水着ひんむくカニ



<オープニング>


「砂浜に巨大なカニが現れたといいます」
 真実求む霊査士・ゼロ(a90250)はそう言って、砂浜で起きた事件について説明を始めた。
「マリンキングボスについてきたのか、たまたま泳いできたのか……詳細な原因はよく分かりませんが、巨大なカニが現れたことは事実です。海に出ようとする漁師さんたちも仕事ができないと困っていらっしゃいますし、砂浜に遊びに行こうという人も行けなくて残念がっています」
 そういう訳で、今回の依頼はこの巨大カニの退治だということだった。
「巨大なカニは全部で4体。人の背丈よりやや高いほどの巨大さで、ハサミは軽く人の胴も挟むことができるほどです。相応のパワーを持ち、更に硬い殻に覆われた体は頑丈ですが、動きはそれほど素早くないようです。攻撃方法は溶解性を持つ泡を飛ばす攻撃や、巨大なハサミで斬撃や挟む攻撃を繰り出してくるようですね」
 そこでゼロは一旦言葉を切り、やや言い難そうに話を続けた。
「えぇと、泡攻撃で衣服が溶けてしまったり、ハサミの斬撃で斬られたりしてしまうことがあるようです。いわゆるアーマーブレイクの効果を持った攻撃ということですね。戦闘への影響もそうですが、恥ずかしいので注意してください」
 少し早いかもしれないが、砂浜で遊べるように……よろしくお願いしますとゼロは一礼を送るのだった。


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参加者
華紬の伶・ミンリーシャン(a22811)
火焔天・トロン(a57126)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
天翼飛鳥・フェルティシア(a59107)
樹霊・シフィル(a64372)
猫の忘れ物・ティセ(a68887)
流星を継ぐ射手・フーラ(a70918)
蒼焔・フォンティウス(a72821)
風雲紐水着衛士・メイナ(a73577)



<リプレイ>

●カニ
「蟹型の魔物か……世を騒がせる輩を狩るのも大事な役目だ。では、そろそろ行こうか」
 ピースメーカー・ナサローク(a58851)を始めとした何名かの冒険者達はとある砂浜へと向かっていた。
「海で泳げたら泳いでだね〜、あとは蟹さん待ってなさいです」
 何でも巨大な蟹型の海獣が現れたという話で、冒険者たちはその退治に向かっていたのである。十六夜の探究者・フーラ(a70918)は食べる気満々で足取り軽く仲間達についてゆく。
「おいしいんだろうなぁ……じゃない。僕らのやることは蟹退治。これから来る夏の為にも、断じて食べるなんて変なことを考えちゃだめなんだ!」
 自分や仲間達に釘を刺すように意気込んでいるのは終わりなき刻を行く蒼焔の翼・フォンティウス(a72821)だったが、その脳裏には食欲が残っているようだ。まぁともあれ倒さねば食べることもできないだろうから、目的は一致しているといえなくもないだろう。

 そうこうしながら歩みを進めれば、青い空の下に広がる白い砂浜、しょっぱい潮風、そして寄せては返す波の音……そして浜にでーんと構える蟹。……でーんと?
 冒険者たちが到達したそこには、見紛うことなき巨大蟹が居座っていた。
「くしゅんっ。流石に、まだ水着は早うございましたね」
 ふぁさりと上着を脱いで樹霊・シフィル(a64372)は水着姿になり呟く。何故わざわざ水着で行くかと問われれば、砂浜なればそういうお約束だからということだそうだ。
 そのままシフィルは素早く気高き銀狼を放ち、巨大蟹の動きを拘束する。その間にナサロークは黒炎覚醒を発動させ、その身に邪竜の炎を纏っていった。
「皆さん、回復が必要な時はおまかせくださいね……」
 乙女戦隊なでしこ・ミンリーシャン(a22811)はウェポン・オーバードライブを発動させ、術手袋に力を注ぎ込んでゆく。
「今は、あたしがとろんお姉ちゃんを守るのです」
 そう言って猫のリグレット・ティセ(a68887)は火焔天・トロン(a57126)へと君を守ると誓うを発動させていた。どうやらトロンは他の戦いで受けた傷がまだ完全に癒え切っていないようである。
「なんかこう、身体の節々が痛いけど頑張るよっ」
 トロンはティセを前に小さく頷いて、血の覚醒を発動させていった。どくどくと破壊衝動が血の流れと共に体内を巡る。それを抑え付けて握り潰すように、トロンは巨大剣を握り締めた。
「でも、水着の人が多いですねー。まー私も水着ですから気にしないですよー」
 何かの意志か悪意かお約束か、確かに砂浜に展開する冒険者たちは水着の者が多かった。天翼飛鳥・フェルティシア(a59107)は巨大蟹に向けてバッドラックシュートを投げ放ち、相手に不幸の影を刻み付ける。
 ぶくぶくぶく。
 だがその直後、勢い良く泡がフェルティシアに命中する! 見れば目の前の巨大蟹の他にも巨大蟹が居たようで、泡を吹きつけてきたのだ。どろどろとフェルティシアの水着が溶けて落ちていった。
「おぉー、見事に溶けちゃったですよー」
 白い肌が露わになるフェルティシアだが、ともあれ今は倒すことが優先と退く様子は見せない。何とも眼福な……もとい、勇ましいことである。
 とりあえず目前の蟹を蟹Aと呼称するとして、第一目標に定められた蟹Aへ向けてフーラは貫き通す矢を射出する。闇色の矢は蟹の甲羅を貫いて過ぎた。
「うぉぉぉ! 戦闘開始だ!」
 砂を蹴立てて踏み込み、両手斧を振り上げるフォンティウスだが、蟹Aはガキンと大きなハサミで一撃を受け止める。防御されたのでキルドレッドブルーの魔炎と魔氷は伝わらなかった。
「迷惑不埒な輩は速やかに懲らしめてあげます」
 だがその直後にドリアッドの重騎士・メイナ(a73577)が踏み込み、鎧砕きを叩き込む! びしびしと蟹の甲羅がひび割れていった。
 ざっ! しかし別の巨大蟹がメイナ目掛けてハサミを振り抜いていた。先ほどフェルティシアへ攻撃した奴を蟹Bとすれば、また別の一体、蟹Cとでもしておこうか。ピッと紐状の水着が切れて豊かな胸が露わになる。
「ぐはっ!」
 巨大蟹は全部で四体居た。最後の一体、蟹Dがガサガサとフォンティウスへと近づき、巨大なハサミで挟む攻撃を仕掛けてきたのである。ギリギリと締め付けられて喉の奥から血飛沫が飛んだ。

「皆様が1体に集中できる戦況を作らねば……」
 シフィルは蟹Bへと気高き銀狼を放ち、その動きを止めさせる。ナサロークは蟹Aを一刻も早く倒すべく、ブラックフレイムを撃ち放っていた。黒い炎が赤い甲羅に着弾し、ぶすぶすと焦げ跡を残す。
 続いてミンリーシャンがファナティックソングを奏で立て、巨大蟹たちに出血と混乱を与えてゆく。その混乱に乗じてトロンはガッツソングを奏でていった。
「さあさああたしの代わりに頑張って戦うのだー」
 軽口を叩くトロンだが、それは恐らく余計な気負いを与えぬ為なのだろう。仲間達にピンチが訪れないように、戦況に気を払っていた。勇ましき歌を聞きながらティセは小さく頷き、蟹達の背後に向かうべく回り込んでいった。
「んじゃ、他の蟹さんにも牽制をしておくですねー」
 それを援護すべくフェルティシアが粘り蜘蛛糸を放つ。降り掛かる白い糸が絡まって蟹Dは動きを止めるが、蟹Cは糸をハサミで振り払う。そしてそのままぶくぶくと泡を広範囲に撒き散らしていった。
「えっと……こっち見ないでほしいのです〜!」
「……!」
 フーラがミンリーシャンを庇いつつ、泡攻撃を受けて水着が溶けてゆく。ミンリーシャンの様子がおかしいのは、きっとファナティックソングの反動で恍惚としているからだろう。
「っ……下がってろ!」
 女性の冒険者が多い中、水着が溶けて大変な状況である。それを振り切るようにフォンティウスは蟹達の後ろに回り込んでいった。
「切られる前に斬る、一刀両断!」
 もう水着は切られていてイロイロぷるんぷるんしているが、それはさておきメイナが兜割りを振り下ろした! アーマーブレイクを受けてからも攻撃を受けていた蟹Aは真っ二つに断ち切られ、ずしんと砂浜に沈んだ。

「次……」
 素早く術手袋を突き出し、気高き銀狼を解き放つシフィル。動いていた蟹Cに喰らいついて組み伏せ、その動きを封じ込めた。
「お前達など物の数ではない!」
 ナサロークが儀礼用長剣『ダリア・イ・ヌール』を立てて構え、振り下ろす。瞬時に生まれたヴォイドスクラッチの腕が蟹Bを引き裂く。びしっと甲羅にアーマーブレイクの効果が伝わっていった。
「……」
 やや呆然としながらもミンリーシャンは手を伸ばそうとして我慢……もとい恍惚状態で動けない。
「えっと……大丈夫でしょうか?」
 その様子を気にしたら負けかと思いつつも、ミンリーシャンを守らねばと前に立つフーラであった。
「えいっ、にゃ〜!」
 そして蟹Bの背後からティセが疾風斬鉄脚を繰り出す! ひび割れた甲羅を鋭く蹴り上げ、ざっと着地する。
「……しっぽが隠せなくて恥ずかしいのです」
 動くたびにフリフリ動くストライダーの猫尻尾。ティセ本人はあまり気に入っていないようだった。
 ざしゅっ!
 だがその直後、蟹Dが動き出してティセにハサミを振り下ろしていた。びびっと水着の背面が切れ、はらりと落ちる。
「きゃっ……」
「ちょい待ち、こりゃピンチだねー」
 思わず声にならない悲鳴を漏らすティセに、トロンは一大事だと援護に向かう。
「そんな隙まみれで、よく僕らと戦う気になれたな!」
 フォンティウスは蟹Bに背後から流水撃を浴びせかけるが、脚を断ち切るまでは至らなかったようだ。だがアーマーブレイク状態の身体に深々と刃を刻み付けてダメージを与えている。
「この程度……あの辱めに比べればどうという事はありません!」
 がきん!
 後方に回り込む者が多い為、正面の前衛はメイナただ一人となっていた。繰り出した兜割りはハサミによって受け止められてしまったが。ここを突破されれば後衛に被害が出る恐れがあり、絶対に退けないとメイナは歯を食い縛る。
「男の人は見ちゃだめですよー?」
 水着が溶けたり切られたりと大変な状況である。フェルティシアは釘を刺しつつ動いている蟹Dに向けて粘り蜘蛛糸を浴びせかけた。
「おとなしく食べられるといいのですよ!」
 ぎり、と強弓を引き絞り、フーラは貫き通す矢を射出する。一矢は蟹Bの身体を真っ直ぐ貫いて過ぎた。そこにシフィルも気高き銀狼を喰らい付かせる。
「行け!」
 ナサロークから放たれたのは異形の黒き炎、デモニックフレイム。蟹Bを焼き尽くす勢いで燃え上がったその中から、ゆらりとクローンが誕生した。
「あの蟹を倒しに行け」
 ナサロークの指示に従い、クローン蟹は蟹Dへ向かってガサガサ歩いてゆく。その間に恍惚から立ち直ったミンリーシャンが高らかな凱歌を奏で立てていった。
「何といいますか、ウハウハ……もとい早々にケリをつけなくては……」
 ミンリーシャンの高らかな凱歌を浴びながら、ティセは蟹Dから離れて蟹Cへと疾風斬鉄脚を蹴り上げる! 武道家なら手が使えなくても脚があるということで、手で胸元はしっかり押さえていた。
 ……ぷちっ。
 だが水着の下も限界ギリギリだったのか、着地と同時に後ろの方が切れた。はらりと落ち……。
「あぶなーいっ」
 そこに抱きつき、ピンチを救ったのはトロンだった。その身体で隠されたことで、ティセは生まれたままの姿を皆に晒すことなく済んだ。
「……おぉう、意外とこう、むちむちとして……」
 しかし一難去ってまた一難。抱きついているトロンがむにむにと身体をまさぐってゆくではないか。
「うぅ、お嫁さんに行けなくなっちゃうのです……」
 まぁ、戦闘中なのでそれほど激しい出来事は起きなかっただろう。たぶん。
「不幸をお届けなのですよー」
 そうこうしている間にも残る蟹はあと二体だが、蟹Cがゆっくりと動き出そうとしていた。急ぎフェルティシアは不幸のカードを投げ放つ。バッドラックシュートは蟹Cの殻に突き刺さり、不幸の影をじわりと広げた。
 ぶくぶくぶく……。
 振り巻かれる泡がメイトの身体を侵食し、シフィルの水着を溶かす。だがフーラから放たれた貫き通す矢がヒットしている間に何とか体勢を立て直し、呼気と共に鎧砕きを繰り出す! ばぎゃっと片方のハサミごと突撃槍を叩き付け、アーマーブレイクの効果を伝える。
 そこに続けてフォンティウスも鎧砕きを叩きつける。背後から蟹Cの殻にびしびしと亀裂が刻み付けられていった。
「ふふふ、水着が無くなった程度で取り乱すわたくしでは……。う、嘘でございます。やっぱり恥ずかしゅう……」
 言いながら片手で胸を覆い、片手で気高き銀狼を放つシフィル。輝く狼は蟹Cの目と目の間に牙を立て、ずしんと食い破って仰向けに倒させる。わきわきと少し脚を動かして、蟹Cはそれきり動かなくなった。
「もう、どこを見てますの?」
 ぷぅ、と男性陣に一瞬だけふくれっ面を見せてからシフィルはばさりとタオルを羽織るのだった。

「貴様で最後だ」
 クローン蟹とがっしゃがっしゃ戦闘している蟹Dが最後の一体。ナサロークは仲間達に呼びかけるようにしつつヴォイドスクラッチを放つ! 虚無の腕がざくりとその殻を裂き、アーマーブレイクの効果を刻みつけた。ちょうどその直後にクローン蟹のハサミがどてっ腹を殴りつけるように一撃した。
「ミンリーさんは絶対に守るのです!」
 ぐっと意気込みながらフーラは貫き通す矢を放つ。その言葉に応えるようにミンリーシャンはフーラの肩にぽんと手を乗せる。
「……ご馳走様です」
 奏で上げられるファナティックソングが蟹Dに出血を及ぼし、闇色の矢が貫いてゆく。蟹Dはぶるぶると苦しそうに身を震わせていた。
「んー、何かヌルヌルして……ってあれ? あたしの水着までっ」
 しかし混乱からは立ち直ったか、未だにティセをむにむにしていたトロンの方に泡が浴びせかけられてゆく。
「あひゃっ!? ……っもぅ!」
 ヤケクソとばかりにトロンがパワーブレードを叩きつける。ずしんと砂浜に尻もちをつくように蟹Dの体が沈んだ。
「うぅぅ……」
 トロンが攻撃したことで、ようやくティセが解放された。しばし砂浜に手をついて座り込み、何やらもじもじしていたものの、ゆっくりと立ち上がって両手を突き出す。
「ばかぁ〜〜」
 そこからワイルドキャノンの闘気が解き放たれた! イロイロなやるせない思いが込められた一撃はびしびしと追撃を加えながら蟹Dの身体を破壊し、貫通して打ち倒したのであった。

●カニ祭り
 何とか四体の巨大蟹を倒し、乱れた衣服とか水着とか精神状態とかを整えた冒険者たち。そうして巨大蟹たちの亡骸をどうしようかという話になった。
「折角ですからこの蟹調理してしまいます?」
 メイナの提案にフォンティウスは頷く。
「皆で食べたいな。モンスターだけど多分大丈夫だと思うし」
 その発言にフェルティシアはち、ち、ちと指を振って答えた。
「この蟹さん……モンスターでも変異動物でもない、ただの怪獣なのですから、きっと美味しく食べられるのですよー」
 もしモンスターならグリモアを失った冒険者だった存在ということになる。それを食うのはちょっとどうだろうという所だが、今回の相手はマリンキングボスについてきた海の怪獣だ。ワイルドファイア大陸では日々狩ったり狩られたり食べられたりしている奴なのである。
「確かに、身に異常はなさそうだ」
 バキバキと蟹の殻を解体しながら調べるナサローク。ティセも「ちゃんと食べてあげるのが一番の供養なのです」と頷く。
 皆の意見がそろった所でミンリーシャンはバーベキューセットを準備し火を起こす。フーラもいそいそとそれを手伝った。
「えっと……ナイフにお味噌、醤油……お野菜も準備してきました」
「かにー、かにー、ゆでて焼いてで美味しく食べるのですよー」
 こうして巨大蟹は冒険者たちの血肉となり生き続けることとなった。
「むふー、疲れた後のご飯は美味しいなぁ」
 食すトロンに確かにとフォンティウスも頷きながらぷりぷりとした蟹の身を頬張っている。噛むたびにじゅわっと汁が溢れ、ほのかに潮の香りと共に口の中に広がってゆく。新鮮なことも手伝って見事な味わいだ。
「食べ放題ですね〜、絶対食べ切れませんけど」
 ティセが呟く。巨大蟹は大部分が胃袋に納められ、あとの食べ切れなかった分は丁重に埋葬されたのであった。
「こうしてまた一つ、浜辺の平和が守られましたわ」
 シフィルの言葉に一同は頷き、平穏を守った安堵と満腹感を胸に帰路に着くのであった。

 ……ぱしゃん。
 海水浴には少し早いが、波打ち際を裸足で歩けば心地よい冷たさが寄せては返してゆく。
 もう夏も近いか……帰り道で冒険者たちは少しだけ海を眺めるのであった。

 (おわり)


マスター:零風堂 紹介ページ
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