チョコレート村 〜チョコを競う〜



<オープニング>


「あー、君達はチョコレートに興味はないかね?」
 ミュントスの冒険者の酒場でノスフェラトゥの幻奏猟兵・ギャロはそう尋ねてきた。
 ミュントスにチョコレート専門の村があった。
 ギャロが言うには今回はそのチョコレート村で一番優れたチョコレート職人……ショコラティエを選ぶことになり、その審査員を募集していると言うことだった。
「チョコレート村を代表するショコラティエである彼等の作るチョコレートは君達を十分満足させてくれるだろう」
 この上ないほど極上の話だが、レピアの霊査でも問題になるようなものは見つからなかった。
「審査員は同時に課題の出題者にもなってもらうようね。とても美味しそうなチョコレートや素晴らしいチョコレートの芸術品が見えたわ」
 レピアは微笑を湛え、冒険者を送り出した。

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参加者
旋律調和・クール(a09477)
流離う森の芽の担い手・セレスト(a16244)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
夢みる仔猫な誤爆魔法少女・クランベリィ(a56302)
煌めく仔猫な爆裂少女剣士・ザッハトルテー(a62373)
灼槍の狂戦士・アスラ(a65123)
金翼の紋章術士・リュカリナ(a66079)
鉄の花・ヒュンフ(a66972)
ストライダーの武道家・オウサ(a68205)
弓矢雷麗・レイナ(a68488)
月下黎明の・アオイ(a68811)
翠雹裂斬華・リカルツェン(a69462)
彷徨う食欲魔人・シャンドライ(a69497)
青薔薇の時計台・チェリル(a69914)
蒼キ瞳ハ純粋ナ色・チルス(a70334)



<リプレイ>

●チョコレート村……再び
「チョコレート村!! 再び見参なのー♪ ココは楽園〜♪ パラダイス〜♪ 極楽浄土〜♪ 天国なの〜♪ ミーは、沢山チョコレートが食べれるのが良いなのねー♪」
 夢みる仔猫な誤爆魔法少女・クランベリィ(a56302)はくるくると踊りながら村へと入っていく。その脳内はすでにチョコレートのことで一杯だ。
「チョコレート村って何か地獄には似合わないスゥイートな場所ですわね♪」
 煌めく仔猫な爆裂少女剣士・ザッハトルテー(a62373)は周囲を見渡してそんな感想を漏らした。
「う〜ん、初めて来た地獄は何だかほのぼのしてますね〜。それにチョコレート村とは、甘党には心惹かれる村です……」
 そんな二人の様子に月下黎明の・アオイ(a68811)は少しだけ警戒していた心を解いていく。目の前に広がる一面のチョコレート世界は子供の頃夢見た景色にどこか似ている気がした。
「地獄ってわりにいいところだよな。チョコレートだらけの村があるなんてさ。今までうまいものばっかり食ってきたから味にはうるさいぜ!!」
 彷徨う食欲魔人・シャンドライ(a69497)は自信満々でそう言った。とてもではないが『とりあえずタダメシくいてー』と思ってやってきた男のセリフとは思えない。
「嗚呼、常人をも凌ぐ激甘チョコレートのロマン……私チョコレートがあれば生きていけるの!」
 玻璃霜刀の為征者・クール(a09477)は目の前のチョコを頬張り、そのまま別世界へと意識を旅立たせていた。気分は極楽浄土と言ったところか。……場所は地獄だが。
「は、腹が破裂しそうだぁ」
 恍惚とした表情で流離う森の芽の担い手・セレスト(a16244)は目の前のチョコを完食した。ちなみに目の前のチョコとは建物一つのことである。その巨体のどこにそんな力が備わっていたのか分からないほどの速度を生み出した全力ダッシュで先に到着していたセレストは『大怪獣セレスト・チョコレート村に降臨』とでも言わんばかりの勢いで食べまくっていた。村の入り口の看板やその周辺の家を食べ過ぎて村の入り口が分からなくなっていたほどである。
「どれもこれも全部チョコでうまいなぁ」
 そう言いながら身を起こそうとするが……。
「ん? あれ? た、立てない、どうしよう、あっちのあれたべたいのにぃ!」
 どうやら食べ過ぎてまともに動けなくなったようだ。当然の結果ではあるのだが、本人はそうなるまでまったく気付けなかったようだ。じたじたと駄々っ子のように手足を動かす。その結果、転がることで移動できることに気付き……止まることを知らないチョコ団子がここに誕生した。
「あ〜、チョコレートを山ほど食えるなんて本当に楽しみだな。……でも、本番を心行くまで堪能するために……くっ……今は我慢だ……」
 シャンドライはセレストの暴行にも柔軟に対応してすぐに家を建て直しているチョコレート村の様子に食欲を刺激されるが、食べたい気持ちをぐっとおさえこんだ。
 そう、今回の本題は村の中央に見える審査会場に待っているのだから……。

●チョコレート村と審査員
「昔の何処かのエライ人はこう言ったそうじゃ」
 光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)は審査会場で壇上に立つとそう切り出した。
「『女の子は砂糖菓子で出来ている』その様な例に漏れず妾も甘い物は大好きでの、各職人殿の技量をとても楽しみにしておるのじゃよ」
 そんな激励の言葉に、三人のショコラティエは一礼で応じる。
「チョコレートを競うってスゴいですわね? そーですわねー。チョコで重要なのは、如何に販売利益をあげられるか? の一言に掛かっていますわー! 原価を下げてどれだけ……」
 ザッハトルテーはそのまま自分の世界で、商売とチョコレートを課題にした論争を繰り広げる。
「チョコを審査出来るとは思ってもいなかったんだよー」
 そんなザッハトルテーは無視して、天真爛漫・チルス(a70334)は喜びの声を上げた。
 灼空の狂戦士・アスラ(a65123)はそんな他の冒険者達と違い警戒心満々で周囲を見回していた。レザーマントを羽織り、エンジェルの翼を隠したままで審査員席に着く。
(「列強種族ノスフェラトゥ……か。彼らは我らエンジェルを憎んでいると伝え聞いた。さすがに今このような場で何かをしてくるとは思えぬが、な」)
 そんな思考とは裏腹にチョコレートのいい香りがアスラを刺激する。
「前回は意図していた以上、破壊行為に走ったようなので……。今回はじっくりゆっくりと、職人さんたちの仕事を見させて戴こうと思ってます」
 その隣で色んな所が軽め・ヒュンフ(a66972)がショコラティエの一挙手一投足を見逃さないように目を凝らしながら言った。
「牙狩人のレイナです……今日は、よろしくお願いしますね……」
 エルフの牙狩人・レイナ(a68488)はぺこりと頭を下げて、着席する。
 残りの冒険者達も着席していく。
 最後の一人、セレストは会場に入れない大きさになっていたので入り口の拡張工事(食事)中だった。

●チョコレート村とショコラティエ
「俺の名はガイス。究極の味の伝道者だ。本日は他のチョコレートなど敵わぬ究極の味を皆さんに堪能してもらいたい」
 味のショコラティエ・ガイスはそう言うと他の二人には興味がないといった風に目の前を横切って調理台へと向かった。
「つまり!! アタシとしてはガイスさんが如何に原価を押さえてチョコを作ったかを今回の審査の大きなポイントというか注目しているのですわ!!」
 ちょうどザッハトルテーの演説のような商売語りも終わったようだ。
「ボクはルター。ガイスさんはああいったけど、一瞬で終わる味だけを楽しむなんてもったいないよね。今日は素敵な芸術をお目にかけるよ」
 技のショコラティエ・ルターはそう言うとガイスのほうをちらっと見て、不敵な笑みを浮かべてから調理台へ移動した。どうやら仲は余りよくはないようだ。
「ルターさんの場合は如何にウケを取れて奇抜な万人の心を掴むデザインにチョコを仕上げるかですかしら? レアな形で唯一の造形なチョコ! しかも金持ちが大枚を叩いてませ欲しいと思わせるチョコならガイスさんと良い勝負かもしれませんわー♪」
 ザッハトルテーはまだ暴走していた。
「最後に、まだ未熟ですがこのような機会をいただきました、セポネです。心温まる安心できるチョコレートを皆さんに提供できるように頑張りたいと思います」
 心のショコラティエ・セポネは恭しく一礼をすると他の二人に対しても頭を下げながら調理台へ向かう。
「みなさん、それぞれの実力を出し切って最高のチョコレートを作って下さい……」
 そんな三人を見送り、レイナが激励の一言を送る。
「実況はわたくしリュカリナがお送りいたしますの。皆さん頑張って下さいね」
 そして、金翼の紋章術士・リュカリナ(a66079)はいつの間にか場を支配していた。
「見事に心技体の職人が揃ったものだな。いや凄い。誰が日の本開山か、見物だ」
 会場に並んだショコラティエを見て、ストライダーの武道家・オウサ(a68205)は感嘆する。
「それでは最初の課題を発表します。課題は『チョコレートが大好きな人を、喜ばせる事が出来るチョコレート』です」
 リュカリナの課題発表と同時に動き出す三人のショコラティエ。
 ガイスは予想していたとばかりに即座に用意。真っ先に完成させた。
「味以外にチョコレート好きを満足させるものがあるはずはなかろう」
 自信満々で審査員に配るガイスのチョコはシンプルな物だった。
「む……これは」
 レイナは一口頬張ると味を確かめるように口の中でチョコを転がした。
「とてもおいしいですね。甘くてほのかに苦いこの味……最高です」
 そして、そんな感想を漏らした。
「こっ……これは!!! 想像以上!!!! うま〜い!!!」
 シャンドライも声を大にして叫ぶ。
 甘いだけでも、苦いだけでも駄目。チョコレートはその二つのハーモニーの融合こそが最上だとでも言わんばかりの完成度。硬すぎず口の中で蕩けるその味は口の中を過ぎてからも体中を支配していた。
「やっぱり職人の動きは見ていて飽きないね」
 その一方でヒュンフはルターの動きを見てそう呟く。
 融かされたチョコがルターの目の前で次々と形を変えていく。様々な形に加工されるチョコレートは一つの芸術品と呼ぶに相応しい。
「綺麗ですね……」
 それ以外の言葉が出ないほどレイナはそのチョコレートに見惚れていた。
「芸術ってよくわかんないけど、チョコレートでこんなことが出来るってのがすごいよな〜」
 シャンドライの言うように芸術が分からない人でもそれは理解できる美しさだった。
「とってもキレイ……美味しそう……早く食べたいな♪」
 そう言う血の雨と・チェリル(a69914)の前にルターのチョコレートが運ばれる。
「繊細な形だね、素晴らしい……!」
 チェリルの言葉通り、それは繊細な模様の編み上げられた上質の織物のようであった。それを一口頬張ると、口の中に柔らかく広がっていく。味こそガイスの物に劣るが、十分以上に一級品。そのチョコレートが口の中でじわじわと溶けて広がっていく。編み上げられたチョコレートは時間と共に味に変化をもたらしていく。
 ルターのチョコレートは口の中でこそ、その本領を発揮していた。
「心温まるチョコレート……どんなのかな? う〜ん、心のショコラティエのセポネさんには期待大ですね!」
 アオイはそう言いながらセポネの作業を眺める。
 セポネの作業は特筆すべきこともない単純な物。基本に忠実にゆっくりと作業を続けていた。
 出来上がった物は複数。色や形、大きさも違うそれらのチョコレートはチョコレート好きでなくとも喜ぶことだろう。
 一つ一つに込められた個性。それは一つのチョコでは決して満足できないチョコレート好きにはある意味理想的であった。
 それらを目の前にして、シャンドライはどれから手をつけようかと悩みながらも一つ手に取った。
「うんうん。美味しい物って気持ちがつたわるよな。心を込めて作ってくれたのがよくわかるよ」
 味も形も他の二人に及ばないまでも、どれ一つとして手を抜いていると思えない出来だった。
 この課題の評価は五分五分。各々の個性が出た勝負はガイスがわずかにリード、まだまだ勝負は分からない。
「それでは次の課題に移ります」
 一通りの試食が終わってからリュカリナは口を開く。
「課題、か、そうさな……絆を深めてくれそうなチョコレートが良いかな?」
 今まで黙って食べていた翠幻皇石の双騎士・リカルツェン(a69462)はそう切り出した。
 並んだチョコレートはやはり個性が出ていた。
 ガイスは直球、味を追求しただけの物。確かに美味しくはあるのだが、その評価は伸びない。
 ルターは二つの白と黒のチョコレートが絡み合う一品。
 セポネは大きなチョコレート製の箱の中に小さなチョコレートをいくつも詰め込んだ。
 この課題ではガイス以外の二人が票を伸ばした。
「では次の課題です」
 次々と出される課題。
 ヒュンフの課題『雪をイメージしたチョコレート』では冒険者達からの情報提供に若干時間がかかったが、ガイスは口解けで表現し、ルターは雪の結晶を模ったホワイトチョコレートを使い、セポネはホワイトチョコレートを散らして表現した。
 次の『安らぐチョコ』はガイスはホットチョコを用意。ルターは流線型の柔らかい形で表現、セポネは口の中でゆっくりと溶けるチョコレートで表現した。
「世の中には99%チョコと言う途轍もなく苦いチョコがあっての? 妾の出す課題は、『99%チョコ(一番苦いチョコ)を美味しく楽しく』じゃ」
 プラチナの課題にガイスは徐々に口を慣らすようにチョコレートを並べ、ルターは食べることをあえて捨て、見た目を重視して作品を仕上げる。セポネはチョコレートにフルーツなどを添えて出すことで彩と味を変えた。
「あ。なんか、見てるとヨダレが……どれも美味しそうなのー。こー見てるとチョコたちがミーに食べて欲しいって言ってるなのー」
 クランベリィはそのまま、調理台のほうへ駆け寄ると、チョコレートを喰らい始める。
「やっぱ、チョコたちはミーの腹に収まりたいかー! ドーーーンと来いなのー。チョコたちよー。ミーに腹に入るなのー!!」
「一度な、チョコフォンデュをがぶ飲みしたかったんだぁ」
 暴食を始めたクランベリィの横には入り口を食べつくして入ってきたセレストがチョコフォンデュ……というか、融かしたての熱々チョコレートをがぶ飲みしていた。
 当然、熱くて大変なことになったが……それ以上に会場は用意していた材料が激減して大変なことになった。

●チョコレート村と最高のショコラティエ
「えー、それではトラブルはありましたが……最後の課題に移りたいと思います」
 リュカリナは頭を抱えながらも司会を続ける。チョコレートの材料が激減したため、これが最後の課題になった。
「そうね……うまく一言で言い難い課題なのだけど。貧乏ながら女神様に手作りの贈り物をしたって話があるのね」
 クールはそう切り出す。
「そうして作られたお菓子も素晴らしいと思う。けれど……富める者のもまた――そんな、伝承に描かれぬごくありふれたロマンスを貴方達なら、どう描き起こすかしら?」
 クールの出したこの課題は受け取る側によって大きく違う物となった。
 ガイスは高級な原料とありふれた材料で二つの究極の味を、ルターはチョコレートで作った人形で場面を作り出し、セポネは何の飾りもないシンプルな物を作っていた。
「これは?」
 首を傾げて問う冒険者達にセポネは真っ直ぐな眼差しで答える。
「これは私がこの村で最初に教わったチョコレートです」
 セポネはそう言うと、味も形も極普通のそのチョコレートを差し出した。
「私は初めて食べたチョコレートを忘れられず、そのときの気持ちを誰もが味わえるようなショコラティエになりたかったのです」
 笑顔で言うセポネはチョコレートそのものよりも、大切な物を伝えることが大事だと言わんばかりに輝いていた。
 その言葉にアスラは拍手を送る。その拍子にレザーマントが外れ、他の審査員のノスフェラトゥの目に留まるが、特に気にした様子もなかった。
「それでは審査に移りたいと思います」
 現在の得点はガイスがわずかにリード、それに続いてセポネ、ルターの順だった。
「味、造形も確かに大事だが、俺はやはりそういった見た目にこだわるより、心に訴えるものを支持する」
 オウサはそう言うと、セポネに票を入れる。
「私はセポネさんの作品がいいと思います……味・形・気持ち……全て揃ったすばらしいチョコレートです……」
 レイナの評価、それは最後の課題のみだけではない全体的な評価だった。
「それでは、審査結果を発表いたします……」
 結果は……セポネが僅かな差で勝利を手にした。


マスター:草根胡丹 紹介ページ
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わからない
参加者:15人
作成日:2008/01/21
得票数:ほのぼの7  コメディ11 
冒険結果:成功!
重傷者:流離う森の芽の担い手・セレスト(a16244) 
死亡者:なし
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