海老蟹合戦?



<オープニング>


「えー、非常に説明したくないんですが……」
 百聞の霊査士・レグリア(a90376)は名前すら出したくないのか、羊皮紙に『つ』と、文字を書く。
「えー、これの変異動物と蟹の変異動物がある漁村の西と東に分かれて睨み合ってます。甲殻類同士の戦いなので決着がつくまで放置してもいいんですが漁村が間にある以上それはできません。今のところお互いに牽制しているためか、動きはないようですが……何かの拍子に二匹とも動き始めると大変なことになりかねません」
「それで蟹ではない方の変異動物ってなんだ?」
 冒険者の誰かが問う。
「私が名前を出すのも嫌いな……海の老人と称される赤い縞模様のナマモノです」
 レグリアは額に汗すら流しながらそう言った。どうやら海老と言うことすら嫌なようだ。
「それから注意事項ですが……この二匹は互いに互いを嫌っているようで、殴り合おうとでも思っているのか漁村を横断して攻撃しようと移動します。放置すれば漁村が壊滅的な打撃を受けるため、双方の足止めをする必要があります。妨害されると海から仲間を呼び出したりもするようですので、その辺りも注意して……瞬時に私の耳に情報が入らないように粉砕してきてください」

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参加者
翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)
剣難女難・シリュウ(a01390)
大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)
漆黒の黄金忍者・ケンハ(a29915)
暁月夜の幻影・ルシエル(a36207)
流れ行くままに・アカリ(a37482)
闇潜淡光・ジェイド(a46256)
黒百合の魔女・リリム(a50830)
血の海に咲く黒薔薇・アイノ(a60601)
荒野の血風・ピオトル(a61132)
玄冬史家・セツナ(a68330)
エンジェルの牙狩人・キラハーティ(a70748)
古本市と書いて戦場と読む・サース(a70972)
なぁ〜んですなぁ〜ん・キリア(a71164)


<リプレイ>

●西側の海老
「そうか、レグリアは海老嫌いだとは知らなかった」
 翡翠色のレスキュー戦乙女・ナタク(a00229)はこの場にいない霊査士の意外な弱点に笑みをこぼした。
「でも、霊査の情報は鋏を振り上げて襲ってくるんだよね? 海老ってあまり鋏が発達しているイメージ無いんだけど……それって実は海老じゃなくってザリガニとかロブスターじゃ? まあ、どちらにしてもまずは相対してみなきゃ始まらない訳だし、その時は臨機応変に立ち回らなきゃね♪」
 そう言いながら漁村の西側に向かう。
「漁村の東の端と西の端にそれぞれいる変異した巨大なエビとカニの退治か……」
 その横で荒野の血風・ピオトル(a61132)は剣難女難・シリュウ(a01390)の長剣『黒輝真剛鋼剣』を手に漁村の西側へと、向かっていた。
「海老さんと、か、蟹さんの喧嘩ですか? 前もそんなことがあった気が……と、とにかく、海老さんは任せて下さい。だ、だから、蟹さんを近づけないで! ぉ、お願いです!!! と、とにかく、か、蟹さんはいや〜」
 黒百合の魔女・リリム(a50830)は過去の経験を思い出そうとして、余計なトラウマを掘り返したらしい。目に涙を浮かべながら蟹を拒んで海老を選ぶ。霊査士から伝えられた攻撃方法からすれば海老を相手にしても同じトラウマを刻まれる可能性もあるのだが、実際に被害にあった蟹よりはましなのだろう。
「と、取り乱しました。と、とにかく、が、頑張ります」
 リリムはそう言うと拳をぎゅっと握り締めた。
「全く……ケンカするなら、もうちょい場所を選んで欲しいもんだねぇ」
 そんなリリムを余所に、紅灯の光と成る太陽・ジェイド(a46256)は漁村を見渡して呟く。
「単に睨み合っているだけならともかく、この場合は間に漁村があるわけだからどんなとばっちりが来るかわかったもんじゃねーからな」
 平和そうな漁村を見渡し、ピオトルはこれから始まる戦いの被害を想像した。場合によってはここが跡形もなく破壊される可能性もある。そうならないためにも漁村の地形を把握しておく必要があった。
「漁村に住んでいる人たちもビックリしてるだろうに……村への被害も気になるし、早いトコこの場を鎮めてしまおうかー」
 そう言ったジェイドの前方に巨大海老の姿が見え始めた。その姿は巨大な手長海老。ナタクの想像とは少し違うが一応海老であった。
「倒せとは言われてませんが、海老も蟹も両方倒してしまいましょう。また後で海老蟹戦争やられたら面倒ですし」
 玄冬史家・セツナ(a68330)はその巨体を目の当たりにして、真っ先に捕食される魚の心配をしていた。漁業的にも被害甚大なのは想像に難くない。
「やはり、蟹の弱点は柿だったりするのかね? ま、どうでもいいことか。海老の方に行く訳だし」
 灰緑・サース(a70972)はその辺で捕まえた蟹を手にそんな軽口を飛ばす。
「それにしても海老と蟹が嫌いあうなんてね。同族嫌悪というやつかな?」
 蟹の目的が復讐だとすれば、海老は臼に挽かれて海老煎餅にでもなるのだろうか。サースはそんなことを考えながら冬の海の寒さに震える。
 怨みを込めて手長海老を見据える堅牢の灰色・キリア(a71164)の前で、手長海老はただその対岸にいる巨大な蟹を睨み続けていた。

●東側の蟹
「レグリアは本当に海老が嫌いなんだね、名前を口にするのも嫌だなんて。兎に角、海の幸を焼いて食べ……じゃなくて、退治しないと。村の人達も困ってるし」
 暁月夜の幻影・ルシエル(a36207)は向かっている方向の逆にいるであろう海老を極端に嫌う霊査士が美味しい物が食べられないことへの哀れみを込めてそう呟いた。
「蟹と海老が相手か……しかし、蟹と海老が仲悪い原因って何なんだろうか……まぁ、どうでもいいか。とにかく、これ以上村に近づけないようにしないとな」
 大地を翔ける蒼き翼・カナメ(a22508)は漁村の東側に向かいながらそう言った。
「村の東と西にいる変異カニと変異エビが漁村の中央挟んで睨み合いしてるってのが現在の状況なのね。場所が漁村じゃなかったら個人的には放置してもいいと思うんだけど、場所が場所だけにね……」
 血の海に咲く黒薔薇・アイノ(a60601)はため息混じりに呟く。その心境は親の喧嘩の仲裁に赴く子供のようであった。
「海老蟹の合戦とは争いに巻き込まれる漁村が災難ですね、人々に被害が及ぶ前に両方退治しましょう」
 シリュウは漁村を見渡しながらそう言った。漁村は今はひっそりとしているが、生活感がないわけではない。万が一に供えて一時的に避難こそしているが、戻ってくればすぐにでも活気溢れた漁村としての顔を取り戻すだろう。
「やれやれ何と言うか、戦うのは構わないが他所でやれ、他所で、って所だな。それにしても、今回の蝦と蟹は両方変異動物だから普通に喰えるな」
 漆黒の黄金忍者・ケンハ(a29915)は巨大な甲殻類の味を夢想し、思わず笑みをこぼしていた。
「……倒してもコレ、きっと大味で美味しくなさそうですね。料理するのはいいですけど、私は食べませんよ? 向こうのエビさんも似たようなものでしょうし……期待はしないでおきましょう」
 流れ行くままに・アカリ(a37482)はそんなケンハに呆れながらそう言った。期待が大きければ裏切られた時のショックも大きいが、始めから期待しなければ問題はない。
「依頼を成功させるのもそうだけど、被害は最小限に抑えたいの」
 エンジェルの牙狩人・キラハーティ(a70748)だけが、漁村への被害を心配していた。
 そんな一同の前に姿を見せた巨大な蟹は……片方の鋏だけが極端に大きかった。
 蟹は蟹でもシオマネキである。
「さっさと終わらせるわよ」
 アイノの身体が黒い炎に包まれ、制御下に置かれた膨大な力が身体の内より湧き上がる。
「さて、それじゃぁ行きましょうかっ♪」
 そう言いながらアカリは後ろに下がる。同時に白いふわふわの守護天使達が冒険者達を守るように漂い始めた。
「それでは行きますよ」
 シリュウが宣言すると同時に、遠く離れた愛剣『黒輝真剛鋼剣』が姿を現す。
 シオマネキと手長海老の冒険者を巻き込んだ合戦が今、始まった。

●手長海老と冒険者
「向こうも始まったみたいだな」
 ピオトルの手元から長剣が消えた。それに気付くと同時にナタクは駆け出していた。
 青い疾風が手長海老の巨大な鋏を潜り抜け、手長海老の腹部に無数の光が弧を描いた。……が、その攻撃は手長海老の持つ小さな鋏に遮られる。手長海老には大小併せて四本の鋏があった。
「が、頑張ります」
 リリムは拳を握り締め、戦闘用箒『シルバーコメット』を手長海老に向け集中する。
「ぃ、行きます。ぉ、お願い、銀狼さん!」
 箒を振るい、現れた銀色の軌跡が銀色の狼を模る。
「と、止まって!」
 放たれた銀狼は手長海老に喰らいつくと、そのまま地面にねじ伏せる。手長海老はすぐに起き上がるが、その生じた僅かな隙を逃す冒険者達ではない。
「テメーの甲羅がどれだけのもんか、その身で以って……味わえやァァァァァ!!!」
 ピオトルの『黒い雲』を意味する巨大剣が外殻を破り、手長海老に苛烈な一撃を与える。
「避けるなよ? 無駄に手間を掛けたく無いんでね」
 言いながらサースは手長海老に接近する。
 ……が、そう言われて素直に避けないでいるほどお人よしではないようだ。手長海老は跳躍し、冒険者達から距離を取る。
 だが、ただ避けられるだけでは終わらせない。その跳躍に合わせ、瞬時にセツナは突風を放つ。風に煽られて、手長海老と漁村の距離は広がった。
 冒険者達を敵と認知したのだろう。手長海老はその長い鋏をピオトル目掛けて叩きつける。漁村から距離が離れ、周囲に邪魔になるような物がない状況で、その見え見えの動きを見切れないはずもない。
 攻撃を大きく空振りすることになった手長海老は横合いから放たれたキリアの一撃をもろに受けた。
 漁村からの距離は十分引き離している。ナタクは追い込むように手長海老に接近すると、その腹に爆発的な「気」を叩き込む。
「ぇ、えい! どんなに硬い殻でも、こ、これなら……」
 さらに漁村との距離を取った状況下でリリムは銀と虚無の軌跡を手長海老目掛けて投げ放った。凝縮された邪竜の力が手長海老の外殻を包み込み、無力化していく。こうなってしまっては甲殻類も軟体生物と大差がない。
「ミ、皆さん! ぃ、今がチャンスです!」
 漁村との距離は十分以上にある。冒険者達は瞬時に全員で手長海老を囲むように移動すると一斉に攻撃を仕掛ける。
 ピオトルが正面から、後方からはキリアが切り込む。
「蟹や海老に少々怨みがあるなぁ〜ん。海老嫌いを克服するためにも容赦はしないなぁ〜ん」
 二つの剣が外殻をあっさりと切り裂き、その白い肉を顕にする。
 身動きできないことを悟ったのか、手長海老はその長い鋏を高く掲げ、打ちあわせる。
 その音に反応したのだろうか、海岸の方から無数の海老がぴちぴちと飛び跳ねながらやってくる。とてもではないが脅威には思えない。
 その動きに瞬時に反応した男がいた。
 ジェイドは慈愛に満ちた歌声を現れた海老たちへと注ぎ込む。歌声が響いた後には死んだように眠る海老たちの姿。
 その海老をセツナの召喚した土塊の下僕が海目掛けて投げまくる。
 所詮ただの海老、冒険者達が直接手を出すまでもなかった。
「やれやれ、面倒なことだ」
 サースは振り下ろされる鋏を盾で受け流し、無防備な手長海老の身体に破鎧掌を叩き込む。
 冒険者達の連続攻撃に手長海老は漁村に近づくことすら出来ずじりじりと後退していく。
 増援を呼べど、即座に無力化され、あるいは吹き散らされて役にも立たない。
 鋏を振り回しても防がれ、あるいはジェイドの放つ光によって負わせた傷もすぐに癒される。
 ゆっくりと、だが確実に弱らされた手長海老は漁村から数十メートル離れた場所で無念の戦死を遂げた。

●シオマネキと冒険者
 シリュウの手に武器が戻るほんの一瞬前に、カナメは飛び出していた。
 優雅な動きと共に蒼い糸から放たれた衝撃波が、シオマネキの外殻の隙間を縫うように爆ぜる。
「そこで大人しくしてろ……と言っても、聞かないのだろうな」
 ルシエルはそう言いながら愚かな蟹を送るべく『冥境礼賛・ケイオス』を振るう。その切っ先から生まれた風が木の葉と共にシオマネキに襲い掛かった。
 シオマネキは吹き飛ばされながらもその巨大な鋏を真っ先に攻撃を仕掛けてきたカナメ目掛けて振り下ろす。
 その予想外の一撃にカナメは叩き伏せられる。注意していたものの、漁村との距離がまだ近かったため、回避に専念できなかったのだ。
「ちっ、やってくれるな!」
 そう言いながらカナメは後ろに下がる。
 それと同時にケンハが吹き飛ばされている最中のシオマネキに飛び込んだ。
「漆黒の黄金忍者ケンハ・センオウ見参!」
 声高らかに叫びながらシオマネキに強靭な蹴りを叩き込む。蹴りの軌跡が眩い光を放ち、その二つ名に恥じない姿が今のケンハにはあった。
「これでも喰らえ〜なのっ!」
 一つしかない鋏を攻撃に使い、空中で一撃を叩き込まれたシオマネキにキラハーティの放った不吉な絵柄のカードを避けることは出来なかった。
 アカリは後ろに下がったカナメを聖なる光で包み込む。光を浴びた『蒼龍閃』が青く輝く。
 シリュウの新たな外装を纏った黒い長剣とカナメの光を纏った蒼い鋼糸がシオマネキの外殻の脆い部分を的確に切り刻む。
「お願いだから大人しくしてくれないかしら、この漁村のみんな迷惑してるしね」
 そう言いながらアイノは生み出した無数の鎖でシオマネキを絡め取る。黒く変色した外殻に食い込むように鎖はしっかりとシオマネキを拘束した。
 キラハーティの闇色の矢が外殻を貫き、確実にシオマネキの体力を削っていく。
 ルシエルの生み出す突風とケンハの投げが連続して決まり、漁村との距離をどんどん開いていく。
「立派な殻もってるじゃない、でもあんたには勿体無いからひっぺがしてあげるわ」
 虚無の手が外殻を剥がし、甲殻類の威厳が奪われる。
 最後の抵抗と言わんばかりに鋏を打ち鳴らし、海から蟹を呼び寄せるが……。
「害はないだろうが、戦闘の妨げになると困るからな、海へお帰り願おうか」
 それすらもルシエルの呼び出した下僕の前にあっさりと蹴散らされ海へ戻されていく。
 一方的な戦いは、なす術もなくシオマネキの敗北で終わった。

●甲殻類と漁師の鍋
「そ、そう言えば、海老さん食べられるんでしょうか?」
 リリムは首をかしげながら手長海老を突付く。
「これはなかなか食い応えがありそうだな」
 その隣にはいつの間にか蟹班のケンハの姿があった。
 シオマネキのほうがほんの少しだけ先に決着がついていたのだ。
「海老に蟹……美味そうだよな……皆で食うのはありか?」
 カナメは呼び出され、未だに戦場に残っていた海老と蟹を眺めながら呟く。
「増援のエビカニを捕まえてご相伴に預かりたいな♪」
 その言葉にナタクは元気一杯、極上の笑顔でそう言った。
「倒した巨大甲殻類は、地元の漁師さんに鍋にでもしてもらいましょう」
 セツナはそう言いながらすでに漁村の方へ駆け出していた。
「倒した海老蟹が食べられるなら漁村の皆さんにも分けましょう」
 シリュウはそう言うと村人達に声を掛けに行く。
「エビとカニを鍋にして食べちゃうの〜っ! 漁村の人達にも食べてもらって元気になって欲しいの」
 キラハーティも元気一杯に村中を駆け回って、参加を呼びかけて回った。
「海老と蟹は鍋料理が最高だと思う、季節的にも」
 ルシエルの言葉に誰もが頷き、準備を始めた。
「でっかい鍋用意してもらって蟹の味噌汁でも作りましょうか」
 アカリは趣味の調理の腕を振るう機会に恵まれたのが嬉しいのか率先して食事の用意を始める。
「いい匂いなの〜っ!」
 戻ってきたキラハーティの目の前には色々な料理が並んでいた。その後ろには匂いに釣られた村人達の姿もあった。
「甲殻類を調理する機会ってのは滅多にないから、この地域ならではの味付けを伝授してもらいたいよな」
 ジェイドはそう言いながら、集まった村人達と海老や蟹を捌き始めた。
「焼いたり茹でたり以外にも色々と調理方法があるから、食べたい物があったら言ってね、手の込んだヤツ以外で」
 アイノも一緒になって料理を始め……さらに料理の種類が増えていく。
 色々な地方の調理方法と新鮮な材料が集まって、小さな漁村で始まった甲殻類の料理パーティは夜遅くまで盛り上がった。


マスター:草根胡丹 紹介ページ
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シュヴァルツェ・キリア(a71164)  2009年11月18日 11時  通報
…実は初の依頼でして、この時はドキドキだったなぁ〜ん。