女王様のファッションショー



<オープニング>


「コスプレ女王って呼ばれてるお嬢さんの屋敷へ行ってもらいたい」
 即座に席を外す者、数名。
「はっはっは。まぁマチヤガレ」
 素敵に笑ってすばやく肩を掴むと、霊査士は宥めるように座らせる。
「簡単な話だぞ。屋敷の主と一緒にコスプレして街を練り歩くだけだから――って、だから去るな」
 やはり素早く制するも、冒険者らは納得いくようないかないような……皆一様に複雑な顔をしている。
 判らないでもないが、とえりあえず聞いてもらわねばなるまい。霊査士は早口で言う。
「だから、女王サマの気紛れでやってる手作り衣装の披露会に冒険者もきて欲しいっつか自分の作った(ちょっと偏った趣味の)服をあれこれ冒険者に着てもらいたいっつー依頼なんだよ。依頼の中身そのものは着て歩くだけ。判ったか?」
 一気に言うと、ぜはぁっ、と大きく息をつく霊査士。
 ちょっと嫌な間があったような気がするのは、きっと気のせいではない。
 そんな、どこか訝しげな視線をちらりと見やり、ぐっと親指立てて笑顔を向けると。
「まぁ……どうしてもって言うんなら見学だけでも構わないようなことは言ってたが……納得できる理由を考えておくことだな。その女王サマってのが金持ちなわりに趣味が料理と裁縫(プロ並)って言う家庭的な美人さんで、ファン多い。間違っても、無碍に断って騒動を起こしたりしないでくれよ?」
 そんな霊査士の爽やかな微笑みに、脱力せずにはいられない冒険者たちであったそうな……。

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参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
スーパー脱力系愛ドル・シドゥ(a01699)
看板娘の妖精さん・フェリス(a01728)
ザ・バック(a01803)
気高き黒薔薇の女神・ルルアラ(a04320)
ねこまっしぐら・ユギ(a04644)
燃え盛る野望・レンレン(a08345)
転がり魔・ミアン(a08671)


<リプレイ>

 コスプレ女王ことヒナと言う女性は、揃って彼女の家を訪れた冒険者たちを見るや、歓喜した様子で彼等を連れ込んだ。
「あぁ、皆さん本当に着てくれるのね…衣装はこっちよ」
 案内されるままに向かった先は大広間。そこには、服屋顔負けの衣装の山。
「今日のために腕によりをかけて沢山の衣装を作ったの」
 ニッコリと言うヒナに勧められ、彼等はまず、衣装を選び始めたのだった。

●これがメイン? 衣装合わせ
「あの、女王様。私、服は女王様の独断と偏見で選んで欲しいの。お願いしまーすっ」
 ぺこんっとお辞儀をして言ったのは、ピンクスパイダー・ユギ(a04644)。左右違った長さのツインテールが可愛らしい。
 それを見たヒナの瞳が、きゅぴーんと光る。
「それじゃ、あなたにはこれを!」
 大量の衣装の中から素早く選んでずずいっと差し出されそれは、艶やかな刺繍の入った明るい紫の服。ボディラインをくっきり表すその裾は、腰までスリットが入っている。
「お、お色気…?」
「は、あんまり可愛くならないから、これも着てね♪」
 差し出したのは真っ白なズボン。
 満足げにユギを見るヒナの背後では、看板娘の妖精さん・フェリス(a01728)がパステルカラーのワンピースを試着していた。
「今日はいつものとちょっと違った服だけどやっぱり妖精さん〜」
 ふわっとしたスカートを揺らして回ってみせるフェリスのその一言、ヒナは聞き逃さなかった。
「妖精さんだなんて、とっても素敵ね♪」
 フェリスを掴み、ヒナは目にも止まらぬ速さで透明な布を縫い付けていった。
 首を覆ってマフラーのように垂れ下がり、動くたびに光に当たってキラキラと輝くそれは、まるで羽根のようだった。
 そんなフェリスの隣では、スーパー脱力系愛ドル・シドゥ(a01699)がカタツムリの着ぐるみを身に纏ってポテポテと歩いている。
「あぁぁいぃぃぃあぁぁぁいいぃぃぃ♪」
 愛の歌を口ずさみながら、シドゥはぽよぽよお散歩へ……。
「あ、あぁ……待ってー。貴方に似合う鈴があるのよー!」
 赤紐に垂れ下がった鈴を手に、シドゥを追いかけるヒナ。だが、その視線が元気一杯・ミアン(a08671)を見つけた瞬間、足は止まった。
「あなたは何を迷っているの?」
「うゅ…ミアンは…その、ぺったんこだから…あんまり露出度の高いのは、嫌だなって……」
 気にしているのか。もじもじしながら言うミアンを、ヒナはきゅーっと抱きしめていた。
「胸がないのなんて気にしなくていいわよ。あなた、こんなに可愛いもの♪」
 言うなり、ミアンに衣装を手渡して試着室に押し込んだ。
 しばらくして出てきたのは、肩が出そうなほどぶかぶかのセーターとギリギリ裾が見えるかもしれないというほどの、極ミニスカートを着たミアン。
 髪に生える小さなヒマワリに合わせたクリーム色が、愛らしさを引き立てていた。
「…み、短かすぎる気が、するの…」
「短いのはもちろん仕様よ!」
 笑顔満面。目に見えてハイテンションになってきているヒナであった。
 そんな中の様子を見つつ、屋敷の外の広場では、寝覚めの良い死者・バック(a01803)とリザードマンの武道家・レンレン(a08345)が、御披露目パレードで使用するノソリン車の作成をしていた。
「どうせならもっとキラっキラにしようぜ!」
「うーん、確かにこの辺が寂しいかもな」
 紙ふぶき用にキラキラな紙を刻みながら、完成間近なノソリン車を見上げるレンレン。バックはうなりながら、後ろの方を指差してみる。
 と。
「二人は衣装を決めたの?」
 どこぞから沸いた、ヒナ。美しき筋肉美を誇る男二人を上から下までまじまじと眺めながら、わくわくと尋ねるのだった。
「まだだな…できればカッコイイヒーロー系がいいっすね。あ、でも女装とかはカンベンな!」
「俺はとにかく目立つ物がいい! 俺に似合う奴頼むぜ、女王さんよ?」
 受けて、ヒナは窓から出入りというお嬢様らしからぬ行動で広間から衣装を引っつかんでくると、それぞれ、手渡す。
 バックには炎の刺繍があしらわれた皮の上着と、オプションの帽子とサングラスを。
「クールにシックに♪ きっとよく似合うわよ!」
 レンレンには目を引く鮮やかな赤地に、金色の縁取りがついたジャケットを。
「これなら目立つわ! 熱い男ならこれくらい着なきゃ」
 なんだか丸め込まれたような気がしないでもないが、任せた以上は着てみねばなるまい。
 衣装に袖を通し、大きな鏡の前でしきりに自分の姿を確認する二人であった。
 ヒナが外ではしゃいでいる頃。黒薔薇の女帝・ルルアラ(a04320)は、一人妄想にふけっていた。
「うふふ…皆で着飾ってのお祭り(違)なんて、久しぶりですわね。あぁん、美しい衣装に身を包み、男達の熱い視線を受けるのって、シ ゲ キ テ キ!」
 ほぅ、と溜息をついてから、はたと気付く。
「…あら、わたくしったら何を言っているのかしら。お恥ずかしいですわ!」
 やはり一人で赤面するルルアラ。気を取り直して、衣装選び再開だ。
 自慢の豊満スタイルを大アピールできるようなゴージャス衣装を求めているのだが、さすがコスプレ女王。色も種類も半端じゃない。
「『女帝』の名に相応しいのは、どれかしら……」
「あなたは凄く綺麗な肌をしてるんだから、これぐらい出した方が魅力的よ」
 やはり突然沸いて出るヒナ。背中が大きく開いた漆黒のドレスを差し出しながら、にっこりキッパリ言い切った。
「うん、やっぱり素敵♪」
 首元にファーのマフラーを巻けば、大人の魅力全開である。
 そうして次々と衣装を選んでいくヒナの生き生きとした姿を横目に、想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は思案を巡らす。
 と、丁度、ヒナが彼女に声をかけてきた。ここは思い切って言ってしまおう。
「あの…女王様は不満に思うかもしれませんが、このコスプレパフォーマンスを街全体の行事にしてしまう、何て、どうでしょうかねね。ほら、あの子ならこの衣装が似合うでしょうし、この衣装は向かいのお店のおじさんに着せてみたらとても映えると思いますよ」
 窓の外を歩く街の人々を示しつつ、ラジスラヴァは続けた。
「女王様の服を誰がより上手に着こなしてくれるかのコンテストを開いてみたりするのもいいかもしれませんよ」
「…いいわね、それ。ステキな意見をありがとう! 町の皆さんにも相談してみるわ!」
 話を聞きながら、爛々と瞳を輝かせていたヒナは、ラジスラヴァの手を握り、嬉しそうに小躍りしだす。
 そうしてから、ふと思い出したように小首を傾げた。
「あなたの衣装は、決まった?」

●いざ! お披露目大パレード
 町は予想外に賑わっていた。ノソリンの引くお立ち台の上で、冒険者たちはまず、様々にポーズをとって見せる。
 ひときわ大きなとおりに出てからが、彼等の見せ所。考え抜いたパフォーマンスの開始だ。
 先陣を切ったのは、最後まで衣装選びに迷っていたラジスラヴァ。
 目の醒めるような青いドレスと、ヒナに頼んでベールをつけてもらったティアラを纏った彼女は、さしずめ優美なお姫様。
 ふわりふわりと長い裾を翻しながら舞う様に、集まった人々は魅せられていた。
 裾を踏んづけはしないかとはらはらしていたヒナであったが、やはりそこは踊りのプロ。服を全面にアピールしながらの華麗な舞を披露してくれたのだ。
 ラジスラヴァと入れ違う形で、フェリスとユギが表に出る。
 気ままに踊るフェリスの脇から、ふわっと細い糸を散らすユギ。キラキラと光る糸は、ほんのりと神秘的な雰囲気を醸し出していた。
 と、糸に引っかかったのかただ躓いただけなのか、フェリスがころん、とノソリン車から落ちた。
 だが、「あ」と思った次の瞬間。ふわりと布を揺らし、ちょこんと綺麗に着地成功。
「妖精さん身軽だから大丈夫〜」
 にこぱっと笑うフェリスを応用にユギも舞台から降り、ギャラリーの前で可愛らしくポーズを決めた。
「ミアンも頑張るの〜」
 短すぎるスカートはもはや気にしていない。土塊の下僕をお供にしながら、空いた舞台に出ると、ミアンは元気に踊りだす。
 元気が取り柄なのだからと、飛んでみたり回ってみたり、そして決め手に眩しい笑顔を向けていた。
 続いては吟遊詩人らしく、美声を響かせるルルアラ。それもただの歌ではない。大空を飛び回る鳥を誘う、獣達の歌だ。
 色取り取りの羽根を羽ばたかせて上空で踊る鳥たち。彼らはルルアラの合図で、美しき名残と共に、飛び去った。人々の間に拍手が沸く。
 が。
「でぇぇぇぇんでぇぇぇぇんんんむぅぅぅしぃぃぃむぅぅぅぅぅしぃぃぃかぁぁぁぁたむぅぅぅつりぃぃ〜♪」
 ちりりん、と鈴を鳴らしたシドゥの脱力歌が、響いたのだ。本人至って悪気はないが、非常に微妙なタイミングであるかもしれない。だが、
「可愛いので良し!」
 ヒナ含む一部女性には、大受けのようであった。
 最後は、レンレンによる演舞。服に傷が入りそうな殺陣の意見は流石に却下されたが、『目立ったもん勝ち』の意識が生む大きな動作が、視線をひきつけるキーポイントのよう。逞しい肉体が華麗に舞う姿は、女性陣のそれとはまた違った美しさがあった。
 そして。バックのエスコートでヒナは舞台に出た。少し目元が潤んでいるのは、感激の為か。
「私の服を、ここまで素敵に着こなしてくれた冒険者の皆さんにいま一度大きな拍手を!」
 自らもフリルをふんだんに使ったとっておきの衣装に身を包み、高らかに告げる、ヒナ。
 大きな歓声の中、お披露目会は無事に終了したのだった。

 ちなみに。お披露目会で着た衣装は、よく似合っていたから、との言葉と共に、各々にお礼として渡されたそうな……。


マスター:聖京 紹介ページ
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