ありがとうのパンつくり



<オープニング>


『こんにちは〜』
 ふたつの可愛らしい元気な女の子の声が酒場に響いた。
「ん〜? 確かピノとピコ。……どうしたんだ?」
 ヒトの霊査士・ブレントはピノとピコの前に屈んで、頭を掻いた。
「あのね、ぼーけんしゃさんにはお世話になったから、お礼を言いに来ました」
「ありがとーございました!」
「あぁ、こりゃどうもご丁寧に」
 ぺこりと頭を下げたピノとピコはもじもじと何か言いたそうにブレントの顔をチラチラと見ている。
「ん〜? なんだい?」
 子供の相手は慣れないながらもブレントが笑みを見せてやると、姉妹は言った。
『あのね、あたしたちがおいしいぱんの作り方を教えてあげる!』

「あー……って訳で、パンつくり参加者募集」
 おいしいパンの作り方。ピノとピコはお世話になった冒険者たちに自分達なりの感謝の気持ち……彼女たちにとって今考えられる最高級の事が、パンつくりだった。
 しかし、いつもは親と一緒に作っているので、ちゃんと二人だけで教えられるのかはかなり疑問だが……
「まぁ、子供相手だからなぁ〜お遊び感覚で付き合ってあげてくれ」

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参加者
NPC:昼行灯の霊査士・ブレント(a90086)



<リプレイ>

「ぱんつくりをはじめたいと思います!」
「おいしいぱんをつくりましょー!」
 踏み台の上に立ち、一通りのパン生地を作るための材料を作業台の上に取り出すピノとピコ。
 だが、どう見ても材料は足りそうにない。
「……まぁ、足りない分は用意してあるからな〜使ってくれ」
 完全に高みの見物決め込んでいるブレントはカウンターにずらりと並んだ小麦粉やらバターやらを指し示しながら、おいしいものを頼むぞ〜と言った。
「初めまして〜♪ 今日はよろしくですよっ〜♪」
 星空を舞飛ぶ魔法少女・アミ(a06958)はにっこり笑顔でピノとピコに挨拶をした。
「作りたいパンは、クリームパンっ♪ 上手くつくれるかなぁ?」
 内心ドキドキさせているアミの隣で同じくドキドキものの紫尾の発破娘・スイシャ(a01547)。こちらの場合は忍び風の生活脱却という決意を持って参加している。
「パンとはハイカラでござるな」
 パンはハイカラなのか? なんにしても頑張って頂きたいものだ。

「まずは、こねこねします」
「します!」
 ピノが強力粉の山の真ん中にくぼみをつくり、そこに水をいれるピコ。少量の水と絡めるように粉を掻き混ぜるのだが、その手つきはどうも泥遊びをしているような印象を与える。
「おっと、せんせい。俺がやりますよ」
 にっと笑み、すっと手を伸ばしてきた揺流白花・セーネード(a04230)にピノとピコは一瞬ポカンとしていたが、大きく頷いた。
「うん。よろしくたのんだよ、キミ!」
「たのんだよ!」
 先生と呼ばれたのが嬉しかったようだ。
「僕も生地こねるの手伝っていいかな?」
 青灰の紋章術士・ユエルダ(a04920)ともう一人、断罪求めし片翼の邪竜・ファフニール(a06956)も姉妹に近づく。
「もちろん!」
 元気に答えたピコはありったけの粉を調理台の上にぶちまける。そして何故か得意気に粉の山を指差した。
「さぁ、がんばろー!」

(「わ、膨らし粉はそんなに入れないでぇ。苦くなっちゃう……」)
 目分量でドバドバ膨らし粉を投入する様子に心の中で叫んだ赤百舌・ミニア(a06994)。にっこり笑顔で近づいたミニアは膨らし粉と強力粉を気づかれないよう入れ替える。
 今回も影のサポートに徹するようだ。

「むっ! これはっ!!」
「どうした〜?」
 作業している欲しがりません勝つまでは・ルゥ(a08433)の背後から手元を覗き込みながら声をあげる蒼の閃剣・シュウ(a00014)に、ぼうっと全体を眺めていたブレントが尋ねた。
「その赤い甘酸っぱい感覚をもたらしてくれそうな瞳! 淡くオレンジ色した肌! そして、愛くるしいその姿は……!!」
「……あの、うさぎさんですーだんちょぉ」
 鼻水垂らしながら、変な薀蓄まがいを口上するシュウに少々怯えるルゥ。
「パン生地から直接パンを作るのははじめて♪ 上手く出来ると良いですね♪」
 と、隣で一生懸命ある程度まで出来上がっている生地をこねているちっちゃな薬箱・シズク(a01789)に微笑む月淵の魔皇女・エイル(a00272)。
「料理は好きだけど、得意ってわけじゃないからうまく作れたら嬉しい♪」
 シズクの隣では深遠なる赤き竜姫・シュゼット(a02935)が楽しそうに生地を取り分けている。
「リヴァイさんに差し上げるのですか?」
 頬を赤くし、小さく頷くシズク。小さな声で、うまくできたらいいな……と呟くと、またせっせと生地をこねはじめた。
「やっぱり、パンといえば焼きたてのバターロールに限るだろう」
 そう呟いた朽澄楔・ティキ(a02763)は姉妹を見る。基本的にピノとピコの教えに添う形で作ろうと考えていたのだが、すっかり二人は自分のパン作りに夢中な様子。小さく肩を竦めて、ティキも自分の好きなように作り始めた。
「一度自分でパンを作ってみたかったのですよ〜♪」
 そう言った温もりを語る布団夜想・ティフェル(a05986)は
油の入った鍋の前にいる。
「揚げパン……作ってみたいのですよ〜」
 とは言うものの、へっぴり腰で恐る恐るパン生地を鍋に入れている。
 そして、同じく揚げパン希望の夏へと至る風と太陽・アムル(a06772)は楽しそうに鍋の中のパンをころころと時々ひっくり返している。
「久々に真面目に美味しいものを作るのですよ〜♪」
 鼻歌まで歌う余裕のアムルと引け腰のティフェルの鍋からおいしい匂いが立ち上り始めた。

「ちゃんとできてますかー?」
 ピコは、にこにことほんわか笑顔で時折姉妹の姿を見ていた温・ファオ(a05259)に尋ねた。
「え……あの、大丈夫です」
 ちょっとおどおどとしながらも、ファオは微笑んだ。
「ボク、お豆をお砂糖で煮たものを包んだパンを作りたいな」
「おまめをにたもの?」
 ヒトの武道家・メルティナ(a08360)の言葉に首を傾げたピノ。ブレントは顎を撫でながら言った。
「そりゃあんこの事かね?」
「あんこ?」
 と、ピノの隣で首を傾げるメルティナ。
「……おーい。誰かあんパン作ってる奴〜一緒に作ってやってくれ〜」
「はーい。私と一緒に作りましょう」
 手を挙げたのはぽややん娘・ルミナ(a06127)。おっとりとした笑顔でメルティナと作業を始めた。
 パン生地に健康の為と味を考えた万人向けハーブを混ぜたクロワッサンを作るのはドリアッドの紋章術士・カレン(a07913)。その横で軽やかに跳ねる靴音・リューシャ(a06839)はデニッシュ生地を作っている。出来上がりの事を考え、実に丁寧に丁寧に……かなり周りの事が見えない程、集中していた。
 「スパイの友達……アンパン作ってほしいと聴こえて来ます……アンパンを人形の首の上に乗せたら新しい友達デス」
 ちんまりと作業台の一番端っこで一人恍惚とした表情で呟いたエルフの邪竜導士・スパイ(a07275)は、こねこねとアンパンを作る。もちろん、某空飛ぶパンよろしく顔をつけて。
「スパイはアンパンか……なにやら独り言をぶつぶつと言っているのう〜あいかわらずの変態具合だのう〜」
 スパイとは反対側でこれまたちんまりと作業していた魔女っ子・ネイ(a00322)はやれやれと首を振った。そんなネイのパンはぶどうパン。リアルなカエルの形をしたパンで、一人くつくつ笑っていた。
「……さ〜て、どんなパンが出来るのかねぇ?」
 小さくブレントは呟いた。

焼きたての香ばしい匂いが部屋中に広がる。
「ん〜いい匂いだ」
 鼻を上げ、言ったブレントの横でシュウが情けない顔をしながら鼻をすすった。
「ぐ……鼻が詰まって匂いがわからないとは、不覚」
『うわ〜おいしそう♪』
 喜ぶ姉妹に熱い鉄板が当たらないよう気をつけながらファオはパンを見せた。
 実に様々な形に焼きあがったパン。ピノとピコはそれぞれ自分で作ったとうもろこしとぶどうの食パンを取る。
『きって〜』
 と、隣にいたルミナとアミを掴まえ、姉妹は言った。
「はいはい〜いい色に焼けてますねぇ」
「おいしそう。ピノちゃんとピコちゃんのパン、食べてみたいなっ♪」
 切り分けながら言ったアミにピコがいいよ、と元気に答え、ルミナとピノは小さく切ったパンを味見してにっこり笑った。
 こんがりいい具合に焼けているパンもあれば、中にはやはり失敗作も混ざっている。それを手に取ったのはミニア。
「シュウさん。風邪ひきにはパン粥がいいんだよ。はい!」
 と言って渡したのは失敗したパンを鍋に入れ、ミルクをひたひたと注いで煮立てたもの。少しばかり、通常ではしない匂いがするのだが……
「あぁ、ありがとう」
 何の疑問も持たず受け取ったシュウの口から数秒後、天井に向かってクリーム色の吹き上がり、それがミニアの髪にかかって彼女はショックでシュウの顎にナイスな一撃をいれる事になる前に、他を見てみよう。
「ブレントさん、味見してみる?」
 笑いながら、切り分けられたパンを差し出すユエルダ。おこぼれ貰う気アリアリのブレントはひょいと口に放りこんだ。
 数回咀嚼し眉を歪める。
「なんだ……これ?」
「スモークサーモンとクリームチーズ混ぜたデニッシュだよ。おいしい?」
 不味くは無いが、菓子パン類の甘いものを想像していただけに、そのギャップに口の中が小さな拒否反応起こしているらしい。
「はいはーい、飲み物出来たぞ。ミルクとミルクティー。それからそら豆のグリーンスープだ♪」
 セーネードは人数分の飲み物を聞いて回る。ティフェルも手伝いミルクティーを淹れる準備をする。
「見てみて、上手にできたんだ♪」
 嬉しそうにシズクとエイルに焼けたパンを見せるシュゼット。
「シュゼットさん、上手です……」
「まぁ、おいしそう。良かったですね」
 微笑む二人にますます嬉しそうにシュゼットは自分のパンを掲げた。
「……出来たデス。立派な、スパイのアンパンマ……ゲホゲホ!」
 一人咳き込み、辺りを伺ったスパイ。誰にも聞かれて無いのを確認すると出来上がったアンパン(人形の首乗せ中)を見て悦に笑んだ。
「ふっふっふ。それがスパイの友達かの」
 すぐ真後ろからした声にスパイが振り向く前に人形から頭を何者かがもぎ取る。
 がつがつとアンパンに齧りつくネイにスパイは固まり目は焦点があっていない。
「あら。ダメよ。勝手に食べちゃ」
 一連の出来事を見ていたリューシャがネイに言うが、自分の新しい友達に起った事を次第に認識し、スパイの目に一杯涙がたまり出す。
「しかたないのぅ〜代わりにネイのパンを食え!」
 と言うや、スパイの口にカエル形パンをねじ込んだネイはにやりと笑った。

「そろそろ食べようぜ。流石に腹が減ってきた」
 ティキの言葉に部屋の隅でがっくり肩を落としているシュウを物珍しげに見ていたピノとピコも手をあげた。
「ピコもお腹すいた〜」
「たべよ〜たべよ〜」
「んじゃ、いいかね皆」
 全員に飲み物とパンが行き渡っているのを確認し、ブレントは手を合わせた。
「では、いただきます」


マスター:桧垣友 紹介ページ
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作成日:2004/05/25
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