飽食者の舌



<オープニング>


 べしゃべしゃと水気の多い音を立て、大皿にのった料理が消えてゆく。けっして高級食材とはいえず、むしろ素朴な内容ではあったが、いずれも量だけはすさまじい。ちょっとした宴会なみといっていい。しかしそれが消費される速度はあまりに早く、酒の樽も肉のかたまりも、あれよという間に消えてゆくのだ。
 かしずく召使いたちはいずれも少年少女だ。まだ幼少といっていい姿もあるし、年長のものでもせいぜい二十歳前後といったろころだろう。それにしても召使いたちの様子は奇妙だった。男女十人前後いずれも、身にまとっているのはわずかな布きれにすぎず、ほとんど裸にちかい。目には生気なく、肌に血色もなかった。
 そのとき、白い肌をした少女が手にした大杯を落とした。杯は音を立てて転がり、ワインの染みを地に作る。
「アッ」
 少女に怯えの色が走る。
 ぐぶ、と、うなるような声がした。声の主……それは小山ほどもある蝦蟇蛙のような姿だ。全身疣だらけ、ぬらぬらとした汚泥色の皮膚をしている。旺盛な食欲を示す口は、ずっとクチャクチャと動いていた。しかしただの巨大な蛙ではない。この怪物の目には、たしかな知性の光があった。
「お前たち、まだわかってないようだねえ」
 中年女のような声で蛙はいった。
「いつになったら一人前の召使いになるんだい!」
 直後蛙の口から伸びたのは、その姿からすればアンバランスなほどに細く長い舌であった。舌は召使いの一人――杯を落とした少女ではなく、まるで無関係な少女――に巻きつくと、現れたのと同じくらい素速く姿を消した。
 ばり、という嫌な音が聞こえた。骨が砕かれる音だと思われた。
「ああっ!」
 さいぜんの少女が蒼白になった。その拍子にまた、たてかけてあった瓶のひとつを蹴倒してしまう。
「ショックかい……? だろうねえ、さっきのは、あんたの姉さんだったからねぇ」
 蛙の口からいやらしい嬌声がこぼれる。
「いったはずだよ! 粗相は許さないって。それができない罰は、連帯責任さ」
 ひひ、と蛙は口の端をゆがめた。よく見るとその顔は豚にも似ている。
「ところであんた、また粗相したね。……連帯責任だよ」
 舌がびゅっと伸びる。今度は、まだ年端もゆかぬ少年が悲鳴をあげながら暗黒の口に消えた。

 葵桂の霊査士・アイ(a90289)は憤りに肩を震わせていた。
「ある村落をドラグナーが占拠している。やつは村の一角に垣根を作らせ円形の囲みとし、その中央に盛大に火を焚き陣取った。そして村から年若い者ばかり集め、主に食事の世話をする召使いとして酷使しているという」
 大蛙風のドラグナーは、少年少女たちに半裸の状態を強いており、その姿の者以外は中に入れないという。趣味もあるかもしれないが、この扮装をさせているのはドラグナーが用心深いということをも意味している。かくあっては武器を携帯することはできないからだ。
 召使いという名目の人質をとられ、村人たちはドラグナーに抵抗することができない。しかもこのドラグナーは少年少女たちの些細な失敗も許さず、気に入らないことがあれば躊躇なく殺してしまう。そしてつぎつぎと「代わり」を要求しているのだ。
「外見が二十代以下の冒険者であれば、召使いの補充としてまぎれこむことは可能だろう。だが、やつに近づくには丸腰でなければならず防具ももちこめまい。また、いざ戦闘ともなればこのドラグナーは、『連帯責任』などといって無抵抗の少年少女を真っ先に襲う可能性がある」
 なるだけ犠牲を出さずに戦うには作戦を練る必要がありそうだ。
 ドラグナーは非常に肥え太っており挙動は鈍い。だが異常なほど細長い舌をもっており、これだけはたいへん迅速である。また、巨大な目をもっているため視界が広いことにも警戒すべきだろう。
 アイは厳しい口調を崩さずつづけた。
「ドラグナーを殺し、召使いとなっている者たちを解放することが諸君の使命だ」
 現在、召使いはちょうど十人、その全員を保護することは難しいにしても、せめて半数は救済してほしい。
 困難な作戦となるかもしれない。健闘を祈る。


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参加者
蒼天の幻想・トゥバン(a01283)
星刻の牙狩人・セイナ(a01373)
剣舞姫・カチェア(a02558)
紅炎の想術士・シェル(a16437)
燦然世界・アネモネ(a36242)
宵闇猫街道・セラフィータ(a45009)
叫鴉・エドワード(a48491)
絶えぬ波音・アニス(a50019)
漆黒の暴渦・キョウ(a52614)
黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)
黒狐・キオ(a68532)



<リプレイ>

 音もなく、雨が降る。
 水墨画のような灰色の空は、いつしか霧状の雨を地にこぼしはじめていた。
 鎧に塗った土が溶け落ちだしている。蒼天の幻想・トゥバン(a01283)はこれを塗り直した。この天候なれば陽光が鎧に反射することもなさそうだが、不測の事態はつねに想定しておかなければならない。
(「貪欲、飽食……忌み嫌われる面だが、それもまた人の性質であり、一つの可能性ってことか」)
 雨雫たれる前髪をかきあげる。手は泥まじりだが気にしない。トゥバンは身を低くし気配を殺し、目指す垣根へと急ぐ。
(「だからこそ止めないとな」)
 トゥバンは思った。
 やがて冒険者たちは目指す場所にたどり着いた。

 絶えぬ波音・アニス(a50019)は垣根に背をつける。身は雨で濡れそぼり、薄衣の服は肌にぴったりと張りついている。アニスは動悸の鎮まるをまちながら耳をそばだてた。
「はやく次の料理を持ってくるんだよ! 愚図愚図してると連帯責任だからね!」
 垣の内側から聞こえるのはドラグナーの怒声だ。野太いがヒステリックでもあるその大声は、アニスの心に静かな火をともした。
(「気に食わない……気に食わないねぇ」)
 されどあの大声が、冒険者たちの接近をかき消してくれたのは僥倖である。おかげで、黒影の聖騎士・ジョルディ(a58611)も重装備のままこの位置まで到達できていた。
「あくまで保険……だな」
 ジョルディは、仲間ふたりに『君を守ると誓う』をかける。漆黒の暴渦・キョウ(a52614)と、脳天ストライカー・キオ(a68532)、かれらは囮となり内部へと侵入するのだ。
 キョウは無言で頭をさげ微笑した。行ってくるよ、というようにキオも小さく手を振る。これがもっとも危険な役割であり、死の危険を伴うことはふたりとも承知している。しかしその恐怖と不安に押しつぶされていてはなにもできないではないか。キオは雨空に白い肌をさらし、キョウも武器と服を、玻璃のみぎわ・アネモネ(a36242)にあずけるのだった。
(「頼むぞ」)
 と、アネモネは囮となるふたりに目で告げる。基本はクールで、ときどき茶目っ気を見せるアネモネであるが、本日は真剣、強い感情の色を見せていた。
(「未来を担う子供達の命を弄ぶドラグナー、許してはおけない」)
 敵に対しアネモネは、怒りを通り越して憎しみすら感じる。

「新しい召使いふたり、入ります。ワイン樽を持って参りました」
 キョウは目を伏せ、怯えた様子を見せながらひとかかえの樽を火の前に置いた。
 見おろすドラグナーは威圧的なほど大きく、全身から生臭い匂いがした。見た目は特大のイボ蛙だ。芋をふんだんに詰めたズタ袋のごとく肥え太っている。眉間には深いしわが寄り、じろりと一瞥する目つきはよこしまだった。
「遅い! しかも追加の召使いはたった二人かい!」
 ドラグナーは鼻を鳴らし一喝する。その声にキオはわざとよろけた。
「使えるんだろうね、その子!」
「だ、大丈夫です」 
 キョウはおどおどといい、そんなキオをかばうような様子を見せた。大蛙の口元にニヤリとした笑みが浮かぶ。こうやって他を萎縮させるのが、この豚蛙の最大の喜びなのだ。
 ドラグナーは新入りの品定めをしていたため気づかなかった。このやりとりの合間に、叫鴉・エドワード(a48491)がハイドインシャドウを使って、火を挟んだ反対側にするりと入りこんだことに。

 日は傾きやがて暮れ、月のない夜がやってきた。
 それでも冒険者たちは行動に踏み切れなかった。現在、囮ふたりを加え十二人の召使いを、ドラグナーはまんべんなく傍へ呼びつけ用を命じ、距離をとることを許さないのだ。とりわけ、垣の外側に出る者があるときは、かならず三、四人をすぐそばに待機させている。人質にしているのだろう。なにか異変があれば、まっさきにこの少年少女を餌食とする肚と見えた。
 しかし辛抱づよくまつうち、ようやく機会がやってきた。
 ひとりの召使いが外に薪をとりに行き、このとき豚蛙のそばに置かれたのはキョウ、キオと少女一人となったのである。
 いまが合図のとき、キョウは自分の武器を召喚した。

 壁に穴が空いた、天井の一角が崩れた、そして正面の入り口からも、疾風となり駆け込むグランスティードがあった! 一気呵成、三方より突入する冒険者たち!
「ゴー!」
 壁の穴から飛びこんだのは星刻の牙狩人・セイナ(a01373)、
「逃げるわよ!」
 紅炎の想術士・シェル(a16437)も穴からあらわれ、子どもたちを確保した。この穴をあけたのはシェルだ。
「耳をふさいで!」
 駈け寄った少年に宵闇猫街道・セラフィータ(a45009)は叫ぶ。次の瞬間にはもう、セラフィータはその背を抱きあげ出口へと走り出していた。
「くっ! お前たち、逃げようったって」
 豚に似た大蛙はギョロリと目を剥き大口開けて、前脚でキョウを踏みつぶし舌で少女をさらおうとする。
「カチェア!」
 トゥバンの声に応えて
「任せよ!」
 しなやかなることまるで豹、スティードの背より剣舞姫・カチェア(a02558)は跳ぶ。かわす気はまるでない。身をいっぱいにひろげ舌にぶつかる! 舌はカチェアを激しく打ち地面に叩きつけたが少女は無事だ。このときキョウも、蛙の足の回避に成功している。
 エドワードはさながら、空気中から忽然と出現したように見えただろう。
「こっちだ」
 ハイドインシャドウを解いたエドワードは、カチェアがかばった少女の手を取る。このときエドワードは鎧進化で半裸に見えるよう外観を変えていたから、少女はとっさにかれを召使い仲間の一人と思ったにちがいない。
「さあ逃げるぜ!」
 あえて似た外観にすることで少女の抵抗感を減らし安心させて、エドワードは彼女を抱きかかえ奔った。そのときにはもう、ふたりの子どもたちがアネモネによって救出されている。
「手を離すんじゃないぞ。すぐに、危なくないところまで連れていってあげるから」
 グランスティードの手綱を手に、アネモネは子どもたちに声をかける。ひどく痩せ、痛めつけられ汚れたかれらの腕を見て、アネモネは怒りを新たにしていた。鬼畜の所行とはまさにこのことだ!
 冒険者が数方向から攻めたのは良かった。なまじ視界が広いのが仇、一斉に行動にうつったかれらをすべて目の当たりにし、蛙はどう反応すべきか瞬時とまどう。結果、ここで稼いだ幾秒かの短い時間が数人の命を救うことになった。
「性根の腐ったドラグナーめ! 肉片一つ残さず粉砕してくれるわ!」
 この間隙をつきジョルディが戦斧をふるった。
 しかし蛙、激しく撲たれたがこれを無視するように、
「逃がさないよ!」
 ビュツと舌を伸ばし逃げ遅れた子どもを二人、一気にとりこんで口に入れたのである。躊躇はわずか、高い知性をもつドラグナーはすでに、冒険者たちの狙いを理解していたのだ。
「ああっ!」
 シェルの肌から血の気が失せた。逃げ遅れた二人とは、シェルが両手に連れていた子どもたちだったのだ。弱々しい手は容易にもぎとられ、幼い姉妹は泣き声をあげる間もなく飽食者の口に消えた。シェルの手には、姉妹の手の冷たい感触だけが残された。
 セイナの目に涙があふれだす。
「逃げるですよ! 振り返っちゃだめ……」
 涙声で必死に、抱きかかえた子どもを守るべく背をかがめ走る。セイナが確保した一人は助かった。だがもう一人、いくらか後方にいた少年が怪物に呑まれてしまったのだ。突然あらわれた冒険者たちに即反応できなかったのがその子の不幸だった。怪物に骨を砕かれながら少年は、なにが起こったのか最後まで理解できなかったろう。セイナはそれを思うと悲しみで胸がつまった。
 逃がすものか――蛙は必死だった。眼球をめぐらせ半裸の召使いたちを探す。舌でひとりの首を叩き折り、いまひとり、足をくじいたとおぼわしき少女に舌を……
「こっちを見ろ、カエルばばあー!!」
 ……舌を伸ばそうとしたところで、この聞き捨てならぬことばを蛙は耳にした。声の主は召使いの一人であった。
「お黙り!」
 蛙は舌を生意気な召使いに伸ばす。けれど舌は思わぬ反撃にあってはじかれた!
「汚いんだよその攻撃! 肥満体型も最悪ーっ!!」
 キオは小刻みにジャンプして挑発をつづける。蛙がキオを召し使いと信じこんでいたのが幸いした。そうでなければ蛙はこれを無視したろうからだ。
 そのあいだに、足をくじいた少女をトゥバンがさっと騎上にすくいあげる。
「恐ければ目を閉じていればいい。安全は俺が請け負う」
 トゥバンは騎首を巡らせ駆け去る。少女は黙ってその背にしがみついた。
 セラフィータの救援も見事だ。たちまちにして残りの少年たちを外に連れ出している。
「ご安心なさいまし、恐いのはもうじき終わりです。私たちが終わらせます」
 優しく気高いセラフィータのことばは熱意と説得力、カリスマ性にあふれていた。もしかしたら少年少女たちは彼女を、女神の一人と思ったかもしれない。
「くそっ、このクソガキ!」
 蛙はキオを追いつづける。ところが伸ばした舌に、強烈な突き上げを喰らってはたまらない。
「悪いけど……なんてちっとも思わないか」
 アニスの指天殺である。
「悪行のむくい、たっぷり味あわせてやるさね。覚悟しなっ!」 
 アニスは断言する。
 人質の解放は終わった。これより討伐の時間だ!

「あの舌、巻きつくばかりではなく、叩く、切る、刺す、一通りできるようですわ」
 セラフィータは仲間たちに告げた。飽食者の舌、その動きは、人間にとっての腕に勝るもののようだった。
(「それにあの敵、まだなにか技を有しているような……」)
 確証はない。だが、経験がセラフィータにこれを感じさせていた。なにがあるにせよそれを見破る、あるいは早出しさせてしまうことができればいいのだが。
 鋭く突かれジョルディはバランスを失い膝をつきかけた。だがかれは歯を食いしばり、全身の力を足に込め衝撃をこらえた。
「重騎士の本分は護りにあり!」
 そして果敢に反撃するのだ。
「破断!」
 守備の要が倒れてどうするか! とジョルディは自分に言い聞かす。
 セイナがホーミングアローで牽制しているが、それでも敵は舌を自在にのばし攻撃をくり返す。
 キョウはいま、鎧がないゆえダメージは大きい。しかしかれも挫けるつもりはまったくないのだ。悲鳴をあげる体に反抗するようにキョウは笑った。
「連帯責任連帯責任って、それって結局、自分の責任逃れをしてるだけじゃないのかな?」
「なんだって! こいつ!」
 豚蛙は口を大きく開けた。
「自分の始末は自己責任でお願いだよ?」
 なおもキョウはいいたてる。その瞬間、蛙は意外な行動を見せた。
 蛙は跳躍したのだ。跳躍力は異常、跳ぶと同時に舌を飛ばしキョウを殴りつける。
「しまった、アタシとしたことが奥の手を」
 ドラグナーは悔しそうな声を出す。これで冒険者をいちどきに踏みつぶす算段だったようだ。しかし怒りのあまりキョウ一人を攻撃するためだけにこれを見せてしまったのだ。
「図星……だったかな、ブサイク蛙さん」
 キョウは不敵にも笑みを見せると、膝をついて崩れ落ちた。アネモネが駈け寄る。
「見あげた闘志だ。しかし一旦下がるぞ」
 アネモネはキョウに肩を貸し後ずさった。ぎりぎり重症ではない、なんとしても癒す。
 これで跳躍に注意すべきとわかった。以後、蛙が跳ぶそぶりを見せると、冒険者は即座に移動の体勢に入るようになった。とはいえ舌の攻撃範囲は広く、どうしても冒険者たちは距離をあけられてしまうのだ。
 ここでカチェアは敵に迫るを第一義とし、螺旋を描くように切り込んだ。
「トゥバン、挟むぞ!」
「カチェア……! たくっ!」
 トゥバンは舌打ちし息を合わせる。いまさら挟み撃ちなどと……カチェアだってわかっているはずだ、敵の視界が広く、生半可な挟撃など通用しそうもないということを。
(「いや、わかってないのは俺のほうか」)
 トゥバンは彼女の意図に気づいた。
 宣言とは裏腹に、カチェアはほぼまっすぐに敵に突っ込んでいた。飽食者の舌は槍のように彼女を狙う。
「……頼むぞ」
 半身となりこれを回避せんとしたカチェアだが、最初に叩きつけられたダメージは大きい。避けきれず脇腹をえぐられる。血の花が飛散した。
 血飛沫が消えたとき、蛙は知った。カチェアの行動は陽動、「挟むぞ!」という発言を含めてのブラフ、そのあとに飛びこんできたトゥバンこそが本命であったと。
「俺一人じゃ絶対、決められない距離だったよな。みんなの……とくにカチェアのお陰だ」
 達人の一撃、トゥバンはドラグナーの喉に深々と剣を突き立てていた。
 シェルの唇からは血がしたたり落ちていた。あまりに強く噛みしめていたため、破れ鮮血がこぼれたのだ。それでもシェルは痛みを感じない。幼い姉妹を救えなかった自分への怒り、人を人と思わぬ飽食者への激しい怒り、それが混じり合い真っ赤になって心を占めていたからだ。
「蛙の姿焼きにしてあげるわ!」
 シェルは燃えたぎるエンブレムノヴァを叩き落とす。もう蛙にこれを防ぐすべはない。
「シェルさん……私も、私だって……」
 つづけてセイナだ。セイナの強く引いた弓は影縫いの矢を放射、豚蛙を縛りつけるに成功する。
 蛙の舌は力なくだらりと垂れた。口の中に戻ろうとじりじり動くが、
「あんたもそいつ、そろそろ邪魔だろう? 切り落としてやるぜ!」
 とエドワードの電刃衝を受けるや、中央あたりが黒く萎びぼとりと落ちた。
 アニスも追撃の手を緩めない。
「これがダイエットのツボ! 圧してあげよう!」
 蛙の背に指天殺、力の限り打ちこんだ! ズボと手を抜くとアニスは妖艶な笑みを見せる。
「おっと、ちがった、あの世行きのツボだったね」
「そーいうことっっ!!」
 アニスに応じるはキオである。華奢な身なれど百人力、キヲは蛙をもちあげて、  
「その愚行、あの世で後悔させてあげるよ!!」
 力のままに剛鬼投げ! 舌のないドラグナーは蛙そのもののわめき声を上げた。
 それまでの傲慢さはどこへ行ったか、豚蛙は血まみれで這う。
「逃さん!」
 しかしその眼前へ、ジョルディの駒が先回りしていた。
 ジョルディは天を見あげる。すべての住民を助けられなかった。そればかりか、この作戦でも犠牲を出してしまった。
「……犠牲になった者たちよ……すまない」
 甲冑の下で、ジョルディはどんな表情をしているのだろう。ジョルディはヘルムのバイザーを上げなかった。
 そしてジョルディの断罪斧は、ドラグナーの頭蓋を叩き割ったのだ。
「だが……仇は討ったぞ」
 
「大切ね、命は」
 ことば少なにそう呟いて、セラフィータは村の人々へ知らせを伝えるべく垣根の外に出た。
 雨はまだ、やんでいない。
 少年少女の犠牲者、四名。薄氷を踏むような勝利であった。

(終)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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参加者:11人
作成日:2008/03/03
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