≪萬楽≫叩いて割ったらナニが出る?!



<オープニング>


「ほほう、これはこれは」
 立派に育った餅だった。
「そう、今を去ること数千億万年前」
 既にナレーションが破綻しているのが萬楽らしいと言えばその通りで。
 空気読まない・ゼソラ(a27083)のアピールの時間に居合わせた者達は何事かと彼女の周りに……。
「うを!?」
 食べかけのリンゴを取り落として呆然と見つめている者。
「どうかしました……」
 途中で言葉を飲み込んで固まっている者。
「えっへんです」
 ゼソラが持ち込んだ『物』は、ドデカイ木の箱に入っていた、これまた大きな『餅』だった。
「あ、いや、褒めてないから」
「うん」
 胸を反らせるゼソラに一応突っ込んでおく人々。
「ところで、この巨大な餅、どうするんだ?」
「うふふふふ〜そこはそれです」
 ほくそ笑むゼソラ。何かを企んでいるだろうと言うことが、非常に判りやすい。
 だが……。
「それ?」
 微妙に団員との会話が成立していない。
 人間、意思疎通を行うにはきちんと対話した方が良いよと言う見本がそこにあった。
「楽しむ為に見つけて、持ってきたに決まってるじゃあーりませんか!」
 シャッと、明後日の方角を指さして決めるドリアッドだが、周囲の反応はもっぱら左から右に流しているような感じな上に……。
「へぇ〜」
 間髪入れずに相づちだけ。しかも、何の感慨もない棒読み口調だ。
「……さって。それでは皆の衆。この餅を優雅に武器など使わずに食しようではあ〜りませんか!」
「……武器?」
 念のために、包丁を見せてみる一同。
「イエ〜ッス!」
 それも勿論ですと静かに笑顔の圧力を示すゼソラ。
 と、言う訳で。
 何処から入手したのかは知れない謎の巨大餅と格闘することになる昼下がりであった。

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参加者
笑顔中毒者・エルゲス(a12525)
蒼い槍の人・ジン(a19307)
獣神サンダー・ライガ(a24742)
家族と歩む虎の人・ゼソラ(a27083)
黒百合と歩む意志・ティア(a34311)
月のラメント・レム(a35189)
光纏う白金の刃・プラチナ(a41265)
慈愛の聖母騎士・ニーナ(a48946)
銀之刀匠・クオン(a65674)

NPC:鉄拳調理師・アンジー(a90073)



<リプレイ>

●戦場にかける食い意地!?
「食いしん坊の俺にとっちゃ最高の代物ですなぁ! と言う訳で、一杯食って、一杯楽しみましょう!!」
 エイエイオーと、腕を突き上げて叫ぶ笑顔中毒者・エルゲス(a12525)の横で、
「さぁ。殴る・蹴る・えろげすたんで粉砕と行きましょう!」
「……」
 空気読まない・ゼソラ(a27083)の一言で、膝を大地に屈するエルゲス。その頬には、何故今回もソー呼ばれるのよと言う、世の理不尽とか色々な何かへのアレが一杯詰まった汗が目から一杯流れている。
 そう、心の汗が。
「大きなお餅ですね。これだけ大きければ、とても食べ甲斐が有りそうです」
 たおやかな笑みを浮かべて、銀の刀匠・クオン(a65674)がゼソラを見て……。
「出所不明、混沌の気配を感じるのは……この旅団ですから」
 さらりと続けた。
「あなたも……成長されましたね……」
 光纏う黄金の刃・プラチナ(a41265)がクオンのその言葉を聞いて評しているのは微妙なような……。
「之って、全員で食べきれる量じゃないような気も……」
 加えて、中にナニか入ってそうですよね? と、クオンと共に微笑むプラチナ。
「普通なら餡子とかでしょうけど……モンスターとか?」
「……ああ」
 小首を傾げるプラチナ、相づちを打つクオン。
 少女達が笑顔で話す内容にしてはヘビィで何処か間違えていそうな内容だが、そこはそれ。矢張り、クオンの言う通りなのだろう。
「今からガンガンいきますか♪」
 とても素直に、団長の発令を聞いているのは鋼鉄の刺客・ニーナ(a48946)達、一部の旅団員達。
「砕き方はお任せするとおっしゃいましたし、ここは『大岩斬』をメインにしてガツガツ砕きます!」
 腕まくりで、餅と対峙するニーナ。
 見上げんばかりの巨大な餅を見上げ、矢張り感じずにはいられないのは、何処から持って来た物かという不思議だが、それ以上にニーナには深く思う事がある。
「大きな餅ですのねー……これだけ食べたら、しばらくお腹一杯になりますね……出来るだけ沢山食べるとしましょう……結構、苦労すると思いますが……」
 苦労するとは、食べる事がなのか、砕く事がなのか、はたまた食べた後がなのか……微妙に判断に悩む呟きを残して、餅に向かって構えるニーナ。
 彼女の直ぐ後では、黒百合と歩む意志・ティア(a34311)と大福のエンブ・レム(a35189)が互いに顔を寄せている。
「こんなに大きなお餅、どうやって作ったんでしょうか……不思議です」
「何で素手なんでしょうか。ティア様や私のようにか弱い女の子だけでも、武器持参しても良いじゃないですかー」
 少し頬を膨らませているレムの背後に、実体を見せずに忍び寄る虎の影。
「さて、このお餅、どうやって砕きましょうか? ルドヤードは家に置いて来ましたが……体力には自信が無いですし」
 家に置いてきた武器を思い出すティア。でも、呼んだら来ちゃう用にも出来たかも知れないのはオフレコかも知れない。
「……うーん。中々手強そうですね」
 と、言いながらもレム達の餅への攻撃力はなかなか素晴らしい物がある。攻撃力と言うと聞こえが悪いのだが、要するに魂込めて餅を砕こうとした時の彼女達の魂の力が色々な力となり、素晴らしい状態になると言うだけの話だ。
「とりあえずは砕けるみたいですし、この調子で砕いていきましょうっ! 破片が飛び散る等でのお怪我があれば『ガッツソング』で回復を」
「はいっつ!」
 回復、そして破片での反撃と聞いて、何故か餅が強敵に思えてくる一堂だが……。
「まぁ、そんなことは置いといて」
 言った本人、レムが流して続ける。
「とりあえず、お餅を破壊……もとい、食べやすいように砕けば良いのですわよね。遠慮なんて要らないのですわよね。それはもう、ストレスを発散するが如く……」
 色々あるのだろう。
 例えば、ここに来る前に物陰に虎の人に腕を引っ張られてホッペタにスリスリされて『若い娘の肌はええのぉ』的に、男がやったら間違いなく犯罪な親父発言をされていたとか〜である。
「うふふふふ〜〜堪能させて頂きます」
 キラーンとか。ゼオルの人の目が輝いたような気もする。
「灰になれーーっ!!!」
「えいっ!」
 全ての重圧を解き放つが如く、レムとティアの気合いが響く。
 そして、その向かう先には……。
「お餅齧り〜♪」
 いきなり、直に齧りついているエルゲスが居た。
「!! 自殺行為だって分かってるよ? でも、こういうのは一人ぐらいやらないと始まらないじゃん、ねぇ? ねぇ!?」
 何か言う前に逃げようよ、的に。
 見事に餅と共に撃滅の憂き目になる武道家だったが、彼の前にすっくと華麗に登場、誤字戦隊誤字ブルー・ジン(a19307)。
「忘れた頃にやって来る。それがジンちゃんだ。餅食う為に、今復活!」
 とうっつ! とか聞こえた気がするのはエルゲスの走馬燈だったのかも知れないが、最近ご無沙汰気味だったジンが巨大で硬そうな餅を前に驚きつつ見上げて……。
「と言うか、我がマスターゼソラちゃんよ、喰えるんですか? コレ……?」
 爽やかな笑顔で振り向いた所に、少女達二人の熱血必中の攻撃が殺到する。
「!!」
「!!」
 ジンとエルゲス、非常に愉快な犠牲者を出しながら、ティアとレムの一撃が餅に命中する。
「もーちー♪ もーちーだー♪」
 仲間達の尊い犠牲を尻目に、ふっと黄昏れてみるセクシャルスナイパー・ライガ(a24742)。
「……まぁ、アレだよね、お餅にツッコミ入れるのはさ。何ていうかもう、今更?」
 彼的には、巨大な物にそう言う事をするのは、もう今更なのだそうで、取りあえず食べれる物は頂きましょうという前向きな精神で拳を構える武道家のライガ。
「其のまんま焼く訳にも行かないし……『爆砕拳』で砕いて行きましょう」
 建造物ではないので、流石に効果は無いだろうものの、今回の任務に『爆砕拳』は外せないだろうという心意気で挑むライガ。
「それでは早速、切り崩すと致しましょうか」
 周囲に茣蓙を敷いて、砕いた餅が飛び散って落ちても汚れないようにと心配りをして挑むクオン。心細やかな配慮で……それでも餅へは『サンダークラッシュ』。
 有る意味、問答無用である所のギャップが主婦のシビアさを感じさせてくれる。
「素手『エンブレムブロウ』三十発! 全力全開でいくよ!」
 暫く観戦中だったプラチナが餅へと向かい合う。
 中々面白そうな開幕で、既に戦死者(嘘)二名が出ているという状況で、プラチナの笑みにも極上の何かが宿りそうだった。
「……そこっつ!」
 常とは異なる気合いで、全体を視ていたプラチナの瞳が細められる。
 見る限り、防御力の薄い、強度の低そうな所に一点集中の『エンブレムブロウ』で全力攻撃。
 果たして、餅に防御力があるのかという突っ込みは彼女の頭の中で無視されて消えていったのだが、中に何か入っているならと、傷を付けないように一応注意しているクオンとは違い、プラチナの攻撃は熾烈を極めている。
 餅を砕いているだけなのに、何故かチュドーンとかドガガガガガガッツとかドンガラガッシャーーンとか。
 最前線の屍累々の戦線を彷彿とさせる、攻撃音が響き渡る旅団である。
 時々、休憩に席を外す者が出る位で、それがエルゲス、ジン、ライガ以外の時は何故かゼソラも一緒に姿を消しているのがお約束と言えばそれまでだが。
「これしか手はないだろ!」
 食いしん坊さんのパワー全開で、エルゲスは『爆砕拳』を連発で叩き込んで表面を砕いた後、高らかにその脚を振り上げる。
「『疾風斬鉄脚』で、ドドーンと一気に内部も砕きましょう!」
「久しぶりに動いたんで、感覚を取り戻す為に動きまくりましょう!」
 餅相手に。
 それぞれの必殺技を繰り出すエルゲスとジン。
 ひたすら『薔薇の剣戟』で攻撃を繰り返すジンの周囲には舞い飛ぶ薔薇の花びらが赤い雪のように降り注ぎ、エルゲスに至っては閃光を描く脚の軌跡が鳥籠の如く幾筋も幾筋も描かれていく。
 餅への攻撃の手を緩める際には、休憩がてらふっ飛ばした餅の欠片を集めて、料理人組の所に運送ーするエルゲスは、欠片を手頃な大きさになるまで天然石叩き割か瓦割りかと言う風情で両拳の餌食と化していく。
「……布……?」
 レムが休憩に入り、クオン達が餅を切り刻んでいた時だった。何か、手応えの異なる部分に攻撃が当たった事を感じたクオンが手を止めて、中をまじまじと見つめると、そこには一着の着衣が丁寧に折りたたまれ、清潔な布に包まれた状態で、空洞の中に納められていた。
「……いえ、衣……」
 何故こんな物が? と、疑問に思いつつ、回収するクオンは、この服が何者かの手により餅に設けられた空洞に納められていた理由を考えた。
「……判りませんね」
 あっさりと、考える事を放棄する。それよりもと、恐る恐る調理組で働く鉄拳調理師・アンジー(a90073)を見るクオン。
「……いけません……彼女にだけは着せてはならないと、頭の隅で警告が……」
 袂で隠すようにして、ドキドキと破砕音の響く中を移動する。
「……これ、誰に着て頂きましょうか?」
 不気味な物だから捨てるという、そう言う選択肢はクオンに無かった様子である。再利用精神に富んだお国柄とでも言うべきか……だが、余りに不振な動きは仲間達に見透かされていた様子で……。
「きゃっほう☆」
 と言う、謎の叫び声を上げて虎の人がお餅目掛けて突っ込んでいく横を抜けたクオンを、大根を摩り下ろして準備していたプラチナが見逃しはしなかった。
「醤油をたらしたものに、熱々のお餅を付けて食べると美味しいんですよ〜」
「自分は料理に自信がないのです、えっへん!」
 砕いた欠片を持ち込んで、美味しく料理して貰おうとしていたエルゲスも、他の人間の分にも手を出しながら何事かと覗き込んできた。
「Break Out!!」
 笑顔で親指を立てて言うジン。
 エルゲスが一足お先に餅を頬張っているのを見て、唖然とするジンの手の上から、早速受け取った餅をアベカワ指定で調理をお願いするエルゲス。
「待て……」
「食いしん坊だもん、てへ♪」
 男に、男が微笑まれても何も嬉しくないだろう。
 ……多分。
「さて、調理方法だが……」
「スルー?!」
「オムレツに混ぜる、チーズと一緒にして食べる。喰い方は色々あるな。まぁ、思いつく限り作り喰う。アベカワもこちらに」
 エルゲスの営業スマイルも満点の媚びを左から右に流して、発注に移るジン。有る意味では、彼もエルゲス同様に我が道を突き進んで道を造ってしまう人のようで。
「早いな二人とも……エルゲスのそれは……」
 一寸突き指した気がするライガが惨状を見る事をすっぱりと回避して参上していた。加えて、誰も指摘しなかったエルゲスの頭に出来たお餅のようなこぶを指摘してしまう。
「んー? なに?」
 爽やかな、実に爽やかな表情で返すエルゲス。その表情では、かつて彼がハンマーであった過去は何処かの押し入れに忘れてきた様子だ。
「ん〜〜甘露、甘露ですよ〜〜」
 ゼソラは今日は人一倍、破壊と殺戮と調理とうっふんに精を出している一人だったに違いない。
 その証拠に、今も丁寧に「あ〜ん」とティアを抱っこしながら、食べさせている物は甘い、甘い善哉だ。
 ティアの手には焼いて海苔を巻いた物に少々の醤油を垂らした物が皿に積まれて、ゼソラに食べさせる為に準備されて今か今かとその出番を待っているのだが……ゼソラはそれを許してくれそうになかった。
「はいはい〜次はジンちゃんとエロゲスたん……んー? ふーふーしてからあーん?」
 小首を傾げ、蠱惑の笑みを浮かべるゼソラに、抱かれたままのティアの頬が一寸赤くなってふくれた気がする。
「……頑張れ! 私、優しいので心の底から応援しています……してました……うう……」
 塩を振って炙った餅を食していて、思い出して泣き始めるレム。
「ま、ほれ。これでも食べて」
 お汁粉をそっと出して肩を叩くアンジーだったりする。ずんだ餅も次にと言われて、少し浮上するレム。
「お茶が入りましたよ」
 お茶の種類を色々用意しているプラチナがそれぞれに勧めているのは寒暖含めて緑茶や烏龍茶と取り揃えて皆に配っていく。
「御餅や調理した物をお持ち帰りとか出来るんでしょうか……?」
「そうですよ〜」
「焼き餅はカリカリしてておいしいですわねー」
 遠くからプラチナに返るゼソラの声に重なって、ニーナは噛み締める餅のほんのりの温もりと表皮の固く焼き上がって歯応えの良い噛み締め具合と、少しの焦げ目にあう醤油の甘辛さが口の中で広がっていた。
 とある荷物を会場より持ち出すに際しては、エルゲスやジンの尊い犠牲とライガの献身があったとは、一部の者達は知るよしもない。
「ゼ、ゼソラさん……あ〜ん」
 ティアが真っ赤になりながら、しかしかなり真剣にゼソラに対している姿を、微笑ましく見ているプラチナ、ニーナ達。
 その手には焼いた餅が積まれた皿があり、次々と仲間達のお腹に消えていく。
「うむ、この焦げ具合がまた……」
「固い部分も、また美味しいんですね……」
「そうだろ」
 ライガ、ジンもエルゲス程ではないが中々に餅の料理を楽しんで……というより、限界を超えてきそうな位にまで挑戦し続けている。
「……ふふ」
 床に着く前の日課。
 太刀の手入れをしながら、一日の慌しさを思い出して、小さく微笑むクオン。
 その床の隅には、餅から出て来た謎の服が風呂敷に包まれて置かれていたのだった。
【END】


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