<リプレイ>
●辺境の村 「おおっ! ついに念願の美女の敵! ドラ、犬、グドン。……まぁ、あと何か色々な敵だったけど、今日は美女! イイねー、こうでなくっちゃ♪ ……あ? だーいじょうぶだって、仕事って事ぁ分かってっから」 仲間達の冷たい視線を浴びながら、深紅の閃撃・スカーレット(a25963)が遠眼鏡を覗き込む。 モンスターは妖艶な女性の姿をしており、美しい歌声が辺りに響いている。 そのため、村人達がモンスターの虜になっており、瞳にはハートマークが浮かんでいた。 「うーむ……、魔物にしては珍しくほぼ完全な女性の姿で、しかも男心の機微を掴む性質を持ちすらするとは……、何とも戦いにくい相手のようじゃのぅ。じゃが、そういった遣りづらい事を成し遂げるのも冒険者の責務。人々の安全と心の平穏のために気を引き締めて掛からねばのぅ」 唖然とした表情を浮かべながら、玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)が汗を流す。 モンスターの身体から漂っているせいか、ジッと見ているだけでもグッと来る。 それはモンスターの身体から漂うフェロモンのせいかも知れない。 「確かに美しいが……、俺様に比べたらカスだな、ありゃ。それに女の魅力ってのは、色気だけじゃないぜ」 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、綺麗な薔薇には棘がある・ココロ(a69011)がフンと鼻を鳴らす。 だが、モンスターに惹かれる自分の気持ちに気づき、恥ずかしそうにコホンと咳をした。 「ヒトのような姿形をとって、村人達を虜にする……かぁ。みんな、すっかり骨抜きになっているようだね。まぁ……、これ以上被害を拡大させたくないし、頑張って……オネエサンのお相手をしてこようかー」 のほほんとした表情を浮かべ、紅灯の光と成る太陽・ジェイド(a46256)が茂みに身を隠す。 モンスターは虜にした村人達を集め、誰から食べるか品定めを始めている。 「おそらく、昔は美しさで名を馳せた者だったのだろうな。だが、如何に美しかろうと魅力があろうと、人に仇為す存在とは勝負を付けねばなるまい。……そう、モンスターよりも俺の方が美しいと言う事を証明するのだ!」 拳をギュッと握り締めながら、優しき月華の旋律・レイン(a44895)が仲間達に宣言した。 その間にモンスターがひとりの村人を選び、妖艶な笑みを浮かべて甘噛みし始めている。 しかし、すぐに食べるつもりはないのか、ゆっくりと服を脱がしていく。 「キレイだろうが、女だろうが、モンスターには変わりない。なんでそんなものに惑わされているのか理解する事が出来ないが、このまま放っておく訳にもいかないか。モンスターが食事を始める前に、助け出さないとな」 自分自身に言い聞かせるようにしながら、無邪気な狂戦士・クリストファー(a72322)が茂みから飛び出した。 それと同時にモンスターの表情が変わり、牙を剥いて冒険者達に襲いかかっていく。 「そのような仕草や歌程度で人の心を捉えられると思ったのなら大きな間違い、我らセイレーン族の足元にも及ばぬわ」 モンスターの攻撃を軽々とかわし、ピースメーカー・ナサローク(a58851)がキッパリと言い放つ。 そして、モンスターの歌声が辺りに響くのであった……。
●村人達 「村人達を助け出すのなら、いましかありませんわ。モンスターに出来たのなら、私に出来ないはずがありません。例えどんな状況にあろうとも、村人達を必ず救ってみせますわ」 モンスターの歌から逃れるようにして、美白の歌姫・シュチ(a42569)が村人達の救出にむかう。 村人達はすっかりモンスターの虜になっており、彼女達の説得にも応じず汚い言葉で罵った。 だが、彼女もめげる事なく、放蕩の香りを発動させる。 それでもモンスターの魅了に勝つ事が出来なかったのか、いまいち村人達の反応が冷たかった。 「みんな、よっぽどモンスターが好きなようだね。僕にはよく分からないけど……」 持参したロープで暴れる村人達を強引に縛り上げ、深淵の堕天使・アザゼル(a63456)がグランスティード(アビス)の背中に乗る。 しかし、村人達が激しく暴れて呪いの言葉を吐き捨てているため、このままでは安全な場所に避難させる事が出来ない。 だからと言って村人達を放っておく訳にもいかないため、何か別の方法を考えておく必要があった。 「強引に避難させようとしたって、応じるわけがないだろ」 すぐさまヘブンズフィールドを展開し、叫鴉・エドワード(a48491)が耳栓をして静謐の祈りを発動させる。 それと同時に村人達が我に返り、呆気にとられた様子で両目をパチクリさせた。 だが、モンスターの歌声を聞いて再び魅了され、唸り声を上げて冒険者達に襲いかかってくる。 「あっちも応じるつもりはないようだねぇ。だからと言って、これ以上罵倒するつもりなら、僕だって黙っちゃいないけど……」 引きつった笑みを浮かべながら、アザゼルが拳を震わせて毒消しの風を使う。 しかし、村人達に胸や背の事で嫌味を言われていたため、徐々に殺気のオーラが漂い始めている。 「これは……、急がないとマズイ事になりそうですわね。再び村人達が毒を吐く前に、何とかしておかないと……」 色々な意味で身の危険を感じながら、シュチが魅了の歌を使って村人を虜にした。 それは一瞬の隙をついた、ある意味『賭け』の作戦。 近くで殺意のオーラが漂っていたせいか、村人達をモンスターの魅了から助け出す事が出来た。 「これで何とかなりそうでな。まぁ、俺を罵倒するような奴相手に、親切丁寧に対応してやる心算は全くねぇと思ったが……」 村人達から言われた言葉が脳裏に過ぎり、エドワードがウェポン・オーバードライブを発動させる。 その勢いで村人達をドツキ倒しそうになったが、ウッカリ血祭りに上げそうなのでグッと我慢した。 「早くここから避難した方が良さそうだね。僕達の怒りが爆発する前に……」 モンスターと身体を比べられた事を思いだし、アザゼルが村人達をジロリと睨む。 例え村人達がモンスターに操られていたとは言え、あれが本音である事は間違いない。 そう思うだけで怒りが沸々と込み上げ、右手が真っ赤に燃えたりしているが、村人達を瞬殺するわけにはいかないため、怒りの矛先を何処にぶつけようか悩んでいる。 「そ、そうだな。とりあえず村人達が元に戻ったら、自分達の犯した過ちを償ってもらわねぇとな」 今にも爆発しそうな怒りを堪え、エドワードがニヤリと笑う。 そのため、自分の気が済むまで酒をおごって貰おうと思っている。 「あらあら、そんな事をしたら、村人達が可哀想ですわ。彼らだって好きで魅了されていたわけではないのですから……。例え心の中で思っていた事だとしても、罪の意識を感じているのなら、罰するわけにはいきませんわ」 自分の事を罵った村人を家庭崩壊に導こうと思いながら、シュチが天使のような笑みを浮かべて丘の上まで避難した。 もちろん、彼女も村人達を許すつもりでいるようだが、その前にちょっとしたイタズラ(で済むかどうかは別として)をしようと思っている。
●モンスター 「おー、ポイント高いじゃねぇか。モンスターにしておくには惜しいな、ありゃ。あれで本物の女ならなー……。さってと……うし、始めますか」 血の覚醒を発動させながら、スカーレットが気合いを入れる。 だが、モンスターが歌を歌っているせいで、無意識のうちに……ムラッと来た。 ……それは男として抑えきれない『本能』。 むりやり抑え込もうとすれば、そのうち大爆発を起こしてしまうかも知れない。 「モンスターの歌を聴いちゃ駄目だよ。……村人達と同じようになりたくなかったらね」 険しい表情を浮かべながら、ジェイドがヘブンズフィールドを展開する。 モンスターの歌声は心にまで響くため、油断していると虜になってしまう。 「みんな、目を覚ませ! どうせ、俺達を油断させて牙で噛みついたり、刃物で斬りつけてきたりするんだろうからな」 仲間達の戦意が喪失している事に気づき、クリストファーが大声をあげて仲間達に対して警告する。 本当ならブラストタックルを放つつもりでいたのだが、そんな事をすればモンスターの思うつぼになるため、必死になって仲間達の説得を試みた。 「なるほど……。貴様、我が種族が有する能力に似た力を持っているのか。だがな、魅了の力は人々を幸せにする為の物であって……、断じて人々に不幸をもたらす為ではない!」 仲間達に鎧聖降臨を付与し終え、ナサロークがモンスターと対峙する。 モンスターは妖艶な笑みを浮かべ、狂ったように歌を歌い出す。 その歌声を聞いて冒険者達の心が揺り動かされそうになったが、モンスターの虜になるギリギリのところで抵抗する事に成功した。 「さて……、どうする? 歌が効かなかったら、実力行使か?」 含みのある笑みを浮かべながら、レインが気高き銀狼を放つ。 その一撃を食らってモンスターの動きが封じられ、辺りに響いていた歌声が消えた。 「これで、わしらが魅了される心配もなくなったのぉ。……とは言え、美人が台無しじゃ。そんなに牙を剥き出しにしていたら、寄ってきた男達も裸足で逃げ出すぞ」 苦笑いを浮かべながら、バジヤベルが静謐の祈りを発動させる。 それと同時に仲間達が我に返り、次々とモンスターに攻撃を仕掛けていった。 「所詮、人間の美しさを真似ただけの紛い物だ。単にメッキが剥がれただけだろ」 皮肉混じりに呟きながら、ココロが血の覚醒を発動させる。 モンスターの怒りが増すにつれて、顔が醜く歪んできたため、誰も美しいと思わない。 「美女不信になったらどーしてくれんだ、この野郎! しっかし、シュールなお姿で……。こうなっちまうともはやモンスターだなぁ。……あ、元々モンスターか。だったら遠慮する事はねぇな」 青ざめた表情を浮かべながら、スカーレットがデストロイブレードを叩き込む。 その一撃を食らって鮮血が飛び散り、モンスターの悲鳴が辺りに響き渡る。 次の瞬間、モンスターが瞳をギラギラと血走らせ、唸り声を上げて冒険者達に攻撃を仕掛けてきた。 ……その姿は、まさにモンスター。 人間離れした動きと、ケタ外れの破壊力。 そして、冒険者達の脳裏に過ぎる言葉。 (「これが女のヒステリーってヤツか!?」) それは倦怠期を迎えた夫婦の障害となる壁のひとつ。 どんなに頑固なオヤジも、嫁さんのヒステリーには適わないと風の噂で聞いた事がある。 「……って、そんな事を考えている場合じゃないな」 モンスターを引きつけるため、クリストファーが大腸初を発動させた。 それと同時にモンスターが怒り狂った様子で頭を振り、物凄い勢いで冒険者達に攻撃を仕掛けていく。 「……女のヒステリーほど怖い物はないな」 自ら盾となってモンスターの攻撃を受け止め、ナサロークが大岩斬を惜しみなく叩き込む。 そのたびモンスターの顔を苦痛に歪み、断末魔を上げて崩れ落ちる。 それっきり……、モンスターは動かなくなった。 「……残念だったな。俺の好みはもっと年下の少女だ。しかし、倒すには(ほんの少しだけ)惜しい美貌だったな……。だが、本当の美しさは心の美しさだと思う。外見は飾り物で、人を真に愛し慈しむ心こそが肝要。俺も心の美しさを磨こうか……」 モンスターの杖をむけて宣言した後、レインが疲れた様子で溜息を漏らす。 確かにモンスターは美しかったが、それは人間を真似ただけの作り物にしか見えなかった。 それでも心惹かれていたのは、モンスターの歌声と、全身から放たれていたフェロモンのせいだろう。 「わしも、あのモンスターに艶やかな尻尾があったなら危うかったかも知れんのぉ」 恥ずかしそうに視線を逸らし、バジヤベルがゲフンゲフンと咳き込んだ。 しかし、本当は彼にも見えていたモンスターの身体から伸びた艶やかな尻尾を……。 あれはフェロモンが見せた幻だったのかも知れないが、まるで野原に舞う蝶の如く美しい尻尾であった……。 「異形の者だったとは言え、村人達の中には、まだ彼女はヒトだと信じ込んでいる者もいるかも知れない。だから、せめて……墓標だけでも作っておこう、か」 少し寂しそうな表情を浮かべながら、ジェイドがモンスターの死体を抱き上げる。 モンスターの顔は醜く歪んだままだが、このまま放っておくのは忍びない。 「ああ……、そうだな。わざわざ村人達を絶望のどん底に突き落とすのも酷だし、丁重に葬ってやるか」 一輪の赤いバラをモンスターの胸元に置き、ココロがゆっくりと毛布を掛ける。 その後、冒険者達によってモンスターが埋葬され、多くの村人(特に男)達が涙するのであった……。
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参加者:10人
作成日:2008/04/06
得票数:冒険活劇5
戦闘3
コメディ7
えっち1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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