ハートレス・オア・シンパシー



<オープニング>


「街道沿いにモンスターが出現しています」
 ヒトの霊査士・フェリシア(a90385)は、集まった冒険者たちに説明を始める。
 モンスター三体が街道沿いに出現しており、行き会った旅人や隊商、村などを襲いながら移動しているらしい。
「冒険者様方が今から急いで向かったとして、行き逢う地点はここでしょう」
 フェリシアは、地図上にパシッと駒を置いた。
 そこは、山間にある小さな村だ。モンスターたちは、北から街道を南下してこの村に入ってくるという。
 北から順に位置関係は、住民の家々、集会所、川と橋、畑となっている。どんなに急いで行っても、村に入る前にモンスターを迎え撃つことは不可能だ。
 住民の家々は、十戸ほどありそれぞれの家に一人〜五人ほどの村人が住んでいる。家の大きさはほとんど変わりは無い。もっとも早く着いたとして、ここでモンスターたちと遭遇することになる。
 集会所は、村で一番大きな建物で、村人全員が集まっても余裕があるほどの広さとなっている。
 川とそこにかかる橋は、川幅が10メートルくらいあり、橋は3メートルほどの横幅がある木造りの橋だ。
 畑は、今は農閑期で作物は植えられておらず、平坦でもっとも戦いやすい地形だろう。
 モンスターは、一体目が黒装束の上に胸当てをつけた姿をしており、武人に似た攻撃をする。――これを仮に『ダークネス』と称する。
 二体目は、スーツアーマーが意思を持って動き出したかのような姿をしており、重騎士に似た攻撃をする。――これを仮に『リビングアーマー』と称する。
 三体目は、全身を白いマントと布で覆っており、医術士に似た能力を持っている。――これを仮に『クロース』と称する。
 それぞれが、平均的な冒険者二人分ほどの能力を持っているというので、集まった冒険者たち全員でかかれば五分以上の戦いはできるだろう。
「第一目的は、モンスターたちを退治することといたしますわ」
 フェリシアは、優雅に一礼した。
 あえて、村人たちの安否のことを口に出さなかった彼女の心情を冒険者たちは察したが、この時点であえて意見を挟む者はいなかった。
「……了解。目的……三体のモンスターの殲滅……」
 ヒトの邪竜導士・アリア(a90386)は、呟くように言って頷いた。

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参加者
嵐との契約者・ヴィナ(a09787)
冥府の古竜・スライ(a22846)
昏闇紅月・キュリア(a51087)
黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)
時空を彷徨う・ルシファ(a59028)
樹霊・シフィル(a64372)
世界の果てを探しに・フェイディ(a67339)
闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)
NPC:ヒトの邪竜導士・アリア(a90386)



<リプレイ>

●ラッシュ・トゥ
 グランスティードに相乗りした冒険者たちが急ぎ村へと駆けつけたとき、三体のモンスターたちは、その瞬間に村へ達したところだった。
 時空を彷徨う・ルシファ(a59028)がグランスティードから飛び降りつつ放った桃色の矢は空を裂いて飛び、村人を襲おうと動きはじめていたクロースの側に着弾する。
 すると、クロースは、転んだり互いにぶつかりあったりして怪我をしている村人たちの治療を始めた。
 それぞれに目に入った村人を襲おうと動き出すダークネスとリビングアーマー。昏闇紅月・キュリア(a51087)は、ダークネスに遠距離からの先制攻撃をしかけて、牽制する。
「これ以上――やらせはしません」
 黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)がルシファが飛び降りた勢いのまま、グランスティードを駆り、村人に剣を振り下ろそうとしていたリビングアーマーに体当たりをしかけ、体勢を崩させた。
「冒険者の心失いしモンスター共よ! 貴様等に誰一人傷付けさせはしない!」
 ジョルディは高らかに宣言し、グランスティードをめぐらせて、クロースのいる方角へと駆けていった。
 その間に続々とグランスティードから降り、来援する冒険者たち。
 ――彼らの本当の試練は、これから始まるのであった。

●トライアル
「なんか、彼女はかつての私に似てるからね。ほっとけないんです」
 道中、アリアのことについて仲間にそう口にしていた、嵐と共に進みゆく・ヴィナ(a09787)は、アリアのことを気にかけながらもダークネスと相対した。
「同じ武人として……あなたを倒します」
 ヴィナは、そうダークネスに呼ばわり、撃ちかかっていった。
「猛ろ……魂狼装!」
 自らの内に宿る破壊の衝動を目醒めさせ狂える戦士と化した、闇を裂く氷狼・ルキシュ(a67448)は、ヴィナと共にダークネスに撃ちかかる。
 フェリシアをして冒険者二人分と言わしめたダークネスの流れゆく水のような剣技が、その黒き装束をして常世の果てからの使者と思わせ、ヴィナとルキシュを切り裂いてゆく。
 二人は、したたかなダメージをこうむるが、すぐに反撃に転じる。
「悲しみの鎖は断ち切れないとダメです」
 その揺るぎない覚悟を己が力として、ダークネスと壮絶な剣と大鎌の打ち合いを演じるヴィナ。
 猛り狂う一撃一撃が凄まじく重いルキシュの剣撃を巧みにさばいて反撃をしてくるダークネス。それに対して、なおも激しい攻撃を加えるルキシュ。
 ここでの戦闘は、ほぼ互角の様相を呈してきており、ヴィナとルキシュは、足止めという役割を確実に遂行できているといえた。

 ルシファが掌から粘り気のある糸を射出してクロースの動きを封じると、冒険者たちは、クロースに集中攻撃を加え始める。
 黒き炎を身に纏い邪竜の力を制御した、冥府の古竜・スライ(a22846)は、黒き炎の蛇をクロースに撃ち込む。強き精神の力を持つクロースは、その攻撃でも、なかなか動じるそぶりは見せない。しかし、他の仲間たちが戦う牽制としては、十分に役に立っていた。
「……戦線を広げないようにせねばならんが……敵がこうも散ってしまっては容易ではないか」
 スライは、目に入った者から攻撃を仕掛けてゆくモンスターたちと、おのおの目標に散った仲間たちを見やって、内心、舌打ちを禁じえなかった。
 樹霊・シフィル(a64372)が、紋章の力を操り収束させた炎の球を頭上に顕わし、クロースに向けて射出する。これもクロースは、強き精神の力で耐え抜き、ダメージを最小限に抑える。
 敵方の回復手段であるクロースから撃破してゆくとの作戦のもと、キュリアの射かける矢は、クロースの体に突き立ち、浅からぬ傷となる。
 大上段の構えから一気に斬り降ろす、ジョルディの一撃は、確実にクロースにダメージを積み重ねていた。

「モンスターは倒す。人々も助けます……必ず」
 世界の果てを探しに・フェイディ(a67339)は、アリアやその他援護に駆けつけた冒険者たちと共に、村人を避難させていた。
「私達は助けに来た者です! 全員畑へ! 急いで!」
 援護に来た冒険者が注目を浴びると、村人たちは、パニックなどからも覚め、おとなしくフェイディたちの指示に従ってついてきた。
 戦場となっている地点を迂回して、さらに全員で橋を渡ってゆくのは時間がかかるだろうが、この時点では、採り得る安全な避難方法のひとつであるのは間違えがなかった。
 アリアは、戦場とその様子を見渡すと、そっとその場をあとにした。

 戦況を見てか、本能に従ってかは知らず。
 ただ一体、渦中にいなかったリビングアーマーは動き出す。
 リビングアーマーは、ダークネスの足止めを行うヴィナとルキシュに間合いを詰めると、冒険者二人分の怪力と武器の重さを乗せた岩をも砕くがごとき一撃を傷ついたルキシュの背に浴びせた。
「くっ。二体の足止めは、流石にきついな」
 たまらず膝をつくルキシュに、武器の形状を変化させ暴走を起こさせたダークネスの攻撃が襲いきた、そのとき。
 グランスティードを駆ったジョルディが間に割り込んだ。
「重騎士の本分は護りにあり!」
 鋭く重い一撃が、半身が隠せる程の大きさがあるという翼の紋様が入った漆黒の大型盾『黒翼ノ盾』ごしに、じわりと鈍い痛みを伝えるが、ジョルディは耐え抜いてみせた。
「危急の援護、感謝する」
「なんの。だが、まだこの方面は劣勢だ」
 ルキシュの礼に、ジョルディが応える。
 ヴィナは、ダークネスとリビングアーマーに水が流れるかのごとき流麗な動きで、悲しみをなくしたいと願いを込め鍛えられた『悲しみ断つ大鎌』を振るい、劣勢を少しでも押し返そうと試みる。
 ルキシュは、常に凍気を纏い氷の如く透き通った刀身を持つ巨大な剣『Absolute・zero』に己の力を最大限に高めた重撃を乗せて、ダークネスを袈裟懸けに斬りつける。
「仲間たちが、クロースを倒すまでの間、付き合って貰うぞ」
 頬を親指で撫でつけたルキシュは、決然たる意志を込めて言い放つ。
 劣勢にもかかわらず、彼らの闘志はいまだ衰えてはいなかった。
 ダークネスの達人を思わせる巧みな剣さばきがヴィナに襲いきたとき。間に割って入った小柄な人影が代わりに攻撃を身に受けた。
 人影は、アリアだった。血に塗れながらも、ヴィナとダークネスの間に立つ少女にヴィナは言う。
「……何をしているの、あなたは後衛でしょう? もっと状況を見て行動しなさい」
 彼女は感謝していたが、この危ういところのある少女の行動を出会ったときから案じていたのだ。
「……戦闘への支障はないから」
 言い置いて、素直に後衛に下がる少女に、ヴィナはまだ何か言いたそうであったが、戦況が不利なこの方面に来援することは理にかなっていたので、それ以上の言葉は口にしなかった。
「これで、この方面は、ほぼ五分になったな」
 ルキシュが言い、
「足止めをしていれば、クロースを攻撃している仲間たちも来るだろう。そうなれば、我らの勝ちだ!」
 ジョルディが応じて、四人は改めて戦闘体勢を整えた。

●ショーダウン
「……遅れました!」
 クロースめがけて武器から強烈な電撃を放ったフェイディが戦場に駆けつけると、この方面の形勢は決したといっても過言ではなかった。
 電撃が体中を駆け回るクロースに、スライの生み出した黒き炎の蛇が牽制をしかけ、シフィルの頭上に生み出された火炎の球が追い討ちをかけ、キュリアの放つ矢が突き立てられ、ルシファが射る鋭い逆棘の生えた矢が突き刺さり出血を強いる。
 スライとシフィルが黒き炎の蛇と紋章の力を込めた火球で牽制する中、フェイディが力強く猛烈な勢いで武器を振り下ろしクロースの身に纏う防具である布とマントを切り裂くと、狙いすましたキュリアとルシファの矢に貫かれ、クロースは成す術もなく大地に倒れ伏した。
「……こちらは無傷で倒せたが、思いのほかしぶとく、時間がかかってしまったな」
 スライがやっと片付けたクロースを見下ろしながら言うと、
「わたくしとスライ様の攻撃が、強い精神力で、思ったより耐えられてしまいましたのが一因でございましょう」
 シフィルが意外としぶとく、クロースが持ち堪えた理由を分析して言葉にする。
「矢と剣は、効果的だったみたいですからね」
 キュリアが頷いて言った。
「ダークネスとリビングアーマーを足止めしている方々も苦労しているでしょうから、急いで合流しましょう」
 ルシファが仲間たちを促して、クロースを片付けた冒険者たちは、ダークネスとリビングアーマーのいる方面へと駆け出した。

 ダークネスとリビングアーマーを引き受けて足止めしていた冒険者たちは、クロースを片付けて合流してきた仲間たちの姿を見て、さらに闘志が湧いてくるのを感じていた。
「敵は一角が崩れ、回復手段を失った。残り二体も足止めの皆のお陰で疲弊している。半円陣形で、たたみかけて一気に潰すんだ」
 キュリアが仲間たちを鼓舞するように指示を出し、冒険者たちは、ダークネスとリビングアーマーに半円陣形からの波状攻撃をしかける。
「いい加減にしなさい。あなた達にとって、ここからが悪夢の始まり。加減はできないから、最初に謝っておくね」
 ヴィナの大鎌から神の怒りのごとき電撃がほとばしり、ダークネスに浴びせられ、電撃は体中を駆け巡る。
「全ての者を救える等と思っている訳ではないが……何もせずに全てを諦める事は出来ん。さらなる被害を出さぬ為にも、魔物は此処で倒す」
 スライの自らの邪竜の力を具現化した漆黒の燃え上がる蛇がダークネスに襲いかかり、その顎で体を噛み裂く。
「誰かの命を奪う以上、己が同じ結末を辿る覚悟はあるな!!」
 キュリアの射かける闇色に透き通った鋭い矢が、リビングアーマーの厚い装甲を紙のように貫き、その体に突き立つ。
「これ以上、もう一般の方々を襲わせるわけには参りません」
 ルシファの弓から放たれた、鋭い逆棘の生えた矢は、リビングアーマーの体に突き刺さり、だくだくと血を滴らせる。
「ふふふ、少々……本気で参りますわ。さあ、皆様。あと一息でございます」
 シフィルの優美な指先が頭上に紋章を描き出し、そこに集約されたエネルギーが火焔の球と化して撃ち出され、ダークネスは身を焦がす炎に飲み込まれて灰燼と化した。
「かつては立派な冒険者だったのでしょうに……。皆をあんなに悲しませて……何故……!」
 フェイディの疾風のようなスピードで振り下ろされた剣が、リビングアーマーの鎧を打ち砕き、鎧の意味を為さないただの鉄塊へと変えてしまう。
「爆ぜよ……爆砕牙!」
 ルキシュの力強い腕力と共に、巨大な氷塊を思わせる剣がリビングアーマーを叩き切り、その強力な一撃は苦悶の声を上げさせる。
「破断!」
 ジョルディの大きく頭上から繰り出された怪力と武器の重さをも伴った一撃が、リビングアーマーの頭から腰までを一刀両断し、物言わぬ鉄屑と化させた。

●アフター・ザット
 戦闘が終結したのち、冒険者たちは思い思いの場所に散って、それぞれのしたいことやっていた。
「いつも悲しみは鎖のように人々をからめ取ってきますね……でも、諦めてはダメです。でも……その為に自分を犠牲にするのもダメ。帰れるとこが、あなたにあるなら、なおさらね」
 ヴィナは、アリアにそう諭した。アリアは、どこまで承知したかは分からないが、こくりと頷いた。
「もう大丈夫です」
 ルシファの励ましの言葉と共に、キュリア、フェイディ、シフィルらが村人たちの手当てを行う。
 フェイディらの見事な誘導のお陰で、直接モンスターの被害に遭った者はいなかったが、慌てて転んだり、ぶつけたりして擦り傷や打ち身などの傷を負った者は少なからずいたからだ。
 シフィルは、子供たちのメンタル面でのケアということで、子供たちを優しく抱きしめて励まし慰めていた。
 ジョルディは、それらの光景を見詰め改めて感慨に耽っていた。
(「俺が護るべき人々、護り抜いた人々」)
 彼は、その人々の姿をしっかりと目に焼きつけて、決意を新たにするのであった。
 フェイディは、人目につかない場所にモンスターたちの遺骸を弔うと、複雑な気持ちで合掌した。
「そこに、モンスターたちを弔ったのか」
 背後からルキシュが歩み寄ってきた。
「お前たちの事は体に刻み込んだ……あとは安らかに眠れ」
 ルキシュも弔いの言葉を呟いた。この経験を糧として、さらなる高見を目指すために。

 ――こうして、冒険者たちは、難敵たちを退け、大した被害も出さずに村の住民たちをも無事救い出し、その心意気を示したのであった。
 彼らが村から引き上げるとき、村の人々が彼らの姿が見えなくなるまで、自分たちを救ってくれた冒険者と別れるのが名残り惜しそうに、感謝を込めて、いつまでも手を振って見送っていた。


マスター:八坂凍夜 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2008/02/14
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