ハカータ村大戦争(そうじ)



<オープニング>


「ふーん?」
 ハカータ村という村がある。
 風光明媚で麺類の美味しい地域で、そこにやってきたアンジーは今日も良い感じでのんびりしていた。
「へぇ。ここにアレがなぁ」
 何か企んでいる感じなのは、このハカータ村にランララに関する何かを嗅ぎつけてきたかららしい。
「けーっけっけっけ〜〜〜やるで〜〜やったるで〜〜!!」
 今日も、三十路のアンジーが何かを始める音が木霊する。

 一方その頃。
「へぇ。こういう所に洞窟がねぇ」
 冒険者も、アンジーとは違う目的でやってきた。
「さ、いこうぜ!」
 穴に潜って何をするのか。
 それは、いっこうに判らない。

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参加者
NPC:鉄拳調理師・アンジー(a90073)



<リプレイ>

●洞窟
 洞窟の中に、天が呼んだか、地が招いたか。
 ハカータ村にすっくと立つのは蒼剣の騎士・ラザナス(a05138)。
「ここで美味しいものを頂けると聞きましたので……海を渡ってやって来ました……何も無かったら怒りますよ」
 と、言いながらモモチ洞窟に突入する割に、ご贈答宜しく飾られていた人型には目もくれず。
「……得体の知れぬフィギュアは見なかったことにしましょう。ええ、ぜっっったい持ち帰りたくない!」
 きっと誰かが持って帰ることでしょうと、祈る気持ちが口から漏れ聞こえているのだが、それは洞窟を吹き抜ける風に乗って消えていくばかり。
「麺類が美味ぇらしいだけんど、どんなモンがあるんだかなぁ〜ん?」
 萌土乃盾・アルグ(a18522)はラザナスの後から尻尾を振り振り続いている。
「……さて。この依頼が終わったら、実家に帰ってももんがと畑でも耕すか……」
「これは酷い、まさに惨劇の死亡フラグ成立です」
「何がよ?」
 天の声ならぬ、降りそそぐ木漏れ日・スタイン(a04948)のアナウンスに突っ込む冥探偵ももも・アレス(a14419)だが、解説に徹したスタインには何処吹く風。
「この先には何が待ち受けているのでしょうか? それでは、現場に移ります……」
 すっと、姿を消すスタイン。
「……まさか、地下に街……なんてのは無いだろうしね」
 斜陽支えし鋼盾・ジェフリー(a60090)は延々と続く洞窟に想いを馳せてふっと笑い。
「それは、それで面白そうだが……」
 と、嘯く程度の余裕をみせるジェフリー。
「大丈夫! ぶっちゃけ何をしてよいのか全く見当のつかぬ妾参上!」
 えっへんと、胸を張るのは光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)に、疎らに拍手してみせる『ももも』とジェフリー。
「やぁ。この辺りで、不穏な蜥蜴は見なかったかい?」
 不羈の剣・ドライザム(a67714)が朗らかな笑みで洞窟前に集まった一同に話しかける。
「こちらで、三十路で黒髪の女性を見かけませんでしたかしらぁ?」
 吟遊詩人・アカネ(a43373)がドライザムの背から現れたのに、一同は……。
「不穏な蜥蜴」
 と、アカネを指さすアレス達。
「!?!」
「あーいや、いや。俺が悪かった。うん。不穏なゼオルを見かけなかったかな?」
 固まってしまうアカネと、説明とタイミングが悪かったなとドライザムが言い直す。 
「不埒行動予定なゼオルを捕まえて話そうと思ってね」
「不埒?」
 ラザナスの瞳が一瞬輝いたのは、希望に満ちてなのか欲望に満ちてなのか……多分、奥さんに知られると危険な方だろう。
「さて、洞窟まで来たのはいいんですけど……」
 異様なまでの洞窟前の盛り上がりに、宣伝部部長・フィロ(a12388)は二の足を踏んでいた。
「ノソリンの鳴き声に酷似した食物をとりあえず持参してみました」
「おおっと、フィロさん、ここで『実はこちらに完成品が』と、懐からあり得ない量の『ナン』を取り出したー!?」
 洞窟の迷司会、スタインの突っ込みが続く。
「あーそれ。俺も実は、ここに『チーズなぁ〜ん』というパンのような物が有ると聞いたっす」
 緑の記憶・リョク(a21145)が聞いた話ではと、嘴の下に手を置いて考え込むようにして話し続ける。
「それを、黄色の液体につけて食べるらしいんすけど、稀に緑色のものがあるらしいっす。……ホウレン草っすかね?」
「え? 十倍……バカな……」
 アレスが緑と聞いて肩を振るわせる。
「五倍? まさかまさか……」
「三倍? いえいえいえいえ……一倍? もう一声っ!」
 カレーなもももが段々倍率を下げていくのに、聖戦の・ルミリア(a18506)は笑顔零れる爽やかさで……しかし、逃走経路のない袋小路に追い込まれて見せられる笑顔はねーだろという、アレスの突っ込みは華麗に聞き流して言葉を紡ぐ。
「辛くて『なぁーん』と言えばカレーでしょうか? 私も辛いモノは大好きですよ〜♪」
「いや、だからな?」
「では、こちらに。とある方が試したという八十倍カレーをば……」
 トロトロと言うよりは、ドロドロとした緑の粘体をアレスが浸していたナンとカレーの狭間に投入するエンジェル様。
「……うおい」
「か、辛いなぁ〜ん!」
「オレは華麗の王子様しか食べられませんからぁぁぁぁぁ!!」
 口から炎を吐き出す勢いでぶっ倒れるアレス。
「……ソレにアオジルを混ぜて食べたらどんな味になるっすかね?」
 言ったところで、緑の粘体が見た目にもたらした辛みに驚くルゥ。
 道理で、持ち運びしている間に体が痒かった筈だと、理解出来たが納得は出来ない様子で……。
「屋台も持ってきたっすから、調理する場には困らないっす。実験台もたっぷり居るっす♪」
「……まあ、一応」
 何が一応なのだろうかと、フィロの言葉に突っ込みたくなる一同。
「遠い国から伝わって来という、薄いパンの一種が名物品として知られていた」
「え?」
 静かに、深淵より響くような声。
 異風の叫奏者・ガマレイ(a46694)の紡ぐ言葉は彼女の持つ本を朗読する物である。
「曰く。『縁についたカレーまで余すことなく味わえて、食べた物は皆、満腹になって嬉しそうなノソリンのようなにこやかな表情を浮かべていたという……それ故、それはこう呼ばれる。『ナァ〜ン』と。……『華麗なる那安』なぁーん明書房刊より抜粋……」
 パタンと、本を閉じたガマレイは洞窟の側にあった小屋でカレーを煮込み始めた。
 横では小麦粉やら酵母やらに豆乳を投入して、壺窯が無い代わりにフライパンで焼き上げる少し厚手の粉物の皮。
「山羊乳チーズも練りこんでみるかな?」
「ここじゃな」
 プラチナがガマレイの作業中の様子を見て屋台だと思いこんでやってくる。
「とりあえずゼオル殿が何やら屋台をされるそうじゃな? ダラダラと飲み食いしつつ……いやいや、状況観察じゃ」
 便乗の気合いも素晴らしいプラチナ以外にも、腕まくりで屋台に駆け寄る者もいる。
「おらは作るんも好きだけんど、食べるんも好きだなぁ〜ん♪」
 ガマレイと並んで作り始めるのはアルグ。
「作る人が少なけりゃ、美味しいモンさ作るなぁ〜ん。材料調達とか食べたりとかするだかなぁ〜ん?」
「材料……」
 食材と聞いてフィオとドライザム、ジェフリーが三者三様の表情を見せる。
「唐辛子とランララが何か関係があるのでしょうか……」
「何処にいる、ゼオル……嫁さんとの仲は……既に……いや、まさか……」
「世界のどこかでは魚の卵を、唐辛子や酒を混ぜた汁に漬け込んで食べるそうだね。どんなのか見当付かないが、酒のつまみには合いそうだ……あと、名物の汁細麺に、唐辛子や大蒜を合わせた辛味噌を付けると美味いそうだね。他にも、唐辛子と塩・ソイソースで『高菜』って野菜を漬け込んだのを載せてもイケるそうだ……ああ、そう考えると、白いライスも一緒に添えたくならないか? ホカホカで湯気がこう……ふわっと甘い香りをたなびかせる炊きたての、熱々の白い米粒も立った……」」
 食卓の上を想像して生唾もののジェフリー。
 人間、基本的な食材と毎日の普通に美味しい食事が重なる時こそ、その味をはっきりと思い出すものである。
「奥さんとぉ〜? 巧くいってるか〜ぁ? それはぁ〜わしもぉ〜聞きたいこと〜〜。そうそう〜〜ドライザムは〜王女様が好きなんすよね〜♪」
 少し出来上がった上に眠気も手伝って、話題が明後日の方角からドライザムとここには居ないゼオルに直撃し始めるリョク。
「……そして、これら以外にも謎のなぁ〜んを探すとか、不埒なトカゲが何かする洞窟と聞いていますが……」
 言葉を一旦切って、韜晦したあげくに一同を見送るスタイン。
 取り敢えず、入らないことには始まらないので洞窟に入ってみるんフィロだが、矢張り他の者と同じく、何の変哲もない洞窟か、はたまた寛ぎのトラップ空間かと心構えをしてきていたのにも関わらず……。
「これは……危険ですね」
 フィロの呟くのも判る。
 人型の鎮座する洞窟の中に燦然と、ご神体の如くに置かれたソレ。
 本来ならば、なだらかな流れの曲線をデフォルメに対比させているだけの人型に、その肢体に併せて密着する形で東方風のドレスを着せた物だ。
「お百姓さんが丹精込めて育てた唐辛子を粗末にしているというので、何とかしようかと来たのですが……」
 一瞬後には、視界の端どころか、思考の端にも掛けずにフィロは洞窟に踏み込んでいく。
 そして、彼らが突入する時刻から遡る事数時間……。
 洞窟内部に突入するリザードマンが居た。
「此処はハカータ村の外れにあるモモチ洞窟。今、ここで同盟を揺るがす大事件が起きようとしていた……!」
「というわけで、記録係と照明役のホーリーライト係の前に突き進むゼオルさんです」
 すかさず司会するスタイン。
 時系列、全てを無視出来るのは流石にドリアッド種族と言うべきか。
「くっ……何ということだ!」
 歩を止め、刮目する不破の双角・ゼオル(a18693)。
「この洞窟、腐海で埋め尽くされていまずぞ……これこそが『クサノネー』が近隣の村を襲っては奪い集めたフィギュアに違い有りませんな……まさか此処に隠しているとは……」
 近くの村で聞いてきた与太話。
 植物の根っこみたいなモンスターが居るとか居ないとか言う、酒場の酔っぱらい伝説程度の噂を信じて淡々と語るゼオル。その観客は若干一名だが……。
「こら、エリエール。なんか変な病気が貰いそうだから、そんなの触っちゃいけません!」
「はーいママ♪」
 よい子はおかー……もとい。お父さんの言うことを良く聞くものです。
「なお、今回は行き遅れどころでないアンジーさんが同行しております」
「けーっけっけっけー」
 同行と言うよりは、既に生えていたという感じが強い鉄拳調理師・アンジー(a90073)である。
「しまった……食べ過ぎて、帰りに約束した麺が食べられない……」
 後悔先に立たずとはこれのことかと、ラザナスは鎧の留め金を外した上でベルトの穴を三つずらした今の状態を苦しんでいた。
 そう、やもすれば幻影でも見そうな位に……。
「あれ? アンジーさんが……フラフラとオランウータンに取り憑かれたように彷徨っているのは何故だ……!? ああ、これがきっと走馬燈……」
 グランスティードが大安売りで走るアレかーとか、訳の判らない思考が席巻している脳内で、ラザナスは頑張って進むべき道を辿る。
「アンジーちゃん、辛いもの1つお願いなぁ〜ん」
 シュタッと。
 何故か人跡未踏の筈の洞窟で、頭上から突如落ちてくる白い物体こと、ヒトノソくノ一・シス(a14630)だ。
「なんか辛いもの食べて、なぁ〜んなぁ〜んと鳴かないといけないらしなぁ〜ん」
「きしゃ〜言うなら考えん訳でもないがなぁ……」
「きしゃぁ〜なぁ〜ん?」
 首を傾げてみるシス。その手にはちょーだいと意思表示の丼が……二十人前の麺でも入りそうな巨大な姿を露わにしていた。
「な〜ん言うな、なぁーん!」
 ヒトノソリンから『なぁん』を除ければ、珈琲に乳を入れてないのと同じなのに、無茶を言うアンジー。
 だが、彼女達の喧噪を余所に、城壁の姫騎士・サクラコ(a32659)はコックリコックリと船を漕いでいる。それも、何時の間にやらゼオルの背中に搭載された手素羅運転の上で。
「ふぅ。これで掃除も終わりましたな。あとはあの人型を押しつけ……いやいや、進呈いたしまして……サクラコさんも早く屋台に返してあげなければ……私と一緒に食いはぐれてしまいますね」
 洞窟内部の掃除を終えて、振り返ったゼオルの前に立ち塞がる黒い影。
「ひと〜つ、人にチョコレートを無差別打ち込み」
 逞しい肉体を纏う白い布。
 洞窟内部なのに、何故か風にたなびく布を頭から被った男性の声が響く。
「ふた〜つ、二体の怪獣、不埒に悪行三昧」
 すっと、顔に手をやればそこには般若の形相をした仮面が一枚。
「みっつ、三度の悪行あるならば、拝見いたそう、にわか面!」
 布が擦れあい、吹き飛ばされて出る姿こそ、双子の兄に家を譲ってさすらいの旅に出た正義の味方、その名も……
「よ! ゼオル。今年も不埒なことをするち聞いたばってん、嫁さんおるとにいいっとや?」
 いきなり砕けた感じで話し始めるドライザム。
「このにわか面着けて、断りば言うてきんしゃい。『ごめ〜ん』ちね。それで万事解決ちゃ」
「……おおう! これは!」
 手に取ろうとした瞬間。
「そうはさせない! 呪痕撃を喰らいな!」
 カレー八十倍の恐怖と絶望とズンドコから蘇ったアレスが何やらモゴモゴとやってくる。
 彼をここまで運んだのは子供好きなグラップラー・ネレッセ(a66656)達らしいのだが、狭い洞窟に大量の冒険者が入り込んできて、騒然とした中に混沌が生み出されている。
「麺じゃなくてもいいじゃない。エンジェルだもの!」
 人間ですから当然と、汗を掻きながらガマレイが目を細めてにこやかに笑う。
「アンジーさんもいかが?」
 ミンチ多めのキーマカレーと、ホウレン草を加えたグリーンカレーの二品を並べて笑顔のガマレイ。
「アンジーさぁん、いかがですかぁ!?」
 肩越しに、洞窟の壁に寄り添うようにしてアカネが空気読まない・ゼソラ(a27083)に密着されたアンジーを手招きする。
「んふふふふ〜〜」
「う、うごきにく〜〜い〜〜わ〜〜!!」
 うにゅんうにゅんと、アンジーの背中に頬をすりつけて熱を吸収するゼソラ。
 とかく、この寒い時期には人の肌が良い暖房となるのだが、彼女にはそれ以上の効果が見込まれていそうな気がするのは居合わせた一同の共通認識のようだ。
「この前のぉ、お祝いのぉ、時にぃ、助言しましたけどぉ、如何ですかぁ? 知り合いのぉ、『おっさん』もぉ、春にぃ、なっているのですぅ」
「……ああそうかぁ……棺桶片足に……大変やな、気を落とさんようにな?」
「フォーナ様もぉ、降臨されたのでぇ、春はぁ、近いですよぉ」
「神さんなぁ……」
 アカネと微妙に方向のずれた会話のアンジー。見事なまでに、二人の意志がずれている。
「そうでしたぁ、お土産にぃ、これぇ、自作ですがぁ、あげるのですぅ。感想よろしくなのですぅ」
 と、薄い小冊子を贈ろうとするアカネ。表紙には『マルヴァス×ギャロ』と書かれてあるのだが、受け取る側は首を傾げてパラパラと……。
 パタンと。
「そっかー」
 閉じられた。あーんど、信じたらしい。
「皆様おつかれさまでした〜♪」
「でした〜♪」
 ルミリアとプラチナが並んで洞窟から手を振ってみせる。
「何時の間に?!」
 フィオが叫び、彼の周りではフィオの背に括り付けられるようにして存在する洞窟内の人型を見て大爆笑の一同。
「……えー、お後がよろしいようで。以上、スタインの実況でした」
 最後に、洞窟から麺を食べていた皆の絶叫が響き渡ったのを聞いて、スタインが閉める。何でも、出汁が何処かのリザードマンによる物だとか何とか……。
 さて、真実は、どうだったのだろうか……?


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