≪火炎の王ライリュース≫ライリュースを倒せ! 左足を破壊せよ



<オープニング>


 炎を集めて、それに生命を与えたらどんな生物になるだろうか――
 ……その答えの一つが此処にある。
 七大怪獣ライリュース、炎の領域を支配し、あらゆる炎を従えるもの……それ自身が炎の化身であるもの。
「まさに火炎の王と言ったところか」
 額の水晶破壊の報告を受けて、紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)は今までの情報からライリュースの能力を整理する。
「う〜む……」
 弱点と思わしき水晶を破壊され、上半身を吹き飛ばされても存在し続けるライリュースを倒す手段などあるのだろうか? ……否、どんな生物であれ、生物である以上は必ず倒す術があるはずだ。
「思い当たるものは……残りの水晶か」
 万が一額の水晶を破壊してもライリュースが倒れないのなら足の水晶を狙う……それは護衛士たちが立てた作戦の中にもあった事だ。
「……やるしかないな」
 暫しの間瞳を閉じて考え込んでいたアムネリアは意を決するように、頷くと護衛士たちの下へと歩き始めた。

●左足を破壊せよ
「さて、額破壊の報告書には目を通したか? ……まだ見て居ないのなら、後で見ておくと良いだろう」
 護衛士たちが集まっている場所に現れると、アムネリアは行き成り話を始めた。
「頭を破壊されても倒れないライリュースをどうやって倒すのか……それは私にも解らない。だが、やれる事は全てやっておく必要があるだろう」
 やれる事をやる……それはつまり、まだ万策が尽きたと言うわけではないという事だ。
「うむ、既に予想がついていると思うが……貴様らには残った左足を破壊してもらう」
 やっぱりかと言う声と、壊して大丈夫なのか? と言う声を手で制し、
「破壊したらどうなるか、それは解らない。だが何もしなければ、奴は又回復し同じ事を繰り返す事になるだろう……」
 そうなれば、今まで僅かな変化だけですんでいた多くのものがライリュースと言う災害に飲み込まれてゆく事だろう。
「それに……ライリュースの上半身は炎の獅子の姿をしているが、まだ不安定なようだ。今なら簡単に近づく事が出来るだろう」
 連続して水晶を破壊している効果はそれなりにあるようだ、今をおいて全ての水晶を破壊する機会など無いだろう。
「ライリュースに近づいたあとは全力を持って水晶を破壊すると良い。ライリュースも炎の鞭などで抵抗してくるだろうが、水晶に張り付いていれば派手な攻撃は出来ないだろう」
 万が一直撃するようなことがあれば無事ではすまないだろうが、ライリュースの弱点である場所に張り付いていればライリュース自身がそれを攻撃できない……と言うことだ。
「それじゃ、くれぐれも気をつけて……絶対無事に帰ってくるんだぞ?」
 俯き気味にそういうとアムネリアは護衛士たちを見送った。


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参加者
黒衣の天使・ナナ(a19038)
残響の・ルナシア(a20060)
閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)
蒼き天威・ハーゼ(a30543)
無垢なる白・ラシェット(a40939)
星槎の航路・ウサギ(a47579)
ノソ・リン(a50852)
高空の戦娘・エミルリィル(a52732)


<リプレイ>

 見上げた山の頂上に座する炎そのものとなった上半身を持つ炎の獅子……火炎の王ライリュースを見た、高空の戦娘・エミルリィル(a52732)の脳裏によぎった印象は炎を噴出し続ける火山……。
 今まで面と向かって戦った事の無い彼女は段々と近づいてくるライリュースの圧倒的な存在感に耳が震えるような感覚を覚える。
「今度こそ終わりにする為に頑張ろうなぁ〜ん!」
 そんなエミルリィルの肩を叩いて、黒衣の天使・ナナ(a19038)が気合を込める。ナナはライリュースの姿を見て怪獣よりもギアなどに似ていると感じたようだが……どちらかと言うとそれとは対極に位置する超自然現象の類に近いだろう。
「はいっ。もう何回戦めか忘れてきましたですけど、今度こそ……です!」
「ココが踏ん張り所なんだよな、気合入れて頑張らないとな!」
 星槎の航路・ウサギ(a47579)はナナの言葉にぐっと拳を握り締めて、蒼き天威・ハーゼ(a30543)は自分の頬をはたいて気合を入れなおす。気合を入れれば良いと言うものではないが、まずは気合を入れなければ立ち向かう事すら出来ない……そういう格の相手だ。
「最初で最後にするなぁ〜ん!」
 そんなウサギたちの様子を見てエミルリィルは大きく頷いた……これを最初で最後にするのだと、そんな決意を込めて。

 予定通りにライリュースの左足へたどり着いた一行は、各々の得物を構える。
「ようやく此処まで漕ぎ着けた……か」
 大きく息を吸い込むと、残響の・ルナシア(a20060)は青白く澄み切った刀身を持つ直刀を抜き放ち、ひらひらと舞う羽のような身のこなしを行えるように構え、その横でナナが突き出した十字を形どった両手杖の先に生まれた虚無の手が翡翠色の水晶に爪あとを刻む。
「今度こそ倒せると信じて、全力を尽くしましょう」
 続けてナナの虚無の手が傷つけた場所へ向けて、閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)が光沢のない黒の槍をを素早く振るい、
「一撃一撃をしっかりと当てていきますですよ!」
 小さめだが鮮やかな黄色の剣と、刃先に向かって橙色が濃くなる剣を重ねるように振りぬいたウサギの黒と黄色と橙色の軌跡をなぞるように生じた衝撃波がライリュースの水晶に吸い込まれ……洗練された鋭い一撃は水晶に細長い傷跡を刻み込んでゆく。
 そしてイリシアとウサギによって刻まれた水晶へハーゼが全身の力を振り絞った螺旋回転で飛翔突撃を行うと更に水晶の表面へ細かい傷が刻まれていった。
「孤独な王君には同情もすれど……そろそろご退場願わないとね……」
 存在するだけであらゆる炎の事象を巻き起こすライリュースと言う存在そのものが人にとっては危険なのだ。銀花小花・リン(a50852)は呟くように言うとライリュースの水晶へ軽く手を触れ……次の瞬間、爆発的な気を叩き込んでその内部に衝撃を与える。
 リンの与えた衝撃で水晶の中に揺らめく炎がより大きく揺れたように見える……その様子を見つめながらエミルリィルは心の奥底に秘められた破壊の衝動を呼び起こし、
「頭を破壊されても動くとは……流石大怪獣、一筋縄じゃいかないわね」
 無垢なる白・ラシェット(a40939)はハーゼたちの前に、白くてふわふわした羽毛の塊ような守護天使たちを呼び出した。破壊された頭部には今、激しく燃え盛る炎がある……刻一刻と姿を変える炎であるが、そこにある炎は常に獅子の姿に見える不思議な炎だ。
 ラシェットはライリュースの炎を監視するために仲間達から少し下がったところに陣取っていた。そしてほんの一時の間ライリュースの炎を見続けて――
「何か来る!」
 叫んで飛び退こうとした瞬間、ラシェットの真横に炎の壁が出現し、並みの生物なら燃え尽きてしてしまいそうなほどの強烈な熱風と衝撃がルナシアたちの体を襲う。
 ライリュースの水晶にしがみ付いて何とかその衝撃を耐え切ると、ナナはラシェットの居たほうを確認し……衝撃の余波で壊れた人形のように転がるラシェットを見つけた。
「……なぁ〜ん!?」
 そしてぐったりしたラシェットを抱き起こすと……まずは息がある事を確認してほっと息をついた。
 炎の壁……否、ライリュースの炎の鞭が地面を一線した残像がそう見えただけなのだが……巨大な炎の鞭が通り過ぎた跡は大きく弧を描いて抉られ、その表面には解けた土が真っ赤に燃えていた。こんなものをまともに受けたら一溜まりも無いだろう、以前にライリュースの頭の上から見た以上に近くで見るとその威力は圧倒的だった。
 抉られ白い煙を上げる大地の傷跡を見つめて背筋に冷たいものが走る……ラシェットがこの抉られた地面のように蒸発しなかっただけ幸運だったのだろう。ナナはラシェットを抱えると戦いの場から遠ざけた。

 幾度かの炎の鞭が振るわれるが、水晶に張り付いている限り炎の鞭が直撃することは無かった……やはり自分の体を自分で傷つけるほどライリュースは愚かではないようだ。
 そうこうしている間に炎そのものとなったライリュースの鬣が大きく広がったかと思うと、炎の領域が作り出される。あたり一面真っ赤に染まり、息を吸うのも苦しいほどの熱量が周囲に満ち溢れる。
「……さぁ、終わらせよう」
 しかし喉を焼く炎の領域の息苦しさをものともせずに、ルナシアが洗練された動きで上段に構える……ライリュースとはもう幾度も渡り合った間柄だ、今更かける言葉も是非も無い。ルナシアは一切の迷い無くイタクァ・ザ・ウェンディゴを鋭く振りぬくと青白い太刀筋をなぞるように衝撃波が生じる。
「あわせますですよ!」
 ルナシアの左右からイリシアが黒い槍を振り払い、ウサギがルータ・トーチリリーを素早く振るうと生み出された衝撃波が一つ、二つ、三つと翡翠色の水晶を切り刻んでゆく。
「もう少しなぁ〜ん! 頑張るなぁ〜ん!」
 ルナシアたちの衝撃波によって刻まれた水晶の内側からあふれ出す炎の光がよりいっそう強くなる……その様子を確認しながらナナは癒しの光を放って炎に侵食される仲間達の体を癒し、
「後悔のないよう頑張るだけだ」
 ナナの言葉に頷くように体勢を落としたハーゼが螺旋の如く回転しながらライリュースの水晶へ向けて飛び掛る。結果なんてものは起こしてみないと解らないものだ、ましてや相手が七大怪獣ともなればいくら予測したところで想定どおりに収まる事などめったに無いのだから。
「これで!」
「砕けろなぁ〜ん!」
 生木の割けるような音を立てて罅割れ始めた水晶にリンが手のひらを当てて爆発的な気を叩き込み、エミルリィルは大上段に構えた繊細な翼の模様が描かれた巨大剣に、己の力を最大限に乗せて既に砕け始めた水晶へ向けて振り下ろし――。
 粉々に砕けた水晶から溢れ出した炎が、そのままライリュースの足を包み込んでゆく……そして赤く輝く炎はその奥に翡翠の輝きを残したまま巨大な炎の柱となってライリュースを支えた。
「倒れてはこないか……」
 倒れてくる事を警戒していた面々は多少拍子抜けしたような顔をしていたが、倒れてこないのならばそれに越した事は無いだろう……いや、倒れてこないと言う事は、恐らくライリュースが次に動くまでの時間が短くなると言う事に違いないのだから、良い事ばかりではないのだが。
「あちらも水晶を砕いたようですね」
 イリシアが右足へ向かった仲間達の方を見れば丁度右足も炎に包まれ、今やライリュースの体全てが完全な炎の形となっていた。
「……一度退こう」
 完全な炎に馴染むためだろうか? 今はライリュースの攻撃の手が休まっている。だが、何時までも自分を傷つけた冒険者達をほうっては置かないだろう……それに、この姿となったライリュースの能力は不明なのだ。一行は一瞬の沈黙の後、リンの言葉に従うとその場を後にしたのだった。

 ライリュースの姿が見えなくなった辺りまで移動し、リンたちは一息ついた。
「甘かったわ……」
 手ごろな岩に腰を下ろしたラシェットは肩をさすりながら溜息をつく……大抵の場合、攻撃の動作を見てから逃げる間などありはしない上に、ライリュースの巨大さをよくよく考えれば影響を受ける範囲も想像できたはずだ。
「生きていれば次があるさ」
 何もできなかった事に対し、悔しそうに少し唇を尖らせるラシェットにハーゼは肩をすくめる。命は無駄にしてはいけないとハーゼは考えているようだ。
「あう、炎の中に何かみえましたです」
 ウサギはハーゼにそうねと頷いたラシェットから他の仲間たちへ視線を移す。自分達が破壊した水晶から噴出した炎……その燃え盛る炎の中に翡翠色の光が混じっていたような気がしたのだ。
「確かに何か見えたなぁ〜ん」
 そんなウサギの言葉にエミルリィルは頷き、あれは何だったなぁ〜ん? とウサギと一緒に小首をかしげた。
「……悩んでいても仕方が無いし、戻ろうか」
 あう? なぁ〜ん? と二人で首を傾げあうウサギとエミルリィルに埒の明かなさを感じたルナシアが戻る事を提案した。取りあえずの目的は達成したのだ、此処で悩むより戻って次の指示を仰ぐなり行動を提案した方が健全であろう……いずれにしても次の手を打たなければならない……あれだけの化け物を放っておく訳には行かないのだから。
「そうですね」
 イリシアはルナシアの言葉に頷き、リンたちも同意を示す。
 茜色に染まる空の先……暗がりを照らす炎を司る王が居る……どんなに大きな炎でもいつかは燃え尽きるもの、そして燃え尽きる速さは炎の強さに比例するのだ。
 次こそは必ず……と、誰とも無く呟いた言葉に想いを重ねて一行は帰路へとついた。

 【END】


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