梅にイタチグドン



<オープニング>


●梅に……?
「ある山に、何本も梅の木が生えている場所があるそうです」
 花が咲く季節には様々な野鳥も訪れたりして、ちょっとした名所なのだと説明する真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の話に興味を引かれ、何人かの冒険者たちがテーブルについて話を聞いていた。
「しかし最近その辺りにイタチグドンの群れが出没するらしく、付近の人々も危険を感じて近づくことができないのだそうです。何とかグドンを退治し、名所を取り戻してください」
 ゼロはそう言って、冒険者たちに説明を開始するのだった。
「イタチグドンたちは1匹のピルグリムグドンに率いられた群れで、全体数は50ほどで剣や弓などの武器で武装しているようです」
 特に梅の木を意識している訳ではないらしいが、周辺で食料集めをしているらしい。
「ピルグリムグドンは三本の尾を持ち、それぞれが蛇の頭のような形状になっています。両手に持った剣で攻撃してくる他に、その尾の蛇から毒液を霧状にして噴出してくるようですので注意してください」
 毒液には中毒を起こす毒と麻痺毒があるらしいとゼロは説明する。
「無事に退治が終われば、梅の花が咲く景色を見物してもいいかもしれませんね。それではお願いします」
 ゼロはそう付け加え、冒険者たちに一礼を送るのだった。


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参加者
決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)
碧風の翼・レン(a25007)
凍土の業火・リンファ(a52440)
砂鹿・ニーナ(a59109)
樹霊・シフィル(a64372)
蒼天を往く烏羽・ラス(a64943)
晴天戴風・マルクドゥ(a66351)
月下黎明の・アオイ(a68811)
波寄・ズイメイ(a69144)



<リプレイ>

●梅花の危機
「梅が咲いていると肌寒くとも春っていう実感が湧くんだが……」
 いい季節にまた間が悪いのがきてしまったもんだと言う流れ者・ズイメイ(a69144)を始めとした何人かの冒険者たちは梅の木が多く自生する山に足を踏み入れていた。
「あ〜、もう梅の季節かぁ。冬は苦手で早く過ぎるのを願ってたけど、何か実感湧かないなぁ」
 何でも最近この山にはピルグリムグドンの率いるグドンたちが出没するらしく、その群れを退治するために冒険者たちはやってきたのである。決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)は周囲の様子に気をつけながらグドンの姿が無いか捜索を続けてゆく。
「ちょっと春の訪れに対して心の準備が出来てないけど……その象徴は守ってみせるよ」
 意気込むファウ。それからしばらく捜索を続けていると、がさがさと茂みを割って一匹のイタチグドンが姿を現した!
「おいでなさいましたわね」
 こちらに勘付いているのか、奥から何匹ものイタチグドンが続いてくる。それを察知して樹霊・シフィル(a64372)は放蕩の香りを発動させる。
「早春を告げる花々を、無為に散らすわけにはいかない……」
 凍土の業火・リンファ(a52440)も放蕩の香りを発動させ、周囲に妖しい紫煙が広がった。その香りに惹かれるように、次々にグドン達が近づいてくる。
「いくぞ!」
 迷走大風・マルクドゥ(a66351)がリンファを、蒼天を往く烏羽・ラス(a64943)がシフィルを連れてグランスティードで後退を始める。出来るだけ梅の木が少ない広い場所で戦う作戦なのだ。
 ひゅひゅっ!
 逃げ切ってしまわないように距離に注意しながら誘導を開始する冒険者たち。放蕩の香りの効果もあってグドンの群れは追ってくるが、その間に時折矢が飛んでくる。
「ちぃっ!」
 だが今は攻撃よりも移動は先決だ。肩に刺さった矢を振り払い、一同は先を急いだ。

「よーし、グドン退治だ!」
 戻ってきた仲間達と、その後に続くグドン達の姿を確認して砂鹿・ニーナ(a59109)は走り出す。戦闘する場所として目星をつけておいた梅の木の少ない広い場所、そこで何人かは待ち構えていたのだ。
 どくん、と血の流れが破壊の力を高めてゆく。血の覚醒の発動を確かめるようにニーナは蛮刀を握り直し、にっと口元で笑みを浮かべた。
「あれか……依頼はきっちりこなさないと」
 碧風の紡ぎ手・レン(a25007)はイタチグドンたちの奥にピルグリムグドンの姿を見つけ、そちらを目指して進んでゆく。立ち塞がる邪魔なグドンは武器に斬り付けた。
「数は多いです、気を付けて下さいね!」
 その直後、月下黎明の・アオイ(a68811)が護りの天使達を召喚し、冒険者たちの身を守らせる。グドンを誘導して連れてきた冒険者たちも振り返って展開し、ここから仕切り直しと言わんばかりに地を蹴った。
 ひゅぅっ! ファウが避けた矢が矢返しの風に巻かれて放ったグドンに跳ね返る。その威力はグドンの矢のものなので大したことは無さそうだったが、射掛けたグドンの目前にファウ自身が素早く踏み込んでいた。
「……ふっ」
 ブーメランの刃を押し付け、呼気と共に振り抜く。流れるように流水撃を走らせて、先陣のグドン達を斬り伏せていった。
「グドンが居ると梅の花がゆっくり見れないよねー」
 ファウの一撃から運良く生き残ったグドンも居た様子だが、ニーナが蛮刀を振り上げていた。辛うじて手にしていた剣を向けるイタチグドンだが……。
 ばがっ!
 血の覚醒によってパワーブレードの力を持つ一撃はグドンの錆付いた剣をへし折り、その身もろとも打ち砕く。
「ピルグリムグドンまでいるけど、頑張ろッ」
 逃げるのはもう終わりだとマルクドゥは血の覚醒を発動させ、破壊の力を体に宿してぐっと握る。そして目指すはピルグリムグドンの方へ向かったレンの元だ。
 ぎぃん!
 そのレンの繰り出したソードラッシュがピルグリムグドンの手にした剣によって受け止められる。そして蛇状の頭が牙を剥き、がぶりと腕に噛み付いてきた。
「ちっ!」
 何とか身を捻って振り払い、毒やマヒの影響が無いことを確認する。レンはぐっと奥歯を噛んで武器を構え直した。
 グドンの放った矢がシフィルの腕を掠め、じわりと血が滲む。だがシフィルは怯まずに紋章を描き出した。
「随分と騒がしいことですわね」
 生まれた光はエンブレムシャワー、敵を滅する光の雨となってグドン達に降り注ぐ。何匹かのグドンが倒れ行く中、ズイメイは粘り蜘蛛糸を放って生き残りの動きを拘束してゆく。逃げ出す者を少しでも足止めするつもりなのだ。
 アオイはヒーリングウェーブの光を振り撒き、誘き出しの時や今までに受けた仲間達の傷を癒していった。
「春待つ蕾の様に、今はしばし安らかなる眠りを……」
 眠りの歌を奏で立て、リンファはグドン達を眠らせていった。そうして敵の動きが鈍っている間にと、ラスは血の覚醒を発動させて力を高めてゆくのだった。

「慎重に処理できるようにするね」
 ファウはスーパースポットライトの光を輝かせ、イタチグドン達の注目を集めると共にマヒさせて立ち竦ませる。
「さーって、次は誰が相手かな?」
 動きの止まったグドンにニーナがパワーブレードを叩き付ける。戦いながらも梅の木の位置に注意し、グドンと自分との間合いを調節してゆくニーナであった。
 二刀のサーベルでソードラッシュを叩き込むレン、ピルグリムグドンは脇腹を薙がれて僅かにたじろぐ。だが追撃を繰り出そうとするレンの刃を辛うじて受け止め、蛇の尾が口を開いた。
『しゃぁぁぁっ!』
 蛇から霧状のもやが噴出され、レンとマルクドゥの体がマヒして動けなくなる。それに気付いたシフィルは素早く高らかな凱歌を奏でていた。
「まだ相手の数が多うございますので、包囲されないよう気を付けて参りましょう」
 仲間達の援護を行うと共に、シフィルは自分も敵の動きを見誤らないようにと気を張り巡らせる。
「とりあえず、お引取り願うしかないか」
 逃げようとするグドンの背を、ズイメイのホーミングアローが捉えて射抜き倒す。イタチグドンたちは粘り蜘蛛糸や眠りの歌によって動きを止められている者が多く、散発的な攻撃があっても冒険者に大きな痛手を与えることはほとんど無い様子だった。ただ数が多いのと逃げ出そうとする個体が出始めているのが少々面倒といえば面倒だが……。
「一掃です!」
 アオイは両手杖『Navigatoria』を突き出してニードルスピアを生み出した。無数の針がグドン達の体を次々に穿ち、貫いてゆく。リンファは眠りの歌で動けるグドンを眠りに落としていった。
「早く片をつけようか」
 ラスは流水撃でグドン達を薙ぎ払ってゆく。確かに今回のグドンは数が多い相手だが、冒険者たちの攻撃でその数も次々に減ってゆくのであった。
 ファウも苦し紛れに斬りかかってきた一体の剣をかわし、流水撃で斬り倒してゆく。
「っ!?」
 グドンの剣がニーナの脇腹を切り裂いた。痛みに耐えながらニーナは蛮刀を振り下ろし、キルドレッドブルーの魔氷と魔炎でグドンを包む。それはばきん、と音を立てて一瞬の後に崩れ落ちた。
「勇ましき者達へ、戦いの旋律を」
 リンファの奏でる高らかな凱歌が冒険者たちの戦意を鼓舞し、傷を癒して力を取り戻させてゆく。それによって仲間達の体勢が万全であることを確認し、アオイはニードルスピアをばら撒いていった。
「もう少しだな」
 冒険者たちの怒涛の攻撃によってあれほど居たグドン達の数はかなり減っていた。その残る群れの一角に向けてズイメイは貫き通す矢を射出する。
 ざっ、と射抜かれ倒れるイタチグドン。その場所にラスが踏み込んだ。
「放って置けば今後も一般人に害を為すだろう。此処で逃す訳にはいかない」
 巨大剣『砕架』の刃を寝かせ、横薙ぎの一撃を繰り出す。流水撃は真っ只中に踏み込まれて狼狽するグドン達を一気に斬り伏せてゆくのだった。
「一気にぶった斬るぜ!」
 破壊の力を込めて蛮刀を振り下ろし、ずがんとピルグリムグドンの肩口にパワーブレードを叩き込むマルクドゥ。ぐらりと揺らぐその体目掛けて、レンが連続で斬り付ける!
 ピルグリムグドンの胸が袈裟懸けに裂け、血が噴き出す。しかしそれでも怒りの炎を瞳に宿し、ピルグリムグドンは剣を振り下ろしていた。
「ぐっ!?」
 マルクドゥの左腕に刃がめり込む。咄嗟にバックステップで下がったお陰で骨までは達していないが、ピルグリムグドンは尚も攻めようと間合いを詰めてきた!
「そうは参りません」
 無数の木の葉が纏わり付き、ピルグリムグドンの動きを封じ込めてゆく。緑の縛撃を放ったのはシフィルだ。その隙にマルクドゥはガッツソングを奏でて自身の傷を癒してゆく。
 がっ!
 そしてピルグリムグドンは拘束されて動けない。今が好機と見て取ったレンが思い切り刃を振り抜き、シフィルは紋章を描いてエンブレムシャワーを解き放った。残り少ないグドン達を巻き込みながら、光は空を切って突き進んでゆく。

「逃がすわけにはいきません!」
 最早数体となったグドンは完全に戦意を失ったらしく逃げてゆく。それを追ってアオイはニードルスピアを放ち、ニーナも走り始めていた。
「はっ!」
 ブーメランを投げるファウに、ズイメイもホーミングアローでグドンの背を攻撃して打ち倒す。
「……せめて安らぎの中で」
 静かに眠りの歌を奏でるリンファ、そうして足の止まったグドンにニーナとラスが追いついて……覚める事の無い眠りへと落とす。
 こうして周囲のイタチグドンたちは全滅したようだ。後はピルグリムグドンを残すのみだが、それも今は緑の縛撃によって動きが止められ、既にかなりのダメージを受けている様子だった。
「はぁっ!」
 ソードラッシュで斬り付けるレン。斬撃に連撃を加え、左右のサーベルで切り返す。血に染まるその体に、再びシフィルの緑の縛撃が纏わり付き……。
 ず、ぅん……。
 その体が地面に崩れ落ち、それきり動かなくなる。拘束によって動けないのではない、冒険者たちの力がグドン達に勝り、この戦いに幕を引いたのである。

●咲き誇る梅花
「また暖かくなれば違う花も開く、楽しみは尽きないな……」
 無事にグドン退治を終えた冒険者たちは取り逃がしが無いかの確認も兼ねて、梅の花が咲き乱れる山を散策していた。春を待つ小鳥に歌を歌うリンファに、マルクドゥも暖かくなるのは嬉しいとはしゃいでいる。
「それにしても、弁当もってくればよかったなぁ」
 不意に呟いたマルクドゥの言葉に応えたのはレンだった。
「『花より団子』、より『花も団子も』の方が贅沢でしょ?」
 レンは皆のお弁当を作ってきたのだそうだ。喜ぶマルクドゥに、一同は一休みしてお弁当を広げてゆく。
「梅の花ですか……もう冬も終わりなんですね……」
 お茶を貰いながらアオイはしみじみと呟く。ふと見上げれば梅の花、ちちちと小鳥が飛んできて一声鳴いた。
「あー、春が近づいてきてるなぁ……」
 その音色をのんびりと聞きながら、ニーナはしばし目を閉じる。頬に感じて髪を揺らすこの風は、もうそれほど冷たくなかった。
「月並みな言葉しか出てこんが、やはり風情があるな」
 無事に名所に戻ったのなら良かったものだと頷くズイメイ。小鳥の声はまだ止まず、増えているようでもあった。
「これでやっと春が来るって実感できるかな」
 梅を見上げて春を感じるファウに、シフィルは花の香りを愉しむのはどうかと勧めている。
「それにしても良い香りでございますね。ドリアッドのわたくしでも惹きこまれてしまいますわ」
 ふふふとシフィルは笑みを浮かべていた。
「冬に耐えて凝縮していた命を解き放ったような色だ」
 自分達が春を実感するのはまだ少し早いかもしれないが、と軽く笑いながら、ラトは花を楽しんでいるようだった。
 こうしてグドンの群れを退治した冒険者たちは、確実に近づきつつある春を楽しんでから帰路に着くのであった。

 (おわり)


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