幸せは甘いお菓子にのせて 〜ティンヴァの誕生日〜



<オープニング>


●幸せは甘いお菓子にのせて
 軽やかな手つきで、次々に美味しそうなケーキを作り出していく。
 ここはとある町の片隅にあるティーラ・レティア菓子店。ケーキはもちろんのこと、パフェにプリンなど様々な甘いお菓子がその場で食べられる店であった。
 しかもとびきり甘くて美味しいと評判の店でお菓子好きの女性客らで賑わっていた。
 その中にちっちゃな影が一つ。
「あ、あのあのっ! ショートケーキとミルクプリン……」
「はい、いつものね」
 優しそうな笑みで店の婦人はちっちゃな少女、淡雪のきまぐれ紋章術士・ティンヴァ(a90354)にお菓子の入ったお皿と飲み物が入ったトレイを手渡した。
「あ、ありがとなの……」
「あ、待って」
 ティンヴァの持つトレイに小さなカードが添えられる。
「今度、この町のお屋敷でお菓子教室を開く事になったの。よかったら、あなたもどう?」
 作ったものはみんなにあげるわと、婦人は言い添える。
「うん、行くの」
 ティンヴァは嬉しそうに頷いた。

「えとえと、お菓子教室で作るのは、ケーキなんだって。その……一緒に来て!」
 酒場に来たティンヴァはその場に居る冒険者達に呼びかける。
 実はまだ、人見知りな彼女。ケーキを持って帰りたいのは山々だが、恥ずかしくって一人では行けないらしい。
「んと……えと……一緒に作るの、ダメかな?」
 心配そうにたずねて、そして、一緒に来てくれる仲間を見つけた。
 ティンヴァは嬉しそうに微笑み、そして。
「ありがとなの」
 ぎゅっと抱きついた。これは彼女なりのありがとうの形。

 それを遠くでそっと見守る一人の少年がいた。山陽の霊査士・アルペジオ(a90032)だ。
「あ、ティンヴァさんと一緒に行くんですよね。だったら、後で構いませんのでお祝いしてあげてくれませんか? 彼女、すっかり忘れているみたいなんですけど、お菓子教室の日は彼女の誕生日なんです」
 よろしくお願いしますねと、ティンヴァと共に向かう冒険者達にそっと伝えたのだった。

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参加者
NPC:淡雪のきまぐれ紋章術士・ティンヴァ(a90354)



<リプレイ>

●ないしょの準備
 お菓子教室が始まる前。
「先生、ちょっと相談したい事があるんだが……」
「あら、何かしら?」
 オーヴォ(a47646)の言葉に、お菓子屋の婦人は耳を傾け、微笑んだ。

 流石に大きな部屋は、借りれなかったが、ささやかなパーティーができる小さな部屋を借りる事に成功した。
 仲間を誘って、会場のセッティングを開始するオーヴォ達。
 マユリ(a38566)は、テーブルに白いテーブルクロスをかけ、花を飾った。
「まあ……可愛いらしい飾りね、マリヴちゃん」
 ふとマユリは、飾りを手にしたマリヴ(a60157)に声を掛ける。
「うん、ティンちゃが気に入るかなって思って」
 にこっと笑みを浮かべるマリヴに。
「きっと喜んでもらえるわ。……わたしも手伝っていい?」
「ありがとっ!」
 マユリが声をかけ、二人で飾り付けを行う。
「お、やってるな。どーれ、俺も手伝うか」
 オーヴォも加わり、高い場所にも飾りが取り付けられる。
「おーい、追加の飾りと料理の材料、もって来たぞ!」
 そこにグリューヴルム(a59784)が追加の飾りにパーティー料理に使う材料を運んでくる。
 会場が完成するまであと少し。
 これからやってくるティンヴァ(a90354)は、全く気づいていなかった。

●まずはご挨拶?
 甘い香りが部屋中に満ちていく。
 ここは、お菓子教室が行われるお屋敷の一室。
「ティンヴァちゃん、今日は誘ってくれてありがとう♪ ケーキを食べるのとっても楽しみにしていたよ〜♪」
 ティンヴァを見つけたリリィ(a60360)が声をかけ、ぎゅっと抱きしめる。
「にゃっ! えとえと、喜んでくれて嬉しいのっ」
 少し驚いたものの、ティンヴァは照れながら答えた。
「僕も甘いものが好きなんだ。ケーキではシフォンケーキが好きだよ」
 軽く自己紹介した後、そう告げるのはリリィと共に来たエール(a68539)。いや、それだけではない。
「全部無料で食べられるんだな……よしっ、沢山食べよう!」
 こっそり影で闘志を燃やしている。エール、今日はやる気だ。
(「今回はざっと見た限り、マリー様らしき影は無いから、驚くことなんて無いわね」)
 ほっとした様子でティンヴァの前に行くのはシルク(a61206)。その隣には、同じくリリィと共に来たフェリス(a58256)も。
「お久しぶりね、ティンヴァさん」
「お久しぶりなのっ」
 シルクの声にティンヴァが挨拶を交わす。
「あら、もう来ていたんですね」
 忙しそうな様子でマユリがティンヴァの元へやってくる。
「初めまして、ティンヴァちゃん。今日は有難う……よろしくね?」
 マユリはティンヴァの目線に立ち、笑顔で挨拶をした。
「は、はじめましてなの。こちらこそ、よろしくっ」
 ティンヴァもぺこりと頭を下げた。
「よ、久しぶりだなティンヴァ。元気してたか?」
 オーヴォは、わしゃわしゃとティンヴァの頭を挨拶代わりになでていく。
「うん、元気だよっ」
 にこっと笑ってティンヴァは答えた。
「ティンヴァさんは初めまして。今日はよろしくお願い致します」
 そう丁寧に挨拶するのは、カオル(a26278)。カオルの他にも、セイカ(a46303)、ニューラ(a00126)、リナリー(a59785)、トール(a68949)の姿も見える。
「えとえと……皆、きてくれてありがとう、なの」
 沢山の人々に囲まれて、嬉しそうにティンヴァは微笑んだ。
「ティンヴァちゃん、こっちに来るにゃ♪」
 そう誘うのはニャコ(a31704)。
「一緒に美味しいケーキを作るにゃ!」
「うんっ!」
 いよいよ、楽しいケーキ作りが始まる!

●美味しいケーキを作りましょう♪
「やはり、ケーキにチョコは外せませんよね」
 うむと、トールはチョコレートを手に取る。
 一部、先生の指導を受けながらも、手馴れた手つきで作っていく。
 その隣で、ニューラも楽しそうにケーキを作っていた。
「完成したら、きっとティンヴァさんが喜びますね」
 どうやら、グッドアイデアがあるらしい。
 ミルクと練乳、寒天の入った鍋に、ニューラは火を付けた。
「ふふふふふ………」
 その一角で、フェリスはちょっぴり不気味に見えるような笑いでケーキを作る。ケーキの分量を丁寧に量りながら、材料を揃えていく。
「ふふふ、この世からケーキが嫌いな奴がいなくなる位の……いや、絶対に居なくなるケーキを作ってやろう」
 果たしてどんなケーキができるのか。
「ティンヴァちゃんはどんなケーキがいいにゃ? 苺と生クリームたっぷりのケーキにゃ? 生チョコを使ったケーキにゃ?」
 ニャコに尋ねられて、ティンヴァは考え込む。
「どっちも大好きだから、困っちゃうよぅ」
 このままでは考え込むだけで1日が終わりそうだ。
 その様子にニャコは思わず苦笑を浮かべる。
「難しい事は考えないで楽しくケーキを作るにゃ。分らないところは教えてあげるにゃ」
 まずはスポンジからにゃというニャコの言葉にティンヴァは頷いた。

 そんな中、ちょっとアレなケーキが作成されていた。
「クリームはこれくらいでしょうか?」
 ぺろっと味見して……セイカの顔色が変わる。
「な、何でしょっぱいんですの?」
 ちょっぴり涙目のセイカの元に、一人の救世主。
「セイカさん、お手伝いしましょうか?」
「カオルさん! お願いしますわ」
 心配になって来たカオルだ。予感は的中。
「それでは、もう一度、クリームを作りましょう」
 セイカの選ぶ材料に目を光らせつつ、カオルはアレなケーキをなんとか、食べれるケーキへと修正。もちろん、自分のケーキも作りながら。

 一番にケーキを完成させたのは、トール。
 驚かせるために、ティンヴァには気づかれないよう、完成直後に箱に入れ、涼しい場所へと運ぶ。
「どどど、どうしようっ!!」
 と困っているマリヴを発見。
「あのー、どうかしたんですか?」
 トールが尋ねる。
「あ、キミ、ティンちゃに誘われてきた人だよね?」
「え、ええ……」
「じゃあ、ティンちゃが今日、誕生日だってことも知ってるよね?」
「ええ、もちろん。それがどうかしたんですか?」
「ティンちゃの誕生日ケーキだけ、まだ準備できてなくって……」
 その様子にトールは持っていた箱を開けた。
「このケーキではどうですか?」
「え、す、すごいよっ! ばっちりっ!」
 と、そこにもう一人。
「バースデーケーキなら、こちらにもありますよ」
 そこに現れたのは、完成したケーキを箱に入れたニューラ。
 ニューラのケーキも確認。
「わああ。これも凄い! ケーキが二つもあるなんて最高っ! 二人ともこっちに来てっ!」
 マリヴに引きづられるように連れて行かれるトールとニューラ。
 どうやら、誕生日ケーキはどうにかなった様子。

 さあ、お待ちかね。美味しいケーキの登場だ!

●幸せケーキの出来栄えは?
 次々と素敵なケーキが並べられる。
「神秘だ……」
 沢山のケーキを目の前にエールは呟いた。
 どのケーキも美味しそうに仕上がっている。
 約1個を除いて。
「え、えっと見た目は良くないかもしれませんが、きっと味はたぶん、大丈夫です」
 そうカオルがフォローするが、それに賛同する者は少ない。そう、ちょっと歪で、見た目がアレなケーキがやっぱり出来てしまったのだ。
「もういいですわ。カオルさん。このケーキはなかったことに……」
「ちょっと待って!」
 セイカの手を止めるのはティンヴァ。
「捨てちゃだめ。ケーキさんが可愛そうなの。だから、わたしが食べるっ」
 そういって、セイカのケーキをぱくんと食べた。目をつぶって一気に食べたのは愛嬌?
「ん……甘いの」
 ふにゃっと笑みを浮かべるティンヴァにセイカはぎゅっと抱きついた。

「僕が作ったのはこれです」
 カオルが持ってきたトレイには、小さなチョコレートのカップケーキが並べられていた。
 フォンダンショコラといって、そのケーキの中には、割ったとたんにとろけ出すチョコレートが入っている。

「フフフ……会心の出来だ! これなら何処に出しても恥ずかしくないぞ」
 やっぱりまだ怪しい笑みを浮かべているのはフェリス。彼女が作ったのは。
「名づけて『超絶一品』だっ!」
 名前はともかく、見た目は苺ショートケーキ。
 フェリスが言うとおり、会心の出来らしく、素晴らしいデコレーションが施されている。

「……緊張しますね。私の作ったのはこれです……」
 マユリの作ったケーキは、林檎のケーキ、アプフェルクーヘン。
 柔らかいクッキーのような下地に、切った林檎を乗せ、生クリームとミルクなどを入れたソースをかけて焼き上げたもの。林檎タルトのようなさっぱりしたケーキは、見た目も味も充分に楽しめそうだ。

 最後に登場するのは、ニャコとティンヴァの二人で作った可愛らしいケーキ。
「二人で作ったのにゃ♪」
 プチシュークリームとプチミルクプリンがトッピングのケーキ。
「うん、早く食べたいねっ!」
 既にフォークを持つティンヴァの前に、グリューヴルムが現れる。
「お、ケーキも揃ったみたいだな。じゃ、ティンヴァちゃん。こっちにきてくれるか?」
「にゃ?」
 フォークを片手にティンヴァはグリューヴルムに連れられていく。
 他のメンバーもケーキを持って、その後についていった。

●おめでとうの時間
 たどり着いた先は、とある一室。
 グリューヴルムは、その部屋の扉をばんと開けた。
 部屋の中は可愛らしい飾り付けがされ、垂れ幕にこう書かれてある。
 『ティンちゃ、お誕生日おめでとう』と。
「にゃっ!?」
 ティンヴァは驚き、もう少しで手に持っていたフォークを落とす所だった。
「唐突だけど誕生日おめでとうなっ、ティンヴァさん」
 くるりと振り向いたグリューヴルムの手には綺麗な花束があった。花束はそのままティンヴァに手渡される。
「あ、ありがとなの」
 既にテーブルの上にはオードブルや飲み物、お菓子などが並べられている。いや、それだけではない。
「ティンちゃ、こっち!」
 今度はマリヴに連れられ、とあるテーブルの前に座らされた。そこには二つの箱が置かれている。空けてみてとマリヴに言われ、ティンヴァはそっと二つの箱を開いた。
「わあ……」
 一つはチョコレートケーキ。ホワイトチョコで誕生日おめでとうの文字が書かれているトールの作ったケーキ。。
「えっと、喜んでもらえるとトールも嬉しいです」
 もう一つのケーキは、ショートケーキの中央にカフェオレボウルで作った、大き目の淡雪かんをぷるんと乗せた真っ白いバースデーケーキ。六花の形に型抜きしたホワイトチョコも沢山乗っている。
 そのケーキにはホワイトチョコのプレートも乗っていた。
『誕生日おめでとう、この1年もいい年であるよう祈ってるぜ! オーヴォ』
「時間までにプレートが見つかってよかったよ」
 オーヴォはほっとした表情でそう告げた。
 マリヴは10本の蝋燭を二つのケーキに5本ずつ乗せて、火を灯す。
 と、曲が演奏される。誕生日の歌だ。ニューラのチェロとセイカのリュートの伴奏で皆が歌いだす。歌が終わった後にティンヴァはケーキの蝋燭を吹き消した。
「お誕生日おめでとう……」
 マユリが手作りの白いウサギの網ぐるみをプレゼントする。
「か、可愛いうさぎさんなのっ」
 嬉しそうにティンヴァはそれを受け取った。お返しにティンヴァからぎゅっと抱かれて、マユリも嬉しそうである。
 次にティンヴァの前に立つのはセイカ。
「お誕生日おめでとうございますわ♪」
 セイカからのプレゼントはフリルのついた白のリボン。早速ティンヴァはそれを髪につけていた。
「ティンちゃ〜! 誕生日オメデト〜♪ コレ誕生日プレゼント〜!」
「にゃっ!!」
 マリヴはごろごろとドラム缶を転がしてくる。その缶にはキャンディーセット【特大サイズ】と書かれていた。
 ティンヴァは嬉しそうにそれを受け取った。
「お誕生日おめでとう」
 ニューラからのプレゼントは白いアネモネの花の髪飾り。さっそくニューラにつけてもらって、ティンヴァは嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「誕生日おめでとう、ティンヴァさん。私からは小さな奇跡と呼ばれる踊りを披露するわ」
 雪が振るのを初めて見た子供が、まるで妖精達が踊っている様に見えたと言う事から生み出された踊り。シルクはそう説明してから、ティンヴァの前で舞う。
 と、その途中、シルクの踊りに加わる一人の女性がいた。
 マリウェル(a51432)だ。
 彼女のは灯と呼ばれる踊り。暖かくも優しい蝋燭の炎を思い描いた踊りでもあった。シルクの踊りと良く合う。
 2人の美しい舞が終わり、皆から盛大な拍手が送られる。
 シルクが礼をし、ふと隣を見ると。
「よく頑張りましたわね。とても綺麗でしたわ」
 マリウェルは優しい微笑をシルクに向けた。シルクはマリウェルの登場に驚き、硬直している。
 そんなことを気にせず、マリウェルは、そっとティンヴァの元へいき、耳打ちした。
「踊りの秘技とは心から体に伝わる様にする事ですわ。ようは練習を沢山すれば解ると言う事ですが……やっていく内に分かるかと思いますわ」
 と、踊りの秘技をティンヴァに伝授。ティンヴァはありがとうと、マリウェルに微笑んだ。
 カオルがティンヴァの席にお茶とプレゼントを置く。
「誕生日おめでとうございます、ティンヴァさん」
 渡されたプレゼントは雪の結晶型のネックレス。そのネックレスはティンヴァもすぐに気に入ったようだ。首につけて、ありがとうとカオルに告げた。

 ティンヴァにプレゼントが渡されるその横で、ケーキの試食も始まった。
(「……ショートケーキはちょっと……」)
 実は生クリームが苦手なエール。
 別のケーキを選ぼうとする先に。
「エールちゃん、シルクちゃん、ケーキ美味しいね♪ エールちゃんケーキはどれにする?」
 リリィはショートケーキを食べている。
「あ……小さいのを……」
 そういうエールにリリィはというと。
「はい、どーぞ」
 大きなショートケーキを手渡す。
「あ、ああ、ありがとう……」
 恐る恐る一口食べてみると。
「……美味しい」
 普段食べているクリームとは違うらしい。エールはほっとしながら、ケーキを完食した。

「一口くださいませ♪」
 セイカが試食しているティンヴァの元にやってくる。
「どうぞなの」
「おいしーですわ♪」
 幸せそうにティンヴァから貰ったケーキを、セイカは頬張る。
 と、そこにニャコが来る。
「ティンヴァちゃん、誕生日おめでとにゃぁ」
 ニャコからのプレゼントは、先程作ったケーキともう一つ。
「ニャコちゃん特製シュークリームレシピをプレゼントするにゃ!」
 特別なレシピをティンヴァにプレゼント。
「今度はシュークリームにも挑戦してみてにゃ」
「うん、ありがとう! とっても嬉しいのっ!」
 パーティーはまだ始まったばかり。
 こうして、ティンヴァ達は楽しい時間を過ごしたのだった。


マスター:風祭あいり 紹介ページ
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参加者:15人
作成日:2008/01/10
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