【壮絶親子喧嘩! 最高の壷を求めて】森林の染料



<オープニング>


「ふむ、このスープは裏越しを幾度にも重ねているな。手抜き作業では出せない味だ」
「オルセアさん、あなたいつから食通になったんですか……」
 酒場のテーブル席、ツキユーとオルセアがカボチャのスープを飲んでいる。
「ん、よく来てくれた。実はまた壷を作る材料を調達にいかなければならなくなってな。手伝ってくれ」
 オルセアはチビチビと飲んでいたスープを卓に置き、冒険者に頭を下げた。
「冒険者の皆さんに護衛を依頼する訳ですから、もちろん危険な場所ですよー」
 補足するツキユー。どことなく楽しそうなのは気のせいだろうか。
「今回必要なのは染料だ。染料には藍を使う」
「例によって私がオルセアさんの情報を元に最高の藍がある場所を霊査したんです。で、ここからしばらく行った森にあるそうなんですけど……」
 ツキユーは言って目的の森周辺の地図を冒険者達へ人数分配る。その地図には『腕長熊の森』と書かれていた。
「なんだかしらないが、狂暴で腕がやたら長い熊達が森に現れたらしい。それで冒険者の護衛が必要なのさ」
「ええ、丁度その森に住むドリアッドの方々から腕長熊の退治を依頼されたんですよ。ついでに退治もお願いしちゃおうかなー? なんちゃって♪」
 最後は可愛げに言ってみるツキユーだが、周りの目は冷たい。
「……ま、まあ藍という植物を採りに行くんだから、森を傷つける訳だし……森に住む ドリアッドに貸しを作っておくのも悪くないしな、退治の方頑張ってくれ」
 オルセアはどこか他人事のように言ってのけるのだった。

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参加者
双剣士・アールシュケル(a00718)
紅の女子大生・ルビナ(a00869)
獄炎黒蝶・マオ(a02915)
月祈燈花・マーリーシス(a04902)
陽だまりに舞い降りし桜姫・サクラ(a05667)
灰刻跡・ジョスラン(a06073)
妖狐・キョウ(a07309)
久遠槐・レイ(a07605)
刺青の男・アーガス(a08567)



<リプレイ>

●ドリアッドの村、村長宅にて
「ああ、なんだ。俺はその腕長熊が退治されるまでここに残っとけばいいんだな?」
 森の中、ドリアッド達の住む村。村長の家でオルセアはまるで我が家のようにくつろいでいた。
「え、ええ……オルセアさんの護衛にまで手が回るかわかりませんし……」
 処刑医師・マーリーシス(a04902)は椅子にふかぶかと腰掛けてリラックスしているオルセアを説得しながら、その態度に思わず頬を引きつらせる。
「わかった、冒険者の皆がその方が動きやすいなら、それに従うよ。結果的にそれが俺の目的達成にも近づく訳だしな」
 二つ返事で了承するオルセア。彼は芸術以外の事には非常に無気力な人間だった。
「オルセアさんは物分りが良い方で助かったわ。どうも芸術関係の人というとエキセントリックな印象があるのよね」
 紅の女子大生・ルビナ(a00869)の言葉に深くうなづいたのは、当の本人のオルセアだった。
「全くだ、バクハツしちゃってるヤツが多いな。例えばゴウガンとかな」
 忌々しそうに悪態をつくオルセア。
「それとあと、イロモノ霊査士とかな」
 同じく忌々しそうに手持ちの空の水筒をプラプラさせる双剣士・アールシュケル(a00718)。中身はどこに消えたのだろうか、それは当の本人にしかわからない。
 傍らでは陽だまりに舞い降りし桜姫・サクラ(a05667)が村長から森の構造、腕長熊の出現位置、頭数等を聞き出している。
「さて、サクラの情報収集の結果次第だが……腕長熊とどうやって遭遇するかね? 初依頼なモンで勝手がわからんが……肉でおびきよせるか?」
 皆に意見を求めるヒトの武人・アーガス(a08567)。アーガス自身は床にあぐらをかいて座り、土の盛られた桶と水桶、油を用意して拳大の大きさの泥球をこねている。
「うーん、そうね。オルセアさんがついて来た場合……はなくなったけど、私達に不利な地形で肉の匂いで寄ってこられたらマズイわよね」
 ルビナがアーガスの問いに難色を示すと、そこにポツリと声がかかった。
「……それなら……アレ、使えば……?」
「ん? 私?」
 月交蝶・レイ(a07605)はゆっくりとアールシュケルの空の水筒を指差した。口が広いので中に肉の細切れくらいは入りそうだ。
「機密性が保てるかわからないが、まあそのまま持っていくよりは良いんじゃないか」
 腕を組みながら壁に寄りかかったままの灰刻跡・ジョスラン(a06073)は言う。
「それじゃ……全く見つからないなら……フタ開けて、誘き出す、かな……」
 結果、冒険者達の結論はレイの一言に集約された。村長とアールシュケルの許可を取り、台所で水筒に生肉を詰めはじめるレイ。
「そういえば、アーガスは何をやってるんだ?」
 コンビで依頼に参加し、部屋でも一緒にいる獄炎黒蝶・マオ(a02915)と妖狐・キョウ(a07309)のうち、キョウが物珍しげにアーガスに問い正した。
「……腕長熊への目潰しを作っているんだ」
 ぶっきらぼうに答えるアーガス。それを聞いてキョウは感心する。
「なるほどな、俺も依頼初参加だから足手まといにならないように頑張らないとな」
「そうだな……まあ、この格好じゃ説得力ないけどな〜」
 そういうマオとキョウは、山菜採りの籠を腕に引っ掛けていた。
「藍採りの時に山菜採るのもいいが、まずは腕長熊退治を頑張ってくれよ」
 オルセアは、笑って冒険者達を見送るのだった。

●熊に泥を塗る
「えーと、広い場所は……こっちですね〜」
 鬱蒼と繁る森。
 一団の先頭、サクラが顔の近くにある枝を押しのけながらテクテクと冒険者一行を誘導していく。
「やっぱり、専門なドリアッドの案内人がいると安心ね。地図があるとはいえ、こんな獣道みたいなのによく迷わないわね」
 隊列の後方、背後からの襲撃を警戒しながらマオはひとりごちた。
「そうですね〜、私なら迷ってます」
 うんうんとうなづくマーリーシスだが、彼女もドリアッドだ。
「えーと、村から聞いた情報によると、腕長熊は1体だけなんだよな?」
 アールシュケルは簡単に現状をおさらいし直す。
「はい〜。出現範囲とか、同時に2体以上の腕長猿を見た者がいないことを考えると、1体だけではなかったとしても、それほど多くの数がいるわけではないようです〜」
 のんびりとした口調で返すサクラ。
「で、数が少ないものをこの広い森で見つけるのも骨が折れる。そこで巣がある範囲を絞って、その近くで戦いやすい場所へアイツを使って誘き出す……ってワケね」
 アールシュケルの視線の先には、レイの腰にぶら下がった自分の水筒がある。
「基本的にはそうだな、その前に襲われるかもしれないが」
 言いながらジョスランは前方の地面へ目を凝らす。腕長熊の足跡がないか確認しながら歩いているのだ。
「下からではなく、木の上から枝を伝って襲って来るかも知れないな」
 ジョスランとは逆に頭上を見上げるアガート。
(「……木の上、移動する……変な熊、だね……」)
 レイは腕だけ伸びた普通の熊が、木の上を移動している光景を想像した。
 そうこうしていると一行は林を抜け、拓けた場所に出た。
「到着〜ですっ。ここで迎え撃てると思います〜」
「うん、ここの風の方向なら、生肉の匂いも巣の辺りに届くと思います」
 久方ぶりに覗いた青い空を見上げ、マーシーリスが太鼓判を押す。
「それじゃ、早速戦闘の準備をしましょうか」
 ルビナの言葉にうなづき、冒険者達は戦闘の準備を整えるとレイは黙って広場の中心にフタを開けた肉入り水筒を置いた。
 それから水筒を囲むように円形に陣を組む冒険者達。来る方向は大体わかっているものの、必ずその方向から熊がやってくるとも限らないからだ。
 しばらくして……
「来たよ!」
「来たぞ!」
 明らかに人のシルエットとは違う、二足歩行の影を認めてマオとキョウは声を張り上げる。その叫びが見事なまでにハモっていたので思わずマオとキョウは顔を見合わせた。
「んなことやってる場合じゃない、来るぞっ、逃がさないようにな!」
 ジョスランはゆったりとしたステップを刻み始める。ライクアフェザーだ。
 腕長熊は予めその外見を伝え聞いていても奇妙な姿に見えた。体毛は灰色だが腕だけが長く、赤茶色い。その腕は多くの者を屠った事による返り血に染まっているのか。
「ウ、ウガガガアアアッ!!」
 腕長熊は腰を折り曲げ、四足歩行で冒険者達へ向かって駆け出す。その腕の長さの分だけストライドが広いのか、意外とその動きは速い。
「ぐっ………!」
 アガートは迫ってきた腕長熊に挑発の意味も込めて用意していた泥球を投げつけ、顔に命中させるがお構いなしに突っ込んできた腕長熊の体当たりをくらい、吹っ飛ばされる。
「アガートッ! チッ、一撃かよ……」
「グ、グオォォゥンッ!」
 舌打ちするジョスランだったが、アガートの放った泥球は絶大な効果をもたらしていた。
 泥が目に入った腕長熊は立ち上がり、その場でガムシャラに腕を振りまわし始める。
「迂闊には踏みこめない、か……しかし」
「邪竜導師の腕の見せ所だぜっ!!」
 キョウやマオをはじめ、この一行は遠距離攻撃のアビリティを扱う事が出来る冒険者が多くを占めていた。一方的に飛び交うニードルスピアやエンブレムシャワー、飛燕刃達。
 その後は抱きつかれる事もなく、危なげなく冒険者達は腕長熊に勝利したのだった。

●やっぱりやります長ゼリフ
「ん、こんだけあれば充分だろう。あー……腰が痛い」
 夕方、村付近にある水辺、山菜採り用の籠に藍をある程度摘み入れて、オルセアは腰をトントンと叩く。
「そりゃオルセア、タダの運動不足だぞ……アーガスなど、もう復活しているというのに」
 アールシュケルは呆れたように腰を痛めているオルセアを眺めた。先程の戦いで倒れ、ルビナの命の抱擁で復活したアーガスも藍を採るのを手伝っていた。
「冒険者と比べないでくれよ……絵を描くのに腰を屈める必要はないからな」
 ポリポリと頭を掻くオルセアだが、一般人と比べても明らかに運動不足だったりする。
「あ、絵も描くんですか?」
 作品があるのか気になっていたマーリーシスが突っ込んで聞いてみると、オルセアは絵を良く描いていたらしい。作品も十数枚あるそうだ。
「えーと、この藍は、一年草の……」
 なにやらルビナはアンチョコを見ながらオルセアに話しかける。オルセアに対抗しようと勉強してきたのだが、つっかえてしまった。そこへ同様に少し壷について勉強したジョスランが続ける。
「染料に使うワケだよな、上絵具にでも使うのか?」
 その言葉を聞いた瞬間、オルセアの目の色が変わってしまった。

「うん、その通りだ。釉薬は先日採取した粘土を使えば良い。しかし、上絵具にするほどの分量が無かった。そこでまた鉱山に行って粘土を取ってきても良かったんだが、ただそれだけじゃあ最高の壷にならないと俺は思い直した。やはり最高というのだから今までにない画期的な壷を作りたい。知ってのとおり、普通焼き物の上絵具には植物から取った色素、つまり染料は使わず鉱石の粉末、顔料を使う。これは染料は水に溶け易い性質を持っていて、染料で染付をすると滲んで溶け出してしまうからなんだ。だが、染料から醸し出される色は顔料に比べ、総じて柔らかい。俺の作る薄青色口広壷に藍の深みのある青を重ねられたら、そこには重厚なハーモニーが生み出されるハズなんだ。藍は染料の中でも水に溶けにくいが、それにも限界はある。そこで俺はまず顔料の釉薬を塗り、その上に染料の上絵具を塗る。更に表面を乾かせその上に顔料の釉薬を塗って染料をサンドイッチ状態にするという技法を編み出した。この方法を三料層と俺は名付けようと思う」

 止まる世界。
「いや、『知ってのとおり』とか言われても、知らんから」
 自分から聞いておいてあっさり首を振るジョスラン。
「語りがいのないヤツだなぁ……」
「え、えっと壷が完成したら、是非見せてくださいね〜♪」
 山菜採りを止め、慌てて場を取り繕うマオ。キョウもそれに合わせた。
「うん、つ、壷のできあがりを楽しみにしているよ……」
 気まずい空気を醸し出す場を眺めながら、レイは舌を噛まないなんて、オルセアさんは凄いなとぼんやり思ったのだった。


マスター:蘇我県 紹介ページ
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参加者:9人
作成日:2004/05/30
得票数:冒険活劇2  戦闘3  ほのぼの7  コメディ5 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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