<リプレイ>
●カップル この日は絶好のデート日和であった。 寒いものの風はなく、日が出ていて池の氷はきらきらと輝いていた。 最近ではこんな恵まれた天気でも、ここに遊びに来るカップルはほとんどいない状況であったが、今日はなんと、カップルが四組もいた。
想いの歌い手・ラジスラヴァ(a00451)と赤を継ぐ者・コトリ(a70928)(女同士カップル偽装)が靴を装着し、氷の上に立った。 コトリは黒く長い髪を服の中に隠し、凛々しく男装中。前髪はアップしてなでつける。 「さぁラヴァ、一緒に滑ろう」 ラヴァはきわどい、露出度の高いドレス着用である。靴は滑るために、特別に割った竹を靴底にくっつけたものなので、身長差が出てしまうので、コトリも同じものを着用していた。コトリの方が若干高いだけで、ほとんど背丈は同じほどなのだ。 「ええ、トリィ。今日はあなたのためにお弁当を用意してきたの。食べてくれる?」 「もちろんだよ」 さながら、舞台に立つ役者のように、二人は仲良く滑り出す。 「寒くないかい?」 かいがいしく、薄着のラヴァの肩にコートをかけるコトリ。胸元に抱き寄せると、ラヴァはわざとよろけて抱きつく……。 「ラヴァ……今夜は君の時間を、ボクに預けてくれないかい?」 テーマとしては『ややアダルティ』を目指し、濃厚な雰囲気で、二人はノリノリであった。特にコトリは本気で口説きにかかっていた。 (「演技にはリアリティーが必要じゃない? だから本気で口説く! そう、コレは依頼達成の為なのだ!」) というわけで、コトリの熱心さはメンバーの中でも飛び抜けていた。
その横で、あまり離れず、かといって近づきすぎず、滑っているのは、麗しき剣士・シャルナ(a34468)と甘い香雪蘭・フリージア(a40585)(女同士カップル偽装)。 こちらのカップルは男装したりはせず、女の子同士にみえるまま。 ちなみに、こちらはカップルテーマはズバリ、『愛は性別を越える大作戦〜ツンデレチャレンジ』であった。 「べ、別に捕まえてほしいとか、そんなんじゃないのなぁんよ」 照れがあるので口調がまだぎこちない。 滑るのが、ちょっぴり下手で、なかなか思うようにいかないフリージアだったのでシャルナが追いつくのは造作もなかった。 シャルナはそんなフリージアが転んだりしないように、恋人っぽく腕を絡めて寄り添った。小さな微笑みを浮かべつつ。 銀髪のシャルナと金髪のフリージアがそうして並ぶと、見栄えがよい。 そばで仲間たちが繰り広げている熱い芝居(と、本物)に感化され、だんだん乗ってきた。 「この愛は、きっとランララちゃん様もお許し下さるはずなぁん」 きらきらした青い瞳で、付け加える。 「好きになったのがたまたま女の子だっただけのこと。……なぁ〜ん」(シリアスなので『なぁ〜ん』を封印しようとして、失敗した) 「フリージアさん……」 手を握りあい、うっとりと熱愛を演じながら。 (「恋人達のひと時を邪魔をするなんて……許せないですね……」) (「人の恋路を邪魔するモンスターは、グランスティードに蹴られて死んじゃえなぁ〜ん!」) と、モンスターが現れるのを手ぐすね引いて待っている二人だった。
鳥ックスター・タンドリー(a33590)とはぐれ天使中庸派・オーロラ(a34370)(男女カップル偽装)たちのテーマは『ドジッ娘+砂を吐くよーな甘い言葉』だった。 片やチキンレッグ、片やエンジェルと、種族は違えど、羽根を持つ者同士。 「私でよければ喜んで」 と、しなやかに手を差し出すオーロラ。 タンドリーは恭しく彼女の手を取った。タンドリーのほうが背は高いので、エスコートするときに安定感がある。 タンドリーは滑り出す寸前に、周囲に素早く目を走らせる。ここに来る前に一応、村人たちに『モンスター退治を行うので、池には近づかないでください』と、釘は刺しておいたが。娯楽が奪われた村なので、確認してみたのだ。村人たちは言いつけを守っているようで、気配はない。 滑りながら、「君は地上に降りた天使〜♪♪(いや、ホントに天使だし)」と、オペラのような抑揚で歌い上げ、彼女からちょっと離れ出す。 「待ってくださいましーッ!」 お約束通り、恋人同士じゃれ合うように、追いかけあいっこをし、オーロラは「ぃや〜ん」と小さな悲鳴を上げて、氷上で転ぶ。すかさず、タンドリーが滑りより、手を差しのばして助け起こし、ここで決めの一言。 「このまま、二人の時間を氷に閉じ込めて永遠にしたい……」 「うれしいですわ」
リスの尻尾をはやした闇に踊るコッペリア・クーヤ(a40762)と、百合を髪に咲かせた松ヶ枝・ラトゥラーラカ(a62851)(本物男女カップル)。 クーヤは氷の上を滑るのは初めてで、ラトゥラーラカがエスコートしていた。といっても、彼もまた氷の上は初めてであった。だから転ぶときは体を張ってクーヤを守る決意。 (「らぶらぶじゃないと出てこないモンスターか。こういうことでもないとくっついてくれないからなぁ。誘ってよかった」) 普段どんな感じでのおつきあいなのか、察するに余りある独白であった。 「わ?!」 転びかけるクーヤをさっと抱き寄せて、支えるラトゥラーラカ。 「大丈夫かい、クーヤ」 「……ありが、と……頼もしいのね、ララカ。……わ?!」 抱きついた途端、ラトゥラーラカも一緒に転ぶ。 (「へたれ……」)と、クーヤは心の中で呟く。 華麗にとはいかないが、二人はそれでも微笑ましく氷の上で寄り添いながら滑り出した。
氷のモンスターは迷っていた。 あまりにもカップルが多くて、どれから襲ったら良いか決めかねて右往左往していた。 が、このままでは住処である氷の上から、四組はどかないだろうと思い至り、ようやく氷の板は姿を見せることにした。 モンスターはフリージアとシャルナのカップルに近いところに出現した。割って入りたかったのだが、現在二人は手を取り合って密着している状態なので無理だったのだ。 常ならば、巨大な氷の板となったモンスターを見た村のカップルたちは逃げ出すはずであった。が、前衛職であるシャルナとラトゥラーラカが一歩前に出て、他の者たちも円を描くように取り囲んだ。
●氷割り 多少ぶつかった程度では割れない氷をまとっているモンスターはシャルナに向かっていった。一番近いのが彼女だったのだ。 氷壁はそのままフライングボディーアタックをしてきた。まとった氷の重みから考えると、洒落にならない攻撃だが、自虐的な攻撃でもあった。 「きゃあああ」 がっしゃぁんっ。 シャルナの悲鳴と、大きなものが砕ける音はほぼ同時。 「シャルナさん、大丈夫ですの?」 「平気、ちょっとびっくりしただけ……」 オーロラが駆け寄り、シャルナにヒーリングウェーブを施す。音の派手さのわりに、それほどひどい怪我ではない。攻撃力も防御力も、それほどないモンスターのようだ。 他の者たちは素早く周囲を見回した。 「自滅?」 コトリが半信半疑に呟く。 モンスターは自滅を選ぶほど愚かではなかった。 砕け散った破片に混じって、かさかさと何かが動いている。氷の上を、氷に擬態したものが素早く動く上、存在感を消しているので、非常に見つけにくいが。 地這い虫に似ているようだった。つまり……ポピュラーなたとえ方をすれば、ごき○りに……。 これに好意を抱く者は、まずいない。本体を認識した一同に、今まで以上の殺意が走った。 再び現れる氷の壁。本体を守る氷はアビリティで作り出しているようだ。砕けた破片は本体から切り離されると、しだいに消えていくし、池の氷を引っぺがして身体を構築している様子もない。 そんな中。 ラトゥラーラカは最愛の恋人に目線を送る。 (「らぶらぶあたーっく!! いくよ?」) (「え、本当に……いうの……? その、らぶらぶ……」) とまどうクーヤが戦闘中でも手放さない兎のパペットを盾(実はこれは手袋系武器だが)に、無理出来ない、恥ずかしいというジェスチャーをしているが、自分は恥ずかしいとはちっとも思っていないラトゥラーラカは彼女のそれに気がつかない。 ちなみに、愛ゆえに通じ合う(通じ合ってない)目線のみの一瞬の会話なはずだが。 ほかのメンバーも何か『愉快そうなこと』が起きそうだと、意識は一応モンスターに向けつつ、この二人を見守る体勢。 タンドリーとラジスラヴァは香水と粉を氷壁に投げつけ、目印だけはつけておいた。 そしてモンスターに突っ込んでいくラトゥラーラカ。 「らぶらぶあたーっく!」 それに続けて、クーヤが顔を真っ赤にしながら消え入りそうな声で言った。言っているのは私じゃないわ、コトハ(兎パペットの名)よ、という雰囲気で、ニードルスピアを放つ。 ニードルスピアが壁を密に貫いて、粉砕する。 無数の針を回避したしぶとい本体はまたかさかさと氷上を走ったが、初回と違い、唐辛子色がうっすらついていた。 「人の恋路を邪魔すんじゃねー!」 人の足の三倍ぐらいはゆうにあるモンスターを、コトリは竹で強化された靴で踏みつけた。 硝子が砕けたような音がして。 脆いモンスターはあっさりと息絶えた。 「……これで…もう現れないでしょうね。恋人達の邪魔をした報いです……」 シャルナは砕けたモンスターを見下ろした。
●ライティングショー ホーリーライトの明かりが夜の池を神秘的に照らし出す。 冬のデートスポットを奪われた村の人たちのために、冒険者たちからのプレゼントだった。 タンドリーの奏でるリュートの美しい音色にあわせ、八組ほどの恋人同士や夫婦が楽しげに滑っていた。 ラジスラヴァは今度のモンスター退治をテーマにした踊りを氷上で滑りながら披露していた。このあと、これを村の冬の風物詩にしないかと、村長にかけあう予定だ。 綺麗なものや可愛いものが大好きなコトリはそれを一番近いところで眺めている。 池全体を覆う熱い雰囲気に、恋人のいるシャルナはぼそっと呟いた。 「今度は……依頼じゃなく……実際にデートで来たいですね……」 フォーナの祝福受けた相手を思い浮かべながら、今は仲間たちとスケートを楽しむことにした彼女だった。 ホーリライトを頭上に輝かせているフリージアは時々、その光の色を変えながら、氷上を滑っていた。ときどき、転んだりしながら。 「いつかはフリージアも、素敵な恋人とスケートしたいなぁん……。すべての恋人さん達に幸あれなぁ〜ん」 彼らの邪魔にならない端の方で、分厚い氷に丸い穴を開けて、釣り糸を垂らすオーロラ。 「モンスターになる前は寂しい独り身の冒険者だったのか、はたまた、まるでいつもいないかのように扱われていた冒険者だったのか……」 モンスターに思いをはせてみるオーロラ。 池からあがったところの、雪原で雪合戦しているカップルに目をやる。 クーヤとラトゥラーラカ。 「急に雪を投げるのは止めてよ……吃驚するじゃない……」 投げつけられた雪玉に入っていた紙切れを見て、クーヤは頬を染めて、兎パペットでぽかぽかと恋人を叩いたりとかしている。 本体があんな形状だったので、非常にランダムな動きをするカップルのスケーターが嫌だっただけかもしれませんわねとオーロラは思った。 「あら……」 オーロラは当たりを感じて、釣りに集中することにした。この池は何がつれるのだろう?
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参加者:8人
作成日:2008/02/24
得票数:冒険活劇1
戦闘1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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