闇の中のグドン



<オープニング>


●さぁ洞窟に
「グドン退治だ」
 依頼内容は至極簡単なものだった。
 人里から少し離れたところに洞窟があり、そこに犬の頭を持つ、犬グドンが住み着いてしまったのだ。
 被害はまだほとんど出ていないが、近隣の村にとって脅威になる前に、危険の芽は摘み取っておくべきだろう。
「どの程度の広さがあるか判らない。が、敵の数はそこまで多くない」
 まだ一つの集落として機能するほど増えておらず、一集団といった程度である。
「いくつか簡単なトラップを仕掛けているようだな。そこら辺は注意して進んだ方がいいだろう」
 洞窟内は暗いため、単に見ただけではトラップに気づくのは難しいかもしれない。
 また、暗視が可能な弓の名手がいれば、敵への不意打ちも可能だ。
 もちろん、敵が先にこちらに気づき、先手を打ってくる場合も考えられる。
「外と繋がっているとは言え、奥に進めば一種の閉鎖空間だ。しっかり準備して行ってくれ」

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参加者
清浄の白花・リヴァ(a23281)
静観する者・レヴァンテイン(a24400)
深紅の閃撃・スカーレット(a25963)
楓華牙狩人・シノブ(a45994)
生と死の調律者・ケイト(a63733)
白兎姫・シャルロッテ(a69711)
真澄の赤髪・マルフィ(a71102)
なぁ〜んですなぁ〜ん・キリア(a71164)


<リプレイ>

●暗闇の道
 岩と土に囲まれた空間。
 日の光が届かない場所は、ただ暗く、空間の大きさを冒険者たちに知らせることはなかった。
「乗れっか?」
 深紅の閃撃・スカーレット(a25963)は、カンテラを掲げた。
 彼が伸ばした腕から少し離れたところに、灯りを受けた天井が現れる。
「これじゃあ無理だなぁ〜ん」
 残念そうに堅牢の灰色・キリア(a71164)が言うと、スカーレットはグランスティードに待機の命を出した。
「あぁ、どうせ二人っきりで行くなら、女の子の方が良かったぜ」
 愚痴をこぼしつつ、スカーレットは後ろにいる仲間に合図し、彼らに先行して歩きだした。
「待つなぁ〜ん」
 キリアもスカーレットに続いて、暗闇のさらに奥へと向かう。
 洞窟内の道は平坦になっておらず、スカーレットとキリアは、カンテラで周りを照らしながら、一歩一歩確かめるように進んでいった。
「ピョロピョロ〜♪」
 入口からそれなりに進み、まだ分かれ道のようなものは見えない。
 そんな頃、キリアが口笛を吹き始めた。
「なかなか上手いじゃねぇか」
「そうなぁ〜ん」
 当初の作戦通り、グドンを誘き寄せるため、キリアたちは自分たちがここにいることを隠そうとはせず、むしろ知らせるように行動する。
「大勢で来られたら困っけどな」
 言って、スカーレットは豪快に笑う。
 キリアは口笛を吹きながら、今度は持っていた剣で壁や地面を叩き始めた。
 罠が見つかれば、後続部隊の安全性は高まる。
「どんな罠があるん──ッうぉ!」
 言いかけて、スカーレットは踏み出そうとした一歩を咄嗟に戻した。
 スカーレットが今、足を着けようとした場所には、ひざ下まですっぽり嵌るほどの落とし穴があった。
 中をよく見てみると、尖った石がいくつか置いてある。
「まずは一つ目なぁ〜ん」
「へっ、こんな罠に引っ掛かるかよ」
 喜々として口笛を再開したキリアと、薄笑いを浮かべたスカーレットは近くにあった石で目印を作り、さらに先へと偵察を続けた。
「……今何か聞こえなかったかい?」
 スカーレットとキリアから離れ、後続チームとなった内の一人、生と死の調律者・ケイト(a63733)の耳に、洞窟の奥から音が届いた。
「私には聞こえなんだが……。もし何かあれば、助けを呼ぶであろうよ」
 ケイトの言葉に、静観する者・レヴァンテイン(a24400)が反応する。
「確かに、そうだね」
「いつでも駆け付けられるよう、準備だけは怠らぬようにせねばな」
 レヴァンテインにケイトは頷き、周りの仲間も同意する。
「と、忘れぬ内に済ませておくといたそう」
 長剣を構えると、レヴァンテインはそれを使って壁に印を描き始める。描くというよりも、削っている。
「それは?」
「出口へ向かう目印だ。方向感覚がなくなったり、道に迷ったりしたとしても、これさえ見れば出口には戻れよう」
「なるほどねぇ」
 これにより安全性が高められることは確実だ、とケイトは納得する。
 いかに安全を確保するか。それもまた、冒険者に必要とされる能力であろう。

●探索者
「お二人が戻られました」
 清浄の白花・リヴァ(a23281)が、スカーレットとキリアを確認して、手を振る。
「どうでしたか?」
「こっから少し歩いたところに分かれ道だ。今んところ、罠は3つ見つけた」
「了解です」
 報告を終え、再び奥へ進み始めたキリアたちに続き、リヴァたちも進んでいく。
「ふぃ〜、まだグドンには出くわさないね」
「けっこう奥まで続いているんでしょうか」
 真澄の赤髪・マルフィ(a71102)にリヴァが答えていると、少し開けた場所に出た。
「ここですね」
 斥候部隊を務めたスカーレットとキリアは休憩し、今度はリヴァとマルフィが偵察役となる。
 偵察といっても、二人が奥に進んでいくわけではない。
「よし、ちゃんと集中してから召喚しないとね」
 マルフィは言うと、目を閉じ呼吸を整える。
 それに倣ってリヴァも同じく集中を始め、ゆっくりと塩をひとつまみする。
 二人が塩を地面に零すと、それは大きさを変えて輝き、クリスタルインセクトが召喚された。
「行きます」
 二又に分かれた道のそれぞれに向かって、リヴァとマルフィのインセクトが歩き出す。
「護衛は任せあれですよ」
 楓華牙狩人・シノブ(a45994)は、意識を集中するリヴァの前に立ち、無防備な彼女を警護する。
「私もお守りしますわ」
 マルフィの前に立つのは、白兎姫・シャルロッテ(a69711)。
 敵が突然押し寄せても大丈夫なように、道の奥へと神経を集中させた。
 洞窟の中は静かだ。
 冷めた空気と静寂が、この空間を支配している。
「……あ、奥に何か見えます」
 その静寂をリヴァが最初に破った。
「グドン?」
「確かなことは……あ、いえ、グドンです!」
 冒険者たちの表情が変わる。
 分かれ道の探索を始めてから時間はそう経っていない。距離は近い。
 リヴァの報告では、グドンは3体いるようだ。
「うわ、僕の方はまた分かれ道だ」
「予定通り、リヴァさんが見つけたグドンをまずは倒しましょう。敵がこちらに来ても大丈夫なよう、私はここに残りますわ」
「僕は今の場所で待機しておくよ」
「うっし、そんじゃあ行ってくっか」
「行くなぁ〜ん」
 スカーレットとキリアに続き、ケイトが奥へ進む。
 レヴァンテイン、シノブ、シャルロッテは待機だ。
「皆さんを待って、私もクリスタルインセクトで攻撃に参加します」
 そう言って、リヴァがクリスタルインセクトを一歩下がらせたとき、敵に動きがあった。
「き、気づかれちゃったみたいです!」
(「バレちゃったですよ!」)
 すぐさま、シノブはタスクリーダーで、グドンのせん滅に向かった冒険者たちに状況を知らせる。
「ハナっから不意打ちなんざ狙っちゃいねぇ!」
「そうだなぁ〜ん!」
 歩みから駆け足に変わった二人のあとを、ケイトはいつでも回復ができるよう準備しながら駆けた。

●狭き道
「うぉぉぉおおー!!」
 通路から躍り出たスカーレットは、一番近くにいたグドンへ初撃を放つ。
 完全な不意打ちでないにしろ、洞窟で暮らしていた敵にとっては突然の大音量だ。グドンは咄嗟に防御することすらできず直撃を受け、一刀の下に切り伏せられる。
「突攻いたしますなぁ〜ん!」
 スカーレットに続いて、キリアも目標を定めると、大上段から一気に愛剣を振り下ろす。
 哀れ、犬グドンは真っ二つに割かれて倒れた。
「これは、回復するまでもなさそうだね」
 回復できるよう行動を遅らせていたケイトは、リヴァのクリスタルインセクトを攻撃していたグドンに向けて、ニードルスピアを放つ。
 グドンの攻撃によってクリスタルインセクトは破壊されてしまったが、それとほぼ同時にグドンもまた地面に伏した。
「俺サマに勝とうなんざ100億光年早ぇんだよ」
「被害がなくてよかったね。クリスタルインセクトに目が行っていたのが大きかったかな」
「もう戻ろうなぁ〜ん」
「そうだね……敵が来ていないとも限らないし」
 ケイトたちが見たところ、ここは先ほどの分かれ道があった場所より開けていて、もう奥に続く道はないようだった。
 グドンの死を確認して、三人は来た道を戻った。
 意識の集中を解いたリヴァの耳に、マルフィの声が飛び込んでくる。
「ふぃ〜、団体さんのお出ましだー」
 マルフィがクリスタルインセクトを通して見た視界には、少なくともグドンが7体いた。動きも速く、警戒というより駆け付けているといった様子だ。
「幸い道はそんなに広くない。私が通路に立って、敵の進行を防ぐといたそう」
 言うと、レヴァンテインは分かれ道の片方を少し進んだ位置で構えた。
 ウェポン・オーバードライブを発動させ、敵を迎える態勢を整える。
「敵の数が多いようですから、私は回復に専念します」
「あはは、やっぱり簡単にやられちゃった」
 7体以上のグドンから集中攻撃を受けたマルフィのクリスタルインセクトは、交戦して数瞬と持たず破壊された。
「護衛はもう大丈夫ですね」
 シノブはそう言って、レヴァンテインのやや後方で弓を構えた。
 この距離ならば、通路に顔を出した瞬間を狙い打てる。
「ぐるるうぅぅぅーッ!」
 獣のような雄叫びを上げて、大量の犬グドンが通路に押し寄せてきた。
 幅のせいもあって、戦闘の列に位置しているのは、2体だった。
「そこですよー」
 黄色の矢を敵の正面に落とし爆発させる。前方にいた5体のグドンがその爆風を浴びた。
 黄色の矢は、混乱を与えるコンフューズナパーム。
 バッドステータスを受けたグドンは、仲間同士で殴り合いを始める。
「これで時間稼ぎができるのですよ」
「……むっ! さような技は通じぬ」
 殴り合っている仲間を押しやって、弓を使うグドンが攻撃してきた。
 しかし、それを見切って、レヴァンテインは完全に防御する。
「来ました! スカーレットさんたちです」
「ならば、参る!」
 飛び来る矢を避け、素早く接敵すると、無数の針を集団へと打ち込む。
「一気に行くですよー」
 レヴァンテインの攻撃を受けたグドンたちに、今度はシノブがナパームアローを叩き込む。
「お休みなさいまし」
 ダメージを受けることもいとわず、シャルロッテはグドンたちに近づき、その身体から無数の鎖を放出した。
 鎖に捕らわれたグドンは、拘束のバッドステータスを受け、混乱から復帰した者さえ、動きを止められる。
 中には、バッドステータスと関係なく、動きを止めた者もいた。
「回復します!」
 攻撃を受けたシャルロッテを光る波が包み込む。
 敵の目の前でマヒのバッドステータスを受けたとしても、後ろに回復をしてくれる仲間がいれば安心していることができる。
「さっきはよくもやってくれたね!」
 タコ殴りにあった恨みを込めて、ボロボロになったグドンの集団にマルフィがエンブレムシャワーを撃ち、この戦闘は終わりを迎えた。
 結局、この戦闘で倒したグドンの数は8体だった。

●帰還者
「これで最後なぁ〜ん」
 三度目の分かれ道の両方でグドンを発見した冒険者たちは、片方ずつせん滅して行き、今、最後のグドンが倒れた。
「道はもう続いていないようですね」
 リヴァがホーリーライトの灯りで周りを照らしてみる。
 どうやらここが、終着点だったようだ。
「ふぃ〜、どれくらい奥まで来たのかな」
「広さそれ自体は、あまりなかったと思うよ」
 ケイトはマルフィに言うと、お疲れ様、と頭を軽く撫でた。
 クリスタルインセクトを召喚し、偵察を行っていた二人にかかった負担は、自分のそれに比べて、重いことをケイトは認識していた。
「これで19体目でしたわね」
「合ってるですよー」
 シャルロッテは、グドンの呼吸を確かめ、完全に息を引き取っていることを確認した。
 この空間を見渡すと、グドンたちの寝床があり、彼らがここで生活していたとわかる。
「一所ではなく、それぞれに住居のようなものがあったようですわ」
「うーん、20体以上はいなかったのですね」
 スカーレットたちの報告を合わせ、倒したグドンの数をシノブは記憶していた。
「寝床はあるようですから、数を確認してみましょう」
「そうするですよ」
 二人は他の冒険者にも手伝ってもらい、もちろん新たな敵がいる可能性と、罠の警戒を怠らずに、道の終わりで開けた場所となっている地点を調べた。
 その結果、寝床らしいものは19個あり、死体の数と一致した。
「外に出ていたグドンはいなかったようですね」
「えぇ、これでまず間違いなく、すべてのグドンを倒せましたわね」
 調べ終えた冒険者たちは、一つ目の分かれ道があった場所に集まっていた。
 結果的に、ここと二つ目の分かれ道を挟む通路での戦闘が、今回の冒険で一番大きなものとなった。
「ま、罠は子供騙しみたいなもんしかなかったな」
「良かったじゃないですか、誰も大怪我をしないで済んだんですから」
「だよな、だよな。うん、オレもそう思うぜ。いやー、リヴァちゃんとは気が合うなぁ」
 さり気無くリヴァの肩に手を乗せて、スカーレットは笑いだす。
「無事終わってよかったなぁ〜ん。口笛を吹くなぁ〜ん」
 宣言してから、キリアは再び口笛を吹き始めた。
 昨日までは、静寂が支配し、危険の芽が着々と成長していたこの洞窟も、今では冒険者たちの賑やかな声が支配し、芽は摘み取られた。
「疲れたねぇ……さ、これで終わりかな? それじゃあ、皆、お疲れ様」
 ケイトの言葉に皆が応え、冒険者たちは外界へと戻って行く。
 これで、少なくともこの洞窟に住んでいたグドンによる危険はなくなった。
 人々を脅かす危険は、どこにでもその芽を出す。
 グリモアに祝福された冒険者たちに届けられる依頼は、後を絶たない。


マスター:詩賦 紹介ページ
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シュヴァルツェ・キリア(a71164)  2010年06月27日 03時  通報
私の二度目の初依頼…よく相談したことで、良い成果となって良かったなぁ〜ん。
自信が無かった口笛が上手と言われた時は嬉しかったなぁ〜ん。