≪火炎の王ライリュース≫決戦ライリュース! 牙を折れ!



<オープニング>



 ――七大怪獣ライリュース
 その姿は岩のような表皮を持ちその表面に炎を纏う、普通の怪獣の数十倍の巨体を持つ獅子。
 彼は炎の領域に座するもの……ライリュースが居る場所はどんなに緑溢れる大地であっても、やがて炎の領域になる。
 彼はあらゆる炎を支配するもの……ライリュースはあらゆる炎を支配し、彼自身が不滅の炎そのものであるもの。

 完全な炎の姿となったライリュースの力は絶大だ……しかしその力は炎の力の強い場所……つまりは火山などで発揮されるものなのだ。
 無論、炎の強い場所以外でもその力を使う事は出来るが、それはライリュース自身の身を削る行為であり、力を使いすぎればライリュース自身が消滅の危険性を背負う諸刃の剣。
 それ故にライリュースは普段、表皮に岩の鎧を纏って力を抑えている。

 それが七大怪獣ライリュース……緑の大地を求め続ける、火炎の王の名を冠する獅子。

●決戦ライリュース!
「さて、ライリュースの本性が暴かれた事によっていくつかの事が解ったので説明しておこう」
 紫猫の霊査士・アムネリア(a90272)は護衛士たちを集めると難しい顔で話し始めた。
「まず、ライリュースは炎のある場所であれば何度でも復活する。しかも、復活するたびに強くなるおまけ付きだ」
 炎と言う印象から不滅である事は予想できそうだが……嫌なおまけもついているようだ。
「しかし、炎の力の小さい場所なら復活できない……そういう意味では、今、奴が居る場所は奴を倒すにはお誂え向きな場所と言えるな」
 そんなものをどうやって倒すんだ? と言う顔をしていた護衛士にゴロゴロ火山と今ライリュースが居る場所を大雑把に地面に描きながらアムネリアは応え、
「とは言え奴は今、先ほど戦った場所からゴロゴロ火山の頂上を目指して移動しているところだ……もう少しすると溶岩地帯に入ってしまうからその直前で待ち伏せし、何としてでも倒さなければならない」
 視線を地面から護衛士たちへと向けなおすと、はっきりと言い切った。そしてアムネリアは何かを思い出すように瞳を閉じると、
「……あと、完全な炎の姿のライリュースは周囲の熱を吸収して、炎を撒き散らしながら最大十段階の力を溜める事が出来る。具体的には一段階目では地面に炎が広がる。そして二発目は大地が火の原となり……攻撃を重ねる度にその威力を増して六発目は物凄い数の炎の槍のようなものが地面から空へ向かって吹き上がる……つまり、倍々にその威力を上げてゆく」
 ライリュースを中心に広がる炎の光景を思い描きながらゆっくりと説明する。もし、ライリュースを倒そうとするのならば、この炎からは逃げられないだろう。
「冒険者がどれだけ強靭だと言っても、所詮は人の身……耐えられて六段階目までだな……」
 つまりそれまでの間に決着をつける必要があるという事だ。
「まぁ、そんな訳で後は個別に説明するとしよう。あ、それから……」
 静まり返った護衛士たちにそう言うと、アムネリアはその顔をまじまじと覗き込んで……、
「今回、ライリュースを倒せなかった場合、最早我々の手に負える相手ではなくなってしまうだろう。最悪、ユリシアお姉さまに相談が必要になるかもしれない……それだけは絶対に避けたいから、心してかかる様にな?」
 少し厳しい口調でそう言うと、それぞれの説明に移るのだった。

●牙を折れ!
「さて、この班はライリュースの正面から突撃し、奴の注意を自分達に向ける」
 興味のありそうな護衛士が集まるのを待って、アムネリアは説明を始める。
「貴様等の姿を見つければ、奴は確実に力を溜始めるだろう……何故か? 奴はそれさえ使えば、必ず勝てる事を知っているからだ」
 それ一つさえあればどんな相手にも負けはしない自信の表れ、そしてそれを裏付けるだけの威力をライリュース自身がよく知っているのだろう。
「上手くいけば、爪の班が奴の弱点を叩いてくれる……そうすれば、伏せをするように奴の体が下がるから、牙の部分に翡翠色の光が見えるはず……そこを叩けばライリュースの口が開き、核の班が中へ進入出来るようになるだろう」
 だが、そこに付け入る隙がある。怪獣に比べて非力で矮小な人だからこそ気付ける細い糸のような、けれど致命的な彼の泣き所。
「核の班が行った後、口を閉じられると彼らの退路が無くなるだけでなく、完全に炎に呑まれてしまう可能性がある……だから、ずっと攻撃を続けてなるだけライリュースの口を開かせるようにしてくれ」
 つまり仲間達の命綱を握るようなもの、とても重要な役割と言えるだろう。アムネリアは護衛士たちをじっと見つめ、
「強烈な炎そのものである圧倒的な存在、撒き散らされる炎の痛み、時間のない恐怖……どれ一つをとっても足踏みしてしまいそうなものだ。しかし、忘れるな……その手に掴んでいるものを、今まで歩いてきた道を……何よりも、自分自身の力を、その想いを……だ」
 何かを掴むように小さく握った拳を胸に当てると、護衛士たちを見送った。


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参加者
白銀の山嶺・フォーネ(a11250)
黒衣の天使・ナナ(a19038)
闘姫・ユイリ(a20340)
閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)
変遷する紺青・ジィル(a39272)
弓使い・ユリア(a41874)
空白の大空・マイシャ(a46800)
黄昏の翔剣士・ティズ(a50181)
ノソ・リン(a50852)
綾なす火炎の小獅子・スゥベル(a64211)


<リプレイ>

 眼に染みるような茜色の空に混じる紺色が徐々に強まり、風に含まれる匂いが硬いものになって行く。
 太陽のかわりに月と星の光が満ち始める世界の中で、鋭敏になりすぎる神経を少し落ち着けるように、銀花小花・リン(a50852)は大きく息を吸い込む。決して気を抜いてはいけない……だが、今から気を張っていたら肝心な時に緊張の糸が切れてしまう。故に適度に意識して気を緩める事は必要だ。リンはもう一度大きく息を吸い込むと、周囲に居る仲間達は如何しているだろうか?
 と、すぐ横の岩陰に隠れていた、白銀の山嶺・フォーネ(a11250)と、蒼穹の虹飛燕・ユリア(a41874)に視線を向ける。
「只でさえ圧倒的、これ以上進ませればもはや対抗不可能。本当に土壇場瀬戸際崖っぷち、ですね」
 リンの視線に気がついたフォーネは彼女のほうへ顔を向けると少し緊張した面持ちの笑顔を返し、ユリアはフォーネの言葉を噛み締めるように小さく頷いた。
 ここまで来た以上最早退路は無い、ならばライリュースの炎に負けない程の意思の炎を持って、全力でこの戦いに終止符を打つしかないのだ。
 岩陰から顔を覗かせライリュースが来るであろう方向をじっと見つめると、その先に揺らめく炎を見た気がしたフォーネはユリアと共に、仲間達の鎧に強大な力を注ぎ込んで形状を大きく変化させていった。
「火炎の王ライリュース、燃え盛る炎そのもの……ですが、あの炎に焼き尽くされるわけにはいきません」
 フォーネに鎧を強化して貰った、閃紅の戦乙女・イリシア(a23257)は彼女が見ていた炎が徐々に大きくなってゆく様を見守りながら自分の胸へ掌を置く。強大な力を持つライリュースは炎そのもの、だがその炎に焼き尽くされる訳にはいかない。何故なら……、
「今度こそ正念場なぁ〜んね……ナナ達の故郷の為にも頑張るなぁ〜ん!」
 イリシアの横で、黒衣の天使・ナナ(a19038)が小さく拳を握り締めた……そう、何故なら彼女達の後ろには見知らぬ誰かの、友の、家族の……多くの命があるからだ。
「……負けねぇ。死なねぇし死なせたくねぇ仲間が居る」
 それは大袈裟かもしれない、しかし命の連鎖は回り回れば何時かはそれらに及ぶ事もあるだろう。
 リンがユリア達とは逆のほうへ視線を向けると、地面に座り込んだ、インフィニティアジュア・ジィル(a39272)は手持ち無沙汰な両手を見つめながらそう呟いた。
 リンはジィルに頷きフォーネが見た炎の方を覗き見ると……獅子の姿を模した炎の明かりがはっきりと見える。もうすぐ決戦が始まる……空気が引き締まる、まだ日は暮れたばかりなのにまるで深夜のような静けさが周囲に広がっている。
「全力を出した相手と戦うのはいつだって凄く怖い……でも」
 戦いの前独特の空気、己が命の灯火で相手を飲み込むか、相手に自らの灯火を消されるか……その二択しかない決戦の予感……二振りの剣・マイシャ(a46800)はその空気を痛いほどに身に感じ、何時の間にか完全な紺色に染められた天を仰ぐと、
「俺には仲間がいるから、大丈夫です!」
 仲間が居るからどんなに強大な敵でも恐れる事は無いと、背中に仲間の吐息を感じられるから最後まで戦えるのだと、そう力強く宣言した。
「最良の結果を持って帰りましょう。そう、かけがえのない仲間と……全員で」
「……ええ、それぞれの場所で戦う仲間達を信じて、仲間達の為に、仲間達と共に」
 青臭い台詞……だが、その台詞は今この場に覚悟を決めて来た者達に相応しく思え……フォーネはマイシャに柔らかい微笑みを向け、赤い瞳でマイシャを一瞥したイリシアは淡々とそう呟いた。
 炎の獅子の姿が近づいてくる……ライリュースの放つ炎の光が周囲を照らし出し、巨大が踏み出す足が大地を震わせ、その接近を否応無く伝えてくる……戦いの始まりは、もうすぐそこまで来ていた。

 業火が燃え盛る……闇夜に浮かび上がる炎の業火。
 存在するだけで大地を火山へと変貌させ、不滅の炎の肉体を持つ七大怪獣ライリュースの業火がすぐ近くまで来ている。
「まあ、不滅の炎だってんなら別にそれでもいいよ。最初で最後の死を、あたしらがくれてやるだけさ」
 閃火燎原の・スゥベル(a64211)は呼吸を整えると、リンを顔を見合わせライリュースの炎の後ろ足が爪を狙う仲間たちが居る場所付近に下ろされたのを確認し――
「よっしゃ、ゴー!」
 大声を上げて仲間達に突撃の合図を出すと同時にライリュースの前へと躍り出た。正面から見上げるライリュースは巨大な炎の塊そのもの……スゥベルたちからは、まだ少し距離があるにも関わらず圧倒的な炎の熱が感じられるような気さえした。
 だが、怯んではいられない。闘姫・ユイリ(a20340)は大きく息を吸い込み、
「それじゃ命懸けの勝負、始めようか!」
 と叫んでライリュースに向かって突撃を開始する。戦うのは良い、戦う事で己を高められるのだから……けれどそれによって何かを失くすの嫌だと、もう何かを無くすのは嫌だとユイリは思うのかもしれない。
「何度も刃を交えてきたなぁ〜んけど……今日こそ、終わりにしようなぁ〜ん!」
 ユイリに続くようにナナが岩陰から飛び出しその身に黒い炎を纏ってゆき、イリシアも目立つように羽織っていたマントを脱ぎ捨てて自分の存在をライリュースへ主張した。
 ナナやイリシアの動きで、炎そのものであるライリュースの顔が自分達の方へと向くのを確認したジィルが、手持ち無沙汰となっていた両手にFRONTLINEと名付けた両手剣を呼び出し、
「……出番だ! 行くぜ相棒!!」
 確かな重みと手応えを腕に感じジィルは満足そうに頷いた。予め決めていた合図……これで自分たちの陽動が成功した事を、爪を狙う仲間たちに伝える事が出来ただろう。
「貴様の相手はこの俺だ!」
 ライリュースの顔は此方を向いているが、それでもまだ足元に潜んでいる爪を狙う仲間たちに気付く可能性はある。黄昏の翔剣士・ティズ(a50181)は注意を確かなものにするために両方の手に持ったサーベルを大きく広げながら自分の存在を示し、最後にスゥベルが自らの体に黒い炎を纏うと。
 空気を裂くような音と共にライリュース自身の炎が激しく揺らめいたと思うと、広がると炎の飛沫が周囲に点々と飛び散り、殺風景な荒野に炎の華を撒き散らした。
 リンはライリュースへ向かって走りながらその様子を確認する……この程度の炎ならば何と言う事もない、そう今はまだ何と言うことは無いと、そう思えた。

 ライリュースの体が沈む。
 爪を狙っていた仲間たちが上手くやったのだろう……伏せる格好となったライリュースは、目の前まで迫っていたリンたちの目の前に炎の塊であるライリュースの顔をが差し出す形となった。
 そして伏せる形となったと同時にライリュースの炎が激しく燃え盛り、地面には炎の無数の炎が燃え広がって周囲はまるで炎の原のように闇夜に浮かび上がる。
 二度目の炎も、ユイリなどから見ればたいしたことは無い……激しく燃え盛る炎に一瞬顔をしかめるとユイリは翡翠色の光を探して、
「光は……見つけた!」
 右奥歯付近の人の体より遥かに大きな牙の中にライリュースの紅の炎とは別の、翡翠色に近い光を放っているのを見つけた。
 ユイリはすぐさま天風の剣太刀と名付けた蛮刀を掲げると、繊細な装飾が美しくも雄々しい銀の太刀に稲妻が走り次の瞬間には神の裁きを思わせる強烈な電撃がその先端より牙の中にある光に向かって放たれる。
 ユイリの電撃が牙の光を捉えるのとほぼ同時に、イリシアが光沢のない黒の槍を素早く振るい切り裂かれた空気の衝撃波が牙の光を縦に割いた。
 そしてナナは癒しの光を放って仲間たちの傷を癒して行く……まだまだ回復する必要はなさそうだが、油断はしないほうが良いだろう。
「これが最後。ほんの僅かの間の決死行、始めましょうか!」
 ナナの癒しを受けて、フォーネが薄く開きかけたライリュースの口へ向かって突撃する。強力な護りの天使を頭上へ召喚して力を上乗せした菊理媛神を牙の光へ向けた打ち下ろし、それと同時にジィルの放った電撃がフォーネの捉えた光を貫くと――ゆっくりとライリュースの口が開いた。
 それを待っていた核を狙う仲間たちが、次々とライリュースの口の中へ駆け込んでゆく……。
「ちゃんと帰ってくるまでが遠足なんで……お気をつけて」
 口が開いたといっても油断は出来ない、ユリアは牙の光を矢で射抜き、躊躇無くライリュースの口へと駆け込んで行く彼らに声をかける……ユリアの声は聞こえてはいるだろう、だが誰一人として振り向く事の無い彼らの背中に、ユリアはかつて同じような事があった事を思い出す。あの時は、ちゃんと皆無事に帰ってきたのだから、今回もきっと……。
 核を狙う仲間たちの動きを確認したリンが両手を広げると、その手に小さく蓮の花が彫りこまれた斧が現れた……これが二度目の合図。突撃成功の合図だ。
「もう、逃げ道はねぇな」
 リンが合図を出した事を横目にスゥベルは薄く笑うと、飾り気の全く無い紫扇を頭上へ掲げ、その先に巨大な火球を紡ぎだす。紡がれた火球は牙の光へ直撃し大きな爆発を巻き起こした。
「今度こそ……その首刈り取ってみせるぞ、ライリュース!」
 後は生きるか死ぬかの二つに一つ、ならば全力を持って生きる道を選択しよう。マイシャはそんな思いを乗せ、自らの気を練って作り出した刃を一つ、二つと牙の光へ向けて放つ。
「お前等の帰りを待ってるからな!」
 そして、ライリュースの炎の中へと消えていった仲間たちに向かってティズは叫ぶと、あらゆる攻撃をそらす構えを作り――その直後、ライリュースの体の炎の色が白く変化したかと思うとティズたちの足元全てが炎で埋め尽くされた。
 三度目の炎……それは冒険者で在れば気にする程でもない威力だが……死への秒読みは確実に刻まれ続けていた。

 ライリュースの体の炎が大きく隆起し、ライリュースを中心に炎が渦巻く。
「まだです、まだこんなもので……」
 ユイリとジィルの電撃が牙の光を貫き、マイシャが気を練って作り出した刃とユリアが紡ぎだした矢が牙の光に突き刺さる。
 四度目の炎を受けて、まだ核を狙いに行った仲間たちの退路を保つために、リンたちはライリュースの牙の光を叩き続ける……そして、隆起した炎が鎧のよう固まり、ライリュースの体から炎から漏れる炎の飛沫が針のように周囲に降り注いだ。
「っ!」
 五度目の炎……炎の針を紺瑠璃と漆黒の二振りの剣で振り払うマイシャだが、明らかに今までとは別格の威力に眉をひそめる。
「誰一人欠ける事無く、吉報を待ってる仲間のところに笑顔で帰るのなぁ〜んよ!」
 それでもまだ、ナナの癒しの光で全快できるのだが……、
「……怖くないって言ったら嘘になっちゃうけど」
 一気に跳ね上がる炎を前にして次を耐える自身は全く無い。しかしそれでもユリアは仲間たちと一緒に最後まで戦いたいと願い矢を射続ける。
「死にたいわけじゃない。あきらめたくないだけだ!」
 そしてティズが咆えると同時に漆黒のツインサーベルを素早く振るって不可視の衝撃波を繰り出し、閉じかけたライリュースの口を再び開かせ――燃え盛る炎の瞳が自分の姿を捉えているように見えた刹那、ライリュースの鬣が大きく広がり、地面から人一人分はあろうかと言う炎の槍が数え切れないほど天へ向けて吹き上がった。

 炎の槍の一つは衝撃波を放った格好のままだったティズの足元から唐突に現れ彼女の体を貫き、炎の槍の猛攻はユリアとマイシャの体をも捉える。
 強化された鎧などものともしない炎の槍の前に、マイシャたちは糸の切れた操り人形のように力無く倒れてしまった。
「なぁ〜ん!?」
 倒れたティズたちに駆け寄りながらナナは癒しの光を放ち、まだ立っていられている仲間たちの傷を癒すが、マイシャたちの傷は深すぎて回復しない。
「例え……熱で視界が滲んで……前が見えなくなっても……」
 仰向けに倒れてなお、朦朧とした様子で戦い続けようとするマイシャをナナは抱きかかえる……もしこの状態で次にライリュースの攻撃を受けたら……脳裏に掠める喪失の予感に耳が震える。
 否、次を受ければ六度目を耐えた仲間も自分も確実に倒れるだろう、そうなれば助けてくれる仲間ももう居なくなる。
 誰も居なくなる。
 誰一人として帰る事は叶わない。
 このままでは死ぬ、死ぬのだ……冗談みたいにあっさりと。
 何処か現実味の無い感覚だったものが、今まさに、自分達の目の前に突きつけられている。
「全力でやって、みんなで帰るんだから!」
 それでも諦めない、諦める訳には行かない。否、最早逃げる事も叶わない、逃げたとしても途中で炎に捉まるだろう。
 全員助かる道は只一つ、ライリュースの核を破壊することのみ……その為には自分たちの役割を全うする事が必要なのだ……ユイリは神の裁きを思わせる電撃を放ち。それに併せるようにイリシアの不可視の衝撃波で牙の光を切り裂く。
「必ず戻ってくると信じていますから……どんな炎の海の中でも諦めたりなんてしませんよ!」
 そしてジィルの気合に満ちた熱い歌声を聞きながら、フォーネが守護天使の力を上乗せした一撃を捻じ込み、リンもそれに続くように牙の光へ手を翳すと爆発的な気を叩き込んで、核を叩きに行った仲間たちへと希望を紡ぐ。
「……トドメ刺すのを信じて!」
 そう叫んだスゥベルが作り出した業火球がライリュースの牙へと叩き込まれた瞬間、ライリュースの体から眩い光が放たれ、その体が大きく膨らみ――
「危ないっ!」
 危険を感じたフォーネとユイリが既に倒れたティズとユリアを庇うように覆いかぶさり、ナナはマイシャをしっかりと抱きしめ……その上を業火が吹き抜けたのだった。

「あ……つっ……」
 炎が収まった後、恐る恐る瞳を開けば、そこにライリュースの姿は無かった。周囲には炎に巻き込まれた仲間たちが倒れていたが……とりあえず全員息はあるようだ。
 ライリュースの溜めであるなら無事で居るはずは無いしライリュースが消える理由も無い……となれば、あれは核を破壊した反動だったのだろう。
 そこまで考え、もう戦わなくて良い事を理解すると、緊張の糸が切れてしまい仰向けに倒れる。
 考えるのも、勝利の宵に浸るのも……後でゆっくりやれば良い……今は只、生きている喜びを噛み締めよう。
 寝転び見上げた夜空に瞬く満天の星達が、自分たちの勝利を祝福してくれているようだった。

 【END】


マスター:八幡 紹介ページ
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死亡者:なし
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