夏だ! 海だ! お祭りだ! 浜辺のスーパーリトルウォーズ ポルックSide



<オープニング>


●ひと夏の喧騒
 近頃の太陽は少々張り切りすぎだ。湿り気を帯びた不快な暑さの中、酒場で二人の霊査士が、告知前の依頼を確認していた。
「蒸し魚の気分だよ」
 熱を持った霊査の鎖を持て余し、緑柱石の霊査士・モーディ(a90370)がこぼす。微笑んで頷く女霊査士・シャン(a90369)の額にも、うっすらと汗が滲んでいた。
「こんの野郎ーっ!!」
 突如、背後で怒号が響いた。続いて何かが割れる音、走り回る足音。
「待ちやがれ!」
「やーだよー♪」
 聞き覚えがありすぎるあの声は、プーカの忍び・ポルック・(a90353)と朱凛撃・アレク(a90013)だ。
「モーディ、助けてっ」
 ポルックがモーディの後ろに逃げ込んだ。迫るアレクの形相は鬼かトロウルか。
「キミ、何をやった!?」
 ただでさえ暑苦しい最中の騒ぎに、モーディの表情が自然と険しくなる。
「アレクさん、どうしました?」
 おっとりと、シャンがアレクに問う。
「ポルックが俺の酒をめんつゆにしちまったんだよ!」
「あらあら。でも、一口分くらいでしょう? そう怒らなくても……」
「あれはなあ、チチャ村産『チチャチェリー酒』つって、限定生産・即完売必至のレア物なんだ!」
 アレクは猛然と反論する。
「チチャ村、ですか?」
「そうさ! 苦労して注文して待たされて、やっと手に入れたってのに……! こいつ、酒瓶まで割っちまったんだ!」
 ますます顔が険しくなるモーディから目をそらしつつ、ポルックも反論する。
「ちょっと見せてもらおうと思っただけなのに、おにーさんが怒鳴るから、びっくりして落としちゃったんだよっ! だいたい、未成年がお酒飲んじゃだめだよねっ♪」

 瞬間、場が凍った。コルドフリード大陸級の冷気が吹き荒ぶ。

「ポルックさん。とても軽やかに地雷を踏み抜きましたね」
 悲しげにシャンが微笑む。
「え?」
「アレク君は、立派な成人だ」
「うっそぉおおおおおっ!?」
 絶叫を酒場中に響かせて、それから。ポルックは恐る恐るアレクを見た。口元が引きつって、怒ってるのか笑ってるのかよくわからない。目だけが『殺す』と語っていた。
「た、助けてよ、モーディ」
「無理だ」
「そんなぁ!」
「……と言いたい所だが、いい話がある」
 床の染みと化した酒を哀しく見遣りながら、モーディは二人に座るよう促した。

●夏だ! 海だ! お祭りだ!
『チチャ村夏祭り・真夏の海でお宝を探せ!! ――優勝者には豪華賞品』
 見せられた羊皮紙には、そんな謳い文句が書かれていた。
「要は、お祭りのイベント参加者募集ですね」
「主催者から、ぜひ冒険者の皆にも参加してイベントを盛り上げて欲しいと言付かっている」
 村の名にぴくりと反応するアレク。
「ここって……」
「はい、チチャチェリー酒を造っている村です」
「アレク君には朗報だな。優勝賞品もずばり、それだ」
 と、モーディは、割れた瓶を差して言った。
「マジか? よっし、俺は参加するぜ!」
 さっきまでの怒りはどこへやら、アレクは嬉々として参加を決める。
「はいはーい、ボクも出たい! 夏の海、楽しそうなんだよっ♪」
 ポルックも元気良く挙手。
「でね、ボクが優勝して、賞品のお酒はおにーさんにあげる♪ だから、さっきのこと、許してくれないかな? かな?」
「わかった、もう気にすんな! まあ、優勝は俺だけどな」
 二人がっつり手を握り合う。ここに和解はなった……かに思われた。シャンが補足を入れるまでは。
「もしくは、チチャチェリーで作ったお菓子詰め合わせだそうです。こちらも美味しくて有名なんですよ」
「お菓子!? ボク、そっちのほうがいいなぁ」
「は?」
「ごめんねおにーさん、ボク、優勝してお菓子ゲットする♪」
「ちょ、おま!?」
「せーせーどーどー戦おうねっ♪ ピース!」
 おいしいお菓子の魅力の前に、あっさり掌返しちゃうポルック。再び怪しくなった雲行きに眩暈を覚えながら、モーディは更に釘を刺す。
「言っておくがキミ達、イベントは団体戦だからな。ちゃんと仲間を集めるんだぞ」
「「団体戦?」」
「はい。何人でも構わないので、チームを組んで参加してください。村単位での参加もあるそうですよ」
 額の汗をぬぐいながら、シャンがさらに補足する。
「よし、わかった! 絶対優勝してやるぜ。いいかポルック、俺よりチビだからって一切容赦はしねえからな!」
 びしり! と指突きつけるアレク。
「たった5センチだよ! おにーさんこそ、ボクが勝っても泣かないでよね? オ・ト・ナ、だもんね♪」
 ピース♪ と応えるポルック。
「ムッキー! お前そこまで言って勝てなかったら、プーカの負け犬って呼んでやるからな!」
「いいよー? じゃあ僕が勝ったらおにーさんには上げ底魔人って名乗ってもらおうかな?」
「キミたち……今日のところはそれくらいにしないか?」
 モーディの仲裁で、この不毛な言い争いは一旦収まった――かに見えた。
「見てろよ! チームのみんなですごい呼び名考えてやるからな!」
「そっちこそ楽しみにしててよねっ! ボクだってすっごいアイデア集めちゃうんだから!」

 ――かくして。小さな村の小さな浜辺で、世にもちっちゃな戦いが始まるのだった。

●ポルックSide
「ま、そーゆーワケで、みんな頑張ろうっ!」
 元気よく声を上げたポルックは、
「……ところで、これもういいかな?」
 俗に『空気椅子』と呼ばれる状態のまま、傍らに立つ霊査士を見上げた。
「ダメだ」
 ぴしゃりと返す霊査士。
「今からゲームの詳しい説明をするから、せめてその間はそうしていたまえ」
 どうやらアレクの酒を台無しにしてしまった事を誤魔化しきれなかったらしい。

 冒険者達の前に出た霊査士は、懐から小さな瓶と3枚のコインを取り出した。直径3cmほどの円内にチチャチェリーが意匠され、それぞれ1、2、3の数字が刻まれている。
「ゲームは至ってシンプル。会場となる浜辺と、その付近に隠されたこれらのコインを探し出し、チームごとの得点を競い合う。言わずもがな数字がそのコインの得点、総得点の最も多いチームが優勝というわけだ」
「じゃあ、3点のコインを沢山見つければ楽勝だねっ」
 早く説明を終わらせようとするポルックに、モーディは注意を促す。
「理屈はそうだが、得点の高いコインほど難度の高い場所に隠してあるらしい。高得点を狙って変な所ばかり探していると、何も見つけられずに終わる可能性もある。普通に探して、『見つかったのが2点や3点ならラッキー』くらいに捉えた方が良いと思うね」
「リスクを恐れず冒険に出る。それが冒険者なのさっ!」
 脚をぷるぷると震わせるポルック。その口から『冒険者』という単語が出たところで、モーディは禁止事項の説明に入る。
「参加者の多くは一般人だ。当然、アビリティの使用は禁止。召喚獣は出したままで構わないが、ゲームに有利になるような使い方や、周りの迷惑になるような使い方は控えてくれ」
 ポルックの不満げな顔。言われなければ、グランスティードの早駆けで浜を駆け回るつもりだったに違いない。モーディはそんなポルックににこりと微笑んでみせた。
「ちなみに、当日は私とシャンが審判員として立ち会う事になっている。よろしく頼むよ」


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参加者
NPC:トリックオア・ポルック(a90353)



<リプレイ>

●スタート!
 まさに夏本番といった風情の8月某日。チチャ村から歩いて数分のここ――通称チチャビーチは、ゲーム参加者の他にも、海で泳ぐ者、浜辺で日光浴を楽しむ者、屋台を回って祭りの雰囲気を満喫する者など、既に大盛り上がりを見せていた。
 そんな中、主催者用テントで何やら問題が起こったらしく、野次馬根性もとい好奇心旺盛なポルックは早速現場に急行。そこには、自警団にしょっぴかれていく少年と、それを見送る霊査士の姿があった。
「ど、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、君の所の若いのが主催者を買収しようとしていた訳だが」
 さしものポルックも顔を引きつらせる。
「チームメイトの行動の責任は全てリーダーにある。君にはまた例のアレをしてもらおうか」
 その場で軽くスクワットをしてみせるモーディ。空気椅子の悪夢再びの展開に、ポルックは一目散にその場から駆け出していった。

●屋台
「また誰か怒らせたの?」
 走るポルックを呼びとめ、レインが笑う。
「えー、またって何さ」
 少しむくれてみせるポルック。
「アレク、相当怒ってたもんね」
 酒場でのやり取りを見ていたのかルシエルが肩をすくめるが、まぁそれはそれ、これはこれだ。
「ゲームには協力するから頑張ろうねー」
「そうそう、勝負は勝負。優勝して見返してやろう」
 ポルックと別れた後、ねり飴を手に再び歩き出すルシエルの横を、健康的な肌の色をしたエルフの少女が通り過ぎていく。一店一店を食い入るように見つめながら歩く少女――アニヒタの足が、
「よっ、お嬢ちゃん、チョコバナナ食うかい?」
 その声でぴたりと止まる。甘い香り。カラフルなトッピング。甘美な誘惑に、抗う術は無い。
(「これだけ食ったら……」)
 チョコバナナを頬張りながら、彼女はコイン探しを忘れていない事を心で反芻する。
「甘くて美味しい綿菓子だよっ♪」
 また足が止まる。
(「もし屋台に隠したなら屋台の人間が気づかないわけねぇし、気づいたなら視線が向くもんだぜ。あ、あと食べ物買ったらヒントくれるかもだし!」)
 気付けば両手に綿菓子。収穫0。
「こ、これ食ったら本気で探す!」
 アニヒタはすっかり無限ループにはまっていた。

「モーディさん、こっちこっち!」
 喧噪の中、カイのよく通る声が人混みでおろおろする霊査士を呼ぶ。
「すまない、こういう場にはあまり慣れてなくてな……」
 一緒に回ろうと誘われ、見回りがてら付いてきたのは良いが、混雑に不慣れなモーディはカイが目を離すとすぐに人の流れの中で立ちつくしてしまう。
「おう坊主、年上狙いか? やるねぇ」
 ふいの冷やかしに目を向けると、そこは大小様々な景品が並ぶ、輪投げの屋台であった。
 と、その中の1つに見覚えのある瓶が。
「2点だ……」
「坊主、恋もコインも大事なのはタイミングだぜ」
 あきらかに勘違いしているオヤジを軽くスルーし、輪を3つ受け取る。
 1投目、ハズレ。
 2投目、惜しくもハズレ。
「おじさん、これ輪ちっさくない?」
「そんな事ないよ。全然大丈夫だよ」
 何故か胡散臭さを増すオヤジ。
 3投目、入った! と思った瞬間、ほぼ同時に別の方向から飛んできた輪も、その瓶をしっかりと捉えていた。輪が飛んできた方向に目をやると、
「あれ、たしか同じチームの」
 レインとルシエル。彼らも同じ所に目を付けたわけだ。
「これどうなるのかな?」
 ルシエルの質問にオヤジは二カッと笑い、机の下から取り出した瓶を2本投げて寄越す。
「2点を2人で分けりゃそうならぁな」
 入っているコインは、2つとも1点。
「て訳でこいつはまだ生きてるぜ。さぁ、どうする?」
 目の前の2点をみすみす見逃す手はない。3人は互いに顔を見合わせ、大きく頷いた。
「「やる!!」」

●岩場
 岩場エリア。そこは、砂浜に岩肌が覗く程度の場所から、直接海に面し、波が入り込んでくるような難所まで、割とバラエティに富んだ場所であった。
「コインコイン、と」
「ど〜〜ん♪」
「わっ!?」
 背後からの声に驚いたポルックは、岩の上でつるりと滑って転んでしまう。
「ポルック君、助けに来たよ〜ん♪ さあ、私とどっちが多く集められるか競争だっ!」
 そう言ってビシリと指差してきたのは、
「スージィかぁ、ビックリしたよもう……って、ん?」
 転んだ拍子に手を突っ込んだ岩の隙間。
「おおっ、小瓶だ。コインは1点だけど」
「むむ、さすがポルック君。豪運だね〜」
 負けじとスージィは辺りで一番大きな岩に登り、キョロキョロと周りを見渡す。探すのは『自分が思わず隠したくなりそうな所』。なんで?と聞くポルックに、彼女は太陽の様な笑顔で応えた。
「きっと、隠したくなる所って皆似た所だったりするんじゃないかな〜ってね♪」
 降り注ぐ太陽の光をものともしない2人とは対照的に、アーズは麦藁帽子に長袖のパーカーと、万全な日焼け対策を整えていた。こうした努力を怠ると年を取った時に大変とはよく聞くが、基本的に20歳以上にならないプーカ達ならそんな悩みも無いのかしらと、彼女は一つ溜息をつく。
「あら?」
 今、遠くの岩場で何かが光を反射したようだ。それが小瓶である事を祈りながら、光が反射した場所に向かうアーズ。岩の隙間を丹念に覗いていく彼女の努力は、程なくして報われる事となる。
「2点、嬉しいの」
 額にうっすらと滲む汗を拭いながら、アーズはにこりと微笑んだ。
「てやー☆」
 明るいかけ声と共に起こる盛大な飛び込み音。ちらりと見えた伝声管は、プーカの種族特徴。誰かがコインを求めて海へと潜っていったのだろう。
 飛び込んだのはリオン。海に隠された部分であっても、そこが岩場である事には変わりない。
 息の続く限り岩に沿って潜り、出て、また潜る。何度か繰り返した後、勢いよく海から飛び出してきた彼の手には、
「お宝はっけーん!」
 3点のコインが入った瓶が握られていた。

●浜辺
「おい、あれ見ろよ!」
「おぉ、すげえ……」
 男達の視線の先には、浜辺を勢いよく駆けていくユリア……の、たわわに実った胸。
 彼女が一歩踏み出す毎に、柔らかそうな2つの山がプリンのように弾んで揺れる。
「男なら目で追わざるを得ない」
 とは、地元男性の証言。
 しかし本人はそんな事などまったく気にせず、気持ちよさそうに駆け抜けていく。
「ワイルドファイアを思い出すなぁ」
 顔に当たる風に潮の香りを感じながら、周囲に目を配り、小瓶を探すのも忘れない。
「無いなぁ、よし、もっと向こうに行ってみようっ!」
 速度を上げ、探索範囲拡大を図るユリア。揺れる胸は今にも水着からこぼれんばかりであった。
 台風のような少女が走り去った後も、じりじりと照りつける太陽の下、レミールは、ひたすら浜辺の砂を掘り返し続けていた。地道で過酷な作業である。ゲームが始まった当初は元気に振られていた尻尾も、すっかり動きが鈍くなっている。
「暑いなぁ……、クロさん日除けになってくれない?」
 影から音もなく現れるダークネスクローク。レミールは自分の麦藁帽子をクロークに被せ、太陽の光を遮るように頭上ではためかせる。
「あ、これで大分楽……ありがと」
 再び砂浜をかき分ける作業に戻ったレミールの指先に、何やら固い感触が。
 だが一瞬明るくなった表情も、感触の正体にすぐに沈む。
「うぅ、貝はもういいです……」
 見れば、レミールが掘り返した周辺には貝殻が山のように積まれていた。
「うーん、探す場所が悪いんじゃないかなぁ」
 同じく浜辺を探していたリヴィールが、そんな彼女の様子を心配そうに見つめる。手には既に1本の小瓶。特別な事をしている訳ではないが、波に浚われない場所を重点的に探し、所々に生えている草の陰なども見ていく等の工夫は、見つからなかった分を後から回収せねばならない主催者の手間も考えれば、的確と言えるだろう。
「あ、もう1本発見」
 事も無げに小瓶を拾い上げるリヴィールを、レミールは恨めしそうに見ていた。

●林
 木々の枝葉が強烈な日差しを優しく防ぎ、風に揺られてさわさわと涼しげな音をたてる林エリア。
 ちょっと休憩にと立ち寄ったポルックもその雰囲気に軽い眠気を覚えていた。
「ふあ、あぁぁぁ……!?」
 思いの外大きく長い自分のあくびに驚いて口を押さえたその時、
「おきろー♪」
 ユーヤケの脳天チョップが炸裂。
「ほらほら、寝てないで探さなきゃっ! ボクはこーんなおっきな抜け殻を見つけたよー!」
 ユーヤケが見せてきたのは、見事な蝉の抜け殻。
「いや、探すのってコインだよね?」
「あっ、そうだった」
 思わずポルックがツッコミに回ってしまう、末恐ろしいプーカであった。
 そんな2人の様子を、フーラは木の陰からこっそりと見守っている。
「本場物のプーカだぁ……、ん〜、可愛いよぉ〜♪ 連れて帰りたいよ〜♪」
 どことなく犯罪臭がするのは気のせいだろうか。
「はう〜」
 一人悶々としながら、地面に『の』の字を描く彼の指がひたと止まる。傍目には分かりづらいが、幾つもの足跡がこの木の下に集中していたのだ。木に小瓶を隠せそうな窪みは無い。とすると、上か。
「わ、2点なのですよ〜♪」
 木の上で喜ぶフーラがふと下を見ると、いつのまにかポルックの姿が消えていた。
「あれ、ぽるんは? ぽるんは〜?」
 その頃ポルックとユーヤケは、リゼッテが持参した園芸用具セットを手に、怪しげな場所を見つけては掘り返していた。
「んー、見つからないね」
「そうですね〜。でも、なんだか宝探しみたいで面白いのです〜♪」
 自分が掘った穴を埋め直し、その上をぺんぺんと叩いていく。ユーヤケは2人と共にコインを探す傍ら、変な虫の採取にも余念がないようだ。
 独りでは気が滅入りそうな作業も、皆と一緒なら話は別。互いに笑い合い、励まし合いながら過ごす時間は、それ自体が宝物のようなものだ。
「木の上も探したかなぁ〜♪」
 心無しか息を切らせて現れたフーラの助言に、3人はなるほどと手を叩いて木に登る。
「2点、ゲットなのです!」
 嬉しそうに小瓶を抱えるリゼッテの声が、林の中に響き渡った。

●チーム内チーム『オレンジ』
「もぐもぐ、あの林檎飴おいしそう!」
 まだ焼きそばを持っている手で屋台を指差し、リリフィスが叫ぶ。
「さっきから食ってばかりだが、ちゃんと探しているか?」
 呆れ顔のルキシュ。
「だって、食べ物の中にコインがあるかもしれないよ! 意外性ばっちりで高得点がとれるかもしれないよ!」
「なるほど、それはそうかもしれないな」
 浴衣姿で力説するリリフィスに気圧されながら、ルキシュも先程購入した瓶入りの飲み物にコインが入っていないかを確かめる。
「探すのは小瓶に入ったコイン、その中でも3点コインと呼ばれるのを多く見つければいいのですよね」
 フロルメイの確認に、ルキシュはゲームのルールを思い出した。
 小瓶とコインは必ずセットになっている。小瓶に飲み物が満たされている可能性なら無くはないが、食べ物の中に混じっているとは考えづらいのではないか。リリフィスの方を振り向くと、彼女は悪戯っぽく舌を出してみせた。
 その傍らで、誰かが屋台の商品棚の下で四つん這いになり、お尻だけを覗かせている。
「ソウジュ、コイン見つかった? あとこれ、綿飴おいしいよ」
「あ、ありがとうございますの」
 ごそごそと屋台の下から這い出て綿飴を受け取ったソウジュだが、未だ1枚も見つからず、綿飴どころではないというのが本音。屋台の裏から売り物の壺の中まで、とにかく目に付いた物を片っ端からチェックしているようだ。
「ちょっと見せてくださいですの♪」
 と朗らかな笑顔を向けられては断るわけにもいかず、『捜索』が終わるまで店主は困ったような嬉しいような、複雑な表情を浮かべていた。
「やっ、みんな調子はどう?」
 再び屋台エリアに戻ってきたポルック。同じ旅団の面々が集まっているのを見て、手を振りながら寄ってきた。話を聞くと、リミュが的当ての景品で手に入れたという2点のコインと、フロルメイが村の特産品に混じっているのを見つけた1点だけが、現時点での収穫らしい。
「ポルック君の為にも全力で力になろ〜♪ ってみんな頑張ってるんですけど……」
「ポルックさんはコイン見つけましたか?」
 懐から岩場で見つけた1点のコインを取り出すポルック。
「お疲れ様、林檎飴食べる?」
 リリフィスから受け取った林檎飴にかぶりつくと、その甘さで疲れが癒されていくような気がした。
 その後、一息ついたポルックをルキシュが肩車して、屋台の屋根探索が開始された。
「あった! ルキシュさんもっと前、前……取ったぁ!」
「こら、あんまり暴れ――うおっ」
 バランスを崩す2人。ちょうどそこへ、
「1点、見つけましたの〜♪」
 屋台の探索を終えたソウジュが小走りに駆け寄り、
「うわっ」
「きゃあっ!」
「ちょ、こっちに倒れてこないで――」
 どすん。
 結局、『オレンジ』全員を巻き込む形となった。
「ポルック!」
「ポルック君〜?」
「ポルックさんっ!」
 お説教モードに入りかけるソウジュに、ポルックは手の中の小瓶を振ってみせる。
「ゴメンゴメン、今日の所はこれに免じて許してよ。この、3点のコインにさ」

●結果発表!
 デロデロデロ……、
「優勝は、34点! ポルックチーム!」
 わぁっ、と大きな歓声が沸き上がる。
 思い起こせばかなり遊んでいたような気もするが、運命の女神はどうやら悪戯好きだったようだ。
「ポルック君、やったね♪」
 リミュがポルックに飛びつき、頬に軽くキス。リヴィールも34点分のコインをポルックの背中に流し込んで祝福する。
「リオンこっちだよっ」
 カイがぶんぶんと手を振っている。優勝を一緒に祝おうと? いやいや。怪しい。怪しいが、行かない訳にもいかない。リオンがカイの手前まで来た時、その足下から地面が消えた。
「え?」
 驚いたのはカイ。この事態をきっちり予見していたリオンは、伸ばした腕でカイの腕を掴み、諸共の精神で落とし穴に引き摺り込んだのだ。
「あは」
「あははは!」
 音楽が奏でられ、紙吹雪が舞う、優勝チームを讃える大歓声の中、2人は大声で笑い続けた。

「あーあ、負けちまったぜ。やるなぁ、お前」
「へへ、おにーさんも強かったよっ!」
 浜辺に映し出される2人の影。青春である。
「おにーさん、酒場ではごめんね」
「気にするな。俺も大人気なかったぜ」
 しばし笑い合い、何気なく差し出されたポルックの手をアレクがしっかりと握る。青しゅ――
 ぐにゃ!
 ぶにゅ!
「ひゃあっ!?」
「な、なんじゃこりゃあぁあ!?」
 反射的に離れる2人の間にべしゃりと落ちたのは、潰れたナマコとクラゲ。
 ポルックがナマコ、アレクはクラゲを手の内に握りこんでいたのだ。
「し、信じらんない! やることがちっさすぎるよおにーさん!」
「お、前、が、言、う、なっ!」
 再び言い争い始める2人。浜辺のスーパリトルウォーズはまだまだ続く……。


マスター:東川岳人 紹介ページ
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作成日:2008/08/03
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