エクストラデリシャスウルトラゴールデンロングロングローングホットドッグアゲイン!



<オープニング>


 毎度おなじみ、冒険者の酒場。
「エクストラデリシャスウルトラゴールデンロングロングローングホットドッグ」
 葵桂の霊査士・アイ(a90289)はいきなり、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)をつかまえていう。
「ア、アイさん?」
「『ア』は一回でよろしい」
「は、はい……それで、あの、さっきの呪文は?」
 ユウキがオドオドするのも無理はなかろう。アイは、うん、とうなずいて続けた。
「これはある小さな町があって……ところでユウキ殿はホットドッグを食べたことがあるかな?」
「えと、パンにソーセージとか、炒めたキャベツを挟んだものですよね?」
「うん。その町の名物は、このように長いホットドッグでな」
 とアイがテーブルの上に置いたホットドッグは目を見張るようなサイズであった。太さだけでも通常のロングパンより二回りほど大きなうえに、長さは人が両腕をひろげたほど。具だってギッチギチに詰まっていて、テカテカのソーセージ、ジューシーなキャベツ、ところどころゆで卵が入って、みじん切りのタマネギやピクルスも満載、しかもこれらすべてにしこたまケチャップとマスタードがかかっているのだ!
「すごいですね!」
「さて、これの名を覚えているかな?」
「エクストラデリシャスウルトラゴールデンロングロングローングホットドッグ、でしたっけ?」
「……なぜスラッと言える?」

 集まった冒険者たちにホットドッグを切り分け、アイは説明をはじめる。
「その町では、巨大ホットドッグに関する祭が毎年春に開催されている。なにせこのサイズだ。材料も大量に必要になるため、ソーセージやパンを遠方の町から運ぶことになる。実は昨年も材料の護衛をプルミエールたちにこなしてもらった」
 運搬量もさすがのボリュームだ。昨年の盛況をうけ、今年は思いきって大増量するという。材料の総量は、二〜三人引きの荷車をつかっても八台は必要になるという。
「荷車は依頼者側に都合してもらえる。この荷車、『二〜三人引き』といってもそれは一般の人の話なので、諸君なら一人で一台をひっぱることができよう。ただ、一人で二台引くのは止すがいい、バランスを崩して車が破損してしまうかもしれないからだ。荷をぎゅうぎゅうに積み込めば台数を六台ほどに減らせるだろうが、そうなると荷が崩れやすくなるので要注意だ」
 距離は冒険者の足なら半日程度、いくつか丘陵を越すも、基本的には街道であり厳しい傾斜はない。
 ただ運ぶだけならさして困難な仕事ではあるまいが、懸念されるのは道中、グドンが襲ってくる可能性があるということだ。近頃、狐の頭をもつグドンの集団が近辺で目撃されているのである。
「グドン地域掃討作戦から逃げ延びた連中だ。ざっと四〜五十匹はいるだろう。グドンの例に漏れず常に腹を空かせているから、食糧輸送の荷車は格好の好餌だな。グドンは粗末な装備しか持たず、一斉に襲ってくるくらいの戦術しかないため蹴散らすは容易だろう。しかし、食料を守りながらこれをこなさなければならないのが厄介だ」
 グドン集団には、ひときわ食欲の旺盛な一体がいる。腹にまで乱食い歯つきの口があるというのだから、食い意地の強さは推して知るべしだ。この一体とはピルグリムグドンである。腹の口からは毒性のあるガスを吹きかけてくるようだ。腕力もすこぶる強いのであなどれない。ただ、魅力的な食べ物に弱いのが唯一の弱点らしい。
「グドンは餌の匂いに釣られ出てくるだろうから、先行部隊を出して索敵しても無駄足になるかもしれない」
 ユウキはうなった。
「どんな形態で運搬するか、どうやって荷を守りながら戦うかが問題ですね……」
 と、腕組みをしたまではいいが、これと同時にユウキのかぶっていたヘルメットのバイザーがカシャっと落ちてしまう。
「わ!」
 これを見てアイはニヤリと笑い大声を出した。
「敵襲だ!」
「なんですって! あ」
 座っていた椅子から滑り落ち、ユウキはしたたかに腰を打ってしまう。
 すまんすまんとアイは笑って、
「さて、いま食べてもらったホットドッグだが、祭りの最大の催しとして、この早食い競争が行われるらしい。さきの一本をたった一人で、一番早く完食したものが優勝ということだ。昨年もこれに挑戦した者がいたが、余力があれば諸君も参加してはどうかな?」
 不覚……と、腰をさすりながらユウキは立ち上がる。
「さっきのサイズを一人で?」
「これも経験、ユウキ殿も早食い競争にエントリーしておいたからそのつもりで」
「ウソでしょーっ!?」
 その通り、実はこれもアイのウソなのだが、まんまとダマされたユウキは、
(「お腹を空かせておかなくっちゃ……」)
 と不安げに思うのである。
 ちなみに優勝賞品は、エクストラデリシャスウルトラゴールデンロングロングローングホットドッグの一年間食べ放題チケットとなる。これに挑む勇者も募集中だ!


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参加者
星空のエピタフ・ヒィオ(a18338)
雪ノ下・イージス(a20790)
泡沫の桜吹雪・マリウェル(a51432)
青雪の狂花・ローザマリア(a60096)
レッドアイ・クラウディア(a66825)
風に柳・デリコ(a67423)
合金紳士・アロイ(a68853)
恋蒼の焔・トール(a68949)
魔星猟医・ティルフィア(a69190)
我が道をゆく白きサザンクロス・シュトーカ(a70658)
NPC:セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)



<リプレイ>

●出発
 一行は荷車を引きながら集まってくる。八台分、大きな行軍になりそうだ。
 獲れたて新鮮のキャベツに玉葱、あとは焼くだけのプリプリしたソーセージ、そしてもちろん長い長いパン等の食材がうんさと積みこまれ、ケチャップやマスタードの瓶もふんだんに用意されている。
「届きますか?」
 禁呪領域・トール(a68949)はロープを手にしている。ロープ反対側の端は、魔星猟医・ティルフィア(a69190)の手にあった。
「ええ。こちらで縛ってしまいますね」
 冒険者たちは荷車を剥きだしにするのを避け、荷物を上からテント等で覆い、さらにロープで固定して幌のようにしていた。雨風よけとなるばかりでなく、安全性の意味からも意義は大きい。
(「皆が楽しみにしているものを届ける仕事、ですか。気合いが入りますね」)
 と考えつつ、トールは見慣れぬものを出してきた。
「それが土嚢袋ですのね」
 花一輪・ヒィオ(a18338)が声をかけた。彼女は怪我がまだ癒えぬ身であるため、比較的軽量なパンの荷車をひいている。夢語りの蛍・ユウノ(a10047)が一緒に引いてくれることになっていた。
 ヒィオはいった。
「坂道で荷車を離れるはめになった場合、土嚢で車輪をとめる……トール様の発案でしたわね。良きお考えかと」
 たまたま所持していただけですから、とトールは照れつつ、土嚢をティルフィアの荷車にも積んだ。
 がんばりましょう、とティルフィアはいった。
「大会を楽しみにしている皆さんのためにも、しっかり食材を守らなくては」
 ティルフィアは拳をぎゅっと握る。彼女は二人分の栄養価とるべく、早食い大会にも参加予定なのだ。
 主犯・デリコ(a67423)は最後のロープをしっかりと結んだ。
「荷作りはこんなもんかねぇ。さてと、運びますか」
 野菜のたっぷり詰まった荷車は重いが、ほとんど揺れないように固定しているので、運搬中も余計な負担がかからないだろう。

「ユウ坊(ボン)、ちょっとおいで」
 青雪の狂花・ローザマリア(a60096)が、セイレーンの重騎士・ユウキ(a90384)を呼びつけた。
「あんた、お腹空かせてきたでしょ?」
 ん? と眉をあげてローザマリアは問う。
「ええ、今朝からなにも食べてません」
 まったくもう! とローザはあきれた表情で、
「ほら。このバナナ、食べなさい」
「えっ、でも、今日の早食い大会で……」
「いいから食べなさい!」
 ローザマリアは有無をいわせない。
「あのね、半日の行程なんだから少しくらい食べておいても消化するし、グドンと戦うことになって、『腹が減っては戦はできぬ』なんてことになり荷物が守れなければ本末転倒よ! それに、大食いのコツは空腹にしすぎないことなのよ、知っておきなさい」
 ユウキはうなだれてしまう。しゅんとなって返す言葉もない。
「まあまあ、それくらいにしてあげてくれませんか?」
 とりなすように、剛金紳士・アロイ(a68853)が笑顔で告げた。
「若いうちは失敗も大事な経験……ユウキ君も学んだことでしょうから」
 といってアロイはユウキの肩を叩いて励まし、一緒に出発前のバナナをいただくのである。
 ローザ、アロイに声をかけるのは、我が道をゆく白きサザンクロス・シュトーカ(a70658)だ。
「よっし、荷造りはバッチリだな? スティード乗りのお二人さんも準備いいかい?」
 彼はグランスティードの背にあった。この三人三騎にて、三方向から荷車を警護する計画だ。シュトーカは爽やかな笑みを見せ進路を指さす。
「そいじゃ出発ーーっ!」

●ホットドッグは渡せない!
 行程は順調に進んでいた。
「オモイ……」
 と、トールがつぶやいた登り坂は踏破し、下降気味のゆるやかな坂となる。
「やはり下りは楽ですわ」
 泡沫の桜吹雪・マリウェル(a51432)の引く荷車は快調となる。何の気なしに隣の荷車を一瞥すると、マリウェルの視線に気づいたユウキが慌てて視線をそらせた。
(「……以前の依頼でも思いましたけれど」)
 マリウェルは考えた。
(「ユウキさんって、女性が苦手なのでしょうか?」)
 ――正解。
 最後尾をゆく荷車は、デリコと雪ノ下・イージス(a20790)である。
(「……食べ物の、輸送……。……地味、だけど……大事な、依頼……よね」)
 イージスは考える。
 カラカラと軽快に車輪は回り、力を入れなくても進むようになってきた。
「……いけない」
 このとき、イージスは直感的に身の危険を感じた。
 後方、坂の上から気配がする。イージスが感じた気配はすぐに、斥候のグドンとして結実する。
 遠矢射る・クラウディア(a66825)の行動は速い。
「グドンが来る? 目的は積荷のパン?」
 車輪に土嚢を噛ませ固定したかと思いきや、もうクラウディアは射矢を終えていた。
「まったく……、パンが無ければ菓子を食えば良いんだ」
 ブッ、と矢が胸に突き立ち、グドンは脚をもつれさせて坂から転げ落ちている。
 敵にもよく見えたことだろう。すぐさま殺到する足音が聞こえてくる。
 いくら空腹とはいえ、人の物を奪うというのは、シュトーカの正義が許さない!
「ったく、奴らに大食い大会があるってのを教えてやりたいよ。きっと、優勝候補の筆頭になるんじゃねーかな」
 っと冗談だよっ、と言いのこし、シュトーカは坂を駆け上がってゆく!
「打って出るぞ。俺の後ろは一歩たりともぬかせねー!」
 グドングドングドングドン、そこに狐グドンがわらわらと現れた! 狐の目はギラギラと血走っている。食料の匂いを嗅ぎつけたのだ!
 ユウノは、反射的にヒィオを守る位置につく。
「命に危険がなければ、荷車の近くを離れないようにしてください」
「はい。エクストラデリシャスウルトラゴールデンロン……ろんぐ……ぇっと、とにかくホットドッグ! を守ってみせますわ」
 怪我もなんのその、ヒィオの返事は力強い。鎧聖降臨を仲間に施す。
 グドンは一斉、荷車に襲いかかる。
 だがその中央付近! 灼熱の円が吹き荒れた。たちまち狐数頭が紙駒のように吹き飛ぶ!
「食べ物は……渡さない」
 しかと見よ、これぞイージスのナパームアローだ!
 続けて炸裂! ハートクエイクナパームの桃色火焔。
「愚かなグドン、密集してくるとは。狙ってくれといっているようなものだ」
 クラウディアは呟く。射撃は正確。たちまち敵中央部に混乱を引き起こす。
 混乱に拍車をかけるべくアロイも動く。
「取り出しましたるこのマンモー肉」
 アロイの甲冑はスーパースポットライトに輝いている。彼の手甲は、見るからに汁気たっぷりの大きな骨付き肉をつかんでいた。そしてこれを、
「存分にどうぞ! グドン諸君!」
 と投げる! グドンたちは肉に目を奪われそちらに群がった。
 ローザマリアも同じ、肉を投げる。もうなんか悲しいほど正直に、グドンはこれを追いかけてゆく。
 たちまち始まる肉の取り合い、囓りあい。戦場はもう大混乱だ。
 肉を追うに夢中のグドンを、マリウェルのリングスラッシャーは容赦なく屠りゆく。
 土嚢で荷車を止めているから、安心してトールも両手を使える。
「これでも喰らっていなさい」
 といってニードルスピア、混乱中のグドンを討ち取りまくるのだ。
 それでもなお初志貫徹、荷台に迫ってくるグドンもあったが、
「おいでなすったか。目先のものにとらわれず大物狙いできたのは褒めてやろう」
 そんなグドンたちに立ち塞がるは、長身痩躯、武神の如きデリコだ!
「だが、喧嘩ってのは相手を見てやるんだな!」
 デリコは闘気を爆発させて、デンジャラスデンジャラス、ブン回す。デンジャラスデンジャラス、それはデンジャラスタイフーン!! グドンらは悲鳴あげ吹っ飛んでゆく。
 ユウキもグドンを切り伏せる。
「グドン相手なら……ち、躊躇はありません!」
 台詞を噛んだようだが見逃してほしい!
 ティルフィアが召喚せし護りの天使がいるから、敵の攻撃も実質的なダメージは浅い。さらにティルフィアは、
「この食材は一片たりとも貴方達に渡しません!」
 近づく敵を直接ブン殴って倒してもいる。おお! 母は強し!
 右往左往する手下の行動に業を煮やしたか、後方より肥えた狐グドンが出現した。奇怪、腹にも口があり、紫色のガスを吹きだしている。ピルグリムグドンだ!
 敵首領が出ても冷静に、クラウディアはスティード隊の突入経路を作る。
(「私の撹乱で仲間の負担を極力減らす。それが今回私の存在意義であり、悦びだ……」)
 ハートクエイクナパームでピルグリムグドン周囲のグドンたちは分散してしまった。いまやグドンたちはクラウディアの思うがままだ。
 クラウディアの経路を辿り、シュトーカは人騎一体、閃光のように駆けゆく。
「この突撃をうけてみろー!」 
 ピルグリムグドンは息を吸いガスを吐かんとするも……
「なぁーんちゃって!」
 と直前で方向転換したシュトーカにタイミングを外され、サンダークラッシュの洗礼を浴びる。
 さらに!
「覚悟なさい! この食欲魔神!」
 パワーブレード二刀流! ローザマリアが立て続け、左右刀にて斬りつける!
 そして!
「巨大ホットドッグは渡せない!」
 全身鎧の男前、アロイが大岩斬で推参!
 ピルグドンの腹の口、たまらずうめき声を発した!
 グドンはあまりに無策であった。知力、技倆ともに冒険者の圧勝であったといえよう。
 自棄気味に飛びかかってくるグドンにマリウェルはミラージュアタック! グドンは哀れ、倒れ死す。
「これが最後の一頭のようですわね」
 仕込み刀を拭い、マリウェルはこれを竹箒に戻す。
 すでにピルグリムグドンもアロイの手にかかり慙死していた。

 さあ、ホットドッグ祭りの会場はもうすぐだ!

●早食い! その熱きバトル
(「ユウキさま、女性が苦手との事ですが応援もしたいです……」)
 ヒィオが、『ファイト!』というようなポーズをとって励ましている。ユウノも一緒だ。
 ユウキはヒィオたちに弱々しくうなずいた。美人をまっすぐ見られないという持病(?)ゆえ視線はそらし気味ではるが、ヒィオのメッセージは届いているようだ。
 トールも大会はパスだ。切ってもらった『一人前サイズ』を食べつつ応援する。
「優勝を目指して頑張ってくださいね、ユウキさん」
 温かい声援を送るトールなのである。
 参加者多数、エクストラデリシャスウルトラゴールデンロングロングローングホットドッグ早食い大会はすでに中盤である。佳境に入ったバトルに大観衆もヒートアップ! 会場は爆発的な大歓声につつまれている。
 大会を救った冒険者一行はVIP待遇だ。高台に設置された横並びのテーブルにずらりとつき、一人一個、超激ギガンティックなホットドッグにとりかかっていた。
 こんがり焼けたパンはカリカリ、千切りの玉葱もキャベツもジューシーかつホットで、どっさりかかったケチャップ&マスタードはもちろん、アツアツぎっしりのウインナーの豊満さがたまらない! これぞ天下無双の食べごたえ、食べても食べても終わりは見えず、急ぐほどに息はつまる。ここは現世か!? それともホットドッグ魔界か!?
(「お、おいしいけど……つらい……」)
 ユウキは目が回りつつあった。
 イージスは中盤で勝負をあきらめ、マイペースに食事を楽しむことにした。 
「……おいしい、けど…次からは……普通の、サイズで…いいね……」
 シュトーカもそろそろ厳しい。無策で挑んだため顔が青ざめてきた。
「くっ、まだだ、まだいけるぞーっ」
 といいつつ意識はもうダウン寸前、体もそれに抗えず、気が付けばぺたりとテーブルに突っ伏していた。無念、涙のリタイアである。
「お疲れ様です」
 救護班に参加したマリウェルが、そっとお茶を差してあげる。 
 ヘルメットを外しアロイは準備完了! ガツガツと食べ進む。体格がいいだけあってさすがに早い。しかも一口が大きい! かなりのハイペースである。
「はっはっは、巨大ホットドッグ! おいしいですね! 素敵ですね!」
 テンション全開! だがそれも唐突に終わりを告げる!
 どーん! アロイは席ごと後方に倒れ失神していた。さすがに無謀すぎた。だけど笑顔のままだ。きっと、優勝した夢でも見ているのだろう。
 クラウディアの速度はなかなかのものだ。がっつかず無理のない一定のスピードでよく咀嚼をする。
(「急がば回れってね」)
 一般参加者を遙かに凌駕するペースでクラウディアはこれを減らしていた。
 しかし、ティルフィアは彼女をいささか上回る。
(「かつて樽に盛られたカレーライスを二十杯以上平らげた伝説の有るローザマリアさんには及びませんが、大会を盛り上げられる程度にやってみます」)
 パンとソーセージを分離して一口ずつ食べ易いペースを維持し、少しペースが落ちてきたら用意した調味料を交互に付けながら食べるというのがティルフィアの作戦である。いい作戦ではあったが、調味料をつけすぎのせいか胸が苦しくなってきた。
「……無理は、やめておきましょうか」
 ただでさえ大きな腹をさらに大きくしつつ、ティルフィアは棄権を宣言した。
 堅実に食べ進んでいるのはデリコだ。
「ビールが欲しいねぇ、ビールが」
 と笑っている。パン等をちぎりながら片付け、最後に残ったソーセージを食べるという作戦だ。シンプルだがこれは強い。
 その隣では、とうとうユウキが白旗をあげテーブルに臥した。
「も、もはやこれまで……です……」
 がく、ユウキの意識は飛んだ。
「おーい、生きてるか〜?」
 デリコにはそんなユウキを気づかう余裕すらある。そのままほとんど苦しそうな様子も見せず、ついに彼はクラウディアを抜き去り、完食を達成した!
 司会者が鐘を打ち鳴らす。
「おめでとうございます! 冒険者の部、優勝はデリコさんです!」
 ありがとう、と後頭部をかいていたデリコだが、ひっかかることがあって問い返す。
「え? 『冒険者の部』?」
「はい、一般の飛び入り参加のかたが既に食べ終えていますので」
 見ると、階下の一般会場から一人の少女が手を振っている。少女は分厚いレンズの眼鏡をかけており、どてらのような地味な服装だ。頬のそばかすは可愛らしいが、垢抜けていない印象を与えた。
 なんとその娘、ホットドッグを喉に詰らない最低限の大きさに分割し、租借せず飲み下すとう荒技を連続してあっという間にこれを平らげてしまったというのだ! (※上記の内容でいうと、イージスの台詞のあたりで既に完食していた!)
「す、すごい……」
 意識を取りもどし、ユウキはテーブルから首だけあげてその少女を見た。
 ゴゴゴ……。
 ユウキの視線に気づくと少女は、
 ゴゴゴゴゴゴ……。
 だしぬけに自分の髪をとった! カツラであった! そばかすメイクを拭い、眼鏡も取り去る。
「うふふ。まだまだね、ユウ坊?」
「あ、あなたは!」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
 くすくすと笑うその人は、誰あろう、ローザマリアだったのである!

(終)


マスター:桂木京介 紹介ページ
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ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2008/04/03
得票数:冒険活劇1  ダーク3  ほのぼの2  コメディ14 
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