<リプレイ>
●避難誘導 「ふかふかー!」 「もこもこしてるー!」 ふわふわ綿毛のヒヨコ・ネック(a48213)は完全に包囲され、襲われていた。 襲っているのは活力あふれる小柄な者達。 村に住むお子様達である。 「みんなそろそろいかないとぉ〜」 ネックが促すが子供達は止まらない。 抱きつくわ羽をむしろうとするわパンチをするわやりたい放題だ。 なにしろネックは外見も内面も極めて親しみやすい。その上旧同盟領の田舎ではまずお目にかかれないチキンレッグなのだから、こうなるのも仕方がないことかもしれない。 「あぶないんやなぁ〜ん、はよ逃げるんやなぁ〜ん」 遠くからちょ〜トロい術士・アユム(a14870)の声が聞こえてくる。 モンスターと接触する可能性がわずかでもある場所から村人を待避させているのだが、避難訓練など一度もしたことがない村としては奇跡的と表現して良い程待避は素早く行われていた。 こういう場合極めて厄介な存在となりうる好奇心と行動力ある子供達を、ネックが一手に引き受けているからかもしれない。 「ありがたいことです」 村の若衆から報告を聞き終えた村長が、担当の誘導を終えて来たエンジェルの重騎士・メイフェア(a18529)を出迎える。 大々的な避難を提案されたときは冒険者の周到さに感謝すると同時に畑の手入れなどがおろそかになることを恐れたのだが、こうまで鮮やかな手並みを見せられると感謝しかしようがない。 「モンスターは必ず食い止めます、だから後ろを気にせず戦えるように待機を徹底させてほしいですの」 天から降りてきたエンジェルの言葉に、心からの笑顔と共に頷くのだった。
●共有 どれだけ技を磨き装備を調え戦術を構築したところで運の要素を完全に排除することは難しい。 「へえ」 極めつけの不運で直撃した小石に腹を貫かれながら、荒野の黒鷹・グリット(a00160)は飄々とした態度を崩さず前進する。 「まともに受けたら重傷だったかもしれないね」 おかえしに拳ではなく手のひらがモンスターに触れた瞬間、爆発的な「気」が炸裂し衝撃が分厚い装甲を突き抜ける。 その衝撃はあまりに強大で、巨大な重量を誇るモンスターが村から引き離されるように後退させられていた。 「頑丈な相手だな」 業の刻印・ヴァイス(a06493)は数枚目の不吉な絵柄のカードを投擲する。 それはモンスターの上部に命中し、わずかな切れ目をつけると同時にそこを黒く染める。 直撃してたったこれだけの損害しか与えられないが、ヴァイスは悲観しない。 「一度では無理なぁ〜ん」 アユミが超特大ピコピコハンマーをかざしてヒーリングウェーブ奥義を連続で行使する。 強力極まりない癒しの力を保つアユミでさえ、グリットのダメージを共有した光と風のセンリツ・ウィンダム(a19114)の傷を一度では完治させられない。 この機にモンスターもウィンダムに狙いを定める。 ウィンダムは回復の時間を稼ぐため距離をとろうとするが、モンスターはウィンダムにとどめを刺すために追撃の一打を放つ。 「頭を使いやがる」 鼻をならして地祇なる静寂の獣・ジン(a08625)が横に飛ぶ。 ウィンダムに向けて放たれた固まりが掲げた盾にぶつかり、粉塵とともに破裂した。 狙いが甘くなるのを嫌ったのか、モンスターは狙いをグリットに向ける。 「わ、わぁ〜」 両手杖をぶんぶん振り回しながらヒーリングウェーブ奥義を使うネックの援護を受けながら、グリットはモンスターの攻撃をかわし、あるいは受け止め、時間を稼ぐ。 程なく退却せざるをえないだけのダメージが蓄積してしまうが、時間を稼いだ価値はあった。 「恩ある下界の民に触れさせはしない」 強固な思いがこもった静かな声で宣言し、が力を解放する。 ヴォイドスクラッチ奥義により発生した力がモンスターに浸透し、その鉄壁の装甲を事実上無効化する。 「さすが術使い」 ジンは獰猛な笑みを浮かべ突進し、毒の刃を放つ。 刃は今までからは考えられない程深くモンスターにめり込み、毒を浸透させる。 「このまま毒で死ぬまで放置するのも良いかもしれないな」 回避に成功してさえ肌に痛みを感じるほどのモンスターの威力を実感しながら、ヴァイスは平然と軽口を叩いてみせる。 回復能力を持たないモンスターがさらにバッドラックシュートの効果を受けた場合、短時間で状態異常から脱する可能性は低い。 「そういうわけにはいかないでしょう」 軽口であることは分かっているため、言い返すウィンダムの声も柔らかい。 戦闘開始からこれまでモンスターを押し返しているとはいえ、モンスターが力尽きるまで放置していれば村の建造物が大量に破壊されかねない。 「武道家は体張ってナンボ! 覚悟していくにゃよ!」 あの唄を求めて・チキチキータ(a64276)は陽気な声をあげながらグリットのいた位置に移動する。 少しでも村から引き離すため、連続で、爆発的な「気」を叩き込んでいく。 毎回移動させることはできないが、乾いた土に溝を作りながら大きな円柱を押し戻していく。 それだけすればモンスターも黙ってはいない。 爆音と共にモンスターの表面が爆発し、直撃を回避してさえ大きな被害が避けられない一撃がチキチータ襲う。 「っ」 「痛いけど痛くないやなぁ〜ん」 チキチータが苦しい息を漏らすと同時に、アユミが気合の声をあげる。 他の冒険者達と同様にこの2人もダメージを共有しているのだ。 8人全員が君を守ると誓うをいう徹底した戦術が、ここまで1人も戦闘不能にならずに戦うことを可能にさせて。 「ここまで叩き続けてまだ動くとは、どこまで頑丈ですの」 幾度と無く己の得物を打ち付けた壁に、メイフェアは得物自体の重量を乗せた一撃を叩き込む。 暴君の慈悲という名にふさわしい威力を発揮した金属製の鎚矛が盛大にモンスターを砕くが、もとのサイズがサイズなだけにさほど効いているようには見えない。 もっとも、それはあくまで外見だけのこと。 既にモンスターの中枢部は重大な損傷を追っていた。 「死ににくさだけはすげぇな」 アビリティを使い切ったジンの声には、呆れに近いものが混じっていた。 突きを叩き込むと、凶悪な棘が大量に仕込まれた鉤爪が完全にモンスターにめり込む。 「ここまで頑丈なんて霊査士の話と違う気がするにゃ〜」 刃でモンスターの腹をえぐるというより掘り進みながらチキチータが言う。 声は明るいが尻尾は内心を表しているかのように動きが早い。 「何、そろそろ……さ!」 戦線に復帰したグリットが大きく踏み込む。 カウンター気味にモンスターから放たれた一撃を掌打でわずかにモンスターの位置をずらすことで回避し、さらに大地を揺るがすほどの踏み込みと共に蹴りを放つ。 冒険者達が割り、砕き、えぐってきた石壁を蹴りが貫き、モンスターの中枢部分を打ち抜く。 モンスターの全身がぶるりと震え、完全に足が止まる。 「これで」 「終わりやなぁ〜ん!」 ウィンダムの放った火急が限界までもろくなっていた壁に大穴を開け、そこに攻撃アビリティを使い尽くしたアユムの一撃が突き立つ。 アユムのハンマーがピコッ☆と場違いな程軽い音を立てた瞬間、モンスターの内部は完全に崩壊した。 「「「……」」」 誰も動かない。 モンスターが完全に動きを止め何の気配も感じられなくなっても、戦闘態勢を崩さない。 非常識な程の耐久力を嫌という程味あわされたためいつも以上に慎重になっているのだ。 それから1分はたってからようやく動きが生じる。 「はふぅ」 ネックがぽてんと尻餅をつく。 気が抜けた、見ようによっては愛くるしいぬいぐるみのようにも見える格好で、最後に残っていた癒しの技を使う。 「これぞ森羅万象を鼓舞する唄にゃよ。生きとし生ける者に、神の遺した力の加護を」 チキチータがガッツソング奥義を連続で行使し、ようやく冒険者達の傷が完全に癒える。 2人4組でダメージを共有したため、単体攻撃のみのモンスターとの戦いとは思えない程負傷者が続出していたのだ。 こうしてかつての冒険者は、冒険者達によって完全にその生を終わらせたのだった。
●歓喜と終わり 「完了しました」 ウィンダムが短く、しかしこれ以上ないほどはっきりと勝利を伝えると、村中に響く歓声が沸き起こった。 近くにモンスターが現れたにも関わらず一切の被害がなかったことに、村人は驚くと同時に歓喜していた。 「行かないのか」 「柄じゃない」 村から離れた場所で、ヴァイスとジンは先程までの戦場を眺めていた。 長いつきあいにもかかわらずこれが初めての依頼での共闘で、その共闘がこの激しい戦だ。 多少感傷的になるのも仕方がないかもしれない。 彼等のすぐ近くでは、アユムとメイフェアがモンスターの残骸を……亡骸を土に埋めている。 「土にかえるんやなぁ〜ん」 完全に埋め終えたアユムが神妙に黙祷を捧げる。 モンスターは民の敵であり、そうである以上冒険者達にとっても敵でしかない。 だが今このとき祈ることくらいは許されるだろう。 「行こう」 全てのことを終えた冒険者達は、平和を取り戻した村をあとにするのだった。

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参加者:8人
作成日:2007/12/14
得票数:冒険活劇4
戦闘5
ほのぼの1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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