護り刀に願いを込めて・弐



<オープニング>


「春迎えのお祭りに行くのなぁ〜ん♪」
 街角で、幼さ残る白き交渉人・レイメイ(a90306)が道行く冒険者たちを誘う。
「2年ほど前に、キラちゃんが誘ったことのある人もいるかもしれないなぁ〜んけど……。えっと、ナターカ村っていう、鉱山の麓にある村でね、行われる祭りなのなぁ〜ん」
 刃物を作るのに最適な鉱石の取れるナターカ村では、多くの刃物職人が居るという。毎年、春を前に、鉱石を生み出してくれる山への感謝と、次の年までの一年間、大事なく無事に過ごせるよう願って、お祭を行うのだ。
「武器市を兼ねたお祭りらしくって、剣の類なんかを作ってる職人さんの作品が並ぶのなぁ〜ん。何より、お祭で売られる武器には『手にした者たちを護るようにと願いが込められながら作られている』んだそうだなぁん? だから、自分の御守りとして、プレゼントとして、求められているって聞いたんだなぁ〜ん♪」
 良かったら、一緒に行ってみようなぁ〜ん、と笑顔でレイメイは、話を聞いていた冒険者たちを誘うのであった。


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参加者
NPC:幼さ残る白き交渉人・レイメイ(a90306)



<リプレイ>

●ナターカ村の春迎えの祭り
 鉱山の麓の村は、その日、賑わっていた。
「こんなの誰が扱えるのだろう」
 自分の身長より長い大太刀を見上げながら、えきぞちっくますこっと・トミィ(a64965)は呟く。
「これはボクにはおっきすぎるな……背負っても引きずってしまいます」
 そう言ってから、他の太刀を見て回ることにする。
「これならボクでも扱えそうだ」
 刀身がそう長くない小太刀を発見し、トミィはそれを手に取った。
 構えたり、腰に差してみたりとポーズを取ってみる。
「って、それはちょっと待ったぁ!」
 近くにあった木に向かって、試し斬りをしようとしたトミィを職人が止めた。
「あ、やっぱり駄目ですか」
 苦笑して答えながらもトミィはその一振りを購入することに決めた。
 武器市を兼ねたお祭りだということを聞いて、どういうものが出されているのかを楽しみにしてきた紅の蒼眼剣士・ラスト(a64093)は、露店の一つ一つを見て回っていた。普段、主に使っている剣以外の一品を見て回り、最終的に一振りの太刀を購入していく。
(「僕は僕の『護るべき人』の為にこの刃を振るおうと思う……」)
 感覚を確かめるために、一度振るってみた太刀を手にして、天翔ける銀鴉・カラン(a71104)は思う。
 忌み嫌われていたカランのことを認めてくれた人が居た。その人が居てこそ、自身の存在が成り立っていたと、カランは思う。けれど、護ることが出来なかった、そして再び、無意味で無価値な存在へと堕ちていた。
(「何時か、僕の存在を認めてくれた『護りたい人』『護るべき人』がもう一度現れた時はその時はその人を、この刃で護り抜くと誓おう……」)
 そう思い、購入したその太刀をカランは背負うように帯刀するのであった。
「今の2丁斧もお気にやけど、大きな剣も振り回してみたいのが、乙女心っちゅうやつや」
 幼さ残る白き交渉人・レイメイ(a90306)に声をかけ、一緒に回り始めた、蒼嵐・アス(a70540)は言う。
「パンチが効いてて、ええ剣やね。うちはこれにしよ。レイメイはどんなのがほしいん?」
 暫く見て回っているうちに、大きな剣を見つけ、それを手に取りアスはすぐに購入を決めた。
「私は……儀礼用のものが欲しいのなぁ〜ん。長剣にしようか、両手剣にしようか、悩んでいるのだけれどなぁ〜ん」
 訊ねられ、レイメイはいろいろと手に取ってみながら、悩んだ様子を見せる。
「それじゃあ、次はレイメイのを探そか」
 アスの言葉にレイメイは頷き、2人して探し回り始めた。
 様々な刀剣を見て、目を輝かせているのは月に希う銀猫・ユエ(a52935)だった。いろいろな店を覗き込みながら、恋人のことを思い、彼を護ってくれそうな一振りを探す。
 それまで刀剣を見ては感嘆の声を漏らしていたユエであったが、ある一振りの長剣に目が留まると、息をするのも忘れるほど、視線や全てを吸い込まれていった。
「これを……」
 店の傍に居た職人へと声をかけ、その一目ぼれしてしまった長剣の購入を決める。
「どうか……、あの人を護ってね」
 購入した長剣を見つめ、ユエはそう呟くのであった。
「得物好きとしては見逃せないお祭り! 色々見て回らないと損だよね〜」
 無限の流れ者・ヤミ(a13783)は村に着くなり、わくわくした様子で歩き回り始めた。そして、人ごみの中に黒い狐の尻尾と一つに束ねた長い黒髪を揺らしながら歩く女性の後姿を見つける。
「キラ、良かったら一緒に行かない?」
「へ? あ、ヤミさん。うん、いいよっ」
 黒髪の女性――キラに声をかけると彼女は振り返り、ヤミの姿を見て、微笑みながら答える。
「短剣でも探そうかなと思ってるんだけど、ヤミさんは?」
 訊ねてくるキラに、彼はいろいろ見て回ると答える。
 時間の許す限り、いろいろな店を覗いて回ろうということになり、2人は歩き出した。
「お義兄ちゃんこの刀どっちもすごく綺麗だね」
 天狐の巫女・レイヤ(a71186)は目の前の二振りの刀を指して、隣に居る紫眼の魔導士・セロ(a62030)へと声をかけた。
 彼が指差された方を見ると、鞘に雪の結晶と白狐が描かれた純白の刀身の刀と鞘に月と黒狼が描かれた漆黒の刀身の刀が目に入ってくる。
「どちらにするですか?」
「う、ん……」
 悩むレイヤの様子を見、セロは暫し待つ。そして、純白の刀を選んだレイヤにそれを購入し、贈った。
「自分からの贈り物です。大切にして下さいね」
「じゃ、こっちの刀は、私からお義兄ちゃんに贈らせてもらうわ」
 微笑みながら純白の刀を差し出したセロに、レイヤは漆黒の刀を購入し、贈る。
「この二振りの刀は兄妹剣なんだって。だから兄妹で一振ずつ持っていたいの」
 刀の傍にあった説明書きを見て、レイヤはそう告げる。
「ありがとうございます」
 セロは漆黒の刀を受け取り、再度微笑んだ。
(「私の武器は今持っているものでも十分ですし……、やはり彼へのプレゼントを購入しましょう」)
 紅色の剣術士・アムール(a47706)はそう思いながら、近々結婚する予定の恋人の姿を思い浮かべた。
 彼に似合いそうな刀剣を探して回る。
「どんな業物と逢えるのでしょうか……」
 蒼風に舞いし桜吹雪・ミカゼ(a30197)はそう呟きながら、祭り会場を見て回る。
 彼女は様々な刀剣を目にして、うっとりとした表情をしていた。
 売り場の傍に立つ職人から、作成したときの様子などを聞き、刀剣を手に取ると色や形、模様まで、一つ一つしっかりと目に焼き付ける。
「この刀……」
 ミカゼの視線が一振りの蛮刀に止まった。
 桜色の刀身を持つその刀を手に取ってみると、やけに手にしっくりと来る感じを覚える。
「親父さん、これ……お願いします」
 そう言って、その蛮刀を購入するのであった。
 月夜に咲く希望の花・エリザベート(a24594)と紅い蝶・レイジュ(a24217)は、それぞれ護り刀を求めて、会場を見て回っていた。
「エリザ姉さん、どんなものが良いと思います?」
 自分のお守りとして、一振り選ぼうと思っているレイジュはエリザベートに相談を持ちかけた。
「レイジュさんの目に止まる、これ、というものを選ぶのが良いと思います……」
 エリザベートはそう答える。
「これなら……お守りになりそうです……」
 そして、紅い宝石で薔薇の装飾が施されている一振りの刀を手に取る。
「エリザ姉さんは何方かに差し上げるのですか?」
 訊ねるレイジュに、秘密だと答えながら、2人はそれぞれの護り刀を求め、歩き回った。
「……楓華風の、武人が使うような蛮刀なんだけど……そういうの見かけなかった?」
 流水の癒し手・ディミヤーナ(a70291)は、通りかかったレイメイへとそう訊ねた。
「蛮刀、なぁん? えーっと……向こうの通りにそれらしきものはあったけど、探しているものかどうかはちょっと分からないなぁ〜ん」
 答えながらレイメイは、先の角を右手に曲がった方向を指差した。
「ありがとう。探してみるわ」
 ディミヤーナは笑顔で礼を言い、そちらへと向かう。
 向かった先には、彼女のイメージしているような形状の刀が並んでいた。その中で、一振りの蛮刀に目が留まる。
(「ちゃんとあの人を守ってくれますように……」)
 扱いやすさを確認した後その刀を購入し、そっと願いを込めた。
「鉱山への感謝のお祭りかぁ。素敵なものが見つかるといいけど」
 そんなことを呟きながら、突風の乙女・サフィア(a68507)は一軒一軒、覗き込みながら歩く。
 何軒目を覗いたときか、細身の剣が並ぶ露店へと辿り着いた。
 サフィアはその中で、銀水晶で柄が飾られた長めのレイピアを発見する。
「それは、なかなかの一振りですよ」
 主人の声に、サフィアはその剣を手に取った。手にしっくり来る感じが悪くない。
「いい仕事していますね? これをお願いします」
 そう言ってサフィアは主人へと微笑みかけた。
 武器市があると聞き、一見、変わったようには見えないけれど、緋翼の銀狼・ルキア(a62290)は内心、嬉々として会場内を見て回っていた。
「試し斬りは可能か?」
 形状、装飾共に気になった一振りを手に、店の主人へとルキアは声をかけた。
「振るのは構いませんが、斬るのは流石に、ご遠慮願います」
 そう答えた主人に、がっかりしつつ、手に取ったり、振ってみたりしながら、刀との相性、重さ、形状などを重視し、ルキアは気に入るものを探すのであった。
 武器市に出かけるのが初めての少年剣闘士・ラスカ(a40835)は、興味津々だという思いを振りまきつつ、目を輝かせながら歩き回っていた。
 そして、一振りの巨大剣に目が留まる。
「おっちゃん! この剣俺に譲ってくれっ!」
 ラスカは、その巨大剣を手に、店の主人に叫ぶように言った。
「小さい頃に見た冒険者の兄ちゃんや憧れの団長みたいに、俺もこの剣で大切なものを守るんだ!」
 購入した巨大剣に、ラスカはそう誓った。
 冒険者になってから、たくさんの人と出会い、凍魂誓護・レンフェール(a71055)は忠誠を誓うに値する主に出会うことが出来た。
 その主を護るために、強くなるために、武器を新調するべくレンフェールは長剣を探す。守護の言葉が刻まれた一振りの長剣に出会うと、それを購入した。
「レイメイ様お元気でしたか? ハナは元気ですよっ」
 そう言って微笑みながら花魁・ハナ(a46014)は、レイメイへと声をかけた。
「ハナは、大事な人のお守りに、護り刀を買いにきましたの……!」
 一緒に回りながら、ハナはそう告げる。そして、レイメイにも何を購入するのか訊ねた。
「私は、いろいろ見てみたいから来てみたのなぁ〜ん。特に、これを買おう! っていう目的はないのなぁ〜ん」
 言いつつ、レイメイは苦笑いを浮かべる。
「そうなんですの……。ハナはですね、渡すかどうかは分かりませんけれど少しでも身近で護る事ができたら……と思いましたの。なかなか素直になるのも勇気がいるんですもの……!」
 むぅっと頬を膨らませつつ、ハナは言う。そして、お守りになるような、懐刀くらい小さなものを探した。
「剣に願いを込める、というのも、解る気がします。戦場では、絶対に手放せない『御守り』のようなものですし……」
 そう呟きながらリザードマンの重装騎兵・キュイ(a69000)は、儀礼用の剣を探す。
「強い想いなら、強い力になってくれるような……。……上手くは言えないけど、きっとこんな感じ……ですよね?」
 誰に問うでもなく、呟いて、厄除けのレリーフが柄に彫られた一振りの長剣を手にすると、キュイはそれを求めた。
 コートの内側の心臓の上に潜ませた御守りである短刀に触れながら、桎梏の代替者・シグルド(a22520)は思う。
 生まれて初めて他人から、彼へと与えられた物であり、命を繋ぐための剣でもある。与えた女性は彼を護り、そして彼はその女性を護ると誓った。
 けれど、未だにその誓いは果たせていないままで、自分自身から彼女を護るため、何かをしたいと思った。
「良い剣だ……俺もこうありたいものだな」
 一振りのサーベルを見つけると、職人に対し、感謝と賞賛の言葉を述べつつ、そう呟いた。
 会場内を隅から隅まで一周した夜蝶嬢王・ペテネーラ(a41119)は、購入する店の目星をつけると、そこへ突撃した。
「真っ直ぐで一生懸命でちょっとドジで……今は、自分のするべきことを手探りで一生懸命探している途中で。だからちょっとした応援と、願いを込めて……」
 手にした一振りのサーベルの鞘を抱きしめながら、ペテネーラは、まず値切り始めた。
 問答を繰り返すうち、主人は根をあげ、彼女の言い値でサーベルを譲る。
「ありがとう」
 ペテネーラはそう言って、店を後にすると、そっとサーベルを抱いた。
(「いつか、貴女が力強く羽ばたく日が来るように……」)
「……やられた、恋だぞこれは。二股掛けるみたいだが……」
 ヒトリの武人・ナツルォ(a61049)はそう言うと、見ていた数多の刀剣の中から二振りの蛮刀を手にした。
「コイツ等がどうしても欲しい、頼むぜ刀匠」
 どうしても一振りに絞って決めることが出来ないナツルォは、主人に向かって、両方ともを欲しい旨を真剣に告げる。
「二股はよくないぜ? でも、きちんと二振り共に相手をしてやるってんなら、譲ってやろう」
「必ず! ……ありがとう」
 ナツルォは力強く頷き、そしてほっとした様子で感謝の言葉を口にした。
「ランドアースの冬には慣れたか?」
 レイメイを見つけた寡黙な守護者・アクシオン(a68250)は、以前買いに行ったコートのことを含め、彼女へと訊ねかけた。
「大分慣れたのなぁ〜ん。今年はこのコートでぬくぬくだったしなぁん?」
 寒い日も続いているからと、念のため羽織ってきたコートを指差し、レイメイは答える。
「そうか。私もワイルドファイアに行ったが……あそこは地獄だったな。この恰好で行ったから、敵と戦う前に死ぬかと思った」
 普段着ている長袖、長ズボン、そしてロングコートを指して、アクシオンは言う。
「気候の違いには、注意なぁ〜んね」
 レイメイはくすっと笑みながら答えた。
 そして、彼女と分かれると、アクシオンは1人、会場を回る。
「お気に入りの武器、見つかりました?」
 不意に声をかけられ、振り返るとそこには同居人の銀月清吟・ギルバート(a64966)が居た。
「既に何を相棒にするか、決まっている。お前も相棒に妥協するなよ」
「ええ」
 アクシオンは答え、守護者の名に相応しい蛮刀を探すべく、歩き回った。
 そして、ギルバートはというと……、
「さて、私の探しているものは、どこでしょ……う……ちょ、人多くて流されルー!?」
 人ごみに流されていた。
 漸く人ごみから解放されて、ギルバートは目的の武器を探す。けれど、刀剣を扱う武器市であるためか、術手袋は見つからなかった。
「良い刀だ。品質もそうだが、製作者の思いが込められている。良くわかるよ」
「ありがとうございます」
 1対の蛮刀を手にした誓いの守護剣士・ヴィクス(a58552)は、職人に向かって、そう告げた。そして、その蛮刀を買い求める。
「そういえば俺の剣、どう思う? 結構使い込んでいるんで、手入れをしようと思うんだが」
 彼の相談に、職人はその剣を見、更に手入れの方法を教えてくれた。
「ありがとう。大切に使わせてもらう」
 ヴィクスは最後にしっかり礼を言うと、その職人の店から去る。

 日が沈む頃には、祭りの賑わいも宴会のようなものへと変わっていた。
 冒険者たちは皆、それぞれの武器を買い求めていて、帰途へと着くのであった。

 終。


マスター:暁ゆか 紹介ページ
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参加者:25人
作成日:2008/04/03
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