a65125)
合金紳士・アロイ(a68853)


<リプレイ>

●戦場へ
 ホワイトガーデン。天上の楽園と称されるその地、青々と茂る森の中を疾走する一三の影があった。
 目的地はこの先、背の高い草の生い茂る草原である。
「全く、登場時期を読まないギア共だな」
 うんざりしたような表情で魔霧・フォッグ(a33901)が言う。
 この時期、ただでさえランドーアース大陸には不穏な影が見え隠れしている。
 ドラグナーにドラゴン、さらに強大なドラゴンロード。
 そんな大変な時期に厄介ごとを増やされては、文句の一つも言いたくなるものだ。
「単独でも手強いギアが四体、しかも二体は中身入り。しかしそれでも……」
 前進の邪魔になる枝木を払いながら言うピースメーカー・ナサローク(a58851)に木漏れ日に舞う舞闘拳士・シャロン(a32664)が続ける。
「このチャンスはしっかり生かさないといけないしね」
 エンジェルを攫ったギアが通ると言う草原、そこを逃せば次は分からない現状。言うまでも無く、皆理解している事だが、失敗など許されないのだ。
「情けない話だ! このような戦いを前に重症を負うとはな……」
 悔しげに声を上げるのはギアクラッシャー・ライヴス(a65125)。
 彼だけではない。一三人中三人が先の大戦で負った傷があり、全力が出せる状態ではなかった。それでも、
「確かに、少々傷は痛みますかね……ですが、受けた以上はしっかりこなさねば」
「守られる形にはなるだろうし、趣味じゃないけど……自分で播いた種だからね、責任はちゃんと果すよ」
 合金紳士・アロイ(a68853)も玻璃霜刀の為征者・クール(a09477)も、悲嘆にくれるなどという無意味な事はしない。
 先の大戦も引くわけには行かない大事な物だった。そこで傷付きながらも戦った事は名誉でこそあれ、失態ではない。
 故にその傷を肯定し、その上で目の前の苦難を打開する。それもまた、冒険者の誓いに沿うものであろう。
「大丈夫ですわ、私達は一人ではないですもの。私達の力で、一刻も早くエンジェル達をお助けしましょう」
 無垢なる茉莉花・ユリーシャ(a26814)の言葉が合図であったかのように、一行は森を抜ける。
 決戦の場となる草原へ、冒険者達は踏み込んだ。

 姿勢低く、草の中に身を隠し、冒険者達はターゲットの到着を待つ。
 音、風、加えて己の目で敵の姿を追い求める。
「しかし、なんなのでしょうか……」
 遠眼鏡で周辺の警戒を行っていた時空を彷徨う・ルシファ(a59028)の口から、ふと疑問が零れた。
「虹の円環が輝きを増している中でのギアの動き。何かの影響があるのか……」
「確かに、妙にピルグリムもギアも元気な気がするな」
 小さな自問に答えたのは直ぐ近くで索敵を行っていた天狼の黒魔女・サクヤ(a02328)だ。
「ドラゴンの影響なのかなんか知らないけど。ま、まずは目の前の問題を片付けないとな」
 そう言うサクヤの動きが止まった。一点を見つめ、左手でルシファの肩を叩いた。
 叩かれたルシファはサクヤと同じものを捉え、心の内で仲間へと呼びかけた。タスクリーダーの力を使い――ギア発見の報を伝える為に。
(「ピルグリムは私たちで討伐します。ギアに捕らわれた人たちを解放に力をお貸しください」)
 ラクレッスへの祈りを終え、杖を取る戦天使・ジーク(a51197)。他の冒険者もそれぞれに得物を持ち、事前の準備を始める。
 ナサロークを始め、サポートに呼ばれたジョアン、リョウ、シャルーアら重騎士による鎧聖降臨。
 ユリーシャの無風の構えや、シャロンとルシファのイリュージョンステップ。
 その間にもギアは迫る。

●見極め
 開戦は冒険者の襲撃という形で始まった。
 先陣はサクヤ。砲手ギアを守りように布陣した槍手ギアの脇を抜け両の腕を振るう。
 放たれたのは無数の糸。敵を絡め自由を奪う蜘蛛の糸。
 不意の攻撃にギアの動きは若干鈍る、が感情など持たないギアの立ち直りは早い。
 糸は槍ギア一体を止めた。残る二体は戦闘状態に入り加速を始める。
 車輪が大地を抉り、土を蹴り上げる。草をなぎ倒し、サクヤを左右より挟むように攻撃を仕掛ける。
 雷光を纏った一撃が腕を掠める、痺れが一気に全身を巡り動きが鈍る。そこに続くもう一撃!
「させないよ!」
 シャロンの蹴撃がその軌道を逸らせた。
 僅かに仰け反った槍ギアは仕返しとばかりにシャロンを穿つ。更に、砲腕ギアの追撃が放たれた。
 腕を交差してガードするも、衝撃と熱でダメージは大きい。
「虹の円環が見下ろすこの大地に。ラウレック様のご加護がありますように。機会を逃さぬ力を──」
 ジークの捧げる静謐の祈りが、麻痺に陥ったサクヤとシャロンの自由を取り戻し、クールとライヴスのヒーリングウェーブで体勢を立て直した。

 初手で拘束されたギアも動き出す。仲間の援護の為前線に出ようとするギアは、
「さて、こっちもだな」
 思わぬ攻撃に大きく体勢を崩した。
 払い上げ。繰り出したのは、ハイドインシャドウで潜んでいたフォッグだ。
「コイツは違うか。んじゃ、……弱い順から沈んでいけ」
 中身無しと判断。槍を低く構え、全力のスパイラルジェイドを打ち込む!

 サクヤに一撃を加えた槍ギアは旋回し再びの突撃体勢。
 迎え撃つのはユリーシャだ。迫る切っ先に、殺意を捨てた構えで挑む。
 繰り出される槍、その一撃は――予想以上に鋭い!
 肩を痛みが走る。だが貰っただけでは終らない。
 すれ違いざま、ギアの後頭部に放たれる高速の蹴り。
 後頭部への衝撃で前のめりになったギアにナサロークが接近する。距離は限りなくゼロに、槍を振らせはしない。
 至近距離で撃ち出すのは気高き銀狼。現れた銀狼は即座にギアと組み付くが、しかしそれもすぐさま振り払われる。
「アバロン様、恐らくこのギアが……!」
「当たりのようだ、な」
 後衛で戦闘を把握していたアロイも判断する。エンジェルを取り込んでいる槍ギアは――
(「恐らくユリーシャさんとナサロークさんの相手取るギアが強化型です!」)
 戦場に居た冒険者全員の胸に響く声。これにより、作戦の第一段階は終了だ。
 あとは通常ギアより順に撃破。事前の作戦通り冒険者は動き出す。
 砲手ギアも黙っていはいない。双方の腕を突き出し、腕部装甲を開放。
 カバーの裏面が光りだし、銃口に光が満ちる――そして、発射。
 閃光が戦場を駆け抜けた。
 サポートの重騎士達がガードに入る。ルシファもその身を挺してガードに入る。
 一瞬の事だった。それだけで、冒険者の数人に甚大なダメージを及ぼし、草原の一部が平原に変わった。
 恐るべき威力だ。発射後、椀部装甲は閉じられ、煙が立ち昇っている。
 あの煙が消えるときが、次の砲撃だろう。
「だが、見逃すわけには行かない! 喩えこの身が砕け散ろうと鉄の悪魔を叩いて砕く!!」
 ライヴスの咆哮が、彼が放つヒーリングウェーブと共に広がる。
 砲撃を耐えたジョアン、リョウ、シャルーアがガッツソングを、気合に満ちた歌声を響かせる。
 癒えた傷、高まる士気、退く事のない冒険者に、ギアも容赦なく攻撃を行う。
 通常砲撃を行おうとする砲手ギア。が、その動きは魔氷と魔炎に包まれ動きを止めた。
「天使の矢からは逃れられません!」
 キルドレッドブルーと融合したルシファの矢。
 強力な砲撃を止めるには、動きを止める他にない。

●最後の閃光
 繰り出された槍を、シャロンは盾で打ち据え軌道を逸らした。
「一気に行くよ……いっけ〜弧月の舞♪」
 体勢を崩すギアに、右肩から蹴撃を叩き込む。疾風斬鉄脚。光の軌跡を残す一撃は、しかしそれで終らない。
 追撃、もう一撃腹部をなぎ払うように打ち込んだ。
 金属片を撒き散らし、車輪を止めるギアの側面、サクヤの偉大なる衝撃が打ち込まれる。
 盛大に高鳴るファンファーレ。ギアは全身を歪に変形させながら倒れこんだ。
「まず一体、だな」
 その報は、アロイのタスクリーダーよって直ぐ全員に伝えられる。
「次はお前の番だな」
 フォッグの対峙していたギアも既にかなりの損傷を受けていた。
 ギアが弱かったわけでは無い。フォッグも幾度か危機はあった、ここまで来るのに時間もかかった、アビリティも結構使った。
 だがジークの祈りのお陰で麻痺は問題なかった、クールとライヴスの癒しで倒れることは無く、前衛が上手く避ければ彼らも攻撃に参加した。
 そして――この結果だ。
 突撃してくるギア。対するフォッグはスパイラルジェイド。
 敵の穂先をギリギリで避け、その頭部を穿ち砕いた。

 強化槍ギアとの戦闘は旗色が良くなかった。
 能力が底上げされているギアの攻撃を、無風の構えで受けるのは至難の業。ナサロークの拘束も長続きしない。
 強力な『体』攻撃を行うギア、刃の様に鋭利な『技』攻撃を行うユリーシャ。
 双方が削り合い、しかしユリーシャは仲間の癒しで士気を保つ、ギアには士気もなにも元より無いが。
 が、状況は変わった。他のギアを撃破した仲間の参戦によって。
「確実に当てて力を削ぐよ……風雅の舞!」
 シャロンの旋空脚がギアの足を止めた。続くサクヤのブレードダンスがギアの右腕を切り落とす。
 好機と距離を詰めるユリーシャ、振るわれる迎撃の雷槍。
「その攻撃、そっくりお返し致しますわ」
 しかしユリーシャはそれを正面から受けとめ――返した。
 衝撃が、ギアの正面装甲を打ちのめす。
 クールのエンブレムノヴァに頭部を、ライヴスのエンブレムシュートに左腕を破壊され、ギアは倒れた。
 残るは、
(「砲撃主、BS切れました! 速やかに対処してください!」)
 残る敵は最後まで足掻く。
 胸に響いたアロイの声に砲手ギアに視線を向ければ、腕部装甲は開放されていた。

 ルシファの魔氷に足止めを受け、フォッグに蜘蛛糸で拘束され、しかしそれらを振りきり砲手ギアは閃光を解き放った。
 強化槍ギアを倒すため集まっていた冒険者を纏めてだ。
 圧倒的な威力。だが――ガードは間に合った。さらに、砲手ギアの片腕が吹っ飛んでいた。
「上手く、いきましたわね」
 あの閃光の一部が、ユリーシャに反射されていのだ。
 ギアは装甲を閉じ、片腕で散弾を主力に立ち回る。だが一人も欠ける事無く、一三人の冒険者はその矛先を一体のギアに向けるのだ。
 蜘蛛の糸、魔氷、銀狼が動きを止め、冒険者も回復に回す時間が減る分攻撃に回せる。
 直撃するエンブレムノヴァ、数多の刃がギアの装甲に傷を刻む。
 運良く自由を取り戻したギアが散弾を放つも、ジークのヒーリングウェーブがその傷を癒す。
 戦況は有利、しかし敵は尋常じゃないタフさだ。
 拘束アビリティが次々と打ち止めになる。攻撃アビリティもだ。そして、再びギアの腕部装甲が開放される。
 片腕、しかし威力は凄まじいだろう。
「きます!」
 ジークの声が響く。しかし、避けるには遅く、その閃光は……上空に放たれた。
 ルシファの矢が頭部を貫き、その射線を乱したのだ。
「無垢なる翼持つ民を取り込まねば力を堅持出来ぬ鉄の悪魔よ、砕け散れ! 今日この地で!!」
 ライヴスの頭上に形成される強大なエンブレムノヴァ。クールもそれに倣う。負傷ゆえ全開ではないが、それでも十分な威力。
 双方が残す最後の攻撃アビリティがギアの脚部を吹き飛ばした。
 浮遊する力を失い地に堕ちるギア。開放された腕部装甲は、二度と閉まらない。

●帰ろう
 砲手ギアの装甲を引き剥がす。何重にも重ねられた背部装甲に下に彼女は震えて待っていた。
 差し込んだ光に目を細める。
「もう大丈夫だよっ」
 聞こえた声にハッと振り返る。差し伸べられた小さな手。
 それは同族、ジークの手。
 少女は縋るように、その手を掴んだ。

「ん、特に異常もないみたいだな」
 サクヤが満足げに頷く。
 ライヴス達に助けられた槍ギアのエンジェル共々、若干衰弱していた程度で怪我などは見られなった。
 ジークに癒しの水滴と、ローブを受け取り、少女達もやっと落ち着きを取り戻したようだった。
「じゃあ、お家に帰ろうか?」
 シャロンの提案は異論もない。ユリーシャとフォッグが少女達を背負い、少女達の示す道を歩みだす。
「そういえば、何かギアの中で変わったことはありましたか?」
「え……お友達に、捕まったことある子が居て、話聞いたことあるけど……同じ感じだったよ?」
「そうですか。とにかく、ご無事で何よりです」
 少女の返答にルシファは微笑んだ。
 胸中に、虹の円環への疑惑を抱きながら。

 アロイの大岩斬がギアの腕を穿つ。
 金属質な音色を奏で、槍の腕が転がった。
「ん、アロイもか」
「ナサロークさんですか。えぇ、この槍の威力。放って置くのは勿体無いかと」
 二人はそれぞれに槍を手に持った。
 あの激戦の中で欠けもせず、輝きを保つ槍。
 それを手に、二人は仲間の後を追った。


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参加者:10人
作成日:2007/12/09
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