亀ですか、いいえスッポンです。



<オープニング>


「マリンキングボスの襲来に伴ってか、最近は海から怪獣が近づいてくる事件が発生しているようですね」
 真実求む霊査士・ゼロ(a90250)の言葉に冒険者たちも頷く。今回の依頼はその対応ということだ。
「皆さんに向かっていただく海岸には、巨大な亀の怪獣が現れたよ……ん?」
 ゼロはそこで一旦言葉を切って、暫し瞑目する。そしてすぐに再び口を開いた。
「失礼しました。亀かと思っていたのですが……どうやらスッポンの怪獣だったようですね。鋭い牙で噛み付く攻撃を繰り出してくるようです」
 その攻撃はなかなか痛そうだとゼロは言う。
「更には口から赤い霧のようなものを吐き出し、敵を怒り状態にしてしまいます。この赤い霧を浴びると何かイロイロな意味でモノすごいハッスルしすぎて怒り状態になるようです」
 正気を失えば、戦列が乱れるかもしれないとゼロは言う。
「巨大スッポンは普通の大人二人分くらいのボリュームがある大きさで、四体上陸しているようです。今回はモンスターでも変異動物でもなく、海の怪獣ですので……無事に倒せたら食べたりしてみてもいいかもしれません」
 何でもスッポンは滋養強壮にいいらしいから、元気になれるかもしれませんよと言ってゼロは冒険者たちに一礼を送るのだった。


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参加者
月穿つ豹の爪牙・セリオス(a00623)
玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)
雲路の果てで微笑う・クーナン(a08813)
白鴉・シルヴァ(a13552)
カ・ラスキュー(a14869)
守護と慈愛の拳闘淑女・クレア(a37112)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
樹霊・シフィル(a64372)
風雲紐水着衛士・メイナ(a73577)



<リプレイ>

●スッポン襲来
 ざざーっ……と静かに波が寄せては返す、静かな海岸。だが最近この周辺を騒がすスッポン怪獣が現れるのだという。
「あれか……それでどれからいく?」
 問題の海岸に到着した冒険者たちの中で月穿つ豹の爪牙・セリオス(a00623)が呟く。見えるスッポン怪獣は四体おり、冒険者たちは一匹ずつ倒そうという作戦を立てていた。その間集中できるように他のスッポン怪獣の動きは止めておきたい所である。
「おとなしく俺達の血肉になって貰おーか!」
 砂を蹴立て、グランスティードで疾走する白鴉・シルヴァ(a13552)は海側に位置しているスッポンへと巨大剣を突き出していた。ガキンと甲羅とぶつかって硬い音が響き渡る。
「スッポンの怪獣……なんにしても、まずは倒しましょう」
 同様に海側へと回り込み、剛拳麗女・クレア(a37112)は拳を突き出す。シルヴァの一撃に押されたスッポンの甲羅を押すように、破鎧掌の『気』を叩き込んだ!
 ごっ!
 炸裂する『気』に押されてスッポンが吹き飛ぶ。後ろから攻撃したので多くの冒険者たちが居る方に近づいてきた形になった。そいつ目掛けてピースメーカー・ナサローク(a58851)はサンダークラッシュを解き放つが……。
 がぎんっ!
 サンダークラッシュの雷撃に貫かれながらもスッポンは首を伸ばし、ナサロークに噛み付こうとしてきたのだ。ナサロークは寸前で大型盾を突き出し牙を受け止め、弾く。そのままざっと一歩下がって少し間合いを取った。
「食いつかれとうございませんので、わたくしは後方で……」
 樹霊・シフィル(a64372)は突出したスッポンに集中できるよう、別の奴を狙って気高き銀狼を解き放つ。ペインヴァイパーのガスと融合しつつ、銀狼は一体のスッポンに喰らい付き組み伏せた。
「恋する乙女の愛と美と健康の為に血祭りにあげますわよ」
 続いて雲路の果てで微笑う・クーナン(a08813)も粘り蜘蛛糸を放ち、スッポンの拘束を狙う。しかし動いている残り二体のうち一体は白い糸を振り払い、拘束から逃れてしまった。
「……まぁ、何にせよまずは討伐せねばいかんな」
 玄鱗屠竜道士・バジヤベル(a08014)は黒炎覚醒を発動させ、邪竜の力をその身に纏う。体から滲み出すような『黒』と高まる力を噛み締めるようにバジヤベルは両手杖を握り締めた。
「スッポン怪獣さんは悪くないなぁ〜ん、拙者たちみんな、この世界に生きる仲間だから……ぎゃー!」
 未だに動いていた一体のスッポン怪獣が力こそパワー・ラスキュー(a14869)へと噛み付いていた。肉に牙が食い込みどくんどくんと血が流れ出してゆく。その光景を目の当たりにしながら油断ならないと風雲紐水着衛士・メイナ(a73577)は鎧進化を発動させる。鎧進化は防具の鎧強度を強化するほかに形状を変えることも可能だが、今回は海岸ということもあってかそれともポリシーなのか『凄くけしからんデザインの紐水着』はそのままの形状であった。

 セリオスの影縫いの矢が動いていたスッポンの影を射止めて動きを封じる。シルヴァは突出したスッポンに詰め寄り、思い切り巨大剣を叩き付けた。
「図体がデカくなった分、甲羅が硬くなったのかねぇ?」
 甲羅に一撃がガキンと響き、ビリビリと硬い手応えが伝わってきてシルヴァは小さく吐き捨てる。そこにクレアも詰め寄るが、スッポンは振り返って噛み付いてきた!
 ぴっ……。
 紙一重で避けたクレアの頬を僅かに牙が掠める。そのまま怯まずクレアは巨大なスッポンの甲羅の端を掴み、剛鬼投げで勢い良く投げ落とした!
「隙あり、だな」
 ナサロークは斧『スローターロード』を構えてサンダークラッシュを撃ち出す。雷撃が倒れたスッポンに突き刺さり、更に体内を巡ってばちばちと追撃のダメージを与えていった。ぶすぶすと薄く煙を上げながら動かなくなった。
「さぁ、油断大敵ですわよ」
 一体倒したことに満足気に頷き、クーナンは癒しの聖女を発動させる。聖女のキスで先ほどスッポンに噛み付かれたラスキューの傷が回復していった。
「これでどうかの」
 スッポンの甲羅の硬さを見て取り、バジヤベルはヴォイドスクラッチを発動させる。突然現れた虚無の腕に引き裂かれ、びしびしと二体目のスッポンの甲羅に亀裂が走ってゆく。アーマーブレイクが決まったのだ。
 そこにシフィルも気高き銀狼を喰らい付かせる。だがその直後に粘り蜘蛛糸で動きを止めていた別のスッポンが動き出し、ラスキュー目掛けて赤い霧のようなものを吹きつけた!
「このスッポン野郎がー! 唐揚げにしてくれるなぁ〜ん!」
 怒りを受けて奇声を上げながら攻撃するラスキュー。その行動で後衛を守る前衛の動きが手薄にならないか注意しつつ、メイナは突撃槍を振り上げた。
 ざしゅ!
 メイナの兜割りが、アーマーブレイク状態のスッポンの体を浅くではあるが袈裟懸けに斬り裂く。攻撃に押されるようにスッポンは一、二歩後退った。
「ふむ、手が空かないか……」
 ラスキューと戦うスッポンに向けて影縫いの矢を放つセリオスだが、スッポンは僅かに体をずらしてガキンと甲羅で受ける。矢は突き刺さらずに消滅してしまった。
「一気に、いくぜ」
 その時シルヴァは血の覚醒を発動させていた。どくん、どくんと熱い血が胸から生まれて流れ、破壊の力を伝えてゆく。その間を埋めるようにクレアは踏み出し、破鎧掌を繰り出す!
「はぁっ!」
 ずん、とスッポンの体が押されると同時に、体の内部を破壊する破鎧掌の力が伝わってごふっと口から血が噴き出した。その間にシフィルは動いているスッポンへと気高き銀狼を放ち、何とか動きを封じることに成功する。
「私も黙っていませんわよ」
 吹き飛んできたスッポンに怯まず、クーナンは儀礼用長剣『告死天使-Ender-』を振り下ろしていた。『心』の衝撃波を叩き込んですぐに後退る。
「スッポン怪獣さんは悪くないなぁ〜ん」
 正気に戻ったラスキューも現在攻撃されているスッポンへと蛮刀を繰り出す。台詞はこれだが結局攻撃はするようである。
「……亀の甲より年の功、しっかりと思い知るが良いっ」
 ヴォイドスクラッチの虚無の腕がスッポンの体に食い込み、勢い良く引き裂いて打ち倒す。そういえば亀ではなくスッポンだなとバジヤベルは小さく肩をすくめた。

 これで残りのスッポンはあと二体、そして今は動きを拘束されている状態だ。
「どんな甲殻だろうと叩き割るまで!」
 ざっと砂を蹴立てて鋭く踏み込み、メイナは鎧砕きを叩き込む! 正面から勢い良く打ち付けられた一撃がびしびしと響きながら衝撃を伝え、アーマーブレイクによって細かな亀裂が刻み付けられた。
 そしてシルヴァはニッ、と僅かに口角を上げて笑みを見せた。
 体にみなぎる破壊の力を一つ残らず腕に集め、巨大剣『闇鴉』を握り締める。そしてその漆黒の刃は溢れんばかりの闘気が凝縮されていた。――デストロイブレード!
 ずどん!
 海岸を揺るがすかの如き一撃はスッポンの背にクリティカルヒットし、アーマーブレイク状態の甲羅を越えて体を抉り破壊していた。よろりとフラついて居る所にナサロークがサンダークラッシュを繰り出し雷撃が突き刺さるが、追撃は発生しなかったようでスッポンはがくがく身を震わせつつ耐えている。
 ぼっ!
 だが次の瞬間、クレアの破鎧掌がスッポンの体を貫いていた。背中側から繰り出した渾身の一撃を引き抜けば、スッポンに一つ大きな穴が空いている。
「……私の力も通用したようですね」
 それで力尽きたスッポンはどしん、とその場に崩れ落ちてゆくのであった。
 
 しかしラスト一体が拘束を破って動き出していた。のっしのっしとメイナに歩み寄り、口から赤い霧を吹き付ける。反射的に仰け反ったメイナの瞳に、怒りが宿った。
「私を怒らせたことを土鍋の中で後悔させてあげます!」
 怒りで突撃槍を振り下ろすものの、一撃は肩の少し上の部分、甲羅の端にぶつかってガキンと止められてしまう。
「あらあら、淑女たるもの、何時でも高貴に振舞うべきですわ」
 シフィルの高らかな凱歌が奏で立てられ、怒りや疲労が癒されてゆく。その音色に後押しされるように、冒険者たちは最後の詰めを急いだ。
 クーナンが粘り蜘蛛糸を放つものの、白い糸は振り払われて防がれてしまう。
「その甲羅も、通用せんのぅ」
 だがバジヤベルのヴォイドスクラッチが決まり、びしびしと甲羅に無数の亀裂が生まれた。堅い守りは無くなった、後は叩くのみ! ラスキューは早速とばかりに一撃を繰り出し、スッポンの腹を薙ぎ払った。
「ようやくか」
 セリオスの強弓『竜牙弓』から射出された貫き通す矢がスッポンの胸に突き刺さり、射抜く。びくんと身を震わせた所でクレアが剛鬼投げで投げ落とし、スッポンは動きを封じられた。
 冒険者たちの集中攻撃は止まらない。ナサロークから迸るサンダークラッシュが追撃と共にスッポンの体を駆け巡り、シフィルの気高き銀狼が牙を突き立てる。
「もう遅いです」
 何とか起き上がろうともがくスッポンへ、メイナは兜割りを叩き付けた。ずしん、と頭部を打たれてぴくぴくと身を震わせる。
「悪いが、ここまでだ」
 ひゅん、と軽々巨大剣を振り上げるシルヴァ。闘気と共にデストロイブレードを振り下ろす。
 どぉんと炸裂する一撃に砂煙が上がる。シルヴァの攻撃がトドメとなり、スッポン怪獣たちはこれで残らず倒されたのであった。

●ハッスルハッスル!
「スッポンはコラーゲンたっぷり。やはり御鍋料理が良いかしらん」
 ウキウキした様子で提案するのはクーナンだった。今回のスッポンは海の怪獣。別に食べても問題ないのである。
「甲羅や爪、内臓以外は食べられるそうですよ、食べ過ぎない程度に満喫させてもらいましょう」
 答えるクレアを始めとした冒険者たちは、満場一致で賛成するのだった。
「折角のご馳走を残しては勿体無い、私が皆に振舞おう」
 実は色々と準備をしてきたのだというナサロークは首尾よく鍋や調理道具、食器等を皆に配って自分も調理に取り掛かる。メイナも美味しい鍋を作ろうと手伝っていった。
 そうして鍋を始めとした幾つかの料理が完成し、早速頂こうということになった。
「俺、スッポンって食ったことないんだよな……」
 美味いのだろうかと怪訝な眼差しを向けながら、恐る恐る口に運ぶシルヴァ。
「折角じゃから食すか……なんか刺激強すぎて逆に体調崩しそうな気がせんでもないが、ありがたく頂くかのぅ」
 スッポンは滋養強壮にいいらしい。バジヤベルも命を無駄にせんためにもと鍋に箸を伸ばす。
 そして戦いの疲れも吹き飛ぶなと味わっていたセリオスだが……突然立ち上がる。
「うぅ……た、た、滾るぞー!」
 うぉぉぉぉと海に向かって絶叫し、美味しさと溢れるハッスルさをアピールする。何か叫びたくなる衝動があったのだろう、うん。
「見た目は怪しいでござるが、味はこの通り……ぶふぉっ!」
 直後、自ら作成したスッポンプリンなる料理を食していたラスキューも鼻血を噴き出して倒れる。スッポンの効果で血が巡りまくったのか、自らの料理が何らかの破壊力を持っていたのか……ともかく原因は不明であった。
 まぁ一部ハッスルしすぎた感のあるものも居たが、たいていの冒険者たちはスッポン料理で多少自分の体を温かく感じる程度で済んでいたようだ。
「ん……お肌の調子は良うなりましたが……どういう訳か眠れそうにありませんわ……」
 シフィルは頬を赤らめながら、膝をもぢもぢと擦り合わせている。体の奥底が何だかムズムズするらしい。
「……そうそう、生き血もよろしいのですわよね。飲み物で割ったりして……精、力、倍、増」
 ふふふと笑みを浮かべながら、瓶にスッポンの血を詰めるクーナン。その近くに冒険者たちの使っていたグラスが置いてあったようだが……それに気付いた者は居なかったという。

 こうしてスッポン怪獣を倒した冒険者たちはハッスルしつつ、食べ切れなかった分を少しだけお土産にして帰路に着く。
 その夜、ハッスルし過ぎてイロイロな意味で眠れなかった者が居たかどうかは……また別の話である。

 (おわり)


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