<リプレイ>
●お礼の料理 「あ、あのぅ」 背後からかけられた声にリザードマンが振り向くと、二人の少女がたっていた。 一方はヒト、もう一方はストライダーである。ドリアッドの村だというのに、なぜこんなところに人間が、と一瞬考えたリザードマンだったが、一方の少女の給仕らしい服装を見て、ドリアッドに使われていた奉仕種族かと納得する。給仕服がやけに大きく、少女にサイズが合っていないと思ったが、どうでも良いことだなとすぐに忘れた。 彼らは、ドリアッド領の辺境のとある村を制圧し、今は二人一組で、ドリアッドたちの反撃を警戒し、村内を巡回しているところだった。 「あ、ありがとうございました」 少女が突然二人して頭を下げるので、リザードマンたちは、なんだこいつら? と顔を見合わせた。 顔を上げた少女の一人が、上目遣いに彼らを見上げ、話を続ける。 「あ、すみません。突然で驚かれたかもしれませんが、実は、わたしの両親がドリアッドのごろつきに殺されちゃったんですぅ。それで、仇を討とうとこの村まで来たんですけれど」 「そこに居たのが貴方方で、仇のドリアッドをやっつけてくださったのを見たんです」 給仕の服装の少女が後を続ける。そんな格好で敵討ちか? と思ったが、まぁ奉仕種族じゃそんなに服も選んでられないか、と簡単に納得する。 「わたし、もう感激しちゃって……。それで、ささやかではあるんですけど、感謝の気持ちにお料理をあちらに用意してあるんです。来ていただけませんか?」 「へぇ。そういうことなら他の奴等も呼んでこなきゃな」 すっかり少女の話に気を良くし、リザードマンは二人ともついていく気満々である。 「あ、それなら私が。確か村長の家を使ってらっしゃるんですよね」 「そうか? 悪いな」 いえいえ、と手を振りつつ、リザードマンたちがやってきた方向へと小走りに駆けていく。駆け際に、二人の少女はこっそりと互いにウィンクしあった。 「ん? どうかしたか?」 「えっ? あいえ、ちょっと目にゴミが」 目ざとくウィンクに気づいたリザードマンの問いに、ヒトの紋章術士・ショコラ(a02448)は咄嗟に答えを返す。 危ない危ない、と心の中で冷や汗をかきながら、 「こっちですぅ」 と、リザードマンを仲間の待ち伏せる小屋へと誘導するべく、先に歩き出した。 遠回りして先に小屋へ戻る予定のストライダーの武人・アリア(a02136)に追いつかないように、少しゆっくり目に、別のルートで遠回りになるようにいかなければ、と思いながら。
●地味に広報 「ごめんくださぁい」 控えめに戸を叩く音に、リザードマンではなさそうだと思いながら、それでも恐る恐るドリアッドの夫婦が扉を開くと、扉の前には、少女が二人立っていた。 見たところヒトとエルフ。見ない顔だから、少なくともこの村のドリアッドに仕える奉仕種族ではない。 「どちらさんで……?」 今にもリザードマンが現われやしないか、と周囲に目を配りながら尋ねる主人。現に、男の方は片腕と頭に包帯を巻き、足が折れているのか、杖を突いていた。 その姿を見、エルフの少女が「まぁ、大変」と片手に提げていた鞄を開くと、中には医療用具が詰まっていた。 とりあえず中へ、と半ば強引に扉の内側へ入ってきた二人は、用心深く扉の外を覗いて、こちらを見ている者がいないことを確認して扉を閉める。 「とにかく、その怪我の手当てをさせてください」 エルフの医術士・ヴェノム(a00411)と名のった少女が、ドリアッドの怪我の様子を診始めた間に、もう一人の少女が話し始めた。 「私、東の同盟諸国で冒険を生業としています、ラジスラヴァといいます。先日、霧の谷の護り手・ベルフラウさんから救援の要請を受けまして」 ヒトの吟遊詩人・ラジスラヴァ(a00451)。語り、詩を紡ぐことを生業とする彼女とヴェノムは、他の者がリザードマンを分断している間に、こうやって地道に広報活動に励んでいた。 「救援、と言っても、貴方たちだけでは……」 話を聞いて、一度は明るくなった二人の表情がまた怯えの表情に戻る。 「あ、いえ、私たちだけでなく、あと六名のグリモアの加護を得た者が来ています。これからさらに多くの仲間がやってきますけど、とりあえずこの村で大きな顔をしている奴らをなんとかするくらいなら、私たちだけで充分です」 「私たちが来たからには、もう大丈夫です。あ、これ極秘情報ですよ?」 手当てをしながら、ヴェノムが人差し指を口に当て、いたずらっぽく微笑む。 ドリアッドの二人を励ますように……なのかどうかよくわからないが、にっこりと笑みを残し、「それじゃあ〜」とラジスラヴァとヴェノムは二人に暇を告げ、隣の家へと向かっていった。 後に残されたドリアッドの夫婦二人は、少しの間呆然と見送っていたが、 「こりゃ大変だ。早く他の人たちにも伝えないと」 期待のこもったまなざしを二人の去っていった方へ向けながら、慌てて近くの家へと駆けて行ったのだった。
●決戦! VSりざーどまん 「遅いな……」 「どっかそこら辺でドリアッド共でも苛めて遊んでんじゃねぇの?」 所変わって村長の家。今はリザードマン達が徴収し、彼らのねぐらと化していた。 巡回から帰ってくるはずの時間を既に三十分以上過ぎている。 「一応見に行くか」 「チッ、めんどくせぇな」 どうやら律儀な性格らしい一方の言葉に、もう一方が億劫そうに立ち上がる。 扉を開けて外へ出た彼らが目にしたものは──。 「なッ!?」 思わず足が止まる。 二人の目の前には、百人を超えるドリアッドが遠巻きに輪を作り、静かにこちらを見つめていたのだ。 「な、何してやが──」 「あ、やっと出てきた」 ドリアッドたちに対して威嚇の声を上げようとしたところへ、突然頭上から降って来た声に、慌てて上を振り仰ぐ。 そこ──村長宅の屋根の上──に居たのは、四人の冒険者。 「な、何者だッ!?」 焦りを隠すためか、必要以上の大声での誰何に、待ってましたとばかりにすぅと息を吸い込んだ四人が口を開く。 『こぶへうのといまわうわいたかなもしいむんたへらあちよをれが──』 四人が一斉にまったくバラバラの台詞を述べるものだから、さっぱりわからない。 気まずい沈黙が場に降りる。 屋根上の四人が慌てて、何やらボソボソと小声で話し合い始める。どうやら名乗りを上げる順番を決めているらしい。 やがて話し合いが終わったのか、再度横並びに並び直し、下を見下ろす。 「……な、何者だッ!?」 周囲の期待の目に答えられなくなったか、リザードマンの一方が屋根上の四人に向かって、再度誰何の声を上げる。 その声に最初に応えたのは、右端に立っていたエルフの邪竜導士・ミサリヤ(a00253)だ。 「平和な村を脅かす悪い奴らめ! このミサリヤ様が、天に代わって成敗だ〜!!」 続いて、ヒトの武道家・グリット(a00160)が口を開く。 「舞踏会へようこそ。……乗って来たからには、美しく散ってもらおうか」 彼の差し出した手に周囲を見やれば、いつの間にかあちこちに書割が立てかけられ、さながら周囲はにわか舞台と化していた。観客は村人のドリアッドたち。 「旨いもんあれば西東、困ってる奴がいれば北南。生意気でちょっと寂しがり屋のぷりちぃぼーい、甘いモンにゃ目のないランドアースの東方不敗『七色ぴゅりん』とは俺様のことだいっ」 「……強いのか? それは」 ストライダーの牙狩人・ジャム(a00470)の名乗りに、思わず首をかしげたリザードマンたちに、聖天の舞姫・ミライ(a00135)が慌てて、 「と、とにかくっ! この私たちが、天に代わって成敗しますっ!」 全員名乗りを上げ終わったところで、びしぃっ! とポーズを決める。「おぉ〜っ」と、周囲のドリアッドたちから声と拍手が上がる。 『とぅっ!』 屋根から飛び降りた四人の冒険者が、リザードマンと対峙した。 「ど、どうする? 向こうの方が人数が多いぜ」 剣を構えながらも、四対二という数の不利を感じずに入られない。隣で同じく剣を構えるリザードマンにボソボソと相談する。 「二人が戻ってくるまでなんとかいなしてりゃ良いんだよ。人数が同じになりゃぁ、俺たちがこんな奴等に──」 「お仲間をお探しなら、無駄ですよぉ〜♪」 ドリアッドたちの間からひょこっと顔をだしたアリアとショコラが、それぞれ片手に剣を提げてやってくる。ひょいと投げてリザードマンたちの足元へ転がったそれは。 「……これは、あいつらの。貴様等ァ……」 「ま、そーゆーコト。さぁ、悪役は悪役らしく、派手に散ってくれよ?」 言い放つや、グリットがリザードマンへ向けて一気に踏み込む。同時に、ミサリヤの放った漆黒の蛇が宙を這う。 「ぐわぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」 と、お約束の叫び声を上げてリザードマンが散ったことだけを、伝えておこう。
●仲良きことは美しき哉 「はい! じゃぁ私、舞います!」 宣言したミライが、座の中心へ進み出、故郷に伝わる舞を披露する。 無事リザードマンたちを倒した後、ドリアッドたちによって、感謝の宴が開かれていた。冒険者たちの持ってきた土産もその場に供され、飲める者には酒も入り、場はもはや宴会と化していた。 これだけ友好的な雰囲気を作っておけば、ドリアッドたちも同盟諸国の者を敵とは思わないだろう。そういう意味では成功しているのかもしれない。
「喧しいなァ、大人は」 ジャムは一人宴会には参加せず、同年代のドリアッドの子供達と遊んでいた。 「ほら、こうやって……てぃっ」 ジャムの手から放たれたどんぐりが、刺した楊枝を中心にくるくると回る。 「わぁ〜、すごいすごい」 口々に褒められ、ふふん、と好い気になるジャム。 「あ、そうだ。なぁ……お前達、ぴゅりんって食べたことある?」 「ぴゅりん?」「お前知ってる?」「ううん、知らない」ドリアッドの子供達が口々に話し合うが、誰も知っている者はいないらしい。 「そっか……さすが伝説の食い物。そう簡単には姿をあらわしちゃくれないか」 ぐっと拳を握り締め、いつか必ず食ってやると心に誓う、ジャム十歳の秋であった。

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参加者:8人
作成日:2003/09/23
得票数:ほのぼの16
コメディ15
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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