マリンポーク



<オープニング>


●マリンポーク
 マリンキングボスがランドアース大陸に近づいてきた影響で、海に棲んでいた怪獣が引き寄せられるようにして、ランドアース大陸沿岸に出没しているらしい。
 お前達が今回、退治しなければならない怪獣は、マリンポークと呼ばれる豚の怪獣だ。
 マリンポークはその名の通りマリンブルーのブタで、海水パンツのような模様が特徴の可愛らしいヤツだ。
 そのため、海水浴客からマスコットとして可愛がられているが、信じられないほどの大食漢なので人間以外は何でも食べてしまうらしい。
 そのせいで沿岸地域にある小屋が次々と襲われ、見るも無残な姿になっている。
 ただし、マリンポークは本来、大人しい怪獣だから、極力傷つけずに海に帰してやってほしい。


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参加者
六風の・ソルトムーン(a00180)
決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)
ソニックハウンド・カリウス(a19832)
野良ドリアッド・カロア(a27766)
銀蟾・カルア(a28603)
守護と慈愛の拳闘淑女・クレア(a37112)
ピースメーカー・ナサローク(a58851)
灰影・ハヤテ(a59487)
陽月の花冠・リヴィートゥカ(a71397)
めんめん小坊主・コテツ(a73295)


<リプレイ>

●砂浜
「マリンポーク対策は仲間に一任。一般人の避難誘導も仲間に一任。特攻親父への対策も仲間に一任。……ふむ、やる事がなくなったな……寝るとするか!」
 スパァァァァァァァァァアアアン!
 軽快なハリセンの一撃と共にハッとした表情を浮かべる、六風の・ソルトムーン(a00180)。
 一瞬、何が起こったのか分からぬまま、状況を飲み込むため辺りをキョロキョロと見回した。
 白い砂浜、青い空、目の前に広がる大海原。
 どうやらバカンスにきていたらしい。
 ……違う。
 心の中で誰かがツッコミを入れた。
「……ハッ!! 特攻親父対策は俺じゃんか! また騙されるところだったぜ!」
 ハリセンで叩かれた事などすっかり忘れ、ソルトムーンが身体についた砂を払う。
 既に海岸にはマリンポークを見るため、沢山の野次馬達が集まっている。
「……前から怪獣が多いな〜とか思っていたけど、まだまだ被害が減らないね。でも、今回みたいに危険の少ないタイプだったら、まだマシなのかなぁ?」
 しみじみとした表情を浮かべながら、決別を呼ぶ吠響・ファウ(a05055)が口を開く。
 マリンポークの被害に遭っているのは、海の家。
 ……しかも柱だけである。
「……豚は雑食とは言うものの、好物が『柱』って……。それは食べ物じゃないんですけどね? まぁ、人間自体には害を与えないって事で、慌てず騒がず見物人の皆さんに退去してもらいましょうか」
 生暖かい視線を送りながら、剛拳麗女・クレア(a37112)が溜息を洩らす。
 野次馬達はマリンポークが現われたのと同時に完成を上げ、海の家のオヤジを蹴散らして柱を差しだそうとする。
 そのせいでオヤジが烈火の如く怒っており、怪獣よりも厄介な存在になっていた。
「きゃいぃぃ ぶたさんでし〜 か〜わいいでし〜 こっちむいてくだし〜」
 親父を蹴散らして野次馬に紛れ、めんめん小坊主・コテツ(a73295)がぴょんぴょんと飛び跳ねる。
 しかし、身体が小さいせいでマリンポークが見えず、野次馬の波に飲まれて放り出された。
「おおう、可愛らしい動物が泳いでおるようー! じゃが、悪戯に村を壊すのは宜しくないのう……。儂等が海へ返してやるからの、飯はその後にせい!」
 コテツを肩車してマリンポークを見せながら、灰影・ハヤテ(a59487)がニヤリと笑う。
 その間もマリンポークは円らな瞳をウルウルさせ、野次馬達に愛嬌を振り撒くのであった。

●マリンポーク
「あれが……、豚しゃん。か、可愛いのですよ〜。まるっこくて……、まさに海辺のアイドルさんですね〜。あんなに可愛い豚しゃんを帰さなければならないなんて〜……。何だか惜しい気もしますけど、食欲に任せて皆さんの敵になられても悲しいので、ぬいぐるみで我慢……、我慢です。ここは心を鬼に……鬼に……あぁ!」
 グランスティードに荷車を引かせ、七色の花冠・リヴィートゥカ(a71397)が視線を逸らす。
 マリンポークがあまりにも可愛いため、思わず胸がキュンとなっている。
 そのせいでマリンポークを海に帰す事に対しても躊躇っており、とても寂しそうな表情を浮かべていた。
「まぁ……、可愛らしいとは言っても怪獣だからな。サイズも普通の豚とは比べて図体がデカイし、大食漢であるのも当然だろう。だが、好物がな。果物は良いとして、民家の柱だと? なんだ、その極端な違いは……。実の所、味とかは二の次で、歯応えがあって腹に溜まる物なら何でも良いんじゃないか? まぁ……、総合すれば、柱に果物が付いた物……。実の生った果物の木なら豚の注意を引きやすいという事か」
 何となく自分を納得させながら、ソニックハウンド・カリウス(a19832)が船ら乗り込んだ。
 既にマリンポークは砂浜に来ており、ゾロゾロと集まってきた野次馬達と戯れている。
「……まあ、マリキン様(注:マリンキングボス)に引っ張られた、ただの随伴員のような感じだし、旺盛すぎる食欲以外は危惧する点もないようであるカラ、今回は手荒な事はせず帰してやる事にしよう……。しかし、本当にラブリーだね、こいつは……」
 いつでもフワリンを召喚し、ピースメーカー・ナサローク(a58851)が海上にむかう。
 ただし、戦闘状態になった場合はフワリンが消えてしまうため、ある程度の覚悟が必要になりそうである。
「なぁ、そこのアホ姉ちゃん。ちょっと、この板を巻いてくれ。ほーら豚しゃん、美味しそうな柱ですよー! あれ? スルー?」
 野良ドリアッド・カロア(a27766)に頼んで、木目調の板を身体に巻いてもらい、鈍色銀糸・カルア(a28603)が太めの柱に偽装した。
 しかし、マリンポークは不思議そうに首を傾げ、円らな瞳をきゅるるんとさせている。
 それだけでカルアのテンションが一気に上がり、『やっぱりマリンポークって可愛いよなぁ〜』と幸せを噛み締めた。
「……名前は似ていますけど、あっちで豚さんを見ながらハァハァ言っているバカ翔剣士とは……、他人ですからね。ちょ、自警団とか呼ばないで下さい。逮捕するなら、あっちのバカだけにして下さいよ」
 野次馬達から生暖かい視線を浴びたため、カロアが気まずい様子で言い訳をする。
 だが、野次馬達の対応は冷たく、自警団を呼ばれて捕まった。

●海の家
「何だかこうやって眺めていると、実に微笑ましい光景ですよね。たまにはこうやって怪獣を倒さず、見守っているのも悪くないかも知れません。……とは言え、珍しいもの見たさで集まっている皆さんを、このままにしておくわけにはいきませんね」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、クレアが拳をギュッと握り締める。
 マリンポークが野次馬達を襲う可能性は低いのだが、相手が怪獣である事を考えると安心する事は出来なかった。
「でも、困ったなぁ。この状況じゃ、説得をしても無理そうだし……。それとなく噂話を流してみたけど、誰も信用してくれなかったよ」
 ションボリとした表情を浮かべ、ファウが疲れた様子で溜息をつく。
 野次馬達は誰よりもマリンポークの事を知っていると思っているらしく、ちょっとやそっとの事では驚かなかった。
 それだけマリンポークと接している時間が長かったのかも知れないが、これにはファウも困り果ててしまったらしい。
「取り敢えず……、こちらに注目させる事が先決かの。よし、コテちゃにフワリン、頼むゾイ!」
 いつでもフワリンでフワリンを召喚し、ハヤテがゆっくりと横笛を口に当てる。
 それに合わせてコテツが玉ねぎ坊主頭を左右に揺らし、『ち〜と〜ぱぱぱ ち〜と〜ぱぱぱ♪』と歌い出す。
 これは本人いわく、故郷の古語らしい。
 ただし、どう聞いても幼児語にしか聞こえないため、本当の事なのか謎である。
(「きっと思いは伝わる……! 音楽は……、人を変えられるんじゃ……!」)
 笛を吹きながらキラキラと曇り無き眼で野次馬達を見つめ、ハヤテがマリンポークを救いたいという思いを託して横笛を吹く。
 そのため、野次馬達の視線が少しずつハヤテ達のところに集まっていった。
「海がぁ好きぃぃぃいぃぃぃぃ――!!」
 バーカーカーのごとく勢いで雄叫びをあげ、オヤジがハヤテ達の間を通り過ぎていく。
 ……その姿はまさにバンザイアタック。
 自らの危険を顧みず、捨て身の攻撃を仕掛ける漢(注:良い子はマネをしないでください)の姿。
 そして、オヤジの向かう先には……、マリンポークの姿があった。

●あらぬ疑い
「はぁはぁ……、酷い目に遭いました。まさか同じドリアッドというだけで、私と弟を間違うなんて……。柱に化けていたから、気付かなかったというオチは……ありませんよね」
 魂の抜けた表情を浮かべながら、カロアが鋭い視線をカルアに送る。
 カルアはマリンポークと楽しげに戯れており、依頼の事などすっかり忘れているようだ。
「お勤めご苦労様です。ようやく誤解が解けたようですね。こちらの準備も完了したので、後はマリンポークを海に帰すだけです」
 明るいお日様色のマンゴーを作り、リヴィートゥカがシュシュッと香水を吹きかけた。
 本来ならカロアと一緒に作るはずだったのだが、彼女が自警団に連れていかれてしまったため、頑張って一人で完成させたようである。
「ちょ、ちょっとそれ、俺の召喚獣! 齧っちゃ駄目! 齧っちゃ……あっ、髪の毛を齧らんといて! それ、果物じゃないから! 紫色の花が咲いているけど、葡萄の仲間とかじゃないから! だ、誰だ!板巻いた上に、ご丁寧にロープで雁字搦めに縛ったアホンダラはー!ギャース!」
 その間にカルアが召喚獣もろともマリンポークに襲われ、雨の日に捨てられた子犬のような表情を浮かべてカロアに視線を送る。
 しかし、カロアは……何も見なかった事にした。
「クッ……、何だかマズイ事になったな。のんびりしている暇はないぞ」
 突然、フワリンが消えたのでハッとした表情を浮かべ、ナサロークがようやくオヤジの存在に気づく。
 オヤジは訳の分からない事を叫びながら、マリンポークに特攻を仕掛けようとしている寸前だった。
 そのため、ナサロークはオヤジに体当たりをして倒れ込み、マリンポークを移動させるための時間を稼ぐ。
「やれやれ、まさか舞台背景の一つにもならないような姿を、まさか自分がやる羽目になるとはな」
 苦笑いを浮かべながら、カリウスが鎧進化で大きな木に変身する。
 次の瞬間、マリンポークが瞳をランランと輝かせ、カリウスの乗った船を追いかけていくのであった。

●親父
「めぇぇん! こわいでしー!」
 半ばパニックに陥りながら、コテツが物陰に潜む。
 仲間達のおかげで何とかマリンポークを遠ざける事には成功したのだが、オヤジが殺気立っているせいで野次馬達まで怯え始めている。
「オ、オヤジさん! 気持ちは分かるけど落ち着いて! 小屋の立て直しをするのなら手伝うから!」
 オヤジの心に訴えかけながら、ファウが行く手を阻むようにして陣取った。
 しかし、オヤジは怒りで我を失っており、ファウの言葉がまったく届いていない。
「マリンポークに復讐する事は、命を捨てる事と同じです。その覚悟があって喧嘩を仕掛けているのかも知れませんが、うまく共存して観光の目玉にした方が得策です」
 出来るだけ熱意を持って説得しながら、クレアがオヤジの肩をガシィッと掴む。
 そのため、オヤジはボロボロと涙を流し、『海の家を経営する事がわしの夢じゃったんじゃ』と答えを返す。
 どうやら親父は海の家をやるため、コツコツと貯金を続け、ようやく夢が実現すると思った矢先、マリンポークによって海の家が破壊されてしまったようである。
 そのせいで酷くショックを受けているらしく、怒りを抑える事が出来なくなっているようだ。
「オヤジっ! 海の漢は心も海の様に広く……、だろ? 他の小屋の主は来ないではないか……。ここはオヤジも一つ海の如く大きな心で見送ってやってはどうか?」
 オヤジのすべてを受け入れる覚悟で投網を投げつけ、ソルトムーンが真剣な表情を浮かべて語りかける。
 ……見つめ合う、ふたり。
 そこに言葉はいらない。
 ぶつかり合う心と魂。
 ……赤面するオヤジ。
「一体、何を期待しているだ、オイ」
 色々な意味で危険を感じ、ソルトムーンがジト目で睨む。
 とりあえずオヤジに小屋の修理代として宝石を渡しておいたのだが、少女のような瞳で見つめられてしまったため、最後まで目を合わす事が出来なかった。
「ふぅ……、これで何とかこっちは大丈夫そうじゃな。さて……、あちらはどうなっているのかのぉ」
 ホッとした表情を浮かべながら、ハヤテがタスクリーダーを使う。
 それと同時にマリンポークの可愛らしい鳴き声が、辺りに響き渡るのだった。

●さらば、マリンパーク
「しっ、しまった!?」
 ハートクエイクナパームを放った瞬間、マリンポークの強烈な体当たりを喰らい、カリウスの乗った船がブクブクと沈んでいく。
 一瞬の出来事だったせいでハッキリとした事は分からないが、マリンポークの瞳にハートマークが浮かんでいた……ような気がする。
 もちろん、それを確かめる術がないため、朦朧とする意識の中で陸まで泳いでいった。
「こ、このままでは陸に戻ってしまう! 何とかして別の作戦を考えねば!」
 険しい表情を浮かべながら、ナサロークが砂浜に視線を送る。
 砂浜ではリヴィートゥカとカロアがハリボテの果物を海に浮かべており、マリンポークの気を引こうとした。
「ほ〜ら、豚しゃん。ここに美味しそうな果物があるですよ。リヴィが食べちゃいましょうか〜。う、うや〜眼の色が変わって……少しずつ勢いが増してきたような……。こ、怖いのです〜」
 大粒の涙を浮かべながら、リヴィートゥカがハリボテの果物に乗って逃げていく。
 そのため、マリンポークが導かれるようにして、リヴィートゥカの後をついていった。
「ここの冬はとても寒くなるし、食べ物も沢山は有りません。持って来た果物だって、とても小さいでしょう? 動ける内に海の向こうに戻らないと、食べるものが無くなってしまいます。こっちには、こういう変態も居ますしね。早く仲間のところに帰りましょうね」
 カルアの事をチラリと見ながら、カロアがマリンポークを説得する。
 どうやらその思いが伝わったのか、マリンポークが大きくコクンと頷いた。
「……仲間か。ワイルドファイアにはラブリーな豚さん天国が……。常夏の楽園を、軽やかに駆ける豚しゃんと俺……、アハハウフフ」
 モンモンと妄想を膨らませ、カルアが至福の笑みを浮かべる。
 いつの間にか小舟に乗ってマリンポークを追いかけていたため、すぐさまカロアが慈悲の聖槍で鋭いツッコミを入れた。
「テメェ弟! 今度はお前が何処に行く気だ! 豚さんを追いかけてワイルドファイアまで行くつもりかー!」
 その一撃を喰らってカルアの身体が夕日に舞い、勢いよくちゃぽんと沈む。
 そして、マリンポークは冒険者達に見送られ、夕日の向こうに消えていった。


マスター:ゆうきつかさ 紹介ページ
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参加者:10人
作成日:2008/06/24
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冒険結果:成功!
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