ワイルドランララ〜魅惑の巨大キウイフルーツ



<オープニング>


●ワイルドランララ
 とあるヒトノソリンの青年は、物憂げに空を見上げて呟く。
「もうじき、ランララだなぁ〜ん」
「おにーちゃん、ランララって何なぁ〜ん?」
「ランララはランララなぁ〜ん。ランララ祭なぁ〜ん」
「お祭りなぁ〜ん!」
「お祭りなら宴会なぁ〜ん!」
「おまえ達にはまだ早いなぁ〜ん!」
「おにーちゃんケチなぁ〜ん!」
「何で早いなぁ〜ん?」
「ランララは恋人達のお祭りなぁ〜ん。愛しいあのこと甘い一時を過ごす時間なぁ〜ん」
「甘いのなぁ〜ん?」
「お菓子のお祭りなぁ〜ん?」
「美味しそうなぁ〜ん!」
「その甘いじゃないなぁ〜ん!」
「どの甘いなぁ〜ん? 甘いのは美味しいなぁ〜ん」
「ランララやりたいなぁ〜ん」
「お菓子食べたいなぁ〜ん」
「甘いお祭りやるなぁ〜ん! 村長様に相談するなぁ〜ん♪」
「だからちがっ……なぁ〜ん!」
 一目散に走っていくちびっこの背を、青年はただ見送るのであった……

 そんな会話があって暫く。
 『甘いお祭り』の噂は、いつしかヒトノソリン達の間に広がり、話題騒然。
 それはやりたい。うちもうちも!
 ……と、話はどんどん広がって、ついにはヒトノソリンの国をまるっと巻き込むことに。食うや歌えの大好きなヒトノソリンに反対する者などいるはずもなく、そこかしこの集落で『甘いお祭り』の準備が進められることとなった。
 さぁしかし。
 『甘いお祭り』なら、甘い物が必要だ。
 いつも通りまんもー肉が出てくる気もするが、やっぱり主賓は甘い物。甘い物といえばお菓子。お菓子を作るには材料が必要だ。
 それに、お祭りに使うくらいだ、結構な量がいるに違いない。
 そこで、各集落の代表は巨蟹の聖域に集い、長老達と額を寄せ合って相談。
 その結果。
「手分けして取って来るなぁ〜ん」
「それがいいなぁ〜ん」
「しかし、中には危ない場所もあるなぁ〜ん」
「じゃったら、もうちょっと人手が欲しいなぁ〜ん」
「同盟の冒険者さんに手伝ってもらうのはどうじゃなぁ〜ん?」
「おお、それがいいなぁ〜ん」
「そうしようなぁ〜ん」
 ということになった。

 そして今、それら材料集めのお手伝い依頼が、ヒトノソリンの長老を経て、冒険者各位に伝えられているわけだ。
「何を取って来るかは、各集落の代表から聞いて欲しいなぁ〜ん。皆も楽しみにしておるでなぁ〜ん、どうか宜しく頼むなぁ〜ん」

●魅惑の巨大キウイフルーツ
 その村は近くに沢山のキウイフルーツが自生していた。村のヒトノソリン達は勝手に『キウイフルーツの森』と呼んでいたが、実は100本ほどが群生している『だけ』のこぢんんまりとしたところだ。なによりお手軽で簡単だというので村ではその実を定められた材料とすることにして、さっそくヒトノソリノンの子供から少年少女から妙齢のお嬢さん達や若者まで、皆それぞれに特大の籠を持ってキウイフルーツの森へと出掛けていった。

 ところが出掛けていった者達はすぐに戻ってきた。籠の中身は空っぽだ。
「どうしたなぁ〜ん。まさかここに戻ってくる前に全部食べちゃったなぁ〜ん?」
 村に残っていた大人達がまんもー肉を焼きながらからかうように言う。すると、ヒトノソリンのお嬢さん達が一斉に目に涙を浮かべて首を横に振る。
「違うなぁ〜ん」
「キウイフルーツの森が大変なぁ〜ん」
「猫みたいだけど、もっとお耳がながーくてお目目がクルクルなのがたーくさんいるなぁ〜ん」
「キウイフルーツ、猫さんがゴロゴロしてて取れないなぁ〜ん。近寄るとフーッて怒るなぁ〜ん」
「綺麗な模様が入ってるなぁ〜ん。でも怖いなぁ〜ん」
「キウイフルーツもでっかいけど、猫さんもでっかいなぁ〜ん。中怪獣クラスなぁ〜ん」
「怪獣猫さんに猫パンチされたら、冒険者さんじゃない人は破裂しちゃうなぁ〜ん」
「困るなぁ〜ん」
「なぁ〜ん」
「なぁ〜ん」
「あぁぁああああ、わかったなぁ〜ん!」
 どこまでも続くお嬢さん達の訴えにとうとう大人なヒトノソリンさん達は音を上げた。
「ちょうど、長老様のところに沢山冒険者さんが来てるなぁ〜ん。1人か2人か10人ぐらいならキウイフルーツ狩りを手伝ってくれるなぁ〜ん」
「わかったなぁ〜ん! ほら、みんなでお願いにいくなぁ〜ん」
「子供達も一緒にいくなぁ〜ん、みんなで冒険者さんにお願いするなぁ〜ん」
「なぁ〜ん!」
「なぁ〜ん」

 と、言うわけで冒険者達は巨大猫型怪獣が居座るキウイフルーツの森に出掛けることになってしまった。

マスター:蒼紅深 紹介ページ
 ヒトノソリンさん達の為に巨大キウイフルーツを取ってきて差し上げてください。だいたい1人5個ぐらい取っていただければ皆さん満足してくれるのではないかと思います。荷車とノソリンさんは村で貸してくれますし、お嬢さんがお一人道案内をしてくれます。ルルちゃんという15歳ぐらいの緑耳の女の子です。
 村からキウイフルーツの森までは1時間ほどです。

 巨大猫型怪獣はキウイフルーツの木々に身体をこすりつけたりしつつ、とにかくうっとりとゴロゴロ寝転がっています。眠っているのではなく、酔っぱらっている様な感じです。何もしなければ何もしませんが、不用意に近寄ると怒り出して攻撃をしてくる様です。
 巨大キウイフルーツさえ手に入れば依頼は大成功です。気前の良いヒトノソリンさんですから、きっとお土産にちょびっとだけ、下さるのではないかと思います。

参加者
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)
黒百合と歩む意志・ティア(a34311)
食物連鎖の底辺っぽい・ガルーラ(a39452)
青碧の百合姫・ユリカ(a47596)
ターコイズの護り・フラヒ(a47872)
草原を駆ける戦士・アトレーユ(a66132)
迷える金流・エリス(a66415)
青の運命・スズシロ(a71720)


<リプレイ>

●籠の秘密
 ヒトノソリンの村からキウイフルーツの森までは子供の足でもそう遠くはない。というよりは、村が森のはずれにあるという様な位置関係で村のどこからでも森のどこかが目に入る近さであった。けれどもそこはワイルドファイア。ほんのちょっと先にあるように見えても実はそれは何もかもが桁外れに大きいからに他ならない。
「な、何だか物凄い悪寒がするよー。僕のデンジャラスレーダーが激しくワーニングだよー。ねー本当に行くの? やっぱ猫怪獣の相手は止めにしない?」
 1人びくびくと歩く食物連鎖の底辺っぽい・ガルーラ(a39452)はこの日348回目の作戦中止を口にした。しかし、仲間達はもはやガルーラに声を掛けることも視線を向けることもない。道案内のヒトノソリン、ルルだけはチラリと振り返ってガルーラを見たが、その目は『あなたは本当に冒険者様なぁ〜ん?』と言わんばかりの疑わしげな視線だ。

「ルル……怖いだろうが道案内を感謝する。目的地についたら安全な所に隠れているといい」
 美しい金色の髪と涼やかな青い目をした迷える金流・エリス(a66415)は気遣わしげな様子でルルに言った。視線が定まらないのは風向きを気にしているからだろう。出来れば風下から現地へ向かいたいと思っているからだ。
「やっぱりここは何もかも大きくて懐かしいです。あ、これから取るキウイフルーツってどれくらいの大きさなんですか?」
 乾いて熱い空気、大地、風。なにかもが懐かしくてキュンとなってしまいそうな思いを胸の奥にしまいこみ、ターコイズの護り・フラヒ(a47872)は礼を言った後、ルルへとそう尋ねた。
「あ、それは私も知りたかったんです。なんだかバタバタしてしまって聞きそびれてしまったんですけれど、私達で持ち運べる大きさなんでしょうか?」
 歩きながら黒百合と歩む意志・ティア(a34311)も尋ねる。ここはヒトノソリン達が何度となく通ったからなのか、そこだけ草が生えておらず一本道となって森へと続いている。
「こーんな位の大きさなぁ〜ん。普通は3人で組になってよいしょって運ぶなぁ〜ん」
 淡い緑色の耳を揺らし、ルルはニコニコしながら両手をいっぱい広げてキウイフルーツの大きさを表す。それは明らかに背負っている籠よりも大きい。
「これには入りませんわね」
 ルルと同じサイズの籠を背負っている青碧の百合姫・ユリカ(a47596)が不思議そうにつぶやく。
「じゃどうしてこんな籠、用意してあったのよ! みんな背負ってるけど、全然役にたたないんじゃないの?」
 想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)は目を丸くした。いかにも持っていけという風に荷車の横に人数分の背負い籠が用意されてあったのだ。
「気分なぁ〜ん。これを背負っているとフルーツ狩りに行く気分が盛り上がるなぁ〜ん」
 ルルが笑顔で答えるとラジスラヴァはこめかみに手をやり、あっそう……とつぶやいた。さすがワイルドファイアのヒトノソリン……一般人からして一筋縄ではいかない面白おかしい存在だ。
「……道理で。村のヒトノソリン達がこれを貸してくれるはずだ」
 エルフの・スズシロ(a71720)はルルが連れているノソリンの背と、そのノソリンが引く荷車の上に視線を向ける。荷車の上にはルルが背負っている籠よりも10倍ぐらいは大きなものが5つ無理矢理くくりつけられ、ゆらゆらと揺れている。
「……こっちも積んでおいてよかったね」
 草原を駆ける戦士・アトレーユ(a66132)も荷車の上を見つめてそっとつぶやく。背負い籠はファッションでもこちらの巨大籠は役に立ってくれるだろう。だが、それもキウイフルーツを首尾良く入手出来ればの話だ。
「見えてきたなぁ〜ん」
 ルルがまっすぐ指をさす。もうキウイフルーツの森は目と鼻の先であった。

●キウイフルーツの魔力
 最初に行動し始めたのはティア、ガルーラ、そしてユリカの引き付け役であった。
「あれなんかどうでしょうか?」
 ティアが指さしたのはキウイフルーツの森の中でもまばらに生えている辺りであった。怪獣と言ってよいサイズのどデカイ猫が1匹、木の根元で寝そべっているが他にはいない。
「本当にいくの? 止めようよー」
 種族的な警戒が絶えず警告を送ってくるのか、ガルーラの足はガクガクと震えている。
「大丈夫です。私だけ行ってきますからユリカさんとガルーラさんはここで待っていて下さい」
 ティアは優しく微笑んだ。そして1つうなずくと身を翻しキウイフルーツの木の根元へと軽やかに走っていく。
「……ティア、さん」
 ガルーラはティアの背――小さな白い翼が揺れる遠ざかる背を見つめ……ギュッと拳を握る。ユリカはそれを慈愛の表情で無言のまま見守っていた。

 キウイフルーツ収穫担当の者達は引き付け役とは別行動となり、風下側から木の傍へと移動しつつあった。背負い籠とルルは森の外れで荷車と一緒に留守番だ。
「……駄目か」
「僕もだ。これは使えないね」
 スズシロとアトレーユは『ハイドインシャドウ』を使って移動しようと試みるが、怪獣達に気付かれないよう注意を払いながら行動するとすぐに効果が切れてしまうのがわかった。
「木の陰を伝って、なんとか行けるところまで行きましょう。こちらです」
 フラヒがアトレーユとスズシロに手招きをする。この辺りはキウイフルーツの木が密集してはいないので大変だが、標的となる猫怪獣は1匹なので、風下でしかも背を向けている方角からならば少し大胆に移動しても気付かれないだろうと予測していた。
「これ以上は……無理か」
 エリスは木陰からそっと身を乗り出す。猫怪獣の毛皮に彩られた美しい紋様がもうはっきりと見える程だった。これ以上はいくら風下でも臭いや物音、気配で察知されてしまいそうだ。
「ギリギリまで進んだんだから、後はあっちの成果を待つしかないわね」
 低く囁くような声でラジスラヴァが言う。ティアの説得……或いはガルーラの囮が成功すればすぐに動けるよう待機するしかない。

 ティアは歌の効果範囲内に猫怪獣を捉えている事を確認してから歌い始めた。効果範囲は変わることがないのだから身に染みてわかっているが、やはりワイルドファイアの何もかも大きな場所では多少その感覚が掴みづらい。何度も確認した後ようやく『歌』を歌い始めた。猫怪獣はピクリと普通の猫よりもやや長い耳をピンと伸ばし、その後顔だけをあげてティアへと向けてきた。
「私達に敵意はありません。少しだけキウイフルーツが欲しいんです」
『わかったぁ〜好きなだけぇ〜持っていくとぉ〜いいよぉ〜』
 猫怪獣は間延びしたような返事をすると1つあくびをしてまたごろりと横になった。
「成功ですわ」
「やった!」
 離れて見ていたユリカとガルーラも喜び出し、それから慌てて待機しているだろう仲間達へと大きな声で叫ぶ。
「猫さん、了解してくれたよ!」
 キウイフルーツの森にガルーラの声が響き渡る。

「いくぞ」
 エリスは土にかりそめの命を吹き込み、小さなしもべを召喚する。腰の位置よりもよりも小さな下僕は顔をあげ、己の主であるエリスを見上げ指示を待つ。
「この布を持っていてくれ。俺は木に登る」
 エリスが大きな布を渡す。
「僕も登る。上からロープを降ろすから大きな籠を……って無理かも。そのまま落とすから怪我しないでね」
 手足に粘り蜘蛛糸を巻き付けたアトレーユはするするととっかかりの少ないキウイフルーツの木を登っていく。
「落ちてきた実をどうやってルルさんのいる場所まで運ぼうかしら。いっそ転がしていった方が早いかも」
 籠に詰めて移動しようと思っていたラジスラヴァだかが、この大きさでは詰めるのも大変だし二度手間になりそうだ。
「いくよ」
 そうこうしている間にもアトレーユは最初の実に取りかかっていた。声とほぼ同時に巨大な楕円形の実が落下してくる。ドーンと地響きが起こり寝そべっていた猫怪獣がぶるっと身を震わせた。
「俺が運ぶ」
 スズシロは大きな実に簡単に縄を掛けるとグランスティードに騎乗し実を引いて走り出した。
「お願いします。私は……えっと、あの次の実を運びます」
 フラヒは最初の仕事をスズシロに譲り次を待つ。程なくエリスが実を落とした。実は下で待ち受ける下僕達が広げた布の上に落ち、先ほどアトレーユが落とした時の様な衝撃は起こらない。
「これ、いただいていきますね」
 下僕達に会釈しフラヒは巨大なキウイフルーツを巨大な袋に入れ、引っ張っていく。
「じゃ次の実はわたしが運ぶわね」
 ラジスラヴァがキウイフルーツの木を仰ぎ見る。アトレーユとエリスが枝を伝い、大きな実へと移動している様子が手に取るように分かる。作業を順調でこのままならば何の問題もなく終わりそうだ……そう思えた。

●猫怪獣のめざめ
 12個めのキウイフルーツが地面に落ちる前にエリスが召喚したしもべの1つが土に戻った。バランスを欠いてピンと腫れなくなった布の上に落下してきたキウイフルーツが重なりズドーンと激しい音を立てる。猫怪獣は素早く起きあがると、フーと威嚇の声をあげアトレーユとエリスがよじ登っているキウイフルーツの木に飛びかかり、突進した。華麗で重力を感じさせない跳躍はすばらしく、キウイフルーツの木の真上から猫怪獣の身体が落ちてくる様だ。
「わー」
「む、無理だ」
 その俊敏な動きと衝撃にアトレーユもエリスも木にしがみつくことも出来ず、身構える暇もなく木から吹き飛ばされた。数メートルも飛ばされ……けれどふかふかの暖かい何かがクッションの様に2人の身体を抱き留めた。
「助かった〜ってあれ?」
 アトレーユは暖かくて柔らかい毛皮に苦労しながら体勢を立て直そうとする。
『ミャギャ』
 頭の上の方から降ってきた鳴き声は……別の猫怪獣であった。可愛いいがでっかい目玉が不意に飛び込んできた2人を見つめている。
「逃げるぞ」
 エリスがアトレーユを巻き込んで飛び降りようとする。だが、猫怪獣の素早さが勝った。地面に着地する寸前、2人の身体は猫怪獣の巨大な肉球にはねとばされる。
「うわーーー」
「っつ……」
 もの凄い勢いで上に飛ばされ、更に横にはじき飛ばされる……どうやらお手玉の様に遊ばれている様だ。

 同じ頃、運搬係達も別の猫怪獣に見つかっていた。
「こないで! 来ないで下さい〜」
 巨大キウイフルーツを引っ張りつつ、グランスティードに騎乗したフラヒは泣きそうな声で猫怪獣に向かって叫ぶ。戦って勝てない敵ではないと思うが、出来れば戦いたくはない。キウイフルーツの森をルルが待機するのとは別の方角へと闇雲に走る。

「仕方ない……か」
 グランスティードを止め、スズシロは追ってくる猫怪獣に向かって両手剣を抜く。その剣を自在に動かし不思議な剣舞を舞った。猫怪獣の動きが止まり、その場にうずくまる。

「悪いけど、寝ちゃってね」
 ラジスラヴァの歌で猫怪獣はすぐさま眠りに落ちる。
「困ったわね。もっと美味しそうな餌でもあったら良かったかしら?」
 これから餌を用意するのも、場所を確保するのも時間が掛かりすぎるだろうか? ともかくラジスラヴァは今運んでいるキウイフルーツで満足してくれないかとルルに尋ねてみるつもりであった。

「あ! エリスさんとアトレーユさんが……!」
 飛び出していこうとしたガルーラを誰かが後ろから引き留めた。きっとユリカだろう。心優しい彼女は危険な場所へと進もうとするガルーラを見過ごせなかったに違いない。
「ごめんなさい、ユリカさん。でも僕は……怖いけど、僕だって冒険者なんだよね。だから……」
 ツンツン、更に突かれるがこれが刃物の切っ先の様でちょっと痛い。
「だからユリカさん!」
「わたくしはこちらですわー」
 全然別の方角からユリカの声がする。けれどもうガルーラには聞こえていなかったかもしれない。目の前には巨大すぎる猫怪獣の肉球と鋭い爪しか見えない。
「えーーー」
 パニックに陥ったのか、何故かガルーラのとさか部分がぴかーーー! と眩しく輝いた。惰眠をむさぼっていた様な別の猫怪獣も上体を起こしガルーラを見つめる。
「ひ、ひいえええぇぇぇ! イリュージョンステップも使わずにスーパースポット……」
 ザシュっと猫怪獣の右パンチがガルーラに炸裂した。そのまま赤っぽい毛玉の様な物体はコロコロと転がっていく。その後を猫怪獣達が次第に数を増やしながら追っていく。

「すみませんが、他の皆さんを説得してくれませんか?」
 再びティアに魅了された猫怪獣がキウイフルーツの木から降りてくると、ティアはそう頼み込んだ。ラジスラヴァもフラヒもスズシロもキウイフルーツの実を運搬中でここにはいない。自分が何とかするしかない。
『いいよぉ〜でもわからないよぉ〜』
 気乗りしなさそうな返事を返し猫怪獣は仲間達の方へと向かっていく。

「籠にも荷車にもいっぱいなぁ〜ん。これで帰るなぁ〜ん」
 ラジスラヴァとスズシロ、猫怪獣を振り切ったフラヒが実を届けるとようやくルルは笑顔でそう言った。
「よかった。これで村に戻れますね。あ、まだ食べちゃ駄目ですよ、ルルさん」
「見つかったなぁ〜ん」
 フラヒにたしなめられ、ルルはてへっと笑った。

 まだどこかで複数の悲鳴も聞こえてきていたが、ヒトノソリンの村には7つの巨大キウイフルーツが運び込まれ、なんとかランララ聖花祭に間に合いそうであった。また冒険者達には感謝の気持ちを込めて、村では歓迎の宴が開かれそこで思う存分キウイフルーツが振る舞われたのだった。
 尚、ボロボロになったガルーラがキウイフルーツの森のはずれで発見されたのは、宴が終わった翌日の事であった。


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参加者:8人
作成日:2008/02/13
得票数:ほのぼの8 
冒険結果:成功!
重傷者:食物連鎖の底辺っぽい・ガルーラ(a39452) 
死亡者:なし
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