絶対領域防衛隊



<オープニング>


「ミニスカートとニーソックスの間に真実が存在するのだ」
 一国の王と言われても納得してしまいそうなほど貫禄溢れた男が、壇上で宣言する。
「これより第一期絶対領域拡大作戦を開始する。各員の奮闘を期待する」
 一斉に敬礼する男女は、全員ミニスカートとニーソックスを装着済みであった。

●絶対領域防衛隊
「ある街で大きな商会が極めて強引な活動を開始したわ」
 エルフの霊査士・エスタ(a90003)は深刻な表情で説明を開始した。
 採算を度外視した低価格でミニスカートとニーソックスを販売し、既存の服飾店に大打撃を与えているの。それだけなら問題ない……まぁ私としては大問題だけど冒険者が介入する問題ではないかもしれないけど、この商会は既存の店が全滅させた後にミニスカートとニーソックスの着用を事実上義務化させるつもりなのよ」
 発想が色々な意味で斜め上であった。
「今のところ暴力などは使っていないから実力行使はできないけれど、このままには出来ないわ。商会の本部に潜入して彼等の計画の証拠を掴み、それを明らかにして街の平和を取り戻してちょうだい」

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参加者
還送せし者・アーシア(a01410)
紋章術士の菓子職人・カレン(a01462)
暗黒火竜・デスペル(a28255)
一滴・レイン(a35519)
故意の奴隷・ネンヤ(a36532)
者語・ヤイバ(a63475)
子供好きなグラップラー・ネレッセ(a66656)
黒狐・キオ(a68532)


<リプレイ>

●誘い
「申し訳ありません」
 故意の奴隷・ネンヤ(a36532)を迎えたのは、実直を絵に描いたような支配人が頭を下げる光景だった。
「理由を説明してくださる?」
 わずかに戸惑いを浮かべた瞳を向けると、支配人は心底申し訳なさそうな、それでいて円熟した人格を感じさせる表情でうなずく。
「お客様にご満足頂けるものを用意できないのです」
「(着るものに気合を入れすぎたかしら)」
 品揃えを一瞥したネンヤは事情を察した。
 ミニスカートとニーソックスが中心という極めて独特な品揃えとはいえ、種類は豊富で質もなかなかだ。
 値段は決して安くはないが、長く使うことができることを考えればお買い得だろう。
 ただしそれは量産が前提の既製品としてはの話だ。
 外見年齢二十歳でミニスカートとニーソックスを違和感なく着こなせるファッションセンス、それに加えて大富豪の域まで達した財力まで持つ彼女に見合う品かというと……。
「個人的にはあまりお勧めできないのですが、もしよろしければ」
 商会の全構成員の中で唯一ミニスカート&ニーソックスを身に付けることを拒み続けている彼は、一流のデザイナー(ただしミニスカート&ニーソックスファッション限定)と針子達が常駐する商会本部を紹介するのであった。

●掃除婦は見た
「任務完了……ってやってられませんわ」
 癒しの術の遣い手・アーシア(a01410)はついに手に入れたソレを、無表情のまま床に叩け付け踏みにじる。
 表紙に描かれているタイトルは『第二期布教計画のしおり』。
 持ち主が表紙の隅に描いた少年(ミニスカート&ニーソックス装備)がそれなりに可愛いのがまた腹が立つ。
「なんですのここは! いくらなんでも緊張感なさ過ぎですっ!」
 モップに偽装した金属杖をぶんぶん振り回す。
「ここに来ると性癖隠さなくていいんでどうしても騒いじゃって」
「今日中でいいので第2倉庫の掃除お願いできますか。あと仕事が終わったら是非私と一緒に絶対領域な服を」
 廊下で騒いでいる彼女に、妙にミニスカートが似合う青年達が平然と話しかけてくる。
「絶対領域以外は承知しましたわ」
 アーシアは咳払いをして表情をつくり、掃除担当従業員のふりをする。
 もともとアーシアはハイドインシャドウ奥義を使いつつ秘密裏に調査を行うつもりだったが、各部屋にそれなりに凝った鍵が取り付けられていたため上手くいかなかった。
 だが、正面から「雇ってくれ」と言ったらあっさり採用されてしまった。
「(駄目人間に好んで関わりたがる者は極めてまれ。人手不足が極まっているということですわね)」
 アーシアは作り笑顔で青年達を追い払ってからしおりを回収する。
 このしおりは現場指揮官用のもの。
 これだけでも強硬手段に出るには十分だが、より詳細な証拠があった方が後の展開が楽だろう。
「(私は倉庫に向かいますわ)」
「(了解だよー)」
 商会本部はかなり大きいとはいえタスクリーダー改の効果範囲よりは小さい。
 タスクリーダー奥義を活性渦中の一滴・レイン(a35519)と情報交換を行いつつ、アーシアは効率よく調査をすすめていくのだった。

●防衛隊
「あふんっ」
 絶対領域防衛隊隊長は、幸福と興奮の極みに達して妙な叫びをあげつつ意識を失った。
「隊長!」
「おのれなんてことを! 是非僕にも!」
「私の方が先だっ」
 隊員達は隊長を助け起こそうともせず、血走った目を侵入者に向ける。
「あ、あの……」
 瞳の物語・ヤイバ(a63475)は混乱していた。
 目の前の連中(男女比7:3)のテンションの高さについていけない。
「ボク、ニーソックスのこととかよく分からなくて。このスカートだとニーソックスはどんな色が合うと思いますっ?」
 ヤイバのスカートは艶やかな黒。
 艶やかな銀の狐尻尾との対比は妖艶なほどだが、まっすぐで純粋な瞳はどこか幼げで、ヤイバさえその気があれば傾国にすらなれるかもしれない。
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
「あなたならなんでも似合います。似合いますとも!」
「苦節5年。こんな美少女が自分から絶対領域を展開している場面に出会えるなんて」
 全員それなりに美形または切れ者に見えるが、一人の例外もなく筋金入りの変人達であった。
「(か、風が吹いたら太ももがひやって)」
 ヤイバは囮の役割を忠実に実行しながら、慣れない感覚に対する動揺に耐えるのに必死であった。
 普段はスカートをはかないため足をむき出しにしてしまったような感覚があり、空気の動きが奇妙な程はっきりと感じられる。
 耐えられない訳ではないのだが妙に不安を煽られてしまい、戸惑いと恥じらいの気配をまとうことになる。
「ささっ、良ければ中へ」
「どーぞどーぞ」
「貴様どさくさまぎれにお手に触れるなっ!」
 ヤイバの魅力に参ってしまった連中はさらに暴走する。
「え、えぇ!?」
 本格的に襲撃開始する前に騒ぎを起こすわけにもいかず、ヤイバはされるがままに商会内部に連れ込まれる。
「もう逃げ場はありませんよ」
 入り口を閉めた途端に絶対領域防衛隊の態度が変わた。
 ヤイバの思考は瞬時に切り替わる。
 相手の立ち居振る舞いから反応速度ととりうる行動を見極め、悲鳴をあげさせずに制圧可能かどうか判断する。
「(位置取りが上手い。これでは2人倒した時点で声を)」
 ヤイバは足のバネをため機をうかがい……しかし機先を制せられる。
「屋内は暖かいですし是非新作ミニスカの試着を!」
「是非是非!」
「うんといってくれるまで土下座を止めませんっ」
 態度は犯罪的なものではなく変態的なものに変わったようだった。
「……いいけどね」
 ヤイバは絶対領域防衛隊が出入り口の警戒を完全に放棄して集まってきたのに気づき、頭痛をこらえるためこめかみを押さえるのであった。

●壊滅
「これ以上は……」
 うっすらと涙を浮かべた少女が後ずさる。
 しかし追っ手は容赦せず彼女に追いすがり、部屋の隅に追いつめる。
 先程からずっと聞こえてくる艶やかな歌声が、少女の行く末を示しているようであった。
「やめんかい」
 が、ハリセンのようなもので頭をはたく音が十数回聞こえた後、怪しげな雰囲気は完全に吹き飛んでしまっていた。
「ここまで来て絶対領域やめとは言わへんけどな、それはないやろそれは」
 紋章術士の菓子職人・カレン(a01462)は無造作に広げられていた作戦用地図を回収しながらびしりと指をつきつける。
「ニーソックスとスカートしか換えんてことは絶対領域以外見てないってことやろ? 女を物扱いして楽しいんかい」
 そういう間も証拠のあれこれを回収し続けているが、防衛隊はそれに気付く余裕はなかった。
「うっ」
「僕はなんてことを」
「あっ、あぁぁぁっ」
 基本的に人がいいのかそれとも根本的なところで馬鹿なのか、防衛隊の面々は頭を抱えて行動不能だ。
 その隙をついてカレンは着替えのしすぎで気疲れしたヤイバと共に一時撤退しようとする。
「よくぞ気付いた」
 が、素材は他と同じだが他より頑丈に作られたドアが開き、空気が変わる。
「「「総司令、じゃなくて会長!」」」
「うむ。私も悟った。否、悟らされたのだ。胸によって絶対領域はより力を得る。太ももや身体のラインでも同じことがいえるのだろう」
「「「総司令!」」」
 部下も部下なら上司も上司であった。
「……」
 カレンが「どうなってんの」と目で訊ねると、商会の長にエスコートされているネンヤは無言で肩をすくめた。
 本部に入り込んで籠絡するのはひどく簡単だった。
 冒険者になる前に身に付けた手管と生来の歌声の前には、海千山千の大商人といえど抵抗することは難しい。
 しかし彼の絶対領域に対する思い入れはあまりに深く、魅了された状態でも全ての行動の前提が絶対領域であることは変わらなかったのだ。
「そこまでだ」
 黒曜の邪竜導士・デスペル(a28255)が冒険者であることを隠そうともせずに部屋に踏み入ってくる。
「お前等の企みはもうばれた。証拠も確保済みだ」
 確保しすぎのような気もするが、偽物ではないので問題はない。
「というかお前等」
 デスペルの声が低くなり、酷く獰猛な気配が感じられるようになる。
「男にミニスカートとニーソックスは許されねぇだろ、マジで。手前のヤサでだけやるならいいだろうが、それを都市全体に広めるなんて正気か」
「無論正気で本気だとも。だが言葉では理解はしてもらんだろう。さぁ、来てくれ」
 野望の大商人が自信に満ちた態度で自分が出てきた部屋に呼びかける。
 開いたままのドアから出てきたのは、ウェイトレス風ミニスカメイド服を見事に着こなした長身の男であった。
 全員ノーマルのはずの防衛隊の中から「むしろ男でいい」という声が聞こえてくるほどの似合いっぷりにデスペルは気圧される……訳はなく、そのニーソックス男にうんざりとした声をなげつける。
「何やってんだよ」
「いつの間にか祭り上げられちゃって」
 あははと誤魔化し笑いをする脳天ストライカー・キオ(a68532)に、冒険者を除く全員が動揺する。
 今の今までキオが冒険者であることに気付かなかったらしい。
「君達いい歳しているのに、まだまだボウヤだね! 絶対領域を愛する僕が、絶対領域を汚すような広め方をしようとする君達を放っておくと思ったのかい?」
 キオはとりあえず強引にまとめることにした。
「いーけどよ」
 デスペルは激しい精神的疲労を感じながら、子供好きなグラップラー・ネレッセ(a66656)と共に隊員達を手際よく縛り上げていく。
 これだけ豊富な証拠があれば言い逃れはできない。
 平和的な手段のみで行われる予定だったとはいえ罰は重くなるはずで、商会及び組織の力は大きく減少し再び悪巧みはできなくなるはずだ。
「冒険者諸君、それは少々甘い」
 縄をかけられてもなお堂々とした態度を崩さない大商人は真面目な顔で語る。
「我等の計画は停滞はあっても破綻はない。既に共鳴者と協力者の確保は終わっている。私に続く者達がゆっくりとではあっても確実にことをなすだろう」
 優れた商人としての実績に裏打ちされたその言葉には説得力があった。
「でも商会長さんってクラシカルメイド派でもあるんだよね。それも絶対領域を展開できるようにした変形メイド服専用の」
 ようやく他の面々と合流したレインは、倉庫内の隠し部屋に厳重に隠されていたものを掲げる。
 それは変形メイド服と、絶対領域防衛隊と同種の、クラシカルメイド派の組織の構成員の印であった。
「……」
 沈黙は肯定。
 商会長の態度が全てを物語っていた。
「「「そんな……」」」」
 その日、根絶不可能と思われていた組織が壊滅した。
 原因は精神的支柱の背信行為であった。


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