星の渚のラヴアミーゴ



<オープニング>


 ざざぁあん……ざざぁぁあん………。
 白い浜辺に潮騒は止め処なく、寄せては返す。
「綺麗だよ」
「ホント?」
「あぁ、世界で一番キミが素敵さ……」
 肩を寄せ合い、愛をささやく。
 星降る夜空の下で、世界は恋人達を中心に回っていた。
「くすぐったいよ、アニー」
 何処をさわっているんだい? ひたひたと首筋をなでる悪戯な手をそっと押しのける。
「え? 私は何もしてないわよ」
「え?」
 絡めた指にぬるりとした感触。
『ラヴュ〜ンv』
『ラヴラヴ〜ン!』
「キァー! マークっ!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」
 男は見越し宜しく、ピンクの足に担ぎ上げられる。
『ラーヴ。ラヴラヴュ〜ン』
 何本ものピンク色のタコ足にさらわれる恋人の影を、彼女は捉える事が出来なかった。

「悪漢に連れさらわれ、引き離される恋人達……くぅっ! 悲劇ですわねっ」
 歌漢女・ラートリ(a90355)が霊査士の話に、ハンカチをかみながら漢女泣きに涙を流す。
「いや……死んではないんだけどな」
 ピンクの足にさらわれた、男性は幸いなことに後日近くの岩陰で見つかり一命を取り留めた。
 身ぐるみをはがされ、体中のいたるところにたらこ唇のキスマークだらけの状態を果たして無事と呼んでいいものかどうか……疑問ではあるが。
「男をさらったのはラヴアミーゴという怪獣だ」
 ショッキングピンクの巨大な頭に、吸盤の付いた長く太い足が特徴的。
 科をつくるラートリを無視して黄昏の霊査士・ユノ(a90341)が話を進める。
 マリンキングボスの移動に関係してか、最近ランドアースの一部の浜辺を荒らしまわっているという。
 被害を受けているのは夜半過ぎに浜辺を散策していた、カップルが大半。
 残りは、不運な通りすがりの一般男性である。
「奴らが何を考えているか……までは、わからないが」
 襲われるのは大抵、成人男性で、女性の被害者は今のところいないらしい。
「数は4体。足で締め上げる攻撃と、大きく突き出した口は吸い付く他に、水を勢いよく飛ばす事ができるみたいだ」
 頼んだぞ。
 貞操の危機ですわー。と、身もだえしている黒羽のチキンレッグを無視して霊査士は話を締めくくった。


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参加者
旅人の篝火・マイト(a12506)
癒しの加護を宿す小さき花・エイミー(a15148)
黒焔の執行者・レグルス(a20725)
乙女風鬼百合・ジョニー(a56975)
武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)
暁天の修羅・ユウヤ(a65340)
月下黎明の・アオイ(a68811)
月夜に咲く灯り花・ロイナ(a71554)
NPC:歌漢女無双・ラートリ(a90355)



<リプレイ>

●夜の渚は、ア・チ・チ・アチ
 今回のお題(いらい)は、タコ型怪獣『ラヴアミーゴ』の撃破である。
 発音よろしく、リピート・アフター・ミー『らう゛・ぁ・み〜ご!』そうそう、いい調子だ。
 その調子で、海岸までサクッとタコをタコ殴りにいってみよう!
 Do not overlook it!!

「世の中には面白いタコさんもいるのですね。でも……色んな男の人に手を出すのだけは許せないのです!」
 好きな人が相手だったら攫ってでも、手中に収めてしまいたいと思うのは、人としてもタコとしても同じ事なのかもしれない。
 ただし、手当たり次第にというのは、癒しの加護を宿す小さき花・エイミー(a15148)とって、許容範囲外。
 求めるならば、ただ一人の自分だけの彼でなければいけない。
 浮気心は『ダメ、絶対』だ。
「水辺の生き物は妙なモンが多いのは同盟の宿命か……」
 今まで犠牲(注:死んでません)になった野郎共の仇を討つ! と、黒焔の執行者・レグルス(a20725)が砕ける波に誓う。
 思ってみれば水辺に限らず、昨今のランドアース全域で面白おかしい生態系が繰り広げられるのは、既に隠しようのない事で……。
「なんだか、前にもこんな迷惑な生物が海辺にいたわよねー」
「そういえばそうですわね」
 大変艶っぽい、談笑を響かせる二人あり。
 共に、雄々しい体躯を見せる乙女風鬼百合・ジョニー(a56975)と歌漢女・ラートリ(a90355)の様に、同盟の中には、並み居る乙女よりも乙女心を解す乙漢もいる。
「今思えば、依頼の内容を見た時にある程度こうなる事態は予測できたのですよね……」
「男限定で襲う怪獣か………」
 趣味か? 怪獣の趣味なのか?? 漢フェロモンに惹かれてしまう哀しい性(サガ)を持っているのか???
 はっきりいって……すごく迷惑。存在だけで、思い切り勘弁してくれと、砂浜の片隅で悲哀を思う。
 わーい、カニさんだ〜。とか何とか……浜辺にしゃがみ込んで、これから放り込まれるであろう戦いに、やや現実逃避気味なのは月下黎明の・アオイ(a68811)と白銀の騎士・ユウヤ(a65340)の二人。
 此処でひいては男が廃る。
「浜辺の安全のためにもここは覚悟を決めて頑張るしかないですね……」
 逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ……でもやっぱり逃げられるものなら逃げてしまいたい。嗚呼……無情。
「さて、どう料理しましょうかね……あのタコども………」
 中にはここまで来たら……後に引いてたまるかと腹を括るものもあり。
 足をぶつ切りにして、頭をさかさまにつぼ焼きにしてやろうか……そのまま鍋につっ込んで、丸ごと姿煮にしてやろうか……
 旅人の篝火・マイト(a12506)は既に覚悟完了。怒りをそのままにタコにぶつける気、満々である。
「お刺身、たこやき、たこ飯……早く食べたいでござる〜」
 酢だこに、揚げダコ、タコライス(それは違う)……色はともかく、きっと美味しいに違いない。サイズも数も満足確定。
 滝の様によだれをたらす。底なし胃袋の持ち主の武人型狐スト忍者・アリエーテ(a57608)の脳裏を数々のご馳走の幻が流れては消える。
 成長期の乙女は腹ペコりんなのだ。
「何だか一体どうなるのか……」
 興味深々……基。笑わないように、戦々恐々だと現時点で噴出しそうになるのを堪えて不思議の卵・ロイナ(a71554)が、勤めて口を引き結ぶ。
 笑ってはいけない。皆、其々に真剣なのだから………心の中で噴出すのは……致し方ない事かもしれなかった。

●哀・戦士
 ……ケースA(マイトとレグルスの場合)……。
 軽快な足取りで砂を蹴る。
「うふふふ……」
 捕まえてごらんなさ〜いv ややハスキーな声が、星空を映す波間にはじけた。
 ふんわりとした黒のワンピースが、歩を進めるたびに、ふわりふわりと軽やかに踊る。
 腕は振り切らず少し小さめ、両の小指を立てて女性らしい走りを意識する。
「逃がさないよ」
 あははは……お花畑が見えそうな……少し魂を飛ばしながら、煌びやかな銀の飾りが眩しい真紅で豪奢な服をまとった男性が追いかける。
 待っておくれ、僕のお花さん。
「ほーら、捕まえた!」
「きゃ、掴まっちゃった☆」
 逃がすまいと捕まえた、彼女(?)を少し乱暴に引き寄せる。
「もう放さない……」
「……マイトったら」
 ほんのりと頬を染め、二人は見つめあった。
「何か……男前ですよね! ここまで潔いと……」
 傍の岩場に潜み、こっそり見守る影が3つ。
 やってる本人達の心の中は、滂沱の血涙と鼻血でまっかっかだったりするのだが……
 端から見ている分にはロイナの見解のとおり、多少キラキラしいまでも立派なカップルに見えていた。
 黒のオーガンジーのドレスに、コサージュと一緒に短めのベールが付いた小さなハットをかぶったレグルスは薄化粧も相俟ってミステリアスな美女だし。
 エスコート役のマイトも華麗な、井出たちで二人の世界を作っている。
「もっと肩とか抱いて密着しちゃえばいいのにぃ」
「ここは一発……熱いベーゼですわー!」
 きゃーーvv と、やたらと盛り上がっている外野が、小声で暑苦しい声援を飛ばす。
「しかし、海を見ると、海の果てに何があるか気に………」
 なりませんか? と、続けようとしたマイトの視界の隅を、巨大なピンクの丸いものが1つ横切った。
 先ず、1体……。

 ……ケースB(ユウヤとアオイの場合)……。
 近からず、遠からず。あはは……うふふ……な、偽カップルの横でもう一組のデートが慣行させようとしていた。
 ゆっくりと肩を寄せ合い、白い砂浜を歩く。
 水平線はただ青黒く……世界は人々にただ静寂の愛を与える。
「ふふっ……素敵な海ですね、ユウヤさん♪」
「あぁ……そうだな」
 アオイが吹き抜ける風に、膨らみそうになる、スカートの裾をさり気無く押さえた。
 レースが是でもかと、つけられた白が基調のゴシック風のドレスに、同じく白のオーバーニーソックス。
 慣れない底厚のレザーブーツでは、多少歩き難いと思わなくもないが……全て今回の依頼に向け、旅団の女性陣の見立てである。
 教わった目元を強調する化粧も、一人では不安であったが……何故かメイクを買って出た乙漢二人の手により、完璧なまでにレクチャー通りに仕上がっていた。
「寒くはないか?」
「はい、ユウヤさんと一緒ですから」
 ユウヤがさり気無く、一見すると可憐な美少女に見えるアオイの肩を引き寄せる。
 そういえば……相談を持ちかけたときの皆の顔……凄くいい笑顔だったよなぁ……とか、カップルを男同士にこだわる必要はなかったんじゃないのか……とか、考え出すと今更ながらにどツボに嵌りそうになる。
 顔で笑って心で泣いて。意図的にとはいえ、ムードに酔いそうになる自分が怖い。
「レグルス殿……なんて素晴らしい己の捨てっぷり」
 潜んでいる位置から遠くに見える、キャッキャでうふふな世界に思わず小さな拍手をおくる。
「それと比べると……こちらは……」
 さらさらとアリエーテが、カンペに書付け、さっと甘いムードの二人に掲げてみせた。
「なになに……『もっとバカップルっぽく二人の世界に入るべし』……無茶言うなっ」
「バカップル……ですか」
 これ以上は無理だー! と、泣き事を言いながら、半ばヤケクソ気味に抱き合った二人の背後の海にてらてらと光る丸い頭が2つ。

 ……ケースC(最終兵器乙漢)……。
「一つ、二つ、三つ……後一つ、足りないですね」
 エイミーがうーんと唸りながら、ちらちらと囮カップルの背後でうごめく、丸いものの数を数える。
 今回はタコ型怪獣が4体いるはずなのだ。
「心配ご無用でござる」
 奥の手があるから無問題。むふーんと顎を撫でていた、アリエーテが少し離れた場所に隠れるジョニーへ、小さくGOサインを出した。
「あら?」
 ご指名ね。
「了解ですわ〜ん」
「いってらっしゃいませ」
 御武運を……ロイナは瞳をそっと伏せ。
 ザッと雄々しく立ち上がり、臨戦態勢に入った巨躯のドリアッドと黒羽のドリアッドの背を見送るのであった。
 だって視線を逸らさないと、笑わずにいられる自身がなかったから。

 るんたるんたと鼻歌を歌いながら、手をつないで波打ち際をスキップ。
「いい風ですわね」
「ほんとね」
 夜の海を渡ってきた潮風が、何とも心地よい。
「えいっ!」
「きゃっつめたい」
 思わず悪戯心を起して、ジョニーが海水をすくってラートリにかけた。
「おかえしですわ♪」
「きゃぁっv」
 暫く嬌声を上げながら二人は水掛遊びにいそしむ。その姿はまるで、年頃の少女の様で……。
「あぁん、濡れ羽色の艶やかな夜のあなたも素敵っ」
「そんなジョニー様の、お花もいっそうお綺麗ですわ」
 きゃーっと、歓声をあげて抱擁しあう。
「あとは……脱いじゃう?」
 わたし達、脱ぐと結構凄いわよ? 流し目を海に向けつつ、さり気無く胸元をはだけた。
 其処にあるのは、鍛え抜かれた肉体美。
 ざぁぁぁっ! と、波を割って、新たな影が急接近したのはその瞬間だった。

●ラヴアミーゴ
 同時に囮カップルの背後に潜んでいた影も動いた。
「わ! アレですか! ゆ、ユウヤさんが……って、笑ってる場合じゃなかったですね!」
「おぉぉぉ!? マイト殿っ」
 忍び寄ったピンクの影が、太い足で男達を担ぎあげる。
「怪獣、貴様達がいなければ!」
 血反吐を吐くような、魂の叫びを乗せた蹴りが光の軌跡を描き、拘束を試みるピンクのタコ足をきりとばす。
「汝が相手、我が務めんっ……」
 ぬるりとした足に捕らえられてはなる物かと、マイトも近づくタコ目掛けて応戦した。
「きゃーっ変態がでたわ!」
 漢のチラリに反応するとは、変態と言わずに何と言う。
「省みろ、貴様らが生み出した悲劇を! 主に! 俺達の悲劇を!」
 チュバっ、チュバッと、吸い付こうとする口を拳で叩き返し、抱擁も気にせず激情のままに攻撃を繰り出す。
「浜辺でこうやって追いかけるのって楽しいですよね♪」
 手中に収めた、獲物を早速海に引きずり込もうとするタコをエイミーが追いかける。
「さぁ、狩りの時間です……ユウヤさん達は殺せはしません」
「猛き邪竜よ、捧げし我が身と引き換えに一時の力を」
 ドレスを太股の位置まで巻くりあげ、ガーターベルト眩しいがアオイの癒しの波動が周囲を絶えず満たし、ベール越しの妖しい微笑みがいっそう凄みを増す、レグルスの足元から黒炎が吹き上がる。
「青き雷光よ、我に敵対せしものを貫け!」
「全てのカップルに愛の手をですわ〜ん♪」
 稲妻の眩い矢が飛び交い、狂気を孕んだ歌声が響く。
「物凄い恨みを感じますね」
 囮に仕立てられた、男性陣の猛攻を支援していたロイナは苦笑する。
「タコなんかに脱がされてたまるかー!」
「謝れ、俺たちに謝れ!」
 と叫んだのは誰の声だったのか……。
「ややっ、貞操の危機に助太刀いたすっ!」
 タコたちはうねうねとしぶとく這い回り、捕まえた男性陣の服を脱がしにかかる。
 あまりにも面白すぎて、思わず見入ってしまっていたアリエーテが、深紅色の刀身の刀を振り上げた。ぶつ切りにしてやるでござるっ!
「おいしい焼きタコさんになるが良いのです〜!」
 異形の悪魔の頭部をした黒炎が一体のタコを飲み込む。
「燃えさかれ業火、我が剱となりて、汝が仇を定めよ」
 遠慮はいらねぇ…俺に『す・て・き』な思いをさせてくれたんだからな。レグルスの生み出した渾身の黒炎が更なる勢いを生む。
 タコ達も口に水を含み、必死で抵抗するが、怒りに我を忘れた漢達の敵ではなかった。
 一つへり、二つへり……最後の一体も程なくして砂浜に力から尽き倒れこむ。
「色々大変な戦いでしたね……」
 未だ腹の虫が治まらぬのか、ふんっと肩を怒らせたままマイトが倒したタコを見下すのだった。

●帰るまでがお仕事です
 燃え上がる焚き火が、夜空を焦がす。
「タコでござる〜焼きダコでござる〜♪」
 倒した怪獣を丸焼きにすべく、焚き火を見張りアリエーテが小躍りしながら焼き上がりを待つ。
「そういえばタコさんって女の子だったのかな?」
 でろんと砂地に横たわる、未調理分のタコをつついてエイミーが首をかしげる。
 女の子なら、男の人だけを攫うのも納得だけど……男の子というなら………やっぱり変態さんですね。
 外見だけではタコの雌雄はよくわからない。なので……謎は謎のままなのかもしれない。
「は〜、やっと終りましたね〜」
「なんというか、らしくないことになってるな……」
 くすくすと笑うロイナにユウヤが肩を竦めて見せる。
 こんがりタコが焼けるのを待つ間、焚き火に照らされた浜辺で、チキンレッグの歌に合わせてマイトが悠然と舞を舞っている。
 それは豊穣の舞か、それとも勝利の舞なのか……見ているとくさくさしていた、気持が少しだけ楽になったような気がした。
「アオイの女装姿を見れて面白かったぞ」
 いつまでも足がスカスカするのは落ちつかんがな。
 レグルスがある意味で共に、今回で一番の勇姿を見せた、盟友の肩を叩く。
「……このドレス姿のまま帰るんですよね」
 ふりふりでひらひら。女性はよくこんな頼りない格好で歩けるものだと、つくづく感じる。
「やだレグルスくんもアオイくんも、スカート可愛い〜♪」
 ねぇ、下にはいてるのも女性用? どうなの。
「めくるなー」
「ちょっ、やめて下さい」
「いいじゃない、減るものじゃないしぃ」
 ぎゃー、やめてー………夜の渚の喧騒は、まだまだ続きそうであった。


マスター:青輝龍 紹介ページ
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月下黎明の・アオイ(a68811)  2009年12月19日 23時  通報
……忘れようにも忘れられない依頼ですね、これは(汗)。
あまりのインパクトに酒場の相談から覚えてますよ…。(遠い目)
それにしても、色んな依頼に行きましたが、まさかこれが自分の中で最高ポイント数の依頼になるとは……。

旅人の篝火・マイト(a12506)  2009年09月17日 00時  通報
絶対、あの悪夢は忘れません…。
夏が来ると、何故かあのたこのことが思い浮かびます。