≪城壁はじっこ見張り小屋≫祝福された園



<オープニング>


 暖かい南風の神様の祝福により、冬将軍の立ち入りが禁じられた園。
 秋の花が咲き乱れ、渡り鳥が冬の厳しさから身を休める地。
 しかし、その祝福も万全ではなく、年が明ける頃には冬将軍に踏み荒らされてしまう。
 だから、神様は園の場所を毎年変えている。できるだけ冬将軍に見つからないために。

「……ある地方にそう言い伝えられた、伝説の園のお話です」
 仲間の不思議な園の話を聞いた一輪の花・オリヒメ(a90193)は、『城壁はじっこ見張り小屋』の仲間たちにある言い伝えを語った。

 きっかけは、朝、誰かが水を組みにいったときに、名の知れぬ一羽の鳥を見かけたことだった。
 その鳥の飛び方が安定せず、おかしいと思った団員が追ってみたところ、そこにはコスモスやサザンカなど秋の花園が広がっており、翼を怪我した鳥が園の手前に蹲っていたのだ。
 治療の術を持ってなかった団員は、その鳥を腕に抱えて旅団の仲間たちのところに戻り、鳥と園の話をした。

 旅団員の手当てを受け、飛び立つ鳥。その方角は仲間が見つけた秋の花園。
「私たちも向ってみますか? 言い伝えが本当かはわかりませんが、秋の景色も見納めになるでしょうし」
 冷たい風の中に時折吹く、時季外れの暖かな風。ふたつの風に吹かれながら、誰かが言った。

マスターからのコメントを見る

参加者
朧月の紋章術士・ネフィリム(a15256)
大天使長・ホカゲ(a18714)
無銘の騎士・フェミルダ(a19849)
旭日昇天・エスターテ(a26580)
紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)
城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)
白薔薇姫・フェア(a34636)
蒼銀の風謳い・ラティメリア(a42336)
ヒトの武人・アリア(a43928)
オーディーンの槍・カミュ(a49200)
銀翼鷹・ハルアキ(a54057)
昏闇蒼月・レン(a57577)
樹霊・シフィル(a64372)
不羈の剣・ドライザム(a67714)
セイレーンのクールガイ・ウェール(a70368)

NPC:一輪の花・オリヒメ(a90193)



<リプレイ>

●右足が花を踏む前に
「これが、伝説の園……」
 肌寒く暗い森を抜けた先に広がる秋の花園。
 城壁はじっこ見張り小屋の仲間たちは、コスモスやキンモクセイなどが咲き乱れる季節外れの美しさに見とれ、ある者は南風の神様に、またある者はこの場所を教えてくれた鳥に心の中で感謝した。
 足の踏み場に迷う程の花や草を前に夢見る箱入り狐・ネフィリム(a15256)は迷いながら花園のある場所に旅団の物置から持ってきた敷物を広げ、各自荷物を敷物の上に置く。全員が身軽になり、風が徒歩の疲れを運び去った所で城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)は何をするかの話を切り出した。
「では小屋を出る前にお話していたとおり、私は花冠を作ろうと思っています。後でみんなで品評会ですね。他に何かしたい事はありますか?」
「私とウェールさんは、ラティメリアさんにお手伝い頂いて鍛練をしようと思っています。最近寒いので、トレーニングも省略しがちなのですよね」
 紅焔揺白盾・ヨイク(a30866)のトレーニング宣言に、白薔薇姫・フェア(a34636)は小首をかしげつつお願いという名前の注意をする。
「あのぅ、お花を踏み荒らさずにすむ場所で、お願いいたします、ね……?」
「あは、あははは……(踏み荒らさないですむ場所あるかなぁ)」
 若干困り顔のヨイクに、サクラコは何か悟り、ポンと両手を合わせて悟った内容を説明する。
「フェアさんアレですよ、タツジンは稲穂の上を駆ける事が出来るってヤツですよ。それと同じ要領でお花の上をスイスイとですねぇ」
「ああなるほど、足場を荒らさずに戦うための訓練ですのね。さすが……!」
「右足が花を踏む前に、左足を前に出せば……というやつですね」
「忍びの修行みたいですね。狂戦士の私には忍びの方々が本当にそのような修行をなさっているかは存じませんが」
「う〜ん。隅の方でこじんまり基礎鍛錬、かな。ハハ」
 忍び伝説に話が膨らむ中でセイレーンのクールガイ・ウェール(a70368)もクールながらの困り顔。
 鍛練に励む3人のほかに、大天使長・ホカゲ(a18714)と昏闇蒼月・レン(a57577)もそれぞれやりたい事を宣言する。
「私は花園の散策をノンビリしようかと。何もしない贅沢を満喫しようと思ってます」
「花冠を作るのも楽しそうだし、参加してもみたいけど……ちょっと自分らしくないしね。自分も散策に出て風景を堪能するよ。みんなが冠を作り上げたくらいに戻ってくるから」
「そうですね。秋をのんびり愛でるのも次は当分先になりますし。各自好きなことをしましょう。他に何かしたい方はいますか?」
 少し間を空けるが、他に声は上がらない。
「ではお昼くらいにここに集まりましょう。ネフィリムさんやオーディーンの槍・カミュ(a49200)さんたちが作ったおべんとうがありますから、遅れてないようにしましょ。では解散〜」
 そして各自必要なものだけを持って、思い思いのことをはじめた。

●Ennui
 散策に出たホカゲとレン。とはいえ、二人とも浸りたい思いがある故、共に一緒に歩いているわけではない。

(「花言葉が「乙女のジュンジョー」だっけ? ……似合わないなぁ、自分」)
 レンはコスモスを手に取り、この花について知っていることを思いだす。そしてすぐそばのヒガンバナを愛で、実は情熱って意味もあったりすると心で語り、そして再び似合わないなぁと自己のイメージとの不一致に花言葉を思い出すのを止めた。
(「花がある時は葉が散っていて、葉がある時に花が散ってる変な花。けど、それは葉も花も互いを想い合ってるからで、今は誰かさんの為にしか生きていない自分には何となく、自分を重ねてしまいそう」)
 ここにはいない誰かと自分を、目の前のヒガンバナに重ね合わせてレンは思いに浸る。
「……ざまぁないね」
 短い期間しか咲かない花。その残りの時間も短い花に侮蔑の言葉を吐く。しかしその実は傍目には無様に見えても最後まで精一杯生き抜けという捻くれた応援の念が隠されていた。
 冒険者なんて職業やってるからいつまで一緒に居れるかなんてわかんないけど、それでも――あぁ、いつかこんな事があった、って想い出して微笑う事が出来て、皆も忘れられないような……そんな、一日でありたいね。

 ホカゲは園や周辺の植物に触れながら、一年を振り返る。
(「……本当に慌しい一年でした。キングスマインドとの戦闘。ザウス神との邂逅、そして戦闘。ドラゴン、そしてドラゴンロードとの戦闘。……何だか戦ってばかりですね」)
 振り返った中身がほとんど戦いであった事に苦笑いを浮かべ、そして争いを忘れて今ある平穏を満喫する。
 バサササササッ。
 もしかすると羽根を痛めていた鳥だろうかと羽音がした方向を振り向く。仲間たちで手当をした鳥とおなじ姿。鳥は何処かに飛ぶが、しばらくすると園に引き返しているのが見えた。
(「……怪我は癒しの術できれいに治っているはず……どうかしたのでしょうか」)
 ホカゲは鳥を追いかける。

●魔女の試練?
 ヨイクとウェールは園と森との境あたりに場所をとって基礎鍛練に励み、蒼銀の風謳い・ラティメリア(a42336)がその手伝いを行っている。
 ちなみにヨイクが組んだ鍛練メニューは、持久走30分間、腕立て100回、腹筋100回、背筋100回、素振り300回。ラティメリア曰く、見事に体力作りだね。とのこと。
 2人がランニングを終えて腕立て伏せに移り、30を超えたあたりでヨイクの体に重みが乗った。
「ヨイクさんまだまだ平気そうだしね。疲れない鍛練じゃ鍛練にならないよ」
 軽く座って下を見るラティメリア。ヨイクから見てその時の彼女の表情は魔女、いや、セイレーン淑女と呼ぶにふさわしいものであった。とはいえ、全体重をヨイクに乗せているわけではないのは優しさだろうか。
(「決して重いなんていえませんよね」)
 と重い思いをしている時に、横のウェールに顔を向けるヨイク。そのウェールは見て見ぬふり……というよりも、色男金も力もなかりけりを地でいっているようで、そちらに注意を払っていなかった。
「さあ頑張って。はい32……」
 ラティメリアのマネージメントを受けたまま腕立て伏せを終わらせる2人。つづけて腹筋に移り、ウェールは土塊の下僕を呼び出して足を押えてさせる。そして背筋へと続いたとき、下僕たちの頭に、カップ程度の小さな花冠が載せられた。
「お、かわいいじゃないか」
 驚きそして褒めるウェール。
「かわいいのは花冠かしら、それとも下僕? なんてね。小さいものだけど私から下僕たちへのプレゼントよ」
 どうやらランニングの間に作っていたらしい。
「さぁ、2人の休憩はまだ後よ。15、16……」

●花冠教室
 園を訪れた仲間の約7割が、花園に座って咲き誇る花を手折り、花冠を作る作業に勤しんでいた。とはいえ花冠を作成したことがない仲間が多いため、数人を除いて今は、教え役を買ってでたフェアと旭日昇天・エスターテ(a26580)の二人の周りに集まっている。
「すまないが、フェア。ざっと作り方をご教授賜りたい。あとは応用する」
 不羈の剣・ドライザム(a67714)が用意した様々な草花を抱えてフェアに尋ねる。
「あ、はい。今伺いますね」
 フェアの周囲にはドライザム、無銘の騎士・フェミルダ(a19849)、サクラコ、樹霊・シフィル(a64372)が集っている。
「そのへんで重ねて輪を、はい。いい感じですよ。……フェミルダ様はわからないところはございませんか?」
 フェアの指導で編みなおすネフィリム。うまくいったのを確認して、続いてフェアはフェミルダの様子を尋ねる。
「私も伊達に長年女性をやってきている訳ではありません。問題ありませんよ」
 自信気にこたえるフェミルダ。
「そうですか。何か困った状態になったら声をかけてくださいね。……あ、団長。小手は外したほうが作りやすいですよ」
「え? それは盲点でしたっ!!」
 急いで小手留めのベルトを外すサクラコ。
「あら? あらら? どうも上手く……いきませんわ。え、あ、なるほど……こう編んで、材料はこれで……」
「シフィル様も、問題あっ……たら言ってくださいね」
 一瞬言葉が淀むフェア。
「ありがとうございます。まだまだ大丈夫ですわ。……ここはこれを使いましょう。ふふふ……」
 シフィルは何やら怪しげな拾いモノを花冠に混ぜていたが、気がつかなかったことにして一周を終わらせる。
「……どうやら、私は伊達に長年女性をやってきていた様です……。このままでは、せっかくの花園が荒野と化してしまいそう。ごめんなさい、フェアさん。教えて」
「はい、伺いますー」
 問題が発生したらしい。フェアはパタパタとそちらに駆け寄った。
 一方でエスターテはネフィリムと一輪の花・オリヒメ(a90193)、カミュに指導を行っている。とはいえカミュは他の仲間の様子を見て取り入れているので、質問をすることなく作り上げている。
「ええと。此処の茎は此方に通すんでしたっけ?」
 ネフィリムが尋ねながら答えを待たずして茎の先端を適当に刺し通す。ポロリと茎が抜け落ちた。
「通した後は輪の隙間がないようにしっかり編まないと、崩壊するかもしれないなぁ〜んよ」
「むむむむむ。……兎に角、崩れないよう編めばいいんですよねっ」
「がんばれなぁ〜ん」
 何か引き下がれない状態になったらしく、心赴くままに編み出すネフィリム。時々「あ」とか聞こえるが、何とか編みこめているようだ。
「花冠を作るのって、なかなか難しいのですね」
 オリヒメは花冠が崩れないようにしっかり編みこめているが、細く若干よわよわしいものになっていた。
「えっと、たぶん花を1列で並べているからだと思うなぁ〜ん。2列にしてみたらどうかなぁ〜ん?」
「あ、なるほど。わかりました。ありがとうございます」
 また、自力で花冠に挑んでいる仲間もいる。
 ヒトの武人・アリア(a43928)は複数種のコスモスを組み合わせ、つくりはシンプルであることを心がけていた。
「あれ?」
 と時々うまくいかない所があるようだが、以前に誰かから聞いた手順で組みなおしていく。やや苦戦しているようだ。
 銀翼鷹・ハルアキ(a54057)は背が高い草花の上部を採り、編んでいく。手慣れた様子であり、また熱中していて誰かから声をかけられても気がつかない程だ。
 完成させてふと気が解け、頭上を見上げるハルアキ。空には眩しい太陽がほぼ天の頂きに来ている。
「あ、もう時間でした!」
 花冠を持って、ハルアキは急いで敷物のところに戻るのだった。

●品評会
 ハルアキが戻った頃には散策や鍛練に出ていた仲間もほぼ集っていた。
「ウェールさんがいませんね……」
「彼は疲れて寝てます。そっとしてあげてください」
 彼にはややつらい鍛練メニューだったらしい。今は園に背中を預けて眠っている。そのままでは風邪をひくかもしれないので、シフィルは用意した防寒具を1着、寝ている上からかけておいた。
 丁度お昼時ということもあって品評会は昼食をとりながらということになり、ネフィリム、フェア、カミュが用意したサンドイッチやマフィン、スコーン、おむすびや惣菜をみんなで摘まんでいく。
「紅茶のポットをここに置いておきますね。フェアさんがローズヒップコーディアルを用意して下さってます。風邪予防にもいいそうですよ」
「綺麗な水で程よい甘酸っぱさに調節しますよ。甘めが良ければおっしゃって下さいね」
 カミュがお茶を、フェアが自分で漬けたコーディアルを置く。
「それではみなさんの花冠を見てみましょうか」
 オリヒメがそういうと、花冠を作った仲間がそれぞれ作ったものを前に置いた。花の組み合わせはまさに十人十色。
 オリヒメは白いコスモスをぎっしり詰めた花冠を。
 ネフィリムはコスモスをメインに白い秋明菊を。
 フェミルダはコスモスのみのシンプルで細めの花冠。
 エスターテは冠の方々に何種類かのコスモスが顔を出したものを。
 サクラコはピンクと薄紫の花をバランス良く組み合わせたものを。
 フェアは桜色のコスモスに撫子、小菊、金木犀を組み合わせ、深紅の薔薇やチョコレートコスモスをアクセントにした花冠を。
 アリアは白のコスモスを基調にピンクのコスモスを組み合わせたシンプルなものを。
 カミュはコスモスと秋明菊を詰めて編んだものを。
 ハルアキはセイタカアワダチソウの稲穂のような花が吹き出したレイのような巨大なものを。
 ドライザムは麒麟草、白玉星草、赤詰草、ラベンダーローズ、オミナエシ、ツユクサなどを織り交ぜた王冠のようなものを。
 シフィルは……。
「シフィルはどんな花冠を編んだなぁ〜ん?」
「ふふふふふ。内緒ですの」
 エスターテの問いを笑ってはぐらかすシフィル。後ろ手に持つ花冠は独創的かつ前衛的なものであった。
(「あぁん、わたくしドリアッド失格でございますわ〜」)
 シフィルは心の中でさめざめ泣いた。

●祝福が終わる時
 ちらりと白く小さな花が舞い降りた。
 花はアリアの頬に着くと、すぐに色と形を失った。
「雪……?」
 風はまだほんのり暖かい。しかし。
「年が明けるころには、ここも冬将軍に踏み荒らされてしまう。じきにここも冬景色になっちゃうんですね……」
 パタタタタタタ。
「……まだこの辺を飛んでは舞い戻ってますね」
 ホカゲは例の鳥がまだ同じ行動を繰り返しているのに気づく。
「もしかすると取り残された渡り鳥だったりするのでしょうか」
「だとすると……連れてかえったほうがよいかもしれませんね」
 ホカゲと鳥の様子に気づいたハルアキ。もし渡れないのであればと申し出る。そういえば若干鳥は細いように感じる。十分な餌をとれないのであれば、自然のままで冬を乗り切るのは難しいだろう。
「……連れて帰りますか」
 こうして16人の冒険者は、新しい仲間と共に家路につくのだった。


マスター:falcon 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:15人
作成日:2008/01/06
得票数:ほのぼの18 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。