蒼穹のカケラ



<オープニング>


 その場所で採れる水晶は、とても透明度が高かった。
 まるで木の実から種を取り出すかのように、それは岩石を割って採取する、粒状の結晶。
 地元の村で頼めば、アクセサリーや武器飾りとして加工してもらうこともできるけれど。
 見つけた結晶をそのまま青空に透かして見るのも、とても綺麗で。

 想いを籠めて誰かのために選んだりとか。
 自分だけの飾りにしてみたりとか。
 あるいは息抜きに眺めるだけでも――理由は、何でもいいのだけれど。

 少しずつ春の訪れを感じながらの、空に近い高台で。

 掲げた手の中には。
 小さな、青空のひとかけら。

 そういうのも、たまにはいいよな、と。
 金木鼠の陽だまり霊査士・フェイバー(a90229)は、笑った。


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参加者
NPC:金木鼠の陽だまり霊査士・フェイバー(a90229)



<リプレイ>

●一粒の煌きを探して
 訪れた露天の岩場には、結晶を含む岩石がいくつも転がっている。
 マルガレーテ(a70142)は興味深そうにいくつかの岩石を拾い上げた。市場に並んでいるのを見かけた水晶のように、洞窟から掘り出すのとは違うようだけれど、なんだか発掘家か探検家のような気分になってくる。村人に聞いたコツを頼りに、そこそこ大粒の結晶が入っていそうな一つを選んで、割ってみた。見つかったのは、立派な大粒――というほどではないにしろ、いくらか手頃な大きさのもの。このくらいならば、持ち帰るのにも問題はないだろう。村で頼んで革紐を結わえてもらえば、お守り代わりになりそうな、シンプルな首飾りが出来上がった。
 昔からずっと大好きな青色。大切な自分の髪と尻尾の青と、それからもう一つ、空の青。なんだかお揃いの気がして少し、嬉しくて。くるくると移り変わる空は楽しくて、見ていて飽きない。
(「ほんとに、綺麗……」)
 水晶も、自分にとって特別な石。煌くそれに透かして空を見ながら、クール(a09477)はそっと瞳を細めた。手に入れたお守りは、普段はポケットに仕舞っておくだけの――けれど時々握り締めては、味方を得たように、きっと勇気づけてくれるはず。
 加工してもらったのは、シンプルなイヤリングの形。しばらく離れていて、心配や寂しい思いをさせてしまったから――遅くなってしまったけれど、そんな大切な彼女へ贈るための、これは誕生日プレゼント。手の中で小さく揺れる水晶に春の光を重ねて、ラスカ(a40835)は満足そうな笑みを浮かべた。
 いつも貰ってばかりだから、たまには自分のほうから贈りたい。見つけた小さな水晶を銀の指輪にあしらってもらったケイト(a63733)は、喜んでくれることを願いながら、そっとそれを手のひらに握った。
(「しばらく戦い続きだったからな……たまには息抜きも悪くない」)
 サラ(a65060)は、水晶を採取している周囲の様子をゆっくりと眺めて歩いた。そうして、ある程度やり方を覚えてから、目に付いた岩石へ手を伸ばす。じっと集中して割ってみれば、見事に煌く大粒のものを入手することが叶った。けれども、それの加工を頼むと、村の職人は困ったように首を傾げた。サラとしては、いわばグランスティードを模したような駒の形に削り出して欲しかったのだが、それを見たことのない一般人に頼むのは、いささか無理があったようだった。せめて実際に目の前で見せるなり出来れば良かったのかもしれない。

 水晶探しに二人揃ってわくわくしながら、クオーツ(a52276)とルディー(a58214)は一緒に選んでみたり、お互いにチョコや水を口にしながら一休みしたりする。しばらくしてから、そっちの様子はどうだー、と背中から軽く圧し掛かって覗き込んだクオーツに、ルディーは自分が見つけたとびきり綺麗な水晶を差し出した。
「少し遅れちゃったけど、誕生日プレゼントなぁ〜ん♪」
「え、マジで!? うわっ……サンキューなっ♪」
 だきゅりとハグするルディーに、ぱたぱたと狐尻尾を振りながらクオーツもハグ返し。それじゃ俺も御礼にと、クオーツは自分で採った水晶を武器飾りとして羽の形に加工してもらうと、大好きな友達へそれを贈ったのだった。
 ミスティ(a72785)は岩石の多そうな場所と、少ない場所とを順に見て歩く。採取されていく水晶の耀きに見惚れながら、どうにか自分も、耳飾りに出来そうな大きさの結晶を見つけた。それを村で加工してもらうと、後はのんびり息抜きするべく、高台へ向かう。
「これとこれ、どちらがいいのでしょうか……」
 岩石を手にして悩むのはルルゥ(a72826)。装飾品や宝石ならば、多少は見分けられる自信があるのだけれど……。決め手に欠けながらも、自分の目利きを信じて、大きめの結晶が入っていそうなものを探していく。そうして、いざ割ってみた一つから見つかったのは、そこそこ手頃なサイズの結晶。イヤリングに加工してもらえば、いくらか小さめの飾りになってしまったけれど、ごく普通の財力では、あまり大粒のものを望んでも譲ってもらうことが難しいようだ。
 出来上がったそれを仕舞い込み、ルルゥも高台へ移動する。のんびりと過ごしながら、思い出すのは冒険者になる前の平穏に暮らしていた頃のこと。こんな日がずっと続けばと、笑みを浮かべながら思った。
 斜方に加工してもらったお守りを持って、ウィー(a18981)は一人、高台の誰も居ないほうへと足を向けた。手のひらにあるのは、大きな空の小さな欠片。そんな水晶は、なんだか贈りたい人に似ている気がして。
「……風、気持ち良いな」
 樹に背を預け、空を向いて目を閉じる。そうして、ひなたのぬくもりと優しい風を感じながら、静かに願った。どうか同じ空の下、貴方の側にも良い風が吹きますようにと――。

「空を眺め過ごすに良い場所は取っておくから望みのままの空を求めていっておいで」
 お守りは一つあれば良い――見送るレスター(a00080)とシャオリィ(a39596)に肯きを返して、バーミリオン(a00184)は水晶を探しに岩場へ向かった。お茶と焼き菓子を用意して、のんびりと大樹の根元に腰を下ろした二人は、暖かな春の陽射しを感じながら友人の帰りを待つことにする。
 やがて、小さな耀きを手にしてバーミリオンが戻って来る。望む空とは出会えたかなと声をかけたレスターに、大空が好きな友人は満足そうに表情を和らげた。見つけた水晶に透かした青空は綺麗で。小さくても手の中に空があるということも、なんだか不思議だった。
「そういえばこの面子で出掛けるのも久しぶりだな」
 何かと気遣ってくれたり、心配をかけてばかりだけれど……。こんなのんびり出来る日もたまにはありだろうとシャオリィは思う。こんなふうに穏やかでささやかな時間を過ごすことに、レスターも同じ気持ちを感じて。見上げれば広がる空の下、きっとどこかで皆に繋がっているのだろう。暖かい春の大空の下で、大好きな人達とのんびり出来ることが、バーミリオンも嬉しかった。他愛のない会話や、昼寝をしたりする、そんな当たり前の幸せを心に刻みながら、このまま変わらず在り続けられたらいいと願った。
 丸みを帯びた小さな水晶を掲げる。青い空が映って、まるで空に手が届いたみたいとシファ(a40333)は笑った。自分で採った水晶だからこそ、なんだか余計に嬉しくて。隣で風に歌を乗せながら、流れる雲と青空を眺めて寝転がっているラティメリア(a42336)の髪には、砕けた水晶を散りばめた羽根型の飾りが煌いている。
「ラティちゃんの手料理ー愛料理ー」
 しばらくして、ごそごそと取り出されたお弁当の包みが解かれるのを、わくわく、うきうきと楽しげに待つシファに、並べられたのは卵やレタス、ハムなど色々に取り揃えたサンドイッチ。こういう時は手軽なのが第一なのだ。うん、面倒くさかったわけではなく。ともあれ、たんと食べてくださいなと勧めれば、嬉しそうに笑顔で手が伸ばされる。そうして、ひとしきりラティメリアのお弁当を堪能したシファは、大好きとありがとうの想いを籠めて、ぎゅーっと抱きついた。
 頬を撫でる風が、春の薫りを帯びている。高台で過ごす時間は、とても幸せで、穏やかだった。

「陽気なくせに、すぐ落ち込むからめんどくさい奴なんだ」
 見かけたフェイバーに誘いの御礼を告げて、アルギュ(a40763)がそう口にするのは友達のこと。探したいのは、そんな彼女への少し遅れた誕生日プレゼントだ。周りへ気を配りながら、手にした岩石を割って綺麗な結晶を取り出す。作ってもらったのは、形を整えて紐を通しただけのシンプルな首飾り。満足そうに受け取ったそれを高台へ持っていくと、アルギュは芝生に寝転んだ。喜んだり悩んだり、空の色みたいに、気が付けば機嫌が変わってる――かざした水晶越しに空を見ながら、そんな彼女のことをぼんやりと考えていた。
「これを割るのですね……」
 レンフェール(a71055)は、村人から聞いた話も思い出しながら、慎重に岩石を割っていく。取り出した小さめの結晶は、シンプルなデザインのピアスに加工してもらった。弟へ贈るつもりのそれを大切に仕舞って、帰りがけに今回の誘いの話を持ってきた本人へ丁寧に御礼を告げると、満足してもらえたなら何よりだと笑顔が返った。
 手頃な岩石の一つに目を留めて、ロイナ(a71554)は緊張と楽しみとを表情に混じらせながら、拾い上げたそれを割ってみた。ころりと手のひらに転がした煌きを満足そうに握り締めて、そのまま高台のほうへ歩いていく。そこにいたフェイバーに声をかけようとして――その視線を追って、空を見上げた。しばらく一緒になって澄んだ青に目を細めていれば、やがてフェイバーがこちらに気付く。良いのが採れたか、と訊ねてくる声に肯きを返して、少しだけ照れながら、加工してくれる村までの道を訊ねる。そうしてロイナは、手の中の水晶を髪飾りにしてもらえるよう頼みに向かった。
「この中に、水晶が入っているんですか……?」
 ごつごつとした岩石を珍しそうに眺めるラードルフ(a10362)。割った中から取り出した結晶はそのまま、空へ向けたり草木へ向けたり。水晶越しに眺める、いつも目にしているはずのものは、どこか違った様子に感じられて楽しかった。もしかすると最初にこの水晶を見つけた人も、こんな風にしてみたのかもしれない。
 しばらくあちこちと見てから、ふと思いついて、ラードルフは高台に居たフェイバーに声をかけると、少しの間、水晶を交換してもらった。きっと別の水晶で見たら、またさらに違った見え方がしてくるような気がして。
 スウ(a22471)とルルナ(a51112)は、二人で一つの岩石を選んで割ってみた。見つかった結晶は、いくらか大粒なもの。これならば、きっと二人で分けられる。作ってもらうのは、空を翔ける一対の翼だ。そうして出来上がった武器飾りを手にして高台へやって来ると、スウは右に、ルルナは左に、それぞれの小さな羽根を合わせて空に透かした。きらきらと光る水晶の翼に綺麗な青空が映って、素敵だと笑ってみたら――視界の端に気付いたのは、覚えのある金色リス尻尾。
「お久しぶりなのです」
「いつも素敵な場所に案内、ありがとございます」
 毎度のごとく挨拶代わりに二人で飛びついて、もっふもふにしながら感謝の気持ちを伝えれば、嬉しそうに笑いながら二人まとめて頭を撫でられた。

「リシュー、こっちこっち!」
 チキチキータ(a64276)に呼ばれて、辺りをうろうろとしていたプーカの少女がそちらへ寄っていく。一緒に採らないかと誘う、その後ろから初めましてと挨拶するのはラセリア(a67470)。こくりと肯いたリシュティナと三人で、探してみるのはなんだか面白い形をしたものばかり。
(「この窪み、じっと見ていると猫の足跡みたい……」)
 幸運の猫かもしれないと、ラセリアはそれを割ってみることにした。煌く結晶を取り出して、空にかざしてみれば本当に空を閉じ込めたかのようで、不思議な気持ち。横で眺めていたチキチキータも、一つを選んで慎重に割ると、見つけた小さな一粒を空にかざした。改めて春の訪れを感じながら、瞳を細める。そうして加工を頼むのは、二人とも首飾りの形。
「こんにちは、いい日和ですねぇ」
 うっかりしていると一日中のんびりしてしまいそうに思いながら、タケル(a06416)も傍へ寄って来る。岩石を物色しながら石は好きか訊ねるタケルに、リシュティナは首を傾げた。嫌いではないけれど、特別好きというほどでもないようだ。それでも綺麗なものにはいくらか心が惹かれるようで、入っていそうなものを選んで知識を教えながら割ってみせるタケルの様子を興味深そうに見つめていたりする。
 高台へ移動してフェイバーに見つけた水晶を見せたりもしながら、夕焼けの空へ水晶を透かした。紅い光が煌いて、綺麗ですねぇと感嘆すれば、リシュティナもどこか嬉しそうにそれを眺めていた。

「あった! これか……綺麗だな……」
 二人で見つけた小粒な水晶を、お揃いのお守りとして手に握る。そのまま高台へ向かったディートリッヒ(a32960)とリュシータ(a60457)は、のんびりと夕暮れまで樹の下で過ごした。芝生に座り込んで水晶に透かす夕陽の色を眺め、他愛ない会話に笑みを零して。
「ディート、おいでー」
 ぽんぽんと両手で膝を叩くリュシータ。彼の目を見て楽しげに柔らかく笑う彼女に肯いて、ディートリッヒは幸せそうに素直に甘えて膝枕する。少しだけ照れたようにもしながら、髪がさらさらで羨ましい、とリュシータは夕焼けの色に染まった彼の髪に指を絡めた。
 喜んでもらえればと、贈り相手を想いながら探した水晶は、そこそこ大粒なものを手に入れることが出来た。これに巡り会ったのもある意味縁なのかなと微笑して、頼む加工はリンゴを模した水晶の鈴。小さく鳴る澄んだ音を聞きながら、カイト(a60597)は陽の暮れた高台へ足を伸ばした。広がる夜空に月の光と水晶とを重ねて、閉じ込めるかのように両手で包む。
「こんな穏やかな夜を過ごせたのは久々かもなぁ」
 燦爛とした時間への感謝を伝えれば、同じ空を見上げていたフェイバーも嬉しそうに微笑した。


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作成日:2008/04/06
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