<リプレイ>
●ダンス・イン・ザ・フォーナ・ナイト!! 「さてと……ナティルは準備が出来たかな?」 タキシードに着替え、シューズの紐をキツく締め直した千夜千華・ジゼル(a62610)は、癒しのそよ風・ナティル(a65912)が待つであろう更衣室の扉を軽く叩きその名を呼ぶ。 恋人からの呼び出しに、更衣室内から黄色い歓声が上がり……それが落ち着いた頃、カチャと言う音と共に扉がゆっくりと開かれた。 「お、お待たせしました……ど、どうですか?」 おずおずと現れた彼女は、淡いピンク色の生地を純白のレースで飾り立てた可愛いドレスを纏い、恥ずかしいからかそれとも囃し立てられたからか、それともその両方か……愛しい人にドレス姿を見られ頬を染めたその姿は、彼の何かを直撃した。 「やっぱり……私には似合いませんでしょうか?」 「そ、そんな事ない、とっても可愛いよ、すごく似合ってる!!」 思わず抱きしめそう口走ったジゼルは、ハッと右に左にと顔を動かす……そんな彼の姿に、どうしたのと思わず尋ねるナティル。 「な、なんでも無いんだ! ……さ、滑りに行こう」 「う、うん!」 照れ隠しにそう言うと、ナティルの細い手を取り銀盤へ向け駆け出すジゼル。 (「ジゼルさんの手、あったかくておっきくて、ドキドキしちゃうのです……」) ……ふと視線を向ければ、そこには頬を染めこちらを見つめるナティルの瞳が。 (「……言えないよな、こんなに可愛いんだから、他の男に取られちまうんじゃないか心配になった、なんて」) 向けられた視線に、思わず心臓の鼓動が跳ねるのを感じたジゼルは、その大きな手でナティルの手をしっかりと握りしめるのであった。
「……氷の上だから当然そうだとは思ってたけど、やっぱり冷えるわね」 ブルッと震える身体を抱きしめた紅翔剣姫・ロザリア(a38757)は、露出した肩を始め寒さなど気にさせず舞う闇に刃と舞う舞人・アケサト(a39642)の姿を見て半ば呆れ、半ば感心していた。 「スケート、と言う事は氷の上であっても運動するのよね、つまり寒くは……無い?」 寒さのあまり震えが止まらない尻尾を撫でると、ゆっくりと氷面にエッジを立てる……シャーッ、と言う軽やかな音と共に氷が削れ、ロザリアの身体をゆっくりと進ませる。 氷を蹴るうちに、だんだと身体も温まり、少し激しく動くとコートに包まれた肢体は汗でだくだくだ。 「ほう……上手い物じゃ、これなら私と一緒に滑れそうじゃのう」 気が付けば、アケサトが隣を並走し……ジャンプやターン、スピンのタイミングを合わせている。 「ふふっ、望む所よ」 丁度その時、会場に並べるメロディーが甘くロマンティックな曲に変わる……同時に2人は纏っていたコートと着物を脱ぎ捨てると、そこには赤い髪が映える純白のワンピース姿となったロザリアと、正にそんな彼女をエスコートする漆黒のタキシード姿となったアケサトの姿が氷上に現れた。 彼の手に引かれ、ゆったりと流れる様にリンクの中央へと滑り出た2人は、ロマンティックな曲の調べに乗せて、リンク全体を使い甘く濃厚なロマンティック・ダンスを舞うのであった。
●一年で一番長い夜。 「……スケートはやった事が無いんだよ……なアッ!?」 恐る恐るリンクへと足を降ろし……たと同時にひっくり返ったのは、銀閃の・ウルフェナイト(a04043)。 ……折角の正装も、お尻が削れた氷で白く染まると似合わない。 「あらあら、女殺しのおーかみさんも流石に氷は苦手、なのかなっ?」 「そっちはどうなんだよ」 声を掛けられたウルフが顔を上げると、そこには笑顔を浮かべる翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)の姿が。 「ボク? ボクはね……」 恥ずかしい姿を見られ、不貞腐れたウルフの問い掛けに答えるべく、ジャケットを脱ぎ捨てエメラルドグリーンのドレスに包まれた魅力的な肢体を惜しげも無く曝し銀盤を翔るナタクは、気合い一閃宙へと舞い上がり、クワド・アクセルを決めて……そのままトリプル・トゥループのコンボへ繋げる。 「よっし! まあこんな感じかな?」 着地も見事に決め、そのまま流れてきた彼女の姿に、思わずパチパチと拍手を送るウルフ。 「どう、惚れた?」 「あぁ……惚れたついでだ、今晩中に滑れるようにしてくれ」 そう言って、ふと何処かを見るウルフ……その視線を追いかけたナタクは、全てを理解する。 「男の意地、って奴だね……まぁ、知らない仲じゃないし、ね?」 ウルフの手を取ったナタクは、彼を起しながらにっこりと魅力的な笑顔を浮かべると、指をビシっと突き出す。 「たーだーしー、最初に言っておくよ……ボクの特訓は厳しいゾ♪」 「……望む所だ!」 思わず身構えていたウルフは、その言葉に静かに燃え上がるのであった。
……数時間後、ボロボロになったウルフは、銀盤に横たわりながら思わず呟く。 「ほらっ、夜はまだまだだよっ! 何寝てるの!?」 「……鬼だ、特訓の鬼がいる……鬼軍そ……ぉ……」 一年で一番長い夜は、まだまだ終らない。
●まだまだ続くよ長い夜。 特訓しているのは彼等だけでは無かった……リンクの反対側では、青雪の狂花・ローザマリア(a60096)と白い狐っこ死神・ディッカ(a62274)の姉弟? が激しい練習に明け暮れていた。 「ロ、ローザお姉さま……そ、そろそろ休憩を…………」 「もうですの!? ダラしないですわね……仕方が無いですわ、ま、まあ、ディッカも大分滑れるようになったみたいですし、そろそろ頃合いかしら」 何やらぶつぶつと呟き出した姉の姿に、これ幸いとリンクサイドへ逃亡するディッカ。 並べられていたドリンクの中からホットココアを見つけた彼が、ふぅ、と一息入れていると、その眼前では裾が膝上までしかない着物姿の女性が銀盤を駆け抜け見事なジャンプを決める。 「何に見とれているのですか?」 背後から掛けられたその声に、思わず背筋が凍るディッカ………怖々と振り返ると、そこにはドラゴンロードよりも恐ろしいオーラを発するローザの姿が。 ……彼は悟った……自分は間違いなく、ここで命を落とす、と。 「な、なんでもありません、何も見ておりません、ローザお姉さまっ!!」 思わず敬礼してしまいそうな彼であったが、次の瞬間に待ち受けている惨劇に怖くて目が開けられない……しかし、何時まで待ってもその瞬間は訪れない。 実は気が付かないうちに世界が終ってしまったのかも……そんな事を思いつつ、恐る恐る目を開くと、そこには腕を組み呆れ顔のローザの姿が。 「……まあ、良いですわ………休憩は終りですわ、いよいよ本番よ」 溜息と共にそう呟くと、ローザは彼の耳元で素敵に滑れるオ・マ・ジ・ナ・イ、と囁くように話しかける。 次の瞬間、彼の纏う装備がピッチピチで派手でフリルと乙女の夢が沢山詰まった? デザインのコスチュームへと姿を変え、その姿を満足そうに眺めたローザは、続いて自らにも鎧聖降臨を唱え同じくコスチューム姿へと姿を変える。 そんな彼女の背には、隠されていた純白の翼が大きく広がり、まるで白鳥に姿を変えられたお姫様の物語に出て来るプリンセスのよう……。 「な、何見惚れているのですか……さぁ、行きますわよ!」 さぁとばかりに差し出す彼女のその手を恭しく握ると、ローザとディッカのペアは湖のようなアイス・リンクへと滑り出すのであった。
●恋人達の聖なる夜。 「ふぅん……あのペア、なかなかやるようですわね」 フルートとアコーディオンが幻想的な調べを奏で、そのメロディーに乗せ翼を広げ踊るペアの姿に蠱惑の妖狐・ライカ(a00857)が口惜しそうな顔を見せる。 「キドーちゃん、ライカ達も負けてられないですわよ」 無明長夜・キドー(a05284)の胸ぐらを掴み、ぐわんぐわんと振り回すライカに咳き込みながら宥めようと努力をする。 「お、落ち着けってライカちゃん……折角のフォーナの夜なんだ、幸せそうな2人の邪魔しちゃ、ダメだってば、ほらこれでも飲んで落ち着こう、な?」 そう言うとウェイターを呼び止め、薄いピンクに色づくシャンパングラスを2つ手に取るとライカへと進めるキドー。 「ライカちゃんのダンスも素敵だったぜ? フォーナ様と、素敵なライカちゃんに乾杯っと、な♪」 軽くグラスを合わせると、透き通った音色が辺りに響く……グラスに口付けし、舌の上で弾ける感触を味わいながらピンク色の液体をゆっくりと喉へと流し込む。 ふと見れば、グラスを傾けるライカのその姿は、露出した首元や頬がアルコールでピンクに染まり、纏った着物も相まって何と言うか、とても妖艶で……。 ……思わず言葉を失っていると、上目遣いでライカが呟く。 「……ねぇキドーちゃん、あとでもう一回、踊りませんか」 「…………アルコール入ったからな、転ぶかもしれないぜ?」 微笑みながらそう答えたキドーに、望む所ですよ……そう言うと、ライカも満面の笑みを返すのであった。
「うわぁ〜、みんな素敵ですぅ♪」 氷のダンス・ホールで繰り広げられるロマンティックな一夜に、風刃の舞姫・ファリー(a27254)が思わず声を上げる。 「ねぇ見てみてサヤ君、とっても素敵なのですぅ……早く一緒に踊るですぅ」 興奮した彼女に腕をぶんぶんと振られ、かくんかくんと首を揺らし頷くのは宵月凱風・サヤト(a48767)……だが、彼は身に纏った衣装が着慣れないのか、それとも踊りは少し苦手だからか、ちょっと居心地が悪そうだ。 「あ、ファリーちゃん、ちょうど前の2人が終ったみたいですよ……踊りますか?」 そう言うと、ファリーの手を引きエスコートしたサヤトは、着物姿のカップルと交代しリンクの中央に進み出る……それを待ち受けていたかのように、新たな曲が流れ出す。 「氷のステージの上で、みんなに祝福されながら好きな人と一緒に踊れるなんて……とっても幸せなのですぅ♪」 居心地が悪い……サヤトが抱いていたそんな思いは、何時しかはち切れそうな満面の笑みを浮かべる彼女と踊り、笑顔を見ている間に何時の間にかどこかへ吹き飛んでしまう。 吹き飛んでしまえば、後は楽しむだけ……余裕が出来て来たのか、彼は彼女の姿をまじまじと見つめる。 「ファリーちゃん……ドレス姿もとっても素敵ですよ、一緒に踊れて、今日はとても素敵な一日です」 今日の彼女は、シックな妖精をイメージしたドレス姿……素直に出たその言葉に、ファリーは顔を真っ赤にし思わずバランスを崩してしまう。 「だ、大丈夫ですか!?」 「な、なんとか大丈夫……じゃないかもですぅ……」 転びそうな彼女をしっかりと抱きしめ支えるサヤト、結果的に密着した事になり、ファリーの心臓はドキドキで壊れそうなぐらい早鐘を打つ。 そんな初々しく、幸せそうな2人を、会場に集まった全員が祝福するのであった。
●今宵、女神フォーナの祝福を。 「レナさん……お久し振りですわね、こうしてまたお会い出来、とても嬉しく思いますわ」 会場の一角に設けられたパーティー会場……東風吹姫・フィルメイア(a67175)と共に並べられた料理に舌鼓を打っていたおひさま笑顔な翔剣士・レナ(a90027)を呼びかけるのは破滅の剣・マリウェル(a51432)。 久方ぶりの再開に思い出話に盛り上がる2人だが、その時立食コーナーで料理を摘む永遠の疾風・エール(a68539)の姿を見つけたマリウェルが彼を呼び寄せ紹介する。 軽い自己紹介の後、冒険談義に盛り上がる……新人冒険者である彼にすれば、レナ達の話は吟遊詩人の歌よりも面白くわくわくさせる物語。 ……そんな話の中、ふとエールがある事を尋ねた。 「レナさん、今までで一番大変だった依頼って、どんな依頼だったのか?」 「………聞かないでほしいんだよ」 何かを思い出してか、ほろりと涙を流すレナ……とても辛い戦いでもあったのだろうか、どうすればとエールがおろおろとしていると、そこに満面の笑みを浮かべた絶望の帳を切り裂く銀焔・ディート(a66461)がレナに抱きついて来た。 「レナさん、お誕生日おめでとうだよぉ〜♪ ……ん、どうしたの? そんな時は一緒に踊ったらきっと楽しいと思うの♪」 そう言うと、レナの手を取りホールの中央へと進むディート……にっこりとした彼の笑顔は、レナの顔にもおひさま笑顔を取り戻させる。 バックミュージックは誰もが知ってる明るく楽しくポップな音階の歌……そこに、踊りの衣装に着替えたマリウェルが歌いながら踊り出したからさぁ大変。 踊る彼女達を見ていたエールが、そしてそれがきっかけとなり会場の其処かしらから手拍子が、合唱が響き出し、終いには会場にいた皆がリンクで踊り出す。 「とっても楽しいですね、アカネさん」 「おおぉ、まさ奇跡の夜じゃのぉ、わたしぃものぉ、成果を示す時じゃのぉ」 楽しそうにフルートを吹き鳴らしていた楽風の・ニューラ(a00126)も、この盛り上がりに吹くのを忘れ隣でアコーディオンを奏でる吟遊詩人・アカネ(a43373)に思わず話しかける。 ここまで様々なダンスの数々にメロディーを奏でて来た彼女達だが、吹くのも弾くのも歌うのも楽しくて仕方なくて、もう止まらない止められない。 皆の歌と手拍子と踊りと、そしてはち切れんばかりの笑顔がアイス・リンクの幻想的な空間で膨れ上がり、それはまさに会場に居たすべての人が一つに……家族になった瞬間。 それはまさに女神フォーナの祝福に満ちた今宵に相応しい奇跡の時。 冒険者は皆、同盟と言う名の家族なのだから……だから、全ての家族に向かい、心を込めて叫ぼう。
『ハッピー・メリー・フォーナ♪』
全ての家族達に……女神フォーナの祝福よ、あれ!!

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参加者:18人
作成日:2008/01/10
得票数:ほのぼの9
コメディ4
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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