<リプレイ>
●Welcome WildFire 「ふわぁ、大きいのです……!」 常夏の大陸ワイルドファイアに降り立ったナタリーの第一声は、感動に満ちていた。キラキラと目を輝かせながら、大人の身の丈ほどもあろうかという植物と背比べをしてみたり、と、誰の目から見ても大はしゃぎ。禁呪領域・トール(a68949)はその様子を微笑ましく眺めつつ、さっぱりと晴れたこの日に感謝する。きっとこの天気なら、湖も、そこから見上げる世界も美しいだろう。 さざなみの音や独特の空気を感じて、お昼寝大好き・シャンテ(a14001)は故郷に帰ってきた事を実感していた。ふと視界の隅に全開全力なナタリーを捉えて、あれで最後まで持つだろうかと一抹の不安。 「ナタリーさん、荷物持とうかなぁ〜ん?」 「あ、はい、きっと大丈夫なのです」 ありがとうございます、と笑顔で答えるナタリー。が、少し間を開けて 「……えと、疲れて来た時は、お願いしちゃって構いませんか?」 少し気恥ずかしげにそう言った。 「さ、もう行こうか? 湖を堪能する時間が短くなる」 嵐のドラマー・ウェスタ(a27486)が全体に声をかける。はいっ! というナタリーの元気な声がそれに答えた。 湖へ向かう道中も、ナタリーははしゃぎ通しだった。見るもの触れるもの全てが新鮮で、一々立ち止まってはじっと見入る。その隣で、プーカの忍び・キャシー(a65623)も一緒に初めてのワイルドファイアを楽しんでいた。気楽な仕事だと同僚が見つけて来たこの依頼。未知というものは恐ろしくも惹かれるもの――ひとつの発見が大きな感動に変わる。 「ナタリーさん、湖はまだ遠いのですか?」 「そっ、そうでした!」 断章・グリフォス(a60537)の突っ込みに、ナタリーはぴょんと跳ねるようなオーバーリアクションを取った。面白いものも美しいものも多くて、つい夢中になりますね、と照れながら、名残惜しげに凝視していた赤い花から離れる。そんなことを繰り返しながら森を進み、やがて感嘆の息と共に彼女は足を止めた。 小さな背中越しに見える湖は、陽光に煌き、宝石のような輝きを放っていた。
●Beautiful Place しかし、絵画にも似たその景色に不似合いな黒が同時に目に映る。普通のそれより3倍程の体躯を持つ羊怪獣の体は黒く、暑そうなことこの上ない体毛も黒に限りなく近い紫色をしていた。のんびりとこの湖を楽しむには、もう一仕事必要なのだ。 シャンテに少し下がっているように言われ、ナタリーは緊張した面持ちで頷く。ウェスタが傍らに待機し、他の6名は慎重に羊怪獣へと近付いていった。
遠回しな朔望月・ノッテ(a69822)の唇から魅了の歌が紡がれる。大きな体ごと向き直った二匹の怪獣は、不思議そうに首を傾げて冒険者達を注視した。 『何、かー、ご用ー?』『うー?』 キャシーとトールが、別の飲み場に移動してくれないか、と頼んでみる。しかし、帰って来たのは不満げな声。ぶるる、と体を震わせて目を伏せる。 『だっ、てー、遠いー』『いー』 『二時、間で、終わるー』『るー!』 同じ湖である以上、都合良く死角になるような場所も無く。しかし怪獣達の掲示した時間は、待つには長過ぎた。ここは幸せの運び手の出番、と、吟遊詩人・アカネ(a43373)がこう提案する。 「綺麗なぁ、音色をぉ、お届けしたいのですぅ」 ついでに、ナタリーに聞いて貰おう、と。見れば、ナタリーはどうなるのかとハラハラし通しのよう。気分を和ませてもらう為にも有効かもしれない。アカネが楽譜を広げ、音を紡ぎ始めれば、ノッテがそれに合わせて舞った。アルト・フルートの低音が効いた牧歌に、ゆったりとした、けれど一つ一つの形が美しく決まる踊り。 音楽が止まり舞いの最後のステップを踏んだ時、後ろから小さく拍手の音が聞こえて来た。 「どうでしょうかぁ?」 『うー、んー、とー』『とー』 急に治まった渇きと空腹に困惑気味の怪獣達。暫く沈黙が続いた後、のっそりと湖に背を向けた。退いてくれるらしい。戦いは回避出来たと、少し張り詰めていた空気が和らぐ。太陽は丁度良く真上にかかっていた。
●Under the Lake ナタリーはすこぶる上機嫌だった。羊怪獣が去った事を告げると、これで泳げますね、と嬉しそうに笑う。 「タオルの準備はしてありますから、ご入用の方は」 そして早速、次々と湖に入る冒険者達に、グリフォスが声をかけた。汚れないようにタオルを置いて重石を置くと、自らも着替えて湖の中へ。 ゆっくり目を開けてみれば、七色の鱗の小魚が群れを成してお出迎え。くるくると踊るように近付いたかと思えば離れ、またくるくる。人を怖れないのはワイルドファイア故のおおらかさか。水面を見上げれば、太陽が反射して、水晶の中に沈んだような気分になってくる。永遠に見ていたいような美しさ。 (「そ、そろそろ息が!」) うっかり溺れそうになり、慌てて急浮上した。じっと湖面を見つめていたシャンテも。湖中へと体を躍らせる。ざぷんと景気の良い音を立て、沈む体は心地よく冷えた。ゆらゆらと揺れる水面は万華鏡のように姿を変え続け、上から見るのとはまた違った美しさを発見する。 (「上にも下にも太陽があったなぁ〜ん」) よく見ると不思議。そんな光景。宝石箱の中に飛び込んだような景色は、かのセイレーンのお眼鏡に適う訳だと納得した。ノッテが泳ぐと、それに小魚も付いてくる。どうしてだろう? と考えて数秒。背中の羽に集まっているのだと気付いた。急に止まってみたり方向を変えてみたりすると、それに合わせて魚達も右往左往。きらきらと輝く鱗は、生きた宝石にも見えて、 (「本当、綺麗……」) 感嘆の息がこぽりと水面へ上がって行く。向こう側ではナタリーが、潜っては浮上し、潜っては浮上しを繰り返して楽しげだった。 そうしてはしゃぐこと暫し。水中をすっかり堪能して着替えたナタリーに、トールがお茶会にしませんかと声をかけた。良いんですか、と喜ぶナタリー。 「あまくておいしーの♪ いっしょにたべようよー♪」 「えぇ! 凄ーい、沢山ありますね」 疲れた時には甘い物とお茶で休憩だ。湖面を吹き渡る風も気持ち良く――シャンテは木陰でお昼寝中だ。桜のバウムクーヘン、多種多様なワイルドファイアのドライフルーツ、チョコケーキもどうだろう? 集まってわいわい食べればそれもまた楽しい、旅の醍醐味だ。 「自然の恩恵を受けたこの大地は、とてもすばらしいものだとトールは思います」 「本当ですね。私、ここに来る事が出来て幸せです」 顔を綻ばせて、ナタリーは供されるお菓子とお茶を食べる。ドライフルーツは特に、この大きさが珍しいのか、種類をよくキャシーに尋ねた。答えを得る度にほうと息を吐いて、ぽつりと感想を零す。さり気なく宣伝をするウェスタには、じゃあ是非ワイルドファイアに支店を出して下さいね、と無邪気に笑った。 ナタリーの傍らに置いてあるメモ帳に、ふと気づいたグリフォスが尋ねると、照れながら詩を書き留める為のものだと答える。 「歌ってみてもいい、ですか……?」 聞き返すナタリーに肯定を返すと、彼女はすっと立ち上がり優雅に一礼、一呼吸。朗々と紡がれるのは、ワイルドファイアで得た感動、それと、ここまで連れて来てくれた冒険者への感謝だった。 アカネのフルートが音を添える。そこに、ごく自然にトールが合わせる。グリフォスが声を乗せれば、ノッテも合わせてステップを踏み始めた。 「みんなやるわねぇ」 「ナタリーおねーちゃん、じょうずー♪」 呟きながら、ウェスタも手拍子を加える。名残惜しげに歌が終わると、誰からと言わず盛大な拍手が巻き起こった。 「人生ぃ、のんびりする時もぉ、よいのですぅ」 アカネの言葉が、皆の表情が、この旅の成功を何より物語っていた。
●Singing Memory 歌いはしゃいだ一日。日が落ちる頃、ナタリーはすっかり疲れ果てていた。本当は眠いのだろうが、お星様を見るまで帰れないです、と気合で起きていたのだ。 「よかったらまた来て欲しいなぁ〜ん」 シャンテの問いかけに、勿論です、と、半分閉じかけた眼で、でも確かに頷くナタリー。お友達も出来ました、と、残り一欠片のドライフルーツを口に放り込む。楽しかったです――そう言う声は最後まで行き着かずに、ぱたりと眠り込んだ。 輝く星々の下、少女は夢を見る。もっと素敵で美しい、ワイルドファイアという新天地で、優しい冒険者のみんなと一緒に、はしゃいで歌う夢を。それは正夢になるのかも、知れず。

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参加者:7人
作成日:2008/03/27
得票数:ほのぼの8
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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