人型チョコレート工房



<オープニング>


●工房
 チキンレッグ領のある工房で、今年もチョコレート作りが始まった。
 毎年、この工房では愛する人にプレゼントするため、人型のチョコレートが作られているのだが、そのたび問題視されているのが、グドンやモンスターによる被害であった。
 人型チョコレートは大量のチョコレートを溶かして煮込む必要があるため、どうしても辺りには甘い匂いが漂ってしまう。
 数年ほど前までは好事家くらいしか購入者がいなかった人型チョコレートも、サイズを小さくした事によって一般客からも注文が相次いでいる。
 一番人気なのは手のひらサイズの人型チョコレート。
 受注受付は100個からだが、それでもかなりの申し込みがあるらしい。
 ザウス神の先兵であるウェルダンが攻め込んできた事によって、チョコレート工房も建て直したばかりだ。
 ここでモンスターに襲われて被害を被れば、せっかくの儲けがゼロになる。
 儲けの一部は復興資金として寄付するつもりのようなので、工房を守ってやってくれないか。


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参加者
リリカル武闘少女・ミオ(a36452)
慈愛の聖母騎士・ニーナ(a48946)
灯火の一雫・ミオ(a56179)
武装修道尼・ナスターシャ(a58089)
小さな小さな仔猫な子ども・ブルーベリィ(a58758)
紅の蒼眼剣士・ラスト(a64093)
朧銀の破魔矢・ユキト(a65770)
始まりはいつも突然・ヤミー(a66309)
金竜疾走・ヴァルランド(a68270)
恋蒼の焔・トール(a68949)
波寄・ズイメイ(a69144)
なぁ〜んですなぁ〜ん・キリア(a71164)
NPC:ゼブラーウーマン・パルディラ(a90126)



<リプレイ>

●人型チョコレート工房
「今のこの時期はチョコレートの季節ですわね」
 あちらこちらから漂ってきた甘い匂いを嗅ぎながら、鋼鉄の刺客・ニーナ(a48946)がクスリと笑う。
 ニーナ達は人型チョコレートを作る手伝いをするため、チキンレッグ達の工房に訪れていた。
 チキンレッグの工房からは甘い匂いが漂っており、大量のチョコレートがドロドロに溶かされ、鍋の中で掻き混ぜられている。
「チョコ作りのお手伝い、2年ぶりなのなぁ〜ん。とっても楽しみだなぁ〜ん☆」
 満面の笑みを浮かべながら、リリカル武闘少女・ミオ(a36452)がチキンレッグ達に手を振った。
 チキンレッグ領にウェルダンが侵攻してきた事によって、人型チョコレート工房の位置は移動しているが、職人達の中にはミオの事を知っている人物がいたようだ。
「以前から『人型チョコレート』なるものに興味がありましたの。無論、遊びではなくお仕事ですからキチンとしますわ。『儲けの一部は復興資金として寄付する』なんて、とても結構な事ですし……。でも、せっかくの機会ですから、少しくらい楽しんでも良いですわよ、ね?」
 含みのある笑みを浮かべながら、武装修道尼・ナスターシャ(a58089)が職人達の手伝いをし始める。
 職人達はチョコレートのランク分けをしており、一定水準に満たないチョコレートを退けていた。
「愛する人へのプレゼントか……。なんとも粋な物を作る工房だね……。残念ながらわたしにそんな相手もいないわけだが……。まぁ、被害が出るというのならば見過ごしは出来ないか。復興の手助けにもなるようだしね」
 工房の様子を窺いながら、灯火の一雫・ミオ(a56179)が気合いを入れる。
 職人達は鋳型にチョコレートを流し込み、人型チョコレートを作り始めた。
「へぇ……、こうやってチョコレートを作っているのか」
 感心した様子で職人達の作業を眺めながら、駆け抜ける疾風・ヴァルランド(a68270)が自分の型取りもしてもらえないかと交渉する。
 この工房では冒険者達から型取りをした物を売っているため、条件付き(商品として販売する)で承諾を貰った。
「……あれ? ああれ? パルディラさん、一体、それは何ですかぁ〜」
 不思議そうに首を傾げながら、小さな小さな仔猫な子ども・ブルーベリィ(a58758)が汗を流す。
 ゼブラーウーマン・パルディラ(a90126)はチョコレートの鍋に塩や砂糖を混ぜており、凄まじい匂いを辺りに漂わせている。
「名物チョコもいいが、チョコレート色のウーズとはな。やはり、この時期だからか? そんなものが出る工房とは……」
 信じられない様子で工房を眺めながら、流れ者・ズイメイ(a69144)がボソリと呟いた。
 チョコレート型のウーズは本物と見紛うほどソックリなので、気がつかないと食べてしまう可能性が高い。
 もちろん、ウーズも全く抵抗しないわけではないので、冒険者でなければ食べられてしまうのだが……。
「チョコレートウーズ、ですか。ウーズもバリエーションが増えましたわね。食べられるなら歓迎なのですけれど、お腹を壊すって話ですわ」
 ウーズを食べて死の淵(食中り)を彷徨った冒険者がいる事を思い出し、始まりはいつも突然・ヤミー(a66309)がツッコミを入れる。
 そもそもウーズを食べる事自体、危険な行為である事は間違いないので、食中りで済んだだけマシなのかも知れない。
「それにウーズさんって、実際は泥の塊ですものね」
 苦笑いを浮かべながら、真昼の幻影・トール(a68949)がウーズに関する資料を読む。
 今回のウーズは身体の大半が泥の塊なので、実際にはチョコレートではないようだ。
「つまり美味しい泥ってわけですね」
 納得した様子で仲間達の話を聞きながら、紅の蒼眼剣士・ラスト(a64093)が汗を流す。
 そのため、チョコレートウーズは、『素人さんは決して手を出してはいけないランキング』の上位にいるらしい。
「確かに……、チョコの香りがするからと言って、本当に味がするとは限りませんものね。それだったら匂い付き練り消しだって美味しいはずじゃないか!」
 拳をギュッと握り締めながら、破魔の猟矢・ユキト(a65770)が熱く語り出す。
 ……その一言を聞いて衝撃を受ける仲間達。
「で、でも、食べてみなきゃ分からないなぁ〜ん。俺が確かめてみるなぁ〜ん」
 激しく首を振りながら、堅牢の灰色・キリア(a71164)がユキトの説を否定した。
 例えチュコレート味がしなくても、何もせずに後悔しないよりはマシである。

●チョコレート作り
「さあて、張り切って頑張りますか♪」
 気合いを入れて袖を捲くり、ニーナがチョコレート作りを手伝った。
 ニーナ達が手伝うのは、人型チョコレートの型取り。
 型取りは全裸に近い状態で行わなければならないため、冒険者達には水着が貸し出される事になっている。
「ちょっと恥ずかしいけど、頑張るなぁ〜ん」
 ふわふわのワンピース姿で更衣室から現れ、ミオがちょこんと親指を咥えて可愛らしくポーズをとった。
 型取りには皮膚が荒れないようにクリームが塗られ、チキンレッグ達によって型取りがされていく。
「え……、脱ぐんですか? 私、脱いだらスゴイんですけど……」
 チキンレッグの職人から水着を受け取り、ナスターシャが更衣室で着替えてすぐに戻ってくる。
 次の瞬間、チキンレッグ達が驚いた様子で目を丸くさせ、彼女を見つめたまま石のように固まった。
 なんと彼女の腹筋はボディビルダーの如きバキバキに割れており、グラビアアイドルもビックリな爆乳と同居し、背中にオニの顔が浮かびそうな広背筋が圧倒的な存在感を示している。
 そのため、チキンレッグ達は興味深そうに彼女のまわりを囲み、人型チョコレートの新たな可能性を見出した。
「ひょっ、ひょっとして、チョコレート作りを手伝うって事は、こういう事なのか。ま、まさか俺までチョコレートの型にするつもりじゃないだろうな?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、銀蜥蜴・フェード(a67424)がダラリと汗を流す。
 よくよく考えてみれば、チョコレートを作るだけなのに、水着姿になる事自体がおかしな事だった。
(「あの時、気づいていれば、こんな事にはならなかったはずなのに……」)
 ……一生の不覚である。
 例えるならぬるま湯に浸かったドジョウ。
 まわりに豆腐がある時点で気づくべきだったと後悔しつつ、もがき苦しみながら息絶えていくドジョウと自分自身が重なった。
「……運命ってヤツさ」
 無駄に爽やかな笑みを浮かべながら、ヴァルランドがぽふりと肩を叩く。
 その瞳には『生贄』と書かれたフェードの姿が映っている。
「それじゃ、ふたりとも型を取りますよぉ〜」
 満面の笑みを浮かべながら、ブルーベリィがふたりの腕を掴む。
 一瞬、ヴァルランドは『えっ? 俺も?』と思ったが、その時には職人達に両脇を掴まれて型取りをされていた。
(「……運命か」)
 自分の口から発せられた言葉が脳裏を過る。
 これが運命だとしたら、実に皮肉なものだと思う。
 だが、型取りされてしまった以上、ヴァルランドに他の選択肢は残されていなかった。
「よーし、それじゃ、頑張るよぉー」
 能天気な笑みを浮かべながら、パルディラが唐辛子とコショウを掻き混ぜる。
 最近、マトモな料理を作っていなかった事もあり、目についたものを次々と鍋に放り込んでいく。
「パルディラさぁ〜ん……、チョコレートに変なもの入れないでくださぁ〜い!!」
 ヒヨコ型のチョコレートを作りながら、ブルーベリィがやんわりとパルディラを叱る。
 そのため、パルディラがてへっと可愛らしく舌を出し、鍋に『ラルフ用』と書かれた張り紙を貼って封をした。
「……貴様! そんな事も分からんでチョコレート作りに来ていたのか!」
 人型チョコレートの型取りを終え、ナスターシャが強烈なスリーパーホールドをパルディラに決める。
 その一撃を食らってパルディラの口から魂が飛び出し、『降参』と言わんばかりに白旗をパタパタとさせた。
「あらいやだ、私ったらつい……。バルディラさんごめんなさいね」
 パルディラがグッタリとしている事に気づき、ナスターシャがニコリと微笑んだ。
 しかし、パルディラの魂は空中を彷徨ったまま、羽根の生えたナマモノに連れられてお空に旅立っていった。
「えーっと、ミスだけはしない方がよさそうですわね。これ以上、犠牲者を増やしたくありませんわ」
 うっかりあっちの世界に旅立ちそうなパルディラを見つめ、ニーナがなむなむと両手を合わせて自分自身に言い聞かせる。
 その間にチキンレッグ達がグツグツに煮込んだチョコレートを鋳型に流し込み、二人がかりで専用の保管庫まで運ぶ。
「でも、失敗したチョコも売り物になるなぁ〜ん」
 失敗作と書かれたチョコレートを手に取り、ミオが美味しそうにカリッと齧る。
 チョコレートの味は最高品質のものを使っているため、ほんのりとした嫌みのない味が口の中に広がっていく。
 それに例え型取りが失敗したとしても、再利用する事が出来るので問題はないようだ。
 その代わり、再利用するたびランクが1ランク下がり、値段などにも違いが出てくるらしい。
「ううっ……、まさか俺まで型にされるとは……」
 空気穴を開け忘れて気絶したフェードを引きずりながら、ヴァルランドが疲れた様子で溜息を漏らす。
 何故か、その額には何故か『運命』と落書きがされていた。

●ウーズ
「とっても甘そうなのが、いるなぁあああああああん!?」
 ダラダラとヨダレを垂らしながら、キリアがウーズに攻撃を仕掛けていく。
 ウーズは甘い匂いを漂わせ、キリア達の胃袋を刺激する。
 その匂いは空腹状態にあった彼の脳を支配したため、チョコレートだけしか考えられなくなった。
「本当にチョコレート色のウーズだな……。まあ、見た目チョコでもウーズはウーズ。……油断は禁物か」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、ズイメイがライトニングアローを炸裂させる。
 その一撃を食らってウーズの身体が痺れ、辺りに濃厚なチョコレートの匂いが漂った。
「む……、チョコの焦げた匂いが……。これがチョコレートウーズの力か」
 険しい表情を浮かべながら、ミオが黒炎覚醒を発動させる。
 チョコレートウーズの全身から漂う匂いのせいで、凄まじい空腹感が彼女の胃袋を襲う。
 ……それは彼女にとって耐え難い苦痛であった。
「テラテラと黒光りしていて、ウネウネと動いているものを攻撃すればいいのですわ」
 危険を承知でウーズに何度も斬りかかり、ヤミーが触手に絡まれて動きを封じ込まれる。
 ウーズの触手はまるで蛇のように彼女の身体を這いまわり、まったく身動きをとれなくさせた。
「そのまま動くな。すぐ助けるっ!」
 ウーズの背後に回り込み、ラストがスピードラッシュを叩き込む。
 それと同時にウーズの触手が次々と宙を舞い、地面に落ちてドロドロに溶けていく。
「それじゃ、濃厚なココアでも吹いてもらおうか」
 含みのある笑みを浮かべながら、ユキトがウーズに鮫牙の矢を撃ち込んだ。
 そのため、ウーズの身体からどす黒い血が吹き出し、先程とは比べ物にならないほど濃厚な臭いが漂った。
「呪っておやり、愛しきビスクドール」
 少しずつ間合いを取りながら、トールがスキュラフレイムを炸裂させる。
 次の瞬間、ウーズの身体が魔炎に包まれ、苦みのあるチョコレートの匂いが漂った。
「それにしても凄い匂いだね。何だか頭がクラクラして来たよ」
 短時間の間に様々なチョコレートの匂いを嗅いだため、ユキトが青ざめた表情を浮かべて膝をつく。
 チョコレート自体は悪くない匂いなのだが、あまり気持ちがいいものではない。
「これで終わりだ。……切り裂け!」
 一気に間合いをつめながら、ラストがウーズにソニックウェーブを叩き込む。
 その一撃を食らってウーズが飛び散り、チョコレート色の雨が降り注ぐ。
「む……、意外に美味しい……?」
 口についたチョコレートをペロリと舐め、ミオが不思議そうに首を傾げる。
 多少ドロッとした味がするものの、チョコレートだと言われれば違和感がない。
「皆さんのおかげで助かりましたわ」
 身体にベットリとついたチョコレートを拭い、ヤミーが仲間達に対してお礼を言う。
 彼女自身もチョコレートに包まれるという貴重な体験をしたため、どこか満足そうな表情を浮かべている。
「それにしても……、いい香りですね。チョコレートフォンデュにしたら、さぞかし美味しいのでは……。ちょっとだけなら味見をしても構いませんよね」
 興味深そうにウーズの死体を見つめ、トールが少しだけ指先につけてペロリと舐める。
 ……一瞬の沈黙。
「凄く……美味しいです……」
 どこか遠くを見つめながら、トールがボソリと呟いた。
 確かにウーズはチョコレートの味がしたのだが、口の中に残っている感触は泥そのもの。
 つまり、これが意味する事は……。
「ハァハァ……、もう我慢する事が出来ないなぁ〜ん。いっただきますなぁ〜ん!」
 興奮した様子でウーズの死体に飛びつき、キリアが両手に塊を掴んで頬張った。
 途端にチョコレートの濃厚な味が口の中に広がり、天にも昇るような気持ちに包まれていく。
「本当に美味いのかも知れんが、胃腸の丈夫な奴に任せておいた方が良かろうな、これは……」
 引きつった笑みを浮かべながら、ズイメイがダラリと汗を流す。
 そして、それから数時間後。
 ウーズを食べた事が原因で、この世の地獄を味わう仲間達の姿があった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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シュヴァルツェ・キリア(a71164)  2009年11月18日 11時  通報
何故食った?そう聞かれても空腹と香りには勝てないからなぁ〜ん。