<リプレイ>
●蟷螂の牙城 夏の陽射しと、風を感じて。草原に到着した冒険者達は早速、索敵を実行した。 「草原を蹂躙する約4mの大きさの変異蟷螂が現れたので、退治してくれとの事じゃな。フォーナ神直々の頼みということもあるが、その場を動けぬ植物相手にその仕打ち、見過ごすわけにはいかんのぅ……」 百草を嘗めし本草学者・ヴィクトル(a66102)は、丈の高い草花を掻き分ける。長いものになると腰の辺りまで成長しており、この草原の自然を象徴するようだ。 「そうだな。フォーナを間近で見たのは初めてだったが……あれが女神か。なるほど、人と違うというのは見てわかるものだったのだな。ともあれ、神に頭を下げられたのだ。やるしかあるまい。ヴィクトルさんの言うように、草原が荒野になるのを放置することも出来んしな」 ヴィクトルの言葉に、守護者・ガルスタ(a32308)が呼応する。顎に手を当て、女神の姿を思い浮かべた。それから、意識を現実へと引き戻す。ルーシェンへ声を掛け、ガルスタは鎧聖降臨を発動した。 「変異動物の多さと其れに伴う被害の増大……ここまで、女神様の依頼が続くと悲しいと同時に怖くなってくるな。被害をこれ以上広げないよう敵を止める……それでいいはずだ」 そのたびごとに着実に……きっと1番、大切なこと。これまで携わってきた女神からの依頼の記憶を、碧風の翼・レン(a25007)は呼び起こす。草原の緑と敵が同化している可能性も考えつつ、レンは最大級の警戒でもって歩を進めていた。 「夏の草原はやはり、草が風にそよぐのが気持ちよく素敵じゃと思うな。思うゆえ、独り占めも身勝手な草刈りも許しがたいかのぅ……しかし、女神も随分と大忙しなようじゃな。そんなにも、このランドアースは傷ついておるのであろうかぇ?」 遠眼鏡を覗き込み、百樹夜行・スズ(a23391)が草原を見渡す。今回の戦闘はAとBの2班に分かれて挑むのだが、スズはB班。遭遇後すぐに分かれるために、B班の者達は前方に固まっている。 「蟷螂さん、なんで草を刈ってるんでしょうね。草食べましたっけ? 寝床作りの為だとしてもちょーっとやりすぎですよねぇ」 伐採跡に、冒険者達は辿り着いた。寝惚け眼のナイフ使い・パラノイア(a07036)がその場にしゃがみ、残骸をちょっと持ち上げる。つまんだ植物は簡単に、指の隙間を零れていく。敵の姿は……と思っていたらば、視界を埋める緑の巨体。まだ此方には、気付いていない。冒険者達は素早く2班に分かれ、A班が後ろへ、B班が前へと移動した。 「4メートルの蟷螂かぁ……また随分と育ったもんだね。でもその力を暴虐に振るうなら、ここでその生、終わらせてもらうよっ!」 遠眼鏡を片し、決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)が叫ぶ。フィンスライサーを投げ付け、未だ戦闘準備の整わない敵に魔炎と魔氷を喰らわせた。まずはA班が、遠距離攻撃で敵の注意を惹き付ける。 「虫の世界も弱肉強食。蟷螂もまたこの大地の掟通りに生きただけだったのでしょう。こうなる事を蟷螂が望んだのでしょうか……それとも望んではいなかったのでしょうか?」 見上げる敵にしみじみと、銀の剣・ヨハン(a21564)は考える。悲哀とも思える感情を振り切るために、壮麗白銀ラージシールドを構えて。ヨハンは勢いよく、稲妻の闘気で薙ぎ斬った。 「むー……自然を荒らす悪い子は赦せないなぁ……」 闇薙グ黒蛇・ユア(a12046)は眉を寄せ、緑の縛撃を放つ。緑一色の世界に、拘束される蟷螂。 「自然が荒らされるのは見るに耐えないですね。何としても敵を倒し、元の姿に戻したいです……ドリアッドとして!」 固い決意を述べ、火炎六花・ルーシェン(a61735)は走った。ファウとユアの攻撃により動けない敵を横目に、B班は敵の背後へと回り込む。陣取ると同時に振り返り、ルーシェンはスキュラフレイムを撃ち出した。 「刈るんやったら雑草でも刈っとれば感謝されたかもしれんのに……ちゃんと育ったお花をバッサリやるんは、感心せんな」 (「にしても女神様からの依頼やと、やる気50倍増しになる俺は現金なんやろか……まぁ、美人からのお願いに張り切っちゃうのは男の性やねんし、しゃあないわな」) 孤独の太陽・グレッグストン(a63039)も、ルーシェンとともに蟷螂の死角へ……と一旦、敵の側面で停止し≪罪帝≫- Crime Kaiser -を振り落とす。 「おまえさんの鎌より、俺の鎌のほうが上やで?」 (「きちんと依頼を果たして、女神はんに報告して……『ありがとうございます、グレッグストンさん』なんて手をそっと握られたりして……そしてこっちも握り返して……そして……い、いかん、鼻血が……」) グレッグストンの達人の一撃が、敵の攻撃行動を封じた。折角、格好良く攻撃が決まったのに……流れる紅で半ば台無し。そんな事態を露ほども知らず、陽光に舞う武人・フミトキ(a90383)は正面からサンダークラッシュを叩き込んだ。靭槍『明紅葉』が、勢い良くしなる。 「では始めるとしようかのぅ」 黒炎覚醒を発動させ、ヴィクトルは自らの攻撃力を高めた。スズも同じく、黒き炎を身にまとう。冒険者達は、蟷螂を前後から挟み込んだ。改めて確認すると、正面のA班は、ヴィクトル、ファウ、フミトキ、ユア、ヨハン、レンの6人。背後のB班が、ガルスタ、グレッグストン、スズ、パラノイア、ルーシェンの5人だ。鎧聖降臨を発動し、ガルスタがスズの鎧強度を上昇させる。パラノイアはイリュージョンステップを使用して、回避に備えた。蟷螂はと言うと、魔炎と魔氷は解けたものの、拘束と消沈の効果が持続している。前後同時攻撃で、一気に蟷螂の体力を奪う冒険者達。 「終わらせるのも、また慈悲……ならば一刻も早く!」 壮麗シルバーソードから、ヨハンが強烈な電撃を放った。重傷中のファウを庇い、常に立ち位置を意識するヨハン。蟷螂とファウとの間で、輝く武器と盾を構え直した。レンは聖咎の片翼を置き、素手状態へ。そのまま高く跳躍し、疾風斬鉄脚を喰らわせた。更にもう2発ほど、レンは蹴りを入れる。 (「……怪我しちゃってるんで足手まといにならないよう」) 仲間の背に護られながら、ファウは鎧聖降臨をヴィクトルへ。礼を眼で受け取り、ファウは笑う。 「んっと、それじゃあヨロシクね〜」 掲げたRucifelから、創出される火球。蟷螂の頭部目掛けて、ユアがエンブレムノヴァを放つ。フミトキも続いて、烈しい電撃を撃ち出した。 「これでも喰らうがいいわ!」 軍手をした手を、ヴィクトルは思い切り前へ伸ばす。創造する白光の槍を、敵に突き刺した。 「自然を穢す愚か者は、炎に包まれて消えなさい!」 蟷螂の背面からも、連続的に攻撃を仕掛ける。賢者儀杖【魂狩】の先端から、ルーシェンが黒炎を生み出した。かけ声とともに撃ち出す炎が深く食らい付き、爆発の音を轟かせる。グレッグストンの大鎌から、放たれる達人の一撃。後衛や周囲の草花に被害が及ばないよう、敵を更に消沈させた。 「護る……それが私の誓いなのだから!」 ジルヴァラを、ガルスタが力強く振り落とす。同時にスズも、術式手甲【陸枷】から火球を撃ち出した。大岩斬とエンブレムノヴァのコンビネーション攻撃は見事に命中し、蟷螂の腹部に広い傷を残す。刹那、蟷螂が長い鎌をもたげ……正面の部隊を襲う衝撃波。無数の浅い切り傷を、冒険者達の身体へと刻み込んだ。A班の全員を射程に収めて、ファウが素早くガッツソングを唱う。蟷螂が動きを再開した……さあ、そろそろ決着をつけよう。
●草花の楽園 首を傾ける蟷螂が、長鎌を振りかざす。太陽を背負い、冒険者達から逃れようと足を上げた。 「おまえさんを、荒地から出すわけにはいかんのや!」 速攻で間合いに踏み込み、グレッグストンが武器を振るう。荒れ野をこれ以上、広げさせてはならない。グランスティードで、ヨハンが蟷螂の進行方向に回り込む。騎乗したまま、電刃衝を繰り出した。拳でフェイントをかけつつ、レンは回し蹴りを放つ。旋空脚を喰らい、蟷螂の膝部が地面に付いた。 「もう、何も刈らせはしないよ……っ!」 敵を睨み、ファウはブーメランを投げ付ける。首の根元に直撃し戻ってくる武器と、空中で交差するガルスタ。再び強烈な一撃を、ガルスタは蟷螂へとお見舞いした。光る銀の狼を喚び出し、眼前の敵を指し示すスズ。噛み付いて組み伏せて、蟷螂の動きを再度封じる。エネ・タングステンを握り直し、パラノイアが飛び出した。素早く腕を振り、スピードラッシュで斬り付ける。 「好い加減にしてもらって良いかな、蟷螂サン??」 言葉とは裏腹な鋭い眼差しで、ユアが両手杖を振り下ろした。放つエンヴレムノヴァは、蟷螂へ大きな損害を与える。 「召喚獣の恩恵付きの、スキュラフレイムの味はどうです?」 ベインヴァイパーに強化されたスキュラフレイムを、ルーシェンが送り出した。魔炎に毒と出血のバッドステータスが、息も絶え絶えな蟷螂に追い打ちをかける。フミトキのサンダークラッシュの後に、ヴィクトルが続いた。慈悲の聖槍でもって、蟷螂を深く深く貫く。遂にその生命は、自らが作った寝床へと堕ちていくのだった。巨体が倒れるのを確認して、冒険者達もその場へ腰を下ろす。戦闘で上がった息を、暫く落ち着かせて。 「骸は大地の栄養になるじゃろうし、埋葬しておこうかぇ。それと『大地が再び力を取り戻しますように』であったな」 立ち上がりながら、スズが提案する。これまた結構な重労働になるだろうが、他の者達も賛成した。 「えぇ。いずれは土に還り草原の一部になって、大地の力になってくれるかもしれません」 荒れ野となっている場所……蟷螂が倒れている地点に、穴を掘る冒険者達。どうにか上手く屍を埋めてしまうと、土を厚く被せていく。充分に埋めてからもう一度、レンが荒れ野の中心に小さな穴を開けた。恐らく此処が今回1番の被災地だと、見当をつけたからだ。 「神が大地に命を齎し給う種か……当たり前じゃが、見た事の無い種じゃな」 掌に乗せた種を、ヴィクトルはしげしげと見詰める。そしてレンが開けた窪みに、種を置いた。グレッグストンが、煙草を揉み消して片付ける。厳かな雰囲気が、草原に漂った。 「さてとーじゃあ……どうか、大地が再び力を取り戻しますように……元の緑溢れる草原に戻りますように……」 「蹂躙されし大地に、再び生命の輝きを……」 眼を瞑り、ユアが祈りを口にする。合わせて皆も、『大地が再び力を取り戻しますように』と心を込めた。両手を胸の前で組んで、静かに願うヴィクトル。 「新緑の息吹と恵みが齎され、再びこの地に静かな活気が還ってきます様に」 「願わくば、この蟷螂のような不幸な変異を遂げる生き物がいない草原になりますように」 レンとヨハンがそれぞれ、犠牲となった地を、者を悼む。瞼を上げると、視界が煌めいたようだった。 「天気がいい時の草原って、気持ちいいですね」 P-Heartを吹く合間に、パラノイアは告げる。冒険者達は、のんびりと緩やかな風を楽しんだ。お茶を飲みながら、まったりとくつろぐルーシェン。寝そべると、草花の揺れる音が聞こえてくる。隣に寝転ぶレンと笑顔を向け合い、2人して眠気に身を委ねた。うつらうつらしながらも、自然を護ったのだと、レンは強く思う。とても気持ちよく、一眠り出来そうな気がしていた。 (「あの雲を追いかけたら、どこまで行けるんやろうなぁ……」) 流れる白を、グレッグストンは眼で辿る。煙草を口に運んでから、腕を枕にして眼を伏せた。少し離れた所に、腰を下ろしているガルスタ。その心中では、草原の復興を熱望している。 「それにしても、昆虫もあそこまで大きいと何を食べるんでしょうね」 なんて疑問も口にしつつ、ヨハンは花を集めていた。刈られて、あとはしおれるしかない花。もう誰にも視て貰えない花達を、ヨハンは1枚1枚丁寧に拾っていった。 「早く元通りになって、色んな生き物を正しく育んであげてね♪」 茜に染まり始めた頃、冒険者達は草原を発つ。ファウは大地へ声援を送り、元気に手を振った。 「(……次に訪れる時は、緑深き地となっておるとよいのじゃが)」 瞬間、瞼を墜として。強く強く心の底から、スズは願いを囁くのだった。

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参加者:10人
作成日:2008/08/05
得票数:冒険活劇8
戦闘10
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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